Home | Information | Review | Archives | Column | Links | BLOG

ホームレビュー>WIG WAM

WIG WAM
WALL STREET
80
ウォール・ストリート (2012)

4作目のフル・アルバム。前々作と前作の間にあったようなブランクはなく、比較的コンスタントなペースでリリースされた作品だが、音楽的な変化値はこれまでで一番大きい作品である。今回は珍しくフラッシュ(B)が一人で書いた楽曲が#3、#6、#8、#10と4曲もあり、それらがややゴシックな雰囲気を漂わせていたり、ファンク風だったりと、これまでの彼らのレパートリーにはないタイプの楽曲が揃っており、これまで以上に音楽性の幅が広がっていることが「変化」を感じさせる最も大きいポイントと思われる。しかし、個人的には、これまでの彼らの十八番というべきパワフルでキャッチーなハード・ロック路線の楽曲が今ひとつ冴えておらず、むしろ本作の魅力を担っているのが新機軸の楽曲であるとさえ感じられてしまうほどにパワー不足なことが、このアルバムに異質な印象を与えることになっているのではないかという気がする。全体的なクオリティは充分に高く、ひと昔前の北欧のバンドにあった垢抜けないイモっぽさ(それは魅力でもあったが)も全く感じられないが、最近の北欧にはこの手のメロディアスなハード・ロック・バンドに優れた若手が数多く登場しているだけに、この程度の仕上がりでは埋もれてしまうのでは。初期のイロモノっぽさはすっかり薄れているだけに、なおのことそう思えてしまう。

WIG WAM
NON STOP ROCK N ROLL
83
ノン・ストップ・ロックン・ロール (2010)

08年から活動を休止し、フラッシュ(B)はARTCHの再結成、ティーニー(G)はDREAM POLICEの再結成と、彼らの成功にあやかろうとした過去のバンド仲間に対する「義理立て」とも思える活動を、また、そのティーニーとフラッシュはドラキュラにインスパイアされたというSWING OF DEATHなるプロジェクトでアルバムを発表、ドラキュラの発祥地とされるルーマニアでライヴを行なった。またVoのグラムは2作目となるソロ・アルバムを発表し、ENUFF Z' NUFFのサポートとして来日公演も実現。さらに自らプロデュースした演劇とミュージカルとロック・コンサートを融合したQUEENのトリビュート・ショウ「SHOW MUST GO ON」を実現、ノルウェーで延べ8万人を動員するという大成功を収めた。そんな充実したソロ活動の後発表された本作は、タイトルおよびジャケットのイメージ通りの、3〜4分のコンパクトな楽曲を12曲(日本盤ボーナス・トラック含む)にまとめた、スピード感あるゴキゲンなロック・アルバムに仕上がっている。大成功を収めた結果なのか北欧のバンドらしい哀愁はさらに薄くなり(全編Gのティーニーが歌う#6だけは北欧っぽい)、ノリノリのハードR&Rテイストが強くなっていることをどう受け止めるかは、このバンドに何を求めるかという聴き手の問題だが、楽曲は80年代のアメリカのメジャー所属バンドに勝るとも劣らない文句なしのクオリティ。正直ちょっと趣味ではない方向に向かっているが、やや冗長に感じた前作より個人的には気持ちよく聴けた。

WIG WAM
WIGWAMANIA
83
ウィグ・ワマニア (2006)

前作収録のユーロビジョン・コンテスト出場曲、「In My Dreams」は本国ノルウェーでNo.1シングルとなり、日本でも同曲は近年稀にみる北欧メロディアス・ハードの名曲として輸入盤市場で話題を呼んだ。そしてその好評を受け、このセカンド・アルバムで日本デビューが実現、翌月には前作が「HARD TO BE A ROCK 'N' ROLLER…IN TOKYO」というタイトルで日本盤として発売された。続いてその3ヶ月後には本国で行われたオーケストラとのジョイント・ライヴを収めた2枚組DVDまで日本盤が発売されたのだから、この時期の彼らの注目度の高さは推して知るべし。本作の作風は基本的には前作の延長線上にある、R&R色のあるメロディアス・ハード・ロックで、「In My Dreams」ほどのキラー・チューンは収められていないが、メタリックな威勢のいい曲から、テクニカルなギターをフィーチュアしたインスト、大衆性に満ちたバラード、THE KNACKの「My Sharona」のパロディのようなパワー・ポップ・チューンまで、楽曲のバラエティはさらに広がり、おもちゃ箱を思わせる楽しい雰囲気を漂わせている。当時「In My Dreams」1曲だけ聴いて「北欧メロハー」だと思い込んで聴いた私はいささか肩透かしというか、散漫な印象を受けたというのが正直な所だが、個々の楽曲の完成度は高い。それは、ボーナス・トラックである#13が本作の私的ベスト・チューンであるという事実にも端的に表れている。本作発表後来日公演が行なわれ、その模様はライヴCDおよびDVDとなるなど、バンド絶頂期の姿をとらえた一枚。

WIG WAM
HARD TO BE A ROCK 'N' ROLLER
85
ハード・トゥ・ビー・ア・ロックン・ローラー (2005)

2005年、欧州最大級の音楽イベントとして知られる「ユーロビジョン・コンテスト」にノルウェー代表として出演、本作収録の「In My Dreams」を熱演し、結果9位に終わったものの、そのグラマラスでケバケバしいルックスのインパクトもあり、本国では一躍話題の存在となったWIG WAMのデビュー・アルバム。もともとは2004年に自費制作で「667…THE NEIGHBOUR OF THE BEAST」というタイトルでリリースされた作品が、コンテストの結果を受けてタイトルを変えて再発されたものである。音楽性はルックス通り80年代に全盛を極めたポップ&キャッチーなメロディアス・ハード・ロックで、まさに20年前からタイム・スリップしてきたかのようだが、メンバーの経歴を知って納得、Gのティーニーは元DREAM POLICE、Bのフラッシュは元ARTCHと、90年前後にHR/HMにハマっていた方なら名前くらいはご存知であろう、日本盤もリリースされていたノルウェーのHR/HMバンド出身のベテランなのだ。つまり、このバンドは昔取った杵柄を利用して、当時のグラム・メタル・サウンドをカリカチュアライズした存在といえる(きっとこのコンセプトは、隣国フィンランドのLORDIがモロに80年代な音楽性で大ヒットしたことで思いついたのだろう)。キャリアに裏付けられたソングライティングの巧妙さはさすがで、ポップでメロディアスなHR/HMが好きな向きであれば理屈抜きで楽しめることだろう。

<Review Indexへ
▲このページのトップへ
Homeへ


Copyright (C) 2004- METALGATE JAPAN All Rights Reserved.