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VISION DIVINE
DESTINATION SET TO NOWHERE
79
デスティネーション・セット・トゥ・ノーウェア (2012)

08年に行なわれたこのバンドの10周年記念ライヴに端を発する、オラフ・トーセン(G)のLABYRINTH復帰を経て発表された7作目のアルバム。ここ数作プロデュースはティモ・トルキ(元STRATOVARIUS他)が手掛けていたが、本作ではオラフ・トーセンによるセルフ・プロデュース作になっている。4th「THE PERFECT MACHINE」まで在籍していたオリジナル・メンバーのアレッサンドロ"ザ・タワー"トリッチーニ(B)が復帰している。だからというわけでもないだろうが、本作ではその「THE PERFECT MACHINE」を思わせる、あまり明るいとは言い難い未来を舞台にしたSF的ストーリーを描き出すコンセプト・アルバムになっている。音楽的には従来通りメロディック・パワー・メタルとプログレッシヴ・メタルを折衷したサウンドを展開しているが、恐らくどちらのファンにとっても中途半端な印象を与える煮え切らなさもまた従来通り。叙情的で雰囲気は悪くないものの、今ひとつ盛り上がりに欠ける歌メロも相変わらずで、これではファビオ・リオーネ(Vo:RHAPSODY OF FIRE)の無駄遣いと言われても仕方ない。#6や#10のような、要所に配されたスラッシュ・メタル的な感触すら感じさせるスピード・チューンの存在によって、前作に比べればアルバムの流れにメリハリがあるのがせめてもの救い。

VISION DIVINE
9 DEGREES WEST OF THE MOON
75
ナイン・ディグリーズ・ウエスト・オブ・ザ・ムーン (2009)

ミケーレ・ルッピ(Vo)が脱退(正確には解雇らしい)し、ファビオ・リオーネ(RHAPSODY OF FIRE)が復帰して制作された6枚目のアルバム。プロデューサーは前作、前々作に引き続きティモ・トルキ(元STRATOVARIUS〜REVOLURION RENAISSANCE)。本作はミケーレ・ルッピ在籍時の3作と異なりコンセプト・アルバムではないそうだが、どの曲も「父親と生まれなかった子供の対話」によって成り立っているとのことで、それって充分コンセプチュアルなんじゃないかと思うのは私だけでしょうか。まあ、個人的にはコンセプト・アルバムであろうとなかろうとどうでもいいのだが、それだけに問われるべき個々の楽曲の出来がイマイチ冴えない。8分におよぶ大作の#1を聴いたときには「ん、結構イイかも?」と思ったが、その後に続く曲がどうにもつまらない。特にファビオ・リオーネが歌うヴォーカル・メロディがイマイチ起伏に欠け、煮え切らない。楽曲に入れ込めないために、オラフ・トーセンのギター・プレイの稚拙さや、きめ細かさに欠けるサウンド・プロダクションといった、このバンドがずっと抱えている問題がより浮き彫りになってB級感を放ってしまっている。実はそうした問題は前3作も内包していたはずだが、それをあまり感じさせなかったミケーレ・ルッピはやっぱり凄いシンガーだったんだなあ。実際、充分優れたシンガーであるはずのファビオに物足りなさを感じてしまうもんね。#10はJUDAS PRIESTのカヴァーで、このバンドが「プログレッシヴ・パワー・メタル」である以前に「ヘヴィ・メタル」であることを示すための選曲らしい。

VISION DIVINE
THE 25TH HOUR
81
ザ・25th・アワー (2007)

再びティモ・トルキ(STRATOVARIUS)をプロデューサーに迎えて制作された5枚目のアルバム。前作から大幅なメンバー・チェンジがあり、Key、B、Drが交替している。本作は前々作「STREAMS OF CONCIOUSNESS」のストーリーにおける主人公だった男の日記を基にした、続編とも呼べるコンセプト作。音楽的にも、近未来なアレンジを多用し、プログレッシヴ・メタル・テイストが強かった前作に比べると、前々作の作風に近いものがある。1曲目からピアノの調べに乗ったミケーレ・ルッピの甘く、物悲しい歌声が本作の叙情的なテイストを象徴していると言えよう。プロダクションの向上か、本人の努力か、あるいはもう一方のギタリストの貢献によるものか、これまで癇に障り続けてきたオラフ・トーセンの粗いギター・ワークが今回だいぶ気にならなくなっており、その点は間違いなくプラスポイント。正直このバンドについては、全体的な雰囲気は良く、グッと来るパートもあるものの、楽曲全体で見ると「Bメロかと思っていたらサビだった」というような「盛り上がり切らないもどかしさ」みたいなものがあって、それは今回も解消されていないのだが、もはやメロディック・メタル界を代表する、と言っても過言ではないであろうミケーレ・ルッピ(Vo)の極上シルキー・ヴォイスによって、「納得」させられてしまう。日本盤ボーナスであるDREAM THEATERの名バラード「Another Day」を完璧に歌いこなすその声域と表現力は本当に脱帽で、このバンドにはもったいないのではないかとさえ思えてしまう(苦笑)。とりあえず叙情派メタル・ファンは一聴の価値あり。

VISION DIVINE
THE PERFECT MACHINE
83
ザ・パーフェクト・マシーン (2005)

前作はとにかくミケーレ・ルッピ(Vo)の歌唱力と美声に圧倒される作品だった。その衝撃は、このアルバムに先立ってリリースされた彼のソロ・プロジェクトのCDまで思わず購入してしまうほどのものだったが、その明るいハード・ポップ的なソロ・プロジェクトの中で聴く彼の歌声は意外に「フツー」だった。そう、彼の明るくマイルドな歌声はヘヴィなメタル・サウンドとのコントラストによって引き立つ。不老不死の実現した未来を描くコンセプト・アルバムである本作は、ややプログレッシヴな要素を増して、耳に残るキャッチーなメロディは減退したものの、ミケーレの絶品の歌唱とティモ・トルキ(STRATOVARIUS)のプロデュースが、歌詞世界の持つスケール感を充分に引き出している。ダイナミックなエッジを増したリフが増えているし、前作より加入したkeyも優れた音色センスによってドラマの演出に貢献している。正直僕のようなメタラーにとってはプログレッシヴなオリジナル曲より、ボーナス・トラックであるQUEENSRYCHEのカヴァー「The Needle Lies」の方に即効性を感じるし、相変わらずキラー・チューンには欠けるのは確かなのだが、楽曲のクオリティはさらに向上している。こうなるとやはりこのバンドにおける最大の弱点はオラフ・トーセンの一向に改善されない粗いギター・ワークだなぁ…。誰か彼をリコールしてくれ(苦笑)。

VISION DIVINE
STREAM OF CONSCIOUSNESS
84
ストリーム・オブ・コンシャスネス (2004)

中心人物であるオラフ・トーセン(G)が「本業」であったはずのLABYRINTHを脱退して制作されたサード・アルバム。元から問題の多いバンドだったLABYRINTHのメンバーとは完全に「決裂」したらしく、LABYRINTHとの掛け持ちだったKeyとDrも脱退し、新メンバーに交代している。それだけならともかく、バンドの生命線であり、恐らくこのバンドが多少なりとも注目された最大の要因であるファビオ・リオネ(Vo)までも、RHAPSODYに専念するために脱退。これでこのバンドは終わったと思ったが、ところがどっこい、ファビオの後任というキツいポジションにファビオと同等、あるいはそれ以上とさえ思わせる無名の逸材、ミケーレ・ルッピを迎えるというウルトラCによってこの危機を見事に切り抜けてしまった。本作は生きる意味を知ろうとして狂気にまで至る男の葛藤を描いたコンセプト・アルバムで、マイケル・スウィート(ex.STRYPER)とイアン・パリー(ELEGY)を7:3の割合でミックスしたようなミケーレの絶品の歌唱によって、ヘヴィだった前作とは打って変わった叙情味と起伏に富んだアルバムに仕上がっている。正直、キラー・チューンと呼べるほどの突出した楽曲は存在しないものの、楽曲自体も明らかなレベルアップを見せており、アルバム1枚最後まで聴かせる力がある。Voが素晴らしいだけで音楽のスケール感というものはここまで増すものか、とあらためて「人の声の持つ力」に驚かされる作品だった。

VISION DIVINE
SEND ME AN ANGEL
67
センド・ミー・アン・エンジェル (2002)

単発のソロ・プロジェクトから、パーマネントな「バンド」として活動することになったVISION DIVINEのセカンド・アルバム。本作リリース当時、僕はちょうどイタリアを旅行しており、このアルバムを最初に聴いたのはミラノのヴァージン・メガストアに設置されていた試聴機である。僕の場合、レコード店の試聴機で聴くと、自宅で聴いた場合よりも3割方魅力的に聴こえることが多いのだが、このレコードに関しては試聴機で聴いてなお退屈で、とても購入する気になれなかった。そしてレビューを書くために中古で購入し、じっくり聴いてみると、やはり退屈だった(苦笑)。前作よりヘヴィさが強調された音楽の中、このバンドの唯一の武器と言ってもいいファビオ・リオネ(Vo:RHAPSODY)も、トレードマークである伸びやかで大仰な歌唱を抑え、攻撃的なシャウトを多用しており、非常に「らしくない」。前作においては、クオリティはともかく路線的にはとりあえずファンの期待するものに近いものを呈示していたが、このアルバムを手に取るようなファンの期待に多少なりとも応えられるのは#4「Pain」くらいのものか。メンツによる期待が大きすぎるせいもあるが、聴き終わったときに思わず出た言葉は「うをー、つまらん!」でした…。

VISION DIVINE
VISION DIVINE
79
ヴィジョン・ディヴァイン (1999)

LABYRINTHのギタリスト、オラフ・トーセンのソロ・プロジェクトのファースト・アルバム。当初はインストゥルメンタル中心の作品を目指したようだが、結果的にはLABYRINTHと大差ない典型的なイタリアン・メロパワ作品となっている。Voを務めているのはファビオ・リオネ(RHAPSODY)で、彼はかつてLABYRINTHに所属していたことを考えると、実質初期LABYRINTHの「再結成」なのであるが、RHAPSODYとLABYRINTHそれぞれがそれなりの知名度を獲得した今となっては一種の「夢の競演」であり、かなりの期待が寄せられていた。しかし、率直に言えばクオリティ的にはその期待に応えるものとは言いがたい。先述した通り、LABYRINTHとほぼ同路線の、ややプログレッシヴがかったメロディック・パワー・メタルで、オラフ自身のギターが粗いことを除けば演奏も安定しているし、音質もイタリアものとしては及第点。もちろんファビオ・リオネの伸びやかな歌い上げも素晴らしいのだが、肝心のメロディに煽情力が不足していて、僕好みの速い曲が大半を占めているにもかかわらず、イマイチ熱くなれない。唯一印象に残ったのが、ユーロビート・シンガーとして、その手のファンにはそこそこ知られていたドミノがゲスト参加したドラマティックなバラードの#10「Of Light And Darkness」で、この曲の幻想美は素晴らしい。隠しトラックであるボーナス・トラックの「The Final Countdown」はいわずと知れたEUROPEの大ヒット曲のカヴァーで、ファビオがかなりオリジナルに似せて歌おうとしているのが感じられて面白い。B級RPGみたいなジャケットもさることながら、ツカミとなるべき1曲目が一番つまらない曲、という印象の悪さが本作の最大の問題点だな。

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