Home | Information | Review | Archives | Column | Links | BLOG

ホームレビュー>VIPER

VIPER
ALL MY LIFE
78
オール・マイ・ライフ (2007)

かつて日本で「THEATER OF FATE」をヒットさせた彼らだが、アンドレ・マトス(Vo)の脱退と共に一気に失速。その後ANGRAでさらなるブレイクを果たしたアンドレとは対照的に、「EVOLUTION」を最後に日本盤のリリースも途絶えてしまった。続く「COMA RAGE」(1995)こそBURRN!誌の輸入盤レビューでも扱われていたが、その後は完全に音沙汰がなくなっていた。実際には母国語で歌うオルタナティヴっぽいパンク・バンドに変貌して「TEM PRA TODO MUNDO」(1996)というアルバムを発表、トレンドに乗って生き残りを図ったものの、結局活動停止(解散はしていなかったようだ)を余儀なくされていたようだ。それが、21世紀に入ってのメタル復興の煽りを受けて2004年に活動を再開、そしてリリースされた「復活作」が本作。アートワークの雰囲気からも察せられるように、アンドレ・マトス在籍時のメロディック・パワー・メタル路線へ回帰しようという意図が感じられ、新たに迎えられたリカルド・ボッチもまたアンドレを思わせるハイトーン・シンガーである。ただ、実際には往年のクラシカルな旋律美は希薄で、むしろアンドレ脱退後の彼らの音楽性であったR&R風味が所々顔を出し、時にジャズの要素なども取り入れた、ある意味ちょっと珍しいタイプのメロディック・パワー・メタル作品となっている。演奏力は向上しているものの未だ一線級とは言い難く、ANGRAとは比べるべくもないが、後半メロスピ然とした曲が増えてくるし、久方ぶりの復活作としては及第点か。

VIPER
EVOLUTION
71
エヴォルーション (1992)

ドイツの音楽学校で本格的に音楽を学ぶべくアンドレ・マトス(Vo)が脱退し、中心人物であったピット・パシャレル(B)がVoを兼任する形で発表されたサード・アルバム。本作発表後には来日公演が決定。来日記念EP「VIPERA SAPIENS」と、その来日公演の模様を収めたライヴ・アルバム「MANIACS IN JAPAN」がリリースされた。それらの動きは今思うと、前作のヒットの余熱が残っているうちに契約枚数を消化してしまおう、という日本のレコード会社(ビクター)の思惑によるリリースで、アンドレが脱退した時点でこのバンドは見切られていたのではないかと思う。そう考えると、いささか気の毒なバンドではあった。実際本作は、これがバンドの初リリース作だったら恐らく日本盤は出ないであろう代物で、ファーストの正統派パワー・メタル路線に回帰するならまだしも、R&Rフィーリングを感じさせるそのサウンドは特に「THEATER OF FATE」の続編的な作風を期待していたファンたちを落胆させた(演奏力に見合った順当な方向性の転換と言えるかもしれないが…)。全体的にアップテンポでノリやすい曲が揃っているので、流していて苦痛なほど退屈なわけではないが、全体的にこぢんまりとしていて、聴き終えた後の印象は薄い。#11「We Will Rock You」はQUEENのカヴァー。

VIPER
THEATER OF FATE
85
シアター・オブ・フェイト (1989)

HELLOWEENの「KEEPER OF THE SEVEN KEYS」の大ヒットによって、「ジャーマン・メタル」のブームに沸く日本のメタル・マニアの間で、「ポストHELLOWEEN」の最有力候補の一つとして注目されたブラジル出身5人組の日本デビュー作。前述の通り、HELLOWEENを思わせるメロディックなスピード・メタルが基本的な音楽性で、当時そういう音は「ジャーマン・メタル」と総称されていたため、「ブラジル出身のジャーマン・メタル」という謎の扱いをされていた。このバンドの特色としては、いわゆる他の「ジャーマン・メタル」に比べ、クラシック音楽由来のアレンジや旋律が多く、DEEP PURPLEの昔からそういったサウンドに目がない日本のHR/HMファンのハートを鷲掴みにした。正直、後のANGRAなどに比べるとアレンジも稚拙で、演奏力も高いとは言えないが、リリース当時においてはなかなか衝撃的な音だったし、メロディの良さは今なお輝きを失っていない。個人的にシンフォニック・メタルというスタイルを完成させたのはANGRAのデビュー・アルバムだと思っているが、そういう意味ではその礎となった本作こそがシンフォニック・メタルのプロトタイプと言えるだろう。ANGRA以降のシンフォニック・メタルになじんだ人間にとってはあまり高得点をつけにくいかもしれないが、リアルタイムで聴いていた人にとってはこの点数以上のインパクトがあったはず。本作の日本盤が発売されるまでに約2年の月日を要したというあたりに、当時のブラジルのHR/HMマーケットがいかに未開であったかということが窺われる。

VIPER
SOLDIERS OF SUNRISE
75
ソルジャーズ・オブ・サンライズ (1987)

ブラジルの正統派パワー・メタル・バンドのデビュー作。日本では先にセカンド・アルバムの「THEATER OF FATE」がリリースされて大ヒットしたため、本作もあらためて日本盤がリリースされた。その後ANGRAでの活躍によってさらに有名になるアンドレ・マトスのデビュー作でもある。当時平均年齢が18歳に満たないほどに若く(アンドレに至っては弱冠16歳だった)、荒削りな感は否めない。しかし、ブラジルには当時メタル・シーンと呼べるほどのシーンもなく、かろうじてSEPULTURAがマニアの間で認知を広げつつあった時期だけに、同国におけるこの手のサウンドのパイオニアだったことは間違いなく、むしろこの年齢でこのクオリティであればなかなかのもの、とさえ思える。次作のようなあからさまにクラシカルなエレメントは表出しておらず、メロディック・パワー・メタルというよりは(プロダクションの悪さなども含めて)NWOBHM直系という印象を受ける(ジャケットのアートワークもそんな感じ?)。アンドレの歌唱も後年のような技巧はないものの、その声域にポテンシャルは感じられる。万人にオススメはしかねるが、アンドレ・マトスのコアファンやB級正統派のマニアであれば一聴の価値がある、ひたむきなメタル愛がほとばしる一作。


<Review Indexへ
▲このページのトップへ
Homeへ


Copyright (C) 2004- METALGATE JAPAN All Rights Reserved.