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VICIOUS RUMORS
ELECTRIC PUNISHMENT
80
エレクトリック・パニッシュメント (2013)

前作発表後、故カール・アルバート(Vo)の息子、ケヴィン・アルバートをフィーチュアしたカール・アルバート追悼ギグなどのイベントを挟み、長い欧州ツアーを経て発表された11作目のアルバム。前作に参加していた日系人ギタリスト、キヨシ・モーガンが脱退し、「WARBALL」に参加していたセーン・ラスムッセンが復帰している。基本的には前作を踏襲する、スラッシーな感触をさえ感じさせるアグレッシヴなパワー・メタル作品であるが、アメリカン・メタル然としたアンセム・タイプの#7「Together We Unite」や、これまでにはなかったメランコリックな#8「Eternity」などが新味を醸し出し、KISSのカヴァーである#10「Strange Ways」で幕を閉じるというのが新機軸。これらの曲はジェフ・ソープ(G)が歌っているが、なぜ3割もの楽曲をジェフが歌う必要があったのかはやや疑問だし(本作発表後にVoが脱退したことと関係があるのだろうと邪推してしまう)、極めてピュアなパワー・メタルを望んでいると思われる彼らのファンがこういった新しいアプローチを「バラエティに富んでいて良い」と受け止めるか、「らしくない」と感じるかというと、恐らく後者なのではないかという気がする。余談だが、彼らが今一つビッグになれない理由のひとつとして、「VICIOUS RUMORS」というバンド名が英語ネイティブの感覚ではヘア・メタル・バンドを想起させ、誤解されているから、という説を聞いて、なんとなくわからなくもない、と思ってしまった。

VICIOUS RUMORS
RAZORBACK KILLERS
83
レイザーバック・キラーズ (2011)

約4年半ぶりとなる通算10作目のアルバム。タイトルにある「RAZORBACK」とはジェフ・ソープ(G)が使用しているギターの名前。前作で歌っていたジェイムズ・リヴェラとは喧嘩別れし、ブライアン・アレン(LAST EMPIRE)を迎えている。その他、セカンド・ギタリスト(キヨシ・モーガンという名前から推察される通りの日系人)とベーシストが交代している。前作はVICIOUS RUMORS復活を印象付ける作品だったが、本作はその復活が瞬間的なものではないことを印象付ける、強力なパワー・メタルに仕上がっている。新ヴォーカリストのブライアン・アレンも、ほぼ無名の新人ながらアグレッシヴな歌声でスラッシーとさえ感じられる攻撃性を演出しているし、これまでと比べて長めの曲が多いが、前作からのインターバルが長かったせいか、ドラマティックな#10に代表されるように、これまで以上に練り込まれており、ツインリードの絡みなど楽曲自体のフックも前作以上。同時代における存在意義やインパクトにおいては4thまでの「黄金時代」に及ばないかもしれないが、現代の若いリスナーが聴いてインパクトを感じるのは現代的なアグレッションを備えた本作だろう。なお、ゲストとしてエリック・ピーターソン(TESTAMENT)、前作にも参加していたブラッド・ギルス(NIGHT RANGER)、そして旧メンバーだったマイク・マクギーが参加している。

VICIOUS RUMORS
WARBALL
81
ウォーボール (2006)

カール・アルバートの死後、ジェフ・ソープ(G)が自らVoをとった「SOMETHING BURNIING」(1996)、そしてそれぞれ異なる専任シンガーを迎えて「CYBERCHRIST」(1998)、「SADISTIC SYMPHONY」(2001)と、アルバムによって若干の作風の差はあれど、基本的にはPANTERA以降のモダンな「グルーヴ・メタル」を実践してきた彼ら。しかしその後5年近く音沙汰がなく、てっきり力尽きたものと思っていたら、近年のメタル復興の機運を感じたか、SEVEN WITCHSをはじめ、幾多のアメリカのアンダーグラウンドな正統派メタル・バンドで歌っていた歴戦のジェイムズ・リヴェラを新たなヴォーカリストに迎え、往年の正統派パワー・メタル路線にて完全復活を遂げた。デイヴ・スター(B)にラリー・ハウ(Dr)という往年のリズム隊も戻ってきている。ジェイムズ・リヴェラの、ややクセはあるが、HM史上最高のシンガーの一人に数えられていたカール・アルバートにおさおさ劣らぬ強力なハイトーン・ヴォイスはまさに彼らの正統派パワー・メタル路線にうってつけで、サウンドのメタリックなテンションを高めることに貢献している。「メタルらしさ」、もっと言えば「正統派であること」に意義を見出せない向きにとっては楽曲のフックやメロディが弱いと感じられるかもしれないが、それはこのバンドについては昔からそうなので、往年のファンであれば気になるまい。全10曲40分強と、この時代にあっても変わらずコンパクトなアルバム構成も潔い。10年以上に渡った不振を吹き飛ばす力作。

VICIOUS RUMORS
WORD OF MOUTH
76
ワード・オブ・マウス (1994)

前作発表後、初の来日公演を実現させ、日本のメタル・ヘッズを熱狂させたその模様はライブ・アルバム「PLUG IN AND HANG ON : LIVE IN TOKYO」としてリリースされた。しかしその後、中心人物であるジェフ・ソープ(G)が「毛根管症候群」なる病気に冒され、数か月に渡って楽器をプレイできない状態に。バンドが活動できない状況の中、折からのオルタナティブ・ブームによってレコード契約を失うという不遇の中、マイク・マクギー(G)を中心に制作され、発表された5作目のアルバム。Bがデイヴ・スターからトミー・シスコに交代している。跳ねるリズムとヘヴィなリフを多用する、当時のオルタナティブやモダン・ヘヴィネスに感化されたと思しき楽曲が収録され、しかもそれがアルバムの序盤に登場することで、いささか時流に流された印象を与える作品である。完全にその路線に走ったわけでもなく、随所に正統派HM時代の名残はあるというか、それそのものと言える楽曲もあるのだが、前作が焦点の絞れた全力投球感のある作品だっただけに、いささか日和った印象を受けてしまうのが正直な所。これはマイク・マクギーがソングライティングの主導権を握ったためかとリリース当時は思っていたが、その後の作品を聴くとあながちそうとも言い切れなかったりする。#5〜#6の組曲形式であるメランコリックな「Thunder And Rain」は、前年に交通事故死したSAVATAGEのクリス・オリヴァに捧げられた曲だが、皮肉なことに本作発表後、この曲を歌ったカール・アルバート(Vo)も交通事故で死んでしまった。

VICIOUS RUMORS
WELCOME TO THE BALL
83
ウェルカム・トゥ・ザ・ボール (1992)

前作に引き続きTESTAMENTやFORBBIENを手掛けた(一方でトッド・ラングレンやエディ・マネーのような非HR/HMアーティストも手掛けている)マイケル・ローゼンを共同プロデューサーに迎え、NYの「FANTASY STUDIO」でレコーディングされた4作目のフル・アルバム。前作は彼らの作品にしてはバラエティとキャッチーさがある作風だったが、本作は正統派HMという枠を頑なに守りつつも、前作の一部の曲に漂っていたスラッシュ・メタル勢を彷彿させるアグレッションが全編に漂う強力な「パワー・メタル」作品となっており、強靭な#1、疾走する#2という冒頭の流れが本作の印象を決定付けている。アップテンポの曲や力強いミドルテンポの楽曲を軸にしつつも、一方で#4や#10のような新境地ともいえるメロウなタッチの楽曲の存在がアルバムにメリハリを生んでおり、決して力押し一辺倒の一本調子な作品ではない。個人的にはその#10の他、#5や#11など、比較的メロディの強い曲がフェイバリットであるが、メロディック・パワー・メタルなどに馴染んだ耳には無愛想に感じられるかもしれない。音質も、メジャー・プロダクトだけにこの時期としては悪くないが、21世紀以降に音楽を聴き始めた人には迫力不足に感じられるかもしれず、そういう意味ではリアルタイム組が感じたインパクトは風化してしまっていると思われるのがちょっと残念。

VICIOUS RUMORS
VICIOUS RUMORS
83
ヴィシャス・ルーモアズ (1990)

かつてSAVATAGEを手掛けたマネージャー、ボブ・ゼムスキーの口利きによって「ATLANTIC」からのメジャー・デビューを果たした3作目のセルフ・タイトル作。メジャー・デビューを機にグッと垢抜けてポップになるバンドが珍しくない時代だったが、彼らの場合、信念ゆえか不器用さゆえか、これまでと変わらぬ正統派HM路線に変更はない。とはいえ、前作までに比べると歌が前面に押し出されているし(これはカール・アルバートが成長したことも大きいはず)、サウンド・プロダクションが多少洗練されたこともあって全体的にシャープになった印象。楽曲もバラエティが出てきて、#3や#7のような速い曲にはほんのりスラッシーなニュアンスがあるし、#6や#10のような楽曲には明るいアメリカンなノリが感じられる(特に#10などはバンド史上最もキャッチーな曲だろう)。マーク・マクギーの弾くアコースティック・ギターとマンドリンをフィーチャーした短いインストの#8なども新機軸で、アルバム内にメリハリを生み出すことに貢献している。BLACK SABBATHの「Neon Knights」を想起させるオープニング・リフを持つ#1は本作の路線を象徴するHMらしさとキャッチーさのブレンド具合が絶妙で、その後ライヴのラスト定番となったのも頷ける名曲。個人的には#4〜#6あたりでちょっと中だるみを感じるが、この辺の楽曲を心底楽しめる人こそが真のHMファンというものだろう。

VICIOUS RUMORS
DIGITAL DICTATOR
81
デジタル・ディクテイター (1988)

このバンドを踏み台に(?)ソロ・デビューを果たしたヴィニー・ムーアが脱退、後任にマイク・マクギーを加入させて発表したセカンド・アルバム。JUDAS PRIESTの「Hellion」を彷彿させるイントロダクション#1で期待が膨らむ。続く曲がスピード・チューンの#3だったらより高まったと思うのだが、どうもアメリカの正統派バンドというのはミドルテンポの力強い楽曲の方が好みのようだ。前作からヴィニー・ムーアだけでなくVoも交代しており、元VILLAIN〜RUFFIANSのカール・アルバートを迎えているが、このカールが逸材で、バンドのサウンドを一気に格上げし、JUDAS PRIESTの後継者扱いしたくなるような音を出している。剛直なリフを軸にした純度100%の正統派HMサウンドは、ヘヴィ・メタル原理主義者の熱烈な支持を獲得した。個人的にはちょっとリフにせよ歌メロにせよキャッチーさが不足していると感じて物足りないのだが、恐らくトゥルー・メタラー諸兄にとっては「キャッチーさは悪」だと思われるのでこれでいいのだろう。実際聴き込めばちゃんとフックがあるのは私のようなメロディアス派の軟弱メタラーにも感じ取れるし。何はともあれ、JUDAS PRIESTにせよIRON MAIDENにせよ、ギター・ヒーロー・タイプのギタリストは擁しておらず、ヴィニー・ムーアを失ったことはこのバンドにとって大きな問題ではない。純度100%のピュア・メタル・アルバム。

VICIOUS RUMORS
SOLDIERS OF THE NIGHT
79
ソルジャーズ・オヴ・ザ・ナイト (1985)

ハワイ出身のジェフ・ソープ(G)が79年にアメリカ西海岸に渡り結成。メンバー・チェンジを重ねつつ、クラブ・ギグやオムニバスへの参加を重ね、1986年にマイク・ヴァーニーの「Shrapnel」からリリースしたファースト・アルバム。Voはかつてマーティ・フリードマンがハワイで組んでいたHAWAIIで歌っていたゲイリー・セント・ピアー。長い下積み期間を経てようやくリリースしたアルバムだが、これがいわくつきで、レーベル・オーナーだったマイク・ヴァーニーが、その後ポール・ギルバート、トニー・マカパインと共に「新・速弾き御三家」などと呼ばれることになる凄腕ギタリスト、ヴィニー・ムーアをデビューさせるために、当時セカンド・ギタリストを欠いていたこのバンドにヴィニーを押し込んだのだ。結果としてヴィニーはソロ・デビューのきっかけをつかむことになり、バンドは「ヴィニー・ムーアがいたバンド」という不本意な知名度を得ることになる。実際の所、本作最大の聴き所はヴィニー・ムーアのテクニカルなギター・ソロで、その点でRACER XやCACOPHONYに近い性質のサウンドである。しかし、歌詞テーマやアートワーク(酷くチープだが)、そして楽曲に込められたセンスは欧州のメタル・バンドに近いブリティッシュ直系の極めて正統的なもので、その手のファンであれば琴線に触れる要素に満ちている。サウンドは籠っているし、ヴォーカルも不安定だが、それがまたB級バンドならではの魅力を醸し出していると言えなくもない。

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