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U.D.O.
MASTERCUTOR
81
マスタークトー (2007)

U.D.O.のサウンドは、聴けば楽しめるのだが、やはりVoが苦手なタイプなので積極的に手が出ないということを素直に告白しておこう。そんな私が本作を聴いたのは、「レビューしてほしい」とサンプル盤をいただいたからで、こういうアーティストのサンプルをもらえるというのはレビューサイト運営冥利につきますね。というわけで早速聴いてみると、レビューショーめいたシアトリカルなイントロに意表を突かれるが、すぐにソリッドなリフ&メロディアスなリード、という非常に彼ららしいサウンドが飛び出してきて頬が緩む。#2、#3とソリッドなリフのHMチューンが立て続き、ドラマティックかつメランコリックな曲調が印象的な#4までは完璧。その後ヘヴィさに重点を置いた楽曲が続くが、インダストリアルな質感さえある#7ですら、ブリッジは非常にメロディアスで、フックは充分。ただ、後半もバラードの#8、ドラマティックなミドル・チューン#9と、出来は悪くないものの中盤に引き続きテンポ抑え目の楽曲が続くため、速い曲を求める人は物足りないかもしれない。ラストを飾る「Crash Bang Crash」がノリのいいR&Rチューンなので聴き終えた後味は決して悪くないが、前半に比べ、アルバム終盤にかけてややテンションが下がっていく感は否めない。とはいえ、再結成後のU.D.O.の水準には充分達しているアルバムだ。しかしオビには本作のタイトルを「マスタークトー」と表記しているのに、ブックレット内のタイトル曲は「マスターキューター」と表記しているのはナゼ?(笑)

U.D.O.
SOLID
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ソリッド (1997)

竜頭蛇尾ぎみに終わってしまったACCEPT再結成を経て、ウド・ダークシュナイダー(Vo)は己のバンドであるU.D.O.での活動を再度開始した。メンバーはACCEPTのドラマーであったステファン・カウフマンがGで参加、以前のU.D.O.のアルバムでもドラマーを務めていたステファン・シュヴァルツマンがDr、その他2名(笑)。要するに以前のU.D.O.の魅力の7割を担っていた(私見)マティアス・ディート(G)は不参加ということで、正直あまり期待していなかった。…が、なかなかどうして、悪くない。ギターの音作りや、一部のリフなどにモダンな90年代型メタルからの影響が感じられるが、随所にキャッチーなリフやリード・ギターのフレーズが利いていて、耳を引かれる。#8なんて最初ヤバい曲かと思ったが、サビ裏のリード・ギターのメロディで一気に引き込んでくるもんね。本作の作風を見事に象徴するアンセム#1「Independence Day」(ウドのVoがダメな人はこの曲が始まって5秒で停止ボタンを押すことでしょう:笑)から始まって、荘厳なムードがACCEPTの名曲「Princess Of The Dawn」を彷彿させる#11「The Healer」で終わる構成もいい。過去のU.D.O.、ましてや全盛期のACCEPTとも微妙に異なる音像ではあるが、なかなか楽しめる好盤。こうなると、やっぱ再結成ACCEPTがあれほどダメダメだったのはウルフ・ホフマンのせい、と断定せざるを得ないな(苦笑)。

U.D.O.
TIMEBOMB
86
タイムボム (1991)

アーティストが他のアーティストが生み出した作品に「インスパイアされる」ことは珍しいことではないが、これほどキャリアのあるミュージシャンのバンドがここまで露骨に特定のアルバムに刺激を受けたことを感じさせる作品を発表することは稀だろう。本作の影響元は間違いなく、当時隆盛を極めていたスラッシュ・メタルを意識して制作されたJUDAS PRIESTの名盤「PAINKILLER」であり、本作は「U.D.O.版PAINKILLER」といって差し支えない作風である。前作のメロディアス路線から180度転じ、飛躍的に鋭角的なアグレッションを増量したサウンドは刺激的であり、ウド・ダークシュナイダーというシンガー本来の資質を考えると、本作の方向性のほうがより適性がある。しかし、オープニングの序曲的#1に続く#2やタイトル曲#7を始め、このバンド史上最も強烈な楽曲を揃えた本作でさえ、バンド全体としてのポテンシャルゆえか、このバンドの音楽的キーマンであるマティアス・ディートというギタリストの資質ゆえか、その攻撃性、緊張感は「PAINKILLER」に及ばず、個人的な聴き所はアグレッションを増した楽曲の中、これまで同様メロディックに舞うマティアスのギター・ソロである。本作をU.D.O.の最高傑作とする声も多いが、この力作においても「Fast As A Shark」や「Metal Heart」クラスの「代表曲」を生み出せなかったことがこのバンドが(少なくとも日本において)HR/HM史に残る、といえる存在までランクアップできなかった原因だろう。

U.D.O
FACELESS WORLD
85
フェイスレス・ワールド (1990)

本作が発表された90年は、80年代に始まったヘヴィ・メタルのポップ化が頂点を極め、むしろスラッシュ・メタル勢の台頭に象徴される「ヘヴィ化」への揺り戻しが顕著となった時期である。元々ウド・ダークシュナイダー(Vo)はサウンドのポップ化を忌避してACCEPTから脱退したので、そのことは歓迎すべきことであったはずだが、なぜか本作で聴かれるサウンドはACCEPT時代を通しても最もキャッチーでメロディアスである。単に「時代の変化」に鈍感だったのか、ここに来てU.D.O.サウンドにプロデューサーとして深く関与するようになったステファン・カウフマン(元ACCEPTのDr)の影響か定かではないが、Keyサウンドやコーラスによって装飾された本作の音楽的方向性は、私のようなメロディ重視派の人間には聴きやすい作風である。マティアス・ディートのメロディックなギター・ワークもここぞとばかりに冴え渡っており、聴き所は多い(本作にはヴォラ・ボームなるもう一人のギタリストもクレジットされているが、レコーディングにはタッチしていない模様)。これがU.D.O.に求められる音楽性であるかどうかは別として、ウド自身が「U.D.O.史上最も音楽的」と評する、良質な作品である。ただ、本作のような作風であれば、もっとメロディアスに歌えるシンガーで聴いてみたくなるというのも本音。

U.D.O.
MEAN MACHINE
84
ミーン・マシーン (1988)

欧州で15万枚を売り上げるスマッシュ・ヒットとなった前作デビュー・アルバムは実質ACCEPTのメンバーによる作品だったため、新たなバンド、U.D.O.としての作品はこのアルバムからと言ってよい。前作で演奏していたメンバーのうち、引き続き本作でも演奏しているのは元SINNERのマティアス・ディート(G)のみで、他のメンバーは一新されている。マティアスと共にツイン・ギターの一翼を担うアンディ・スーゼミールも「元SINNER」という肩書を持っている。新Drのステファン・シュヴァルツマンは元RUNNING WILDである。この新生U.D.O.が、前作同様JUDAS PRIESTやANTHRAX、METAL CHURCHとの仕事で知られるマーク・ドッドソンをプロデューサーに迎えて生み出したサウンドは、ウドがこだわる「攻撃的だった頃のACCEPT」のスタイルをベースにしつつ、より繊細に作り込まれたシャープなヘヴィ・メタル・アルバムに仕上がっている。このサウンドのキーマンはマティアス・ディートで、彼のセンスフルなギターのアレンジが本質的にはシンプルでストレートなヘヴィ・メタルにフックを与え、決して売れ線に走ったわけではないにもかかわらず、楽曲の印象をキャッチーなものにしている。楽曲はやや小粒だが、「ACCEPTとは似て非なるU.D.O.サウンド」の基本型を築き上げた力作である。

U.D.O.
ANIMAL HOUSE
85
アニマル・ハウス (1987)

1987年6月、当時ドイツを代表するメタル・バンドであったACCEPTから看板シンガーのウド・ダークシュナイダーが脱退するというセンセーショナルなニュースが発表された。その際に発表された声明は「ウドは自分のバンドを結成して従来のACCEPTの音楽を引き継ぎ、残ったACCEPTのメンバーはより幅広い音楽性に挑戦する」という、妙に具体的なもので、その後発表された作品はまさにその通りとなった。ウドの抜けたACCEPTの発表した「EAT THE HEAT」は、「METAL HEART」辺りから顕著になってきたキャッチーさの目立つアルバムとなり、ウドが新たに結成したこのU.D.O.のデビュー作となる本作は、オールド・ファンがACCEPTと聞いて想像するソリッドなヘヴィ・メタル・サウンドが展開されている。どうしてここまで思惑通りに行ったか、答えは簡単で、作り手が同じだからである。本作に収録されている楽曲は元々「RUSSIAN ROULETTE」に続くアルバムのために作られたもので、いわば脱退するメンバーのために、元のバンド・メンバーが楽曲をプレゼントした、とでも言うべき一風変わった制作過程を踏んでいる。演奏は新たに集めたメンバーだが、76年頃に書かれたという古いマテリアルである#6に限っては演奏もACCEPTが手掛けている。全体的にACCEPTの近作よりも攻撃的な作風で(ビデオクリップが制作された#3「They Want War」は冷戦時代ならではの歌詞テーマも含め、ある意味キャッチーな曲だが)、「BALLS TO THE WALL」に続くACCEPTのアルバム、と言っても過言ではないメタリックな佳作である。

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