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TRIVIUM
VENGEANCE FALLS
83
ヴェンジャンス・フォールズ (2013)

米国へヴィ・ロック・シーンのトップ・バンドであるDISTURBEDのフロントマンであるデイヴィッド・ドレイマンのプロデュースによって制作された6枚目のアルバム。彼らはこれまで「らしさ」は貫きつつも、アルバムごとに制作テーマがかなり明確なアルバム作りをしてきたバンドだったが、本作で実現されているヘヴィさとメロディのバランスは、これまで彼らが試行錯誤してきた過程に対するひとつの答えといえるものではないか。マシュー・キイチ・ヒーフィー(Vo, G)の歌唱力に説得力が増していることも、この強靭でありながらメロディを大切にした路線における重要なポイントとなっている。デイヴッド・ドレイマン由来と思われるモダンな要素もスパイス程度に効かせつつ、あくまで骨太でストイックな「TRIVIUM流のメタル」が結実している。減点法的な意味でマイナスになる要素は特に見当たらず、ファンに歓迎されるであろう完成度の高い作品である。その一方で、新規のファンを獲得するには、その一種求道的なまでに「自らの音」を追求する真剣でストイックなアティテュードに愛想が足りないというか、敷居の高さを感じなくもない。まあ、これは「これぞ」というキラー・チューンが不在だからなのかもしれないが…。限定盤にはDANZIG/MISFITSのメドレー曲を含む3曲のボーナス・トラックが、日本盤にはさらにR.E.Mの名曲「Losing My Religion」のカヴァーを収録。

TRIVIUM
IN WAVES
81
イン・ウェイヴズ (2011)

オリジナル・メンバーだったトラヴィス・スミス(Dr)が脱退、新Drにニック・アウグストを迎えて制作された通算5作目のフル・アルバム。プロデューサーをエクストリーム・ミュージック界の第一人者といっていいだろうコリン・リチャードソンに変更したことが影響しているのか、これまでの作品に比べて大仰なツイン・リードさや複雑な展開を抑えたコンパクトかつソリッドな作風となっている。中心人物であるマット・キイチ・ヒーフィー(Vo, G)は「キャッチーさを意識した」と言っているが、それは主に歌メロのコーラス・パートに関しての発言と思われ、その時にエモっぽくさえ響くメロディックなパートは、私のようなメロディ重視派のリスナーにとって重要なフックになっている。そういう意味ではシンプルでモダンなリフ・ワークとメロディックなコーラスのコンビネーションという彼らが属するメタルコアというジャンルにおけるスタイルとしてはこれまで以上に洗練された仕上がりといえるのだが、個人的には少々物足りない。本作でもやや長めで展開豊かな「Caustic Are The Ties That Bind」や「Forsake Not A Dream」といった楽曲が魅力的に感じられることから考えても、例えちょっと野暮ったかろうとも起伏ある展開やドラマティックなツイン・リードこそが個人的にはこのバンドを他の凡百のメタルコアと差別化する重要な要素であったのではないかと思う。

TRIVIUM
SHOGUN
84
将軍 (2008)

新世代メタルの旗手としての評価も定着しつつあるTRIVIUMの、4作目となるフル・アルバムはまさかの日本語タイトル。とはいえ日本語パートはオープニングを飾る「Kirisute Gomen」のサビのみで、それも明らかにガイジンによるカタカナ日本語。言葉選びのセンスといい「フジヤマ、ハラキリ、ゲイシャ」の感覚を一歩も出ず、そういう意味では非常にアメリカンな一枚だ。内容はというと、前作のあからさまな80S'メタル風味は後退し、スクリームの復活に象徴される「揺り戻し」が行なわれている。しかし、単に過去の作風に回帰したわけではなく、ヘヴィなパートとメロディックなパートのコントラストはより強調され、大半の曲に哀愁混じりの印象的なメロディを(歌とギターの双方で)配してきたのは好印象。全体的に長尺になり複雑さを増した楽曲は、人によってはとっつきにくさを感じるかもしれないが、メタルの本質が構築美にあることを彼らが本能的に理解していることを示すものとして、個人的には好意的に受け止めた。どの曲もなかなか練られていて、ソングライティングの面での成長を示した力作と言えるのではなかろうか。その一方、前作・前々作にあったようなキメ曲の不在がエントリー層へのインパクトを弱めており、天下を統一するには本作はまだちょっと弱いかな、という気もしなくはない。

TRIVIUM
THE CRUSADE
85
ザ・クルセイド (2006)

前作がイギリスで10万枚を売り上げ、その他の地域でもスマッシュ・ヒットを記録したTRIVIUMのサード・アルバム。このバンドに対する評価と期待はセールス実績以上に高く、そのことは、昨年リリースされたロードランナー25周年アルバムの中心制作メンバーに、マット(Vo/G)が抜擢されていたことからも窺える。本作は、かねてよりハードコア的なスクリームを抑え、「歌」をフィーチュアした作品になるとアナウンスされており、事実その通りの作品となった。ジャケットもタイトルもあからさまに「メタル」で、よりジェイムズ・ヘットフィールド(METALLICA)を彷彿させるようになったVoによる明確な歌メロを中心に、リフもよりキャッチーに、楽曲自体もコンパクトに磨き上げられ、飛躍的に正統的なHR/HMとしての要素を強めている。「Anthem(We Are The Fire)」などはこの路線を代表する80年代HR/HM臭を強く感じさせる名曲で、今後ライヴのハイライトとなっていくことだろう。もちろんこの路線を「軟弱になった」として忌避する者もいるだろうが、クオリティの高さと、決して軟弱になってはいない「ムード」を考えれば、恐らく失うファンより新たに参入してくるファンの方が多いはずだ。個人的には北欧メロデス由来の「泣き」が控えめになったことが残念だが、「王道」を歩むバンドにとって過剰な「哀愁」は必要不可欠の要素ではあるまい。かつてのMETALLICAに匹敵する器を感じさせるオーラがまぶしい一枚。さて、タイトル通り現代の音楽シーンを突き動かす十字軍となるか。

TRIVIUM
ASCENDANCY
88
アセンダンシー (2005)

メタル・ファンであれば、厳粛なアコースティック・ギターのイントロで誰もがMETALLICAを想起するだろう。大手ROADRUNNERとの契約を得て発表されたこのセカンド・アルバムでは前作で感じられた青臭さ、B級感がほぼ払拭された大成長作となっている。大半の楽曲がブルータルなヴァースとメロディックなコーラス、というパターンで、1曲1曲のクオリティに申し分はない一方、アルバムを通して聴くとやや一本調子な感はある。しかし、もともとこの手の音楽を主食としない私がCDショップの店内演奏で耳にして思わず購入してしまうほどの煽情力を示す楽曲が数多く収録されており、そのフックはやはり並ではない。長いツイン・リードのギター・ソロと、それに続くOiOiパートが印象的な#6、今どき珍しいキャッチーな後追いコーラスが何とも染みる#7、全曲クリーン・ヴォーカルで通した哀愁の#8、緩急の付け方が絶妙な#11など、アルバムを占める同系の、決して平均点は低くない楽曲中にあっても決して埋もれない名曲が複数収録されており、バンドの高いポテンシャルを証明している。サウンドの醸し出すムードが初期のMETALLICAを彷彿させることもあり、次世代のメタル・シーンを担う存在としての期待を抱かせるに充分な一枚。

TRIVIUM
EMBER TO INFERNO
77
エンバー・トゥ・インフェルノ (2003)

アメリカから北欧メロディック・デス・メタルの影響を感じさせるバンドが続々と登場してきた時期に登場してきたバンドのひとつ。このTRIVIUMの日本における売り文句は、フロントマンであるマット・ヒーフィが山口県の岩国基地生まれで、しかも母親は日本人であるという事実だった。たしかに、叙情的なイントロの#1は妙に尻切れトンボだし、続く#2はSLAYERもどき。もしセカンドを先に聴いていなかったらこの時点でCDプレイヤーを停止させていたかもしれない。しかし、聴き進むと、オーセンティックなヘヴィ・メタルのファンがオッと思う意外なほど古典的なリフや、派手な速弾きが次々と登場し、なかなか飽きさせない。基本はデス声というか、常に咆哮しているフィル・アンセルモ(PANTERA)って感じのVoだが、所々で聴かれるメロディックなノーマル・ヴォイスによる歌唱はジェイムズ・ヘッドフィールド(METALLICA)に通じる艶があり、なかなか雰囲気がある。そのノーマル・ヴォイスによるコーラスや、リード・ギターのフレーズから滲み出るメロディ・センスは明らかに同系の「メタルコア」バンド群の中でもかなり優れた資質を感じさせ、他のSHADOWS FALLやGOD FORBIDのような「メタルコア」バンドに比べてハードコア/パンク色が薄い(音楽的には、ほぼ100%メタルだ)のも、私のような正統的なHR/HMを愛するリスナーには聴きやすくてよい。

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