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TALISMAN
7
84

セブン (2006)


状況は大きく動いた。ジェフ・スコット・ソートがなんとJOURNEYのヴォーカリストに抜擢され、さらにフレドリック・オーケソンがARCH ENEMYに加入。そんなニュースの後に発表された本作はラスト・アルバムになるのでは、という噂の元にリリースされ、結果としてはジェフやフレドリックの事情ではなく、マルセル・ヤコブの自殺という最悪の形でそれが現実となってしまった。しかし、最終作であるという感傷のフィルターを外して聴いても、本作はなかなかの好盤である。活気のあるロック・チューンである#1から、まるで歌謡曲のような歌メロの#2、彼ららしいブラック・ミュージックからの影響を巧みに消化した#3、ベース・ソロから始まるTALISMAN節というべき#4、U2にインスパイアされたというモダンでスケール感のある#5、爽快なパワー・ポップ・チューン#6と、うっかり全曲どんな曲か列挙してしまいそうなほどそれぞれキャラクターの立った佳曲揃い。全体的に歌メロがこれまでより格段にキャッチーで、サウンドもロックしているものの、HR/HM系のバンドには珍しくカッティングを多用したギター・ワークに象徴されるように洗練されており、彼らお得意のファンキーなリズムから、#10のようなレゲエのリズム(POLICEへのオマージュらしい)を取り入れた曲まで、バラエティに富んだカラフルなアレンジが、良い意味で日本のロック・バンドみたいな雑食性を感じさせて楽しめる。北欧っぽさは希薄だが、私は嫌いじゃないです、こういう音。

TALISMAN
CATS AND DOGS
80
キャッツ・アンド・ドッグス (2003)

HUMANIMALとしてライヴを行なった際に些細なことでマルセル・ヤコブ(B)と口論になったポントゥス・ノルグレン(G)と袂を分かち、フレドリック・オーケソン(G)を復帰させて発表された4年ぶりのアルバム。前年にはライヴ・アルバム「LIVE AT SWEDEN ROCK FESTIVAL」と、ジェフ・スコット・ソートのソロ・アルバム「PRISM」のリリースを挟んでいる。レーベルをセカンド「GENESIS」以降所属していた「Empire Records」から、新興のメロディアス・ハード系レーベルとして勢力を伸ばしていた「Frontiers Records」に移籍、日本のリリース元もキングレコードに変わっている。1曲目「Skin On Skin」を聴いたときには、「うわ、今回はずいぶんとファンク寄りになっちゃったな」と思ったが、それ以降は「LIFE」以降のTALISMANサウンドで、ひと安心。ハードな曲からポップ寄りの曲まで、曲調に幅はあるが、前作「TRUTH」ほど節操がないわけではなく、HR/HMの枠で語れる振り幅に収まっている。久々にギターとベースのソロの応酬が聴けるアグレッシヴな#5や、BLACK SABBATH風のヘヴィなリフがフィーチュアされた#11などが、前作に欠けていたHR/HMならではの力強さを感じさせてくれるものの、全体的にはやや中庸で、彼らの実力からするとちと地味な仕上がりである。

HUMANIMAL
HUMANIMAL
83
ヒューマニマル (2002)

Voがジェフ・スコット・ソート、Bがマルセル・ヤコブ、Gがポンタス・ノルグレン…Drこそトマス・ブローマン(GREAT KING RAT〜ELECTRIC BOYS〜AMAZE ME)ながら、こりゃどう見てもTALISMANでしょ、なぜ別名義で出すの? と思っていたら、本作は元々ポンタス主導のプロジェクトで、当初マルセルにだけ声をかけたものの、レコード会社からの要請でジェフをVoに迎えることになったそうで、結果としてTALISMANに限りなく近い形になってしまったという顛末だそう。しかし、伝統的なギター・ヒーロー・タイプのプレイヤーであるポンタスが主導権を握った結果か、曲を書いているのはTALISMANと同じジェフ&マルセルのコンビながら、近年のTALISMANにあったファンキーなフィーリングが抑えられてよりストレートなHR/HMサウンドに近づき、ひょっとするとTALISMANの近作よりも初期のTALISMANファンにアピールする内容になっているかもしれないのが皮肉。ポップな要素が控え目な分、パッと聴きの印象はやや地味だが、#2、#3、#7なんかはなかなかの佳曲だし、「Hello, Hello」という印象的な歌い出しで始まる翳りのある#4なんかもキャッチーで耳に残る。そして、TALISMANではその片鱗を覗かせる程度だったポンタス・ノルグレンが、ここぞとばかりに随所で超絶技巧を披露しているのも聴き所。派手さはないが、良質なHR/HM作だ。

TALISMAN
TRUTH
82
トゥルース (1998)

HUMAN CLAY名義の「U4IA」の時点でTALISMANの3/4がそろっていた訳だが、そこに元GREAT KING RATで、TALISMANのツアーに参加したこともあるポンタス・ノルグレン(G)が加入する形で、ここにTALISMAN名義の新作が発表された。ジェフ・スコット・ソートがBOOGIE KNIGHTSなるディスコ・ソウルのカヴァー・バンドで全米をツアーし、家が建つほど大儲けしていた関係でレコーディング・プロジェクトとしてのHUMAN CLAYでアルバム2枚分ほどの期間お茶を濁していたわけだが、やはりファンが待っていたのはTALISMANだ。しかしこの「復活作」がなかなかの実験作。アルバムの1曲目からQUEENの「Let Me Entertain You」のカヴァー曲、というだけでもかなり普通では考えられない構成だが、その他プリンスの#4「Darling Nikki」、マドンナの#10「Frozen」など、普通HR/HMバンドがカヴァーしないような曲を2曲も収録している。それ以外の曲も、アメリカンなポップ・フィーリング漂う#5、#8や、露骨にQUEENを思わせる#9など、異色の曲が多く、それぞれの楽曲のクオリティ自体は高いものの、いささか散漫な印象は拭えない。#3、#11のような前作「LIFE」の流れをくむ曲の出来もいいし、#12、#13など、初期を思わせる北欧っぽい翳りを帯びたHR/HMチューンは流石の出来だけに、ここまで手を広げなくてもよかったのではないか、という気もする。

HUMAN CLAY
U4IA
74
ユーフォリア (1997)

単発のプロジェクトかと思われたが、こうしてセカンドがリリースされた。今回ドラマーにTALISMANのドラマーだったジェイミー・ボーガーを迎えており、さらにTALISMANに近づいている。どうもTALISMANに関しては所属レーベルと上手く行っていなかったらしく、フレドリック・オーケソン(G)の脱退を機に別な活動の形を模索した結果がこのプロジェクトのようだ。そしてこの時期欧米ではHR/HMが商業的に最も厳しかったこともあり、このプロジェクトのアルバムは、建前上「TALISMANのファンキーな要素を持つサウンドではなく、より以前から影響を受けてきた伝統的なHRに近い音楽をプレイする」ということになっているが、ぶっちゃけて言えばそういう古典的なHR/HMを好む日本のマーケット向けに作った小遣い稼ぎの作品という面があるのだろう。RAINBOWをはじめとする先達バンドからの露骨なパクリも「オマージュ」として臆面もなく認めているあたりも、「オリジナルな音」を追求していたTALISMANに比べて「本気度」が低いことを露骨に感じさせてしまう。もちろんミュージシャンとしてのスキルの高い人たちによる作品であるからつまらなくはないのだが、「ジェフとマルセルが本気でやったら、こんなもんじゃないでしょ?」という気分になってしまうのが正直な所。

HUMAN CLAY
HUMAN CLAY
77
ヒューマン・クレイ (1996)

フレドリック・オーケソン(G)が脱退してしまったこと機に結成された、TALISMANの中心人物であるマルセル・ヤコブとジェフ・スコット・ソートによる新プロジェクト。マルセルによるとTALISMANではやれないことにトライするためのプロジェクト、とのことだが、日本では「TALISMANとの違いがわからん」という声が大勢を占め、実際このアルバムがTALISMAN名義で出たとしてもさして違和感はないだろう。確かに様式色の強い曲からKeyをフィーチュアしたハード・ポップ調の曲、ブルージーな曲まで楽曲の方向性に幅はあれど、最近のTALISMANのようなヘヴィさやファンキーな要素は控えめで、より正統的なHR/HM色が強く、ストレートにメロディアスである。ただ、TALISMAN以上に露骨な先達バンドからのパクリが目立つこと、マルセル自身によるギター・ワークがやや大味なこと、そしてDrが打ち込みで音質が悪いこともあって「やっつけ仕事」のように聴こえる感も無きにしも非ず。日本盤ボーナス・トラックの、マルセルがかつてジョン・ノーラムと共作し、ジョンのソロ・アルバムに収録されていた「Eternal Flame」のカヴァー#14にフレドリック・オーケソンが、そしてなんと#4にイングヴェイ・マルムスティーンがゲスト参加している。

TALISMAN
LIFE
85
ライフ (1995)

90年代において最もダサい音楽は? と訊かれれば、リアルタイムを体験した人間であれば十人が十人HR/HMと答えるだろう。そんな中、TALISMANは「イングヴェイのバンドの元メンバーによる北欧のバンド」という、当時トレンドなロックを聴いていた人間からすれば激ダサの極致にあるバンドながら、この時期最高に「ダサくないHR/HMサウンド」を出していたバンドであったことを証明する4thアルバム。前作に比べるとリフのヘヴィさは抑えられ、北欧のHR/HMに期待される哀愁味のあるキャッチーさを多少取り戻しつつ、ファンキーな要素がより強調されたアレンジは、HR/HM史上かなり稀有である。ここで表現されているファンクネスは、前作のようなオルタナティヴ系ミクスチャー・バンドに通じるものではなく、よりキャッチーでコマーシャルな黒人音楽のそれに近づいており、それを象徴するのがSEALのカヴァー#7「Crazy」と、ハウス風のアレンジを取り入れた#9「Body」だろう。この手の「黒い」楽曲を歌わせたらジェフ・スコット・ソートの右に出るHR/HMシンガーはなく(恐らくジェフには黒人の血が流れているはず)、R&B的な歌い回しをカッコいいと思えるキャパの広いHR/HMファンにとって本作の音はかなり新鮮な魅力があるのではないだろうか。TALISMANのオリジナリティを確立した力作である。海外盤はミックスと一部収録曲が異なる。


TALISMAN
HUMANIMAL
81
ヒューマニマル (1994)

前作発表後に来日公演が実現、その際Drをプレイしていたジェイミー・ボーガー(元TREAT)を正式メンバーに迎えて制作されたサード・アルバム。前2作は、多少サウンドは違えど、大枠では「元イングヴェイのバンドのメンバーによるバンド」というイメージを裏切ることのない作品だった。しかし、本作はその北欧らしい哀愁を帯びたメロディアス・ハードを期待していた私のような人間には、かなり厳しい作風である。当時流行していたモダンなヘヴィ・リフや、オルタナティヴ系ミクスチャー・ロックを思わせるアレンジなどが随所に顔を出し、前作、前々作にあった北欧ならではの哀愁はほとんど感じられない。発表当時クラスメートに本作を借りたのだが、#2「Humanimal」、#10「Blissful Garden」、#11「Lonely World」の3曲だけをダビングして返してしまった記憶がある。しかし、その後10年以上経ってあらためて聴き直してみると、本作におけるトレンドの消化の仕方はなかなか巧みで、同時期、やはりモダンなヘヴィネスやオルタナティヴに流されたHR/HMバンドとは一線を画している。このかなり微妙なバランス感を成立させたのは、黒人的な歌唱(ラップまで!)もソツなくこなしつつ、HR/HMらしい「熱さ」を失わないジェフ・スコット・ソートのVoによる所が大きい。個人的な琴線に触れる音とは言い難いが、ここまでオルタナティヴとHR/HMを上手く融合できたアルバムは稀だろう。

TALISMAN
GENESIS
86
ジェネシス (1993)

前作リリース後、アメリカ本国で活動していたEYESの活動に専念するため、ジェフ・スコット・ソートが脱退。元JAGGED EDGEのマッティ・アルフォンツェッティを新Voに迎え、Gには元ONE CENTのフレドリック・オーケソン、Drには前作発表に伴うツアーにも参加した元TOTEMのジェイク・サミュエルズというメンバーで91年後半にツアーを行ない、メジャーの「Warner Bros.」と契約してセカンド・アルバムの制作を進めた。しかし、「Warner Bros.」の担当者が人事異動でいなくなり、契約は消滅。マッティとジェイクはバンドを去った。結局「Dino Music」というインディ・レーベルと契約し、EYESでの活動に行き詰ったジェフが復帰して発表された2作目のアルバムが本作。基本的な音楽性は、大枠では前作と同じ「メロディアス・ハード」の枠内にあるものの、Keyによる装飾が抑えられ、よりヘヴィになったサウンド、そして、後にこのバンドの個性として認識されるようになる黒人音楽由来のグルーヴが若干ながら表出してきていることから、前作に比べて骨太になった印象。しかし、各曲に設けられたフックの巧みさ、リフとコーラスのキャッチーさは見事という他なく、個人的に初めて聴いた彼らの作品がこれであることもあって、実は本作が一番気に入っている。Drが打ち込みなのが難だが、リリース当時の私の耳にはこのかなりあからさまな打ち込みサウンドさえそれと気づかなかったのだから、だいぶ耳が鍛えられたのだな、という感慨もあります(笑)。

TALISMAN
TALISMAN
87
タリスマン (1990)

イングヴェイのバンドを脱退したマルセル・ヤコブ(B)が、自分の音楽を世に問うために結成したプロジェクトのデビュー作。後にはマルセルとジェフ・スコット・ソートのプロジェクト/バンドとして知られるTALISMANだが、Voは当初は元MADISONのヨラン・エドマンが想定されており、ヨランがイングヴェイのバンドに参加することになったため、イングヴェイのバンドにいた頃の僚友ジェフ・スコット・ソートを迎えることとなった。マルセル、ジェフを中心に、クリストファー・スタール(G)、マッツ・リンフォーシュ(G)、ピーター・ヘルマンソン(Dr:220VOLT)、マッツ・オラウソン(Key)というメンバーでレコーディングされた本作は、ポップでキャッチーなHR/HMが全盛だったこの時期ならではの作風で、非常にメロディアス。#1、#3、#5、#9あたりを筆頭に覚えやすいキャッチーなコーラスと、透明感のあるKeyアレンジが、北欧メロディアス・ハードの真骨頂を感じさせてくれる。元々はメジャーの「Elektra」からリリースされるはずだったが、同社がスウェーデンから撤退してしまったため、「Vinyl Magic」なる小さなインディ・レーベルからの発売になってしまったが、#3「I'll Be Waiting」はスウェーデンでスマッシュ・ヒットを記録。後に顔を出すグルーヴ志向は皆無のストレートなハード・ロック・サウンドであり、ほんのり漂う様式臭も魅力。当時日本盤はリリースされず、輸入盤マニアの間でしばらく「隠れた名盤」として語られていた。

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