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SONATA ARCTICA
PARIAH'S CHILD
82
パライアズ・チャイルド (2014)

オリジナル・メンバーだったマルコ・パシコスキ(B)が脱退し、ヘンリク・クリンゲンベリ(Key)が掛け持ちで在籍するSILENT VOICESのパシ・カウッピネンを後任に迎えて発表された通算8作目のスタジオ・フル・アルバム。コンパクトな楽曲を中心とした作風で賛否両論を醸した前作はそれでも母国フィンランドでは1位を獲得したが、そのリアクションに思う所があったのか、ロゴ・デザインを初期のものに戻し、アートワークもなんとなく初期を思わせるものにした上で、中心人物であるトニー・カッコ(Vo)「パワー・メタル寄りのアルバムだ」とアナウンスした上で発表された作品。そうなるとどうしても「原点回帰」を期待してしまうが、たしかに前作よりはパワー・メタル色を増しているとはいえ、初期の美しくも激しい北欧叙情系メロディック・パワー・メタル・サウンドはここにはない。しかし、疾走感のある曲からキャッチーな曲、バラード、ロックン・ロール風の曲から10分に及ぶ大作までバラエティに富んだ収録曲はどれもちゃんとフックがあり、天才メロディ・メーカー、トニー・カッコならではの豊饒なメロディ・ラインと、どんな曲調であれウエットに響かせる歌声がバンドの個性を明確に主張している。前作でも感じたが、プログレ度が控えめなほうがこのバンドの「らしさ」は素直に伝わるね。初期の姿に固執する人間には本作もダメだと思うが、もはやこのバンドはスタイルが変わろうとも揺るがない独自の世界を確立しており、それをどう受け止めるかはリスナー側に委ねられている。

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STONES GROW HER NAME
81
ストーンズ・グロウ・ハー・ネーム (2012)

思えば彼らは常にアルバムごとに作風を変えてきたバンドだった。哀愁系メロディック・パワー・メタルの理想郷とされる初期にせよ、アルバムごとの印象は結構違う。「UNIA」で本格的に「脱メロスピ」して以降、日本では殊更にその変化が取り沙汰されているが、「変化」は彼らにとって珍しいものではなく、本作もまた前作からの変化を明確に示すアルバムである。前々作、前作と続いてきたやや複雑に作り込まれた、時にプログレッシヴと形容される路線と比較すると、楽曲自体はかなりコンパクトかつシンプルになった。ヴァイオリンやトランペット、サックス、バンジョーといった多彩な楽器をフィーチュアした楽曲はこれまでになくカラフルで(特にバンジョーをフィーチュアした#8はかなり異色の曲だ)、ある種バンドの「遊び心」を感じる作品と言える。4th「RECKONING NIGHT」収録曲「Wildfire」の続編的な長尺曲#10、#11も、歌詞テーマはともかく、音楽的に当時に回帰するものではない(部分的にパワー・メタル的なパートは登場するが)。初期のファンの琴線に一番触れそうな楽曲は、かつてアリ・コイヴネンに提供した「Losing My Insanity」のリメイク#3という「過去の楽曲」。個人的には前作よりは彼ららしい印象的な哀愁の旋律の絶対量は増えたように感じられ、こういうストレートな方向性の方が彼らのメロディ・センスは発露しやすいのではないかと思われるが、お世辞にも初期の幻影を吹き飛ばすような力作、とは言えないのがもどかしい。

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THE DAYS OF GRAYS
80
ザ・デイズ・オヴ・グレイズ (2009)

どうやらトニー・カッコ(Vo)は脱メロディック・スピード・メタルどころか、類型的なHR/HMフォーマットからの脱却を目指しているのかもしれない。楽曲構成といい、ハーモニーの使い方といい、複雑を極めた前作「UNIA」に続く本作は、前作ほどの難解さは控えめになったものの、依然として初期からのファンが彼らに期待する音像とは距離のあるサウンドだ。ROYAL HUNTあたりを思わせる物悲しいイントロの#1から、NIGHTWISHを思わせるオーケストレーションが大胆にフィーチュアされた#2の流れが本作のシンフォニックな印象を決定づけており、かつてのようなイキのいいメロディック・パワー・メタル・チューンは#4(と、ボーナス・トラックの#13)くらいのもの。楽曲の輪郭が前作より明確になった分、多少わかりやすくはなったが、前作でも感じられたQUEENへの憧憬が滲み出た、DREAM THEATERのような技術志向のバンドとは異なる意味でのプログレッシヴ・メタル・サウンドが本作の骨子である。初期の彼らがSTRATOVARIUSのフォロワーに過ぎなかったとすれば、この変化は独自性の発現を示すものなのかもしれず、彼らの母国フィンランドではそこそこ有名な女性シンガー、ヨハンナ・クルケラやAPOCALYPTICAのメンバーがゲスト参加したことも功を奏したのか、アルバムとしてのメリハリは前作より優れているが、個人的には難解なりに胸締め付ける旋律は散見された前作以上に彼らに期待する要素=哀愁の不足に関する不満が大きかったことも事実。新加入のG、エリアス・ヴィルヤネンは新加入ということで遠慮したのか、あまり主張の強いプレイを聴かせてはくれない。

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UNIA
81
ウニア〜夢記(ゆめのしるし) (2007)

トニー・カッコ(Vo)は、メタルの作曲家としてはメロディ・メーカーとしての才能がありすぎるのかもしれない。これまでの作品同様、本作にも魅力的なメロディが随所に溢れている。ただ、それはヴォーカル・ラインのみで、本来メタルの生命線であるはずのリフのインパクトの無さは致命的と言えるほど。しかし、それでも実際売れているから、わざわざ今以上にリフを磨く必要性を彼ら自身はさほど感じていないことだろう。さらに言ってしまえば、最大の魅力である歌メロも、常に流麗ではあるが、コーラスのアレンジが複雑で盛り上がりに欠けるため、楽曲の構成が複雑なこともあいまって、どこがサビなのかハッキリしないことが多々ある。本作では楽曲構成やアレンジの面で挑戦的な試みが目立ち、本人たちはそのことをして成長と思っているようであるが、バックの演奏に芸がないために楽曲の輪郭が不明瞭で、メロディの質が変わらないため、聴き手の印象はどれも「いつものソナタ節」でしかない。メタルとしては極めて不完全燃焼な印象を与える作品だが、何度も聴くうちに彼らのメロディに常に存在するメランコリーに耽溺している自分を発見。そういう意味ではスルメ盤とはいえるかも。ちなみにタイトルはフィンランド語で「夢」を意味する単語だそうで、なぜ全編英語のアルバムにフィンランド語のタイトルを付けたかは不明。

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RECKONING NIGHT
84
レコニング・ナイト (2004)

このアルバムのガンは何と言っても#2「Blinded No More」。まるで「BEATLESに影響を受けたオルタナバンド」の楽曲のようにさえ聴こえるメランコリックでマッタリとしたこの曲が2曲目にあることで、作品の勢いや緊張感を大幅に削いでしまっている。この曲に限らず、本作では今まで呈示してきた類型から意図的に脱却を図るかのようなアレンジが随所に登場し、彼らが自ら世界を広げていこうとする意思が感じられ、#8「Wildfire」のようにそれが成功している例もあるが、今まで多くのクサメタラーたちを悶絶させてきた様式を超えるだけのものになってはいない。とはいえ、決して途絶えることのない流麗なメロディ=ソナタ節は本作にもしっかり息づいており、ファンであれば充分に楽しめる作品。ただ、今回はちょっと「一撃必殺のキメ曲」に欠けるかな…。むろん#1、#3、#7といった速い曲はどれも気持ちいいし、リーダー・トラックの#5「Don't Say A Word」もフックの効いた良い曲なんだけど…。本作よりレコーディングに参加したヘンリク・クリンゲンベリ(ex.REQUIEM)のプレイが今ひとつ地味で冴えないのもマイナスポイント。

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TAKATALVI
78
タカタルヴィ (2003)

タイトルは「春の合間の寒さ」、日本でいう「寒の戻り」を意味するフィンランド語。収められている楽曲が昔のマテリアルばかりで「呼び戻されたもの」であるところからこんなタイトルになったらしい。日本で高い人気を誇る「San Sebastian」のオリジナル・バージョンを収録したEP「SUCCESSOR」が生産中止になるということで、同曲をはじめとする「SUCCESSOR」収録のスタジオ音源に、これまで日本以外の国でのボーナス・トラックとして使われていた曲や、トリビュート・アルバムに収録されていた楽曲をプラスして制作された日本独自企画盤。「SUCCESSOR」が実質廃盤になるというのはやはりあのあまりにも未熟なライヴ音源をメンバーが恥じたのだろうか? それとも単にレコード会社の商魂か。ソナタ関連商品出しすぎです>AVALON。新たにプラスされた#2「The Gun」、#5「Dream Thieves」は正規のアルバムに収録されなかったのも納得の、彼ららしからぬ、メロディの弱い曲。そしてMETALLICAのカヴァーである#7「Fade To Black」は、割とオリジナルに忠実なカヴァーで、原曲が良いので当然悪くないが、さすがにオリジナルほどの説得力めいたものはなく、サラッと流れてしまう感じ。正直「SUCCESSOR」を既に所有している人が買うほどの曲は収録していないが、もしあなたが「SUCCESSOR」を持っていなければプラス5点で充分買う価値あり。

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WINTERHEART'S GUILD
87
ウインターハーツ・ギルド (2003)

こりゃまた、ずいぶん薄味になったなぁ、というのが一聴しての感想。アルバム全編、紛れもないソナタ節。結局アルバム1枚で脱退してしまったミッコ・ハルキン(Key)の穴は特に感じられない。しかし、このアルバムで聴かれるメロディからは、以前のような、忘れたくても忘れられない、心を掻きむしるようなパッションがほとんど感じられない。確かに常に美しいメロディは流れている。しかし、そのメロディはあまりに滑らか過ぎて、耳に引っかかりを残すことなく流れ去ってしまうのだ。演奏力やサウンド・プロダクションはさらに向上しているにもかかわらず、本作に対し今ひとつ満足しきれないのは、彼らの生命線であるメロディの淡白さに他ならない。とは言うものの、そのセンスは未だ並のバンドの追随を許すものではなく、全楽曲を通じて流れる透明感あふれる哀愁は、聴き手の心を切なさで満たすのに充分なレベル。中でも、本作からのファースト・シングルとなり、母国フィンランドのヒット・チャートで見事No.1を獲得した「Victoria's Secret」(ランジェリー・ブランドの名前だそう)は今年の切なさ大賞を与えたい出来栄え。まったくレビューの本筋とは関係ないが、#7「Champagne Bath」のキーボード・ソロで聴かれるメロディは「ファイナル・ファンタジーV」のどこかで聴いた覚えが…。

SONATA ARCTICA
SONGS IN SILENCE LIVE IN TOKYO 2001
76
ソングス・イン・サイレンス〔ライヴ・イン・トーキョー2001〕 (2002)

2001年に行なわれ、大盛況だったという彼らの初来日公演の模様をとらえたライヴ・アルバム。以前EP「SUCCESSOR」で暴露された稚拙なライヴ・パフォーマンスから見違えるように進歩している…っていうか、かなりいじられてるな、こりゃ(苦笑)。観客の歓声などはこの時期の日本独自のノリ(手拍子に合わせて「ハイ・ハイ・ハイ・ハイ」ってアレね)が収められていて、その点は非常にライヴっぽく、おそらく実際に足を運んだ人にとってはなかなか感慨深いものがあると思うのだが、演奏や歌唱に関してはかなり差し替えが行なわれていると思われる。そのため、楽曲がいいので楽しめることは間違いないのだが、ライヴ・アルバムとしての価値を判断するのはなかなか難しい。というわけで、点数は初回盤ボーナス・ディスクに収められている日本未発表曲で、個人的には購入動機の半分であった「Peacemaker」に対する点数です(邪道)。しかしこのジャケットは…「日本人はマンガやアニメが好き」という国際的な風評を真に受けたのか、あるいは誰かが「メロスピヲタ=アニヲタ」と関係者をそそのかしたのか(笑)、同人誌みたいなアートワークに激しく萎え。プレイ中数ヶ所に祖国の先輩STRATOVARIUSのフレーズが挿入されるのは微笑ましいけどね。

SONATA ARCTICA
ORIENTATION
71
オリエンテーション (2001)

来日記念盤としてリリースされたEP。EPらしいタイトルが付いてはいるが、実質は「SILENCE」収録の「Black Sheep」をリーダー・トラックとしたシングルだな、こりゃ。カップリングの「Mary-Lou」のアコースティック・バージョンはオリジナルに慣れた耳にはやや違和感がある。ベット・ミドラーのカヴァー(!)「The Wind Beneath My Wings(邦題:愛の翼)」は選曲に意外性はあるが出来は平凡。IRON MAIDENのトリビュート・アルバムに提供していた「Die With Your Boots On」はかなり大胆にアレンジされ、まるで彼らのオリジナルのようにも聴こえるため、賛否両論かも(個人的には結構好き)。エンハンスト仕様で「Wolf & Raven」のビデオ・クリップも観られるとはいえ、この程度の内容のCDが1,800円という決して安くはない値段でいけしゃあしゃあと売られているあたりにバンドの勢いを感じます。

SONATA ARCTICA
SILENCE
90
サイレンス (2001)

前作で見せた恐るべき才能の煌き、そして先行EP収録の「San Sebastian」における圧倒的な完成度によって、日本のメロスピ・マニアの期待が最高潮に達する中、満を持してリリースされたセカンド・アルバム。僕も発売日前日に(首都圏のCDショップでは新譜は大抵発売日の前日に入荷する)即買いしたクチです。期待感を煽るオープニング、そして閃光が弾けるかの如く始まる「Weballergy」。…ありゃ、明るい。前作では全編を覆っていた哀愁が感じられない、爽快に突き抜けるようなメロディック・スピード・メタル・チューン。ここで感じた違和感は結局最後まで続き、一聴し終えての感想は「垢抜けたなぁ〜」というものだった。この手の音楽において洗練は必ずしも褒め言葉ではない。この場合もそうで、正直、最初は肩透かしを食った思いだった。しかし、しばらく聴きこむうちに、やはりその並外れたメロディと作曲のセンスに感服、気付くと愛聴盤になっていた。今回も全く捨て曲なし。アルバムの大半を占めるスピード・チューンの快感度はもちろん、むしろミドル・テンポの「The End Of This Chapter」、バラードの「Tallulah」の染みることと言ったら、もう。前作と比して安定感を増したトニー・カッコのヴォーカルはかのジョーイ・テンペストを思わせる甘さを漂わせ、そのせいもあってか、もはや「パワー・メタル化したEUROPE」、と呼びたくなるほどのクオリティを感じさせる仕上がりである。とりあえず、メロディック・スピード・メタル初心者には最高のアルバムなんじゃないですかね。

SONATA ARCTICA
SUCCESSOR
78
サクセサー (2000)

BURRN! 誌のレビューにおける絶賛も追い風となり、まっさらの新人ヨーロピアン・メタル・バンドのデビュー・アルバムとしては異例の大成功を収めた彼らの企画盤。彼らが現在のスタイルになって初めて書いた曲であり、この曲のデモが彼らに契約をもたらしたという名曲「FullMoon」のシングル・エディット・バージョンがメイン・トラック扱いながら、このCDのハイライトは、新たなメロディック・スピード・メタルの教科書となりえる名曲「San Sebastian」だろう。この曲はまさに完璧。もう1曲の新曲「Shy」も女々しいまでの哀愁バラードで、なかなかの出来。カヴァー2曲のうち、SCORPIONSの名バラードをパワー・メタルに仕立てた「Still Loving You」はまずまず面白い。が、HELLOWEENのカヴァー「I Want Out」は妙に淡白で今ふたつ。問題は4曲収録されているライヴ・トラックなのだが、残念ながらモロにアマチュアレベルの演奏。正直ライヴを観る気が萎えてしまったが、まあ彼らはとても若いのでこれからでしょう。とりあえずファンは必携の企画盤。

SONATA ARCTICA
ECLIPTICA
95
エクリプティカ (2000)

衝撃だった。CDプレイヤーの再生ボタンを押すなり炸裂する美旋律と疾走感。それも並の美旋律じゃない。心をえぐられるような哀感と叙情。無闇に突っ走る、若さに任せた疾走感も半端じゃない。そんな悲愴美を撒き散らしつつ疾走する名曲「Blank File」が終わると、またもや心に染みる哀愁の旋律。あきれるほど贅沢なメロディ展開を見せる「My Land」。これまた名曲。続くはSTRATOVARIUSの高速チューンを思わせる「8th Commandment」。バラード風に始まる、哀愁のサビが印象的な「Replica」。パワー・メタル化した初期ROYAL HUNTの如き「Kingdom For A Heart」。そして、「らなうぇい♪らなうぇい♪らなうぇい♪」というリフレインがインパクト大の名曲「FullMoon」。物悲しいバラードの「Letter To Dana」、デビュー・シングルとなった「Unopened」、そして「Picturing The Past」と極上のメロディック・パワー・メタル・チューンが続き、本編ラストを飾るのは大作ながら緊張感を失わない「Destruction Preventer」。シングル「Unopened」のB面曲で、日本盤ボーナス・トラックの「Mary-Lou」も単なるオマケにとどまらない仕上がり。と、馬鹿みたいにただ収録曲をひとつひとつ列挙する以外レビューの方法が思いつかないほど、粒の揃った名曲揃い。そりゃ、スタイル的に母国の先輩STRATOVARIUSそのままじゃないか、とか、ヴォーカルのハイトーンが危なっかしいとか、ドラムがスクエア過ぎて表情に欠けるとか、ケチをつけようと思えばいくらでもできる。しかし、これだけ印象的なメロディと充実した楽曲が詰め込まれたアルバムは他になかなか思いつかない。本作発表当時のメンバーの平均年齢はなんと20.2歳。荒削りな部分を残しつつも、迸るような才能の煌きを感じさせるこのアルバムに、僕は絶賛の言葉を惜しまない。ジャケットの蒼い色がまたサウンドのイメージ通りなんだな、これが。

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