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SINNER
THE END OF SANCTUARY
82
ジ・エンド・オブ・サンクチュアリ (2000)

前作発表後、「RESPECT」以降の名曲に新曲を追加したベスト・アルバム「THE SECOND DACADE」をリリース。一般にHR/HM系のバンドというのはあまりベスト盤が売れないものだが、同作についてはバンド史上最高のセールスを記録し、しかもその大半がインターネット通販サイト大手eBayを通じて売れたという極めて特殊な例である。日本でもそれまで所属していたゼロ・コーポレーションが消滅したため、ビクター・エンタテインメントから発売されたキャリアを総括する2枚組ベスト・アルバム「EMERALD -THE VERY BEST OF SINNER」が好セールスを記録した状況で発表されたのが本作。ただ、「BOTTOM LINE」以降数年来安定していたラインナップに変化があり、片腕的な存在だったトム・ナウマン(G)が脱退、後任に元THUNDERHEADのヘニー・ウォルターが加入、そしてこれまた脱退したフリッツ・ランドウ(Dr)の穴を埋めるため、ウリ・カッシュ(HELLOWEEN)がゲスト扱いでドラムをプレイしている。前作に続き、「パワー・メタルなSINNER」が体現されており(ウリを起用したのもそういうことだろう)、相変わらず質は高い。しかし結局「質は高い」以上の評価に至らないんだよなあ、このバンド。やはりこのバンドがパッとしないのは、楽曲がちょっと地味なこともさることながら、マット・シナーという人の声に(上手い下手とは無関係の次元で)魅力が不足しているからなのではないかという気がしてならない。そういう意味でPRIMAL FEARの立ち位置の方がマット・シナーには向いているのではないだろうか。

SINNER
THE NATURE OF EVIL
83
ザ・ネイチュア・オヴ・イ―ヴル (1998)

マット・シナーが同郷の旧友であったラルフ・シーパース(Vo:元TYRAN PACE, GAMMA RAY)と組んだプロジェクトであるPRIMAL FEARがドイツのナショナル・チャートで48位を記録するというSINNER以上の成功を収めた状況でリリースされた11枚目のアルバム。PRIMAL FEARの成功、およびその追い風となったHAMMERFALLの成功に代表されるパワー・メタル・ブームの兆しを受けてか、前作以上にパワー・メタリックな感触を強めた作風となっている。ただ、欧州と日本では一部曲順と収録曲が異なっており、簡単に言えば欧州ではヘヴィな側面が強調され、日本ではメロディックな面が強調されているので、バンドの方向性については一概に言えない部分もあるが、メタリックなエッジが強化されていることは間違いなく、かといってメロディは疎かになるどころか、個人的には日本盤に関しては90年代以降の作品で最も充実していると感じられる。内容の充実もさることながら、DEEP PURPLEのヨーロッパ・ツアーでオープニング・アクトを務めたことや、当時急速に力を持ちつつあった音楽系ウェブサイトに積極的にバナー広告を出稿したことが功を奏し、本作は10万枚以上を売り上げてドイツのナショナル・チャートで63位まで上昇する、この時点で過去最高のセールスを記録した。

SINNER
JUDGEMENT DAY
82
ジャッジメント・デイ (1996)

MR.BIGやSAVATAGEの前座として欧州を回った前作のツアーの模様を収めたバンド初のライブ・アルバム「IN THE LINE OF FIRE」を挟んでリリースされた通算10作目となるスタジオ・アルバム。前作の流れを受けつぎ、彼らのアグレッシブかつヘヴィな面が打ち出された作風に仕上がっている。JUDAS PRIESTばりのカッコいい序曲#1で幕を開け、攻撃的なリフが刻まれるアップテンポの#2への流れ、続くヘヴィなリフが印象的な#3からスピード・チューンである#4の流れなど、もはやパワー・メタル的である。もちろんSINNERならではの哀愁を帯びたメロディのセンスも充分に発揮されており、そういう見地から見て9分近いドラマティックな大作であるタイトル曲#5は出色の出来。後半は彼らの骨太な面が強調されている。ミックスにキース・オルセンを起用し、レコーディングに一部LAのスタジオが使われていることが功を奏したのか、サウンド・プロダクションが向上している。これまでの作品では個別に作詞・作曲がクレジットされていたが、今回アルバム全体で「シナ―/ナウマン/バイロット」名義になっており、その辺りにもバンドとしての一体感が生まれてきたことを感じさせられる。バック・コーラスに元GAMMA RAYのラルフ・シーパースが参加しているのはPRIMAL FEARへの伏線か。

SINNER
BOTTOM LINE
81
ボトム・ライン (1995)

前作「RESPECT」発表後、ドラムが元VICTORYのフリッツ・ランドウに交代、渡米していたアレックス・バイロットも戻ってきている。前作がハード・ロックとヘヴィ・メタルのちょうど中間あたりの音像を狙ったものであったのに対し、本作ではかなり「メタル」への回帰というか接点を強めており、全体的に前作よりメタリックでアグレッシブな一枚。特に#2などに顕著だが、「ヘヴィさ」という一点においては、これまでのカタログでナンバーワンかもしれない。とはいえ、90年代的という意味でのモダンなヘヴィネスとは無縁で、あくまでリフ・ワークやバンド・サウンドの勢い的な意味合いであり、前作の延長線上にある骨太な正統派HR/HMであることは間違いない。前作の欧州ツアーを当時日本で大人気だったMR.BIGと一緒に回ったことが縁で、エリック・マーティン(MR.BIG)が85年に書いた「I Can't Stop Fire」を収録しているが、その曲の「80年代っぽさ」が浮いているあたりも含めて、前作までのキャッチーさから脱却しつつある、過渡期的な一枚と言えるかもしれない。ブックレットにはエリック・マーティンからのメッセージが記載されており、そのことも寄与してか、本作は日本のオリコン・チャートに5週間に渡ってチャート・インするロングセラーを記録した。日本盤ボーナス・トラックがマット・シナーのボイス・メッセージというのは果てしなく微妙だが…。

SINNER
RESPECT
79
リスペクト (1993)

アンディ・ズゼミール(G)が脱退し、トム・ナウマン(G)がメイン・ギタリストを務める4人編成でリリースされた通算8作目。前作がSINNERとしては異色なまでにアメリカンな手触りの作風だったため、本作は「原点回帰」と受け止められたが、やや哀愁は戻ってきているとはいえ、要所要所にKeyがフィーチュアされた、コンパクトかつアメリカンなキャッチーさをまとった楽曲が中心の本作は、メタリックとは言い難く、前作同様「一般受け」を狙って作られていると思われる(もっとも、キャッチーなHR/HMが一般受けする時代は本作が発表された時点では既に終わっていたが…)。個々の楽曲を見ると、どの曲もそれなりに練られていて、サビのコーラスやリード・ギターのフレーズなど、フックはちゃんと備わっているが、タイトル曲を筆頭にミドルテンポの楽曲が大半を占めており、しかも日本盤はボーナス・トラックが2曲あって全15曲と、曲数がかなり多めなこともあって、聴き終えた後の印象としてはいささか冗長かつ地味である。#6「Beds Are Burning」はMIDNIGHT OILのカヴァー、#12「Knife In My Heart」は「DANGEROUS CHARM」収録のスマッシュ・ヒット・シングルのリメイクで、こういった楽曲の収録もやや「売れ線狙い」を感じなくもない。

SINNER
NO MORE ALIBIS
78
ノー・モア・アリバイズ (1992)

マット・シナーのソロ・アルバム名義だった「Back To The Bullet」の参加メンバーでライブをやることになった時、それが「再結成SINNER」になるのは自然な流れだった。ただ、当時アレックス・バイロットは元ROUGH CUTTのヴォーカリストだったポール・ショーティノのバンドに招聘されて渡米したため、かつて在籍していたアンディ・ズゼミールを再び呼び戻して制作されている。マット・シナーのソロがなかなか良かったので、基本的にその時のメンツを継承している本作もきっと良いはず、と思って聴くと肩透かし。当時『BURRN!』誌でもやや酷評されていた記憶があるが、これはちょっとSINNERというバンドに求めるものとは違うサウンドだ。これまでに比べてマット以外のメンバーの作曲への関与が増えたことが影響しているのか、欧州正統派HR/HMの文脈から外れた、(当時の感覚では)アメリカンな感触の楽曲が多い。本作のプロデューサーであるアルミン・サボールなる人物が一人で書いた#9なんてファンキーでさえある。まあ、この方向性を「メジャー感がある」と好意的に解釈したとしても、メロディに哀愁が乏しいのは個人的には大きなマイナス。「Burning Heart」や「Chasing My Dreams」のような哀愁系メロディアス・ハード寄りの曲はまあまあ良いんだけど…。バック・コーラスにラルフ・シーパース(GAMMA RAY)とマイケル・フレクシグ(ZENO)が参加していて地味に豪華。

MAT SINNER
BACK TO THE BULLET
81
バック・トゥ・ザ・バレット (1990)

バンドSINNERが活動停止直前に、U.D.O加入のために脱退したアンディ・ズゼミールの後任として加入したトム・ナウマン(G)とスタジオに入って制作されたマット・シナーのソロ・アルバム。トム・ナウマン以外のメンバーとしては、その後マットと長い付き合いになるアレックス・バイロット(G)の他、トミー・ガイガー(B)、トミー・レッシュ(Dr)が参加しており(一部、SINNERのドラマーだったバーニー・ヴァン・ダー・グラフもプレイしている)、マット・シナーはVoに専念している。ソロ・アルバム名義とはいえ、元々SINNERはマット・シナーのバンドであっただけに方向性に大きな変化はなく、本作で展開されているのは正統的かつメロディックなHR/HMサウンドである。解散前のアルバムのような、(出来は悪くなかったとはいえ)コマーシャルな雰囲気は払拭され、マット・シナーが本当にやりたかったのはやはりこういう正統的なHR/HMなのだとわかって安心させられる。ゲストKey奏者の名前も2名ほど見受けられるが、Keyの存在感は薄く、あくまでも骨太でソリッドなヘヴィ・メタル・アルバムに仕上がっており、それでいてフックに富んだメロディが、既にメタル職人としての熟練の技を感じさせる。#5「Crazy Horses」は後にPRETTY MAIDSもカヴァーしたTHE OSMONDSの曲。

SINNER
DANGEROUS CHARM
81
デンジャラス・チャーム (1987)

本作制作中にマティアス・ディートがU.D.Oに誘われて脱退、後任にアーミン・ミュッケを迎えて発表されたアルバム。前作時点でかなりコマーシャルな雰囲気を醸し出すようになっていたSINNERだが、本作はその路線を押し進めたアルバムと言えるだろう。オープニング・ナンバーの「Concrete Jungle」はタイトル通り都会的なイメージを狙ったのか、当時流行していたシンセ・ギター、シンセ・ベース、シンセ・ドラムを駆使した人工的で、良く言えば「洗練された」キャッチーな楽曲。ここまでゴージャスでキラキラした楽曲はそれほど多くないが、どの曲も覚えやすいコーラスがフィーチュアされ、ポップと言えるほどにキャッチーな感触が強調されており、スピード・ナンバーの#6、泣きのインスト#10を除くと、彼らのルーツである正統的なブリティッシュHR/HMの面影は薄い。とはいえ、後年『Frontiers Records』のお抱えソングライターとして活躍するマット・シナーだけに、ハード・ポップ的なサウンドのソングライターとしても優秀で、過去の姿にこだわらず、先入観なしで聴けば80年代らしいキャッチーなアルバムとして楽しめるはず。ただ、実際の所本作の方向性はレコード会社に「強いられた」ものだったようで、レーベルとの関係も悪化し、マットにとっては辛い時期だったようだ。その後、アンディ・ズゼミールの脱退もあってバンドは活動停止状態となり、マットはソロ・アルバムの制作に着手する。


SINNER
COMIN' OUT FIGHTING
82
カミン・アウト・ファイティング (1986)

前作のツアー中にツイン・ギターを総入れ替えし、元MAD MAXのエンジェル・シュライファーと、元GRAVESTONEのマティアス・ディートという、マット・シナー自身「最も充実していた」と認めるラインナップが実現するが、その後エンジェル・シュライファーがPRETTY MAIDSからの加入要請を受け、SINNERに対する『Noise』レーベルのサポートに不満を持っていたこともあり脱退、後任にアンディ・ズゼミールが加入して完成したアルバム。プロデューサーに大御所クリス・タンガリーディス、ゲスト・キーボーディストにドン・エイリー(元RAINBOW, OZZY OSBOURNE他)を迎えて制作されている。これまでのSINNERにはない、明るい感触のシンセ・サウンドがフィーチュアされた、「80年代の売れ線」然としたオープニング・ナンバー#1「Hypnotized」に驚かされ、#5にビリー・アイドルの大ヒット曲「Rebel Yell」が収録されていることなども含め、これまでよりも商業的な成功を意識したアルバムであることは間違いないだろう。とはいえ、全体で見ればこれまでの正統的HR/HM路線を大きく外れているわけではなく、Keyのフィーチュア度こそ上がっているものの、さらに歌唱力を増したマット・シナー(Vo, B)のヴォーカルも含め、これまで以上にメロディ面が充実したアルバム、という好意的な見方も可能だろう。実際、80年代ならではのポップな感触が若干鼻につくことを許容してしまえば、楽曲のクオリティは前作以上とさえ言えるかも。

SINNER
TOUCH OF SIN
81
タッチ・オブ・シン (1985)

前作からメンバー・チェンジがあり、元ACCEPTのハーマン・フランク(G)と、元VICTORYのバーニー・ヴァン・ダー・グラフが加入。ハーマンの加入が影響したのか、基本的には前作の流れを汲む正統的なHR/HMサウンドながら、#5や#7のように時折祖国の先輩ACCEPTを思わせるソリッドな雄々しさを感じさせるパートが増えていると感じる。#6のように、ツイン・リードを活かしたスピード・メタル・ナンバーもキマっており、楽曲のバラエティ、クオリティ共に前作からの確実な進歩を感じさせられる。マット・シナーのヴォーカルも表現力を増しており、全体的にパワー・メタル色が増しているにもかかわらず、前作よりもメロディックな印象を高めることに成功している。メロディ面に関しては次作の方が充実しているが、JUDAS PRIESTの楽曲名から取ったバンド名のイメージや、マット・シナーという人物のフロントマンとしての資質から考えると、本作の路線こそがこのバンドの本質にマッチしていると言えよう。「メタル・バンド」としてのSINNERの初期の傑作であり、代表作に推す声も小さくないアルバムである。

SINNER
DANGER ZONE
78
デンジャー・ゾーン (1984)

本作以前に「WILD 'N' EVIL」と「FAST DECISION」というアルバムがリリースされているが、それらはマット・シナー(Vo, B)に言わせれば「デモ・テープをレーベルが勝手にリリースした」という代物で、正式なアルバムとは認めたくないらしく(実際、曲は良いがサウンド・プロダクションやジャケットのアートワークはチープ極まりない)、本作がSINNERの「正式な」ファースト・アルバムである。ほぼ「同期」と言っていいHELLOWEENやRUNNING WILD、GRAVE DIGGERなどに比べるとアンダーグラウンドな臭いが薄く、彼らのようなNWOBHM直系というよりは、もう少し王道なブリティッシュHR/HMからの影響が強く、時にアメリカンなテイストも滲ませるあたりは、他の「ジャーマン・メタル」バンドとは一線を画していたといえよう。楽曲そのもののコード進行は至ってメロディアスだが、マット・シナーによる男臭いダミ声気味のヴォーカルが丁寧にメロディを歌い上げるというタイプではないため、あまりメロディックな印象は薄いかもしれない。ただ、逆にそのことでメタル・バンドらしい「男らしい」イメージがキープされているとも言える。ギター・リフを大切したそのサウンドはややB級ながらも正統派HR/HMファンであれば評価できるクオリティをこの時点で実現している。

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