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SILENT FORCE
RISING FROM ASHES
85
ライジング・フロム・アッシェズ (2013)

前作リリース後、中心人物であるアレックス・バイロット(G)は、VOODOO CIRCLEで3枚のアルバムをリリースしており、SILENT FORCEについては自然消滅かと思われたが、7年ぶりの新作が届けられた。ただ、メンバーはガラッと変わっており、BはVOODOO CIRCLEやSINNER、PRIMAL FEARなどでも活動を共にする盟友マット・シナー、VoにはJADED HEARTやユルゲン・ブラックモアとの活動で知られるマイケル・ボーマン、KeyにはEDGE OF FOREVERやEDEN'S CURSEでも活動するアレッサンドロ・デル・ヴェッキオが迎えられている。オーセンティックなHRを指向するVOODOO CIRCLEに対して、SILENT FORCEはメタリックな音楽をプレイするプロジェクトと位置付けられていると思われ、本作では『BURRN!』で評価されやすい「様式美に満ちた正統的な」ヘヴィ・メタルが全編に渡って展開されている。中音域はマイルドなD.C.クーパーから、ハスキーな熱唱型のシンガーに代わったことでやや印象は変わったものの、相変わらずフックに満ちた楽曲が揃っており(特に新Keyの貢献は大きい)、やや実験的な側面があった前作よりも保守的なHR/HMファンに好まれる作風だろう。いささか「ありがち」という側面もあるが、クオリティは非常に高い。

SILENT FORCE
WALK THE EARTH
83
ウォーク・ジ・アース (2007)

特に目立ったセールス実績のない欧州のメタル・バンドとしては珍しい、BURRN!誌におけるクロスレビュー(それもトップ!)扱いを獲得した4作目。まあ、その理由の7割はVoが元「編集長の好きな」ROYAL HUNTのD.C.クーパーであり、残りの2割はGがこれまた元「編集長の好きな」SINNERのアレックス・バイロットだからではないかと思うが、残りの1割の理由である「楽曲・演奏ともに高いレベルで安定した優れたバンドだから」という要素は本作でも当然変わっていない。ただ、前作・前々作における好評の要因だったメロディック・パワー・メタル色は今回かなり減退しており、広い意味でのHR/HMをプレイしている本作は、私のような根っからのメタル者には少々地味。往々にしてメタル・バンドが音楽性の幅を広げると散漫だったり地味だったりするのだが、このバンドもまたその弊から完全に逃れられたとは言いがたい。ただ、北欧色の強い#6や、ゴシック風の#7、DISTURBEDなどを思わせるモダンなヘヴィ・リフを聴かせる#9、ハード・ポップ風のKeyアレンジとコーラスが耳を引く#10と、楽曲自体の質はやはり高く、聴き込むほどに味は出る。ただ、#5や#12のような従来路線のメロディック・パワー・メタル的な曲を1曲目に持ってきた方がファンには届きやすかったかもね。

SILENT FORCE
WORLDS APART
85
ワールズ・アパート (2004)

前作の充実ぶりが好印象だったSILENT FORCEの3作目となるアルバム。冒頭の「たのしいひなまつり」のフレーズは日本人であれば失笑モノだが、きっと欧米の人間にとってはメタルでよく使われる中近東風のフレーズ同様「エキゾチックなフレーズ」でしかないのかも。本作も前作同様D.C.クーパーの安定感に満ちたVoを中心とした高品質のメロディック・パワー・メタルを展開しており、安心して聴けるアルバムに仕上がっている。つい一緒に歌いたくなってしまうサビを備えた#1「Ride The Storm」から切れ味鋭いリフがリードする#2「No One Lives Forever」の流れでツカミはバッチリ。他にも#4、#6、#7、#10、#11、#12とパワフルかつメロディックな楽曲が揃っていて、楽曲の充実度からいえばプラス2、3点はつけてもいいくらいなのだが、#7「Death Comes In Disguise」や#11「Heart Attack」における唐突なクラシック有名曲のフレーズ挿入が個人的にどうにも受け付けないのよね…。まあこれは聴き手のデリカシーの問題だから気にならない人は気にならないのかもしれないけど。バラード(#9「Spread Your Wings」)の冒頭に自分の子供の声を入れるような親馬鹿っぷりも個人的にはちょっと…。

SILENT FORCE
INFATUATOR
87
インファチュエイター (2001)

元SINNERのアレックス・バイロット(G)と元ROYAL HUNTのD.C.クーパーによるプロジェクト(バンド?)の2作目。前作のツアーを一緒に回ったSTRATOVARIUSに感化された結果、クラシカルでメロディックなパワー・メタルに路線を変更し、前作よりメロディック・パワー・メタル色の強い仕上がりになっている。やや安易な方向転換という感はあるものの、結果的には大成功で、#4「Promised Land」や、#6「We Must Use The Power」などはいわゆるメロスピ・ファンを悶絶させるに充分な威力を備えた強力な疾走チューン。とはいえ、全体的にはメロスピと言うよりもJUDAS PRIESTを思わせるソリッドな正統派HM魂に満ちたアルバムで、それは「Electric Eye?」な#2や「Painkiller?」なタイトル曲に顕著だし、何よりもJUDAS PRIESTのカヴァーである「All Guns Blazing」の存在がその方向性を雄弁に物語っている。中盤に配された組曲「Trilogy」も大ヒットした映画「グラディエーター」にインスパイアされたドラマティックな仕上がりで、中でもギター・ソロ前の「ヘイ!シーザー!」というシアトリカルなブレイクがたまらなくカッコいい「Gladiator」は白眉。ちなみに日本盤ボーナス・トラックの「Pain」はこの組曲のストーリーを構成する一環で(曲順もそうなっている)、日本人だけがこの組曲をフル・バージョンで聴けるというのも嬉しいじゃありませんか。女声ヴォーカルもフィーチュアしたD.C.18番の叙情的なバラード#14「In Your Arms」から泣きのアコースティック・インスト#15「Northern Lights」に流れて締めるアルバム構成も心憎い。充実の一枚です。オススメ!

SILENT FORCE
EMPIRE OF THE FUTURE
78
エンパイア・オブ・ザ・フューチャー (2000)

ROYAL HUNTを解雇されたD.C.クーパー(Vo)が、SINNERのギタリストであるアレックス・バイロットと結成したバンド(プロジェクト?)のデビュー・アルバム。そのサウンドは正統的なヘヴィ・メタルで、楽曲は手堅くまとまっている。D.C.の歌唱はもちろん、その他の演奏陣もなかなか達者だし、keyやコーラスを巧みに使用したアレンジや、サウンド・プロダクションのクオリティも高い。そういう意味では、スペック的には特にケチをつけたくなるような部分は見当たらない高品質な作品といえる。しかし、アルバムを聴き終えたときになぜか今ひとつ高ぶるものがないというのもまた事実。「サイレント・フォース」なんていうベタなバンド名といい、よく見るとチープだがメタル・ファンの感性のツボは外していないジャケットのデザインといい、なんか「ありがち」なんだよな。クオリティの高低を問わなければ、ヨーロッパにはこういうバンドが掃いて捨てるほどいそう、っていうか。まあ、一番の問題は何より、歌メロが煮え切らないことだな。D.C.クーパーの芝居がかったステージ・アクションはもっと劇的で抑揚のあるメロディの楽曲でこそ映えると思うよ。率直に言うと、PRIMAL FEARの1stでラルフ・シーパースの歌を聴いたときのような軽い不満を覚えてしまった。なんでも彼らのHPにはこのアルバムで語られているストーリーの「完全版」があるとか。僕はあまり興味ないけど(苦笑)。

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