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SHAMAN
ORIGINS
84

オリジンズ (2010)


正直前作は、リカルド・コンフェソーリ(Dr)がアンドレ・マトスに一人だけ置いてけぼりにされたことに対する当てつけで制作されたような印象を持っていたので、リカルドがANGRAに復帰することになってなお、こうして新作がリリースされたのは意外だった。当初はEPの制作を考えていたようだが、CDパッケージの売上の落ち込みがあまりにも急激に進んでいたため、フル・アルバムの制作へ方針を変更、しかも当初予定していなかったコンセプト・アルバムに仕立て上げていくというちょっと変わった制作過程をとっている。テーマはシベリアの部族に生まれ、史上初のシャーマン(呪術師)となる少年の人生で、なぜブラジル人である彼らがシベリアにテーマを求めたのかは謎。舞台がシベリアといっても別に音楽的にシベリア的(って何だ?)な訳ではなく、基本的には前作の流れを組むメロディック・パワー・メタルで、所々ちりばめられている民俗音楽的な要素もこれまで通り南米由来のものである。ただ、本作ではこれまで以上にアグレッシヴかつプログレッシヴな要素が強調されており、前作以上に緊張感に満ちたサウンドに仕上がっている。この作風に合わせたのか、ティアゴ・ビアンキ(Vo)が、ときにラッセル・アレン(SYMPHONY X)を思わせる荒々しい歌い回しを聴かせているのだが、これはかえって声の細さが露呈してしまっていただけない。しかし、全体的にはANGRAのような音楽が好きな人ならかなり満足できるであろう高品質な作品。日本盤ボーナス・トラックはXの名曲「紅」の日本語カバーで、ガイジン訛り丸出しながら、かなりオリジナルに忠実なアレンジ。

SHAMAN
IMMORTAL
83
イモータル (2007)

「あ…ありのままに今起こったことを話すぜ!『気がつくと、俺以外のメンバーは違うバンドを組んでいた』。な…何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった…(以下略)」。音楽性に関する意見の対立が原因で、バンドの中心人物と思われていたアンドレ・マトス(Vo)が脱退、ANDRE MATOSというソロ形式のバンドをスタートすることになった。対立していたリカルド・コンフェソーリ(Dr)を除くメンバーもアンドレに付いて行ったため、リカルドは一人取り残されることに。しかし、なぜかバンドの名義はリカルドが持っていたらしく、リカルドは新たなメンバーを集めてSHAMAN(商標上の問題がクリアされ、SHAAMANから元に戻った)を続行。SHAMANはブラジルでは商業的に成功していたので、そのブランドを生かそうとしたのかもしれないが、「不滅」というアルバム・タイトルといい、デビュー作のジャケットに描かれていた人物が亡霊化したかのようなジャケットといい、何となくアンドレへの当てこすりのような後ろ向きなムードがあって、あまりいい感じはしなかった。が、聴いてみるとこれがなかなかに良い。新たに迎えられたディエゴ・ビアンキ(ANGRAのB、フェリペ・アンドレオーリのバンドKARMAのVoでもある)の、エドゥ・ファラスキ(Vo:ANGRA)を思わせる力強いハイトーンを中心に、骨太なメロディック・パワー・メタルを展開。エドゥのいる新生ANGRAがシリアスさとヘヴィさを増したかのようなサウンドはかなり聴き応えがある。やや派手さに欠ける部分もあるが、ANGRAに続く見事な「再生」で、ブラジルのメタル・シーンの層の厚さを感じさせられた一作。

SHAAMAN
REASON
80
リーズン (2005)

デビュー・アルバム「RITUAL」発表後、「RITUALIVE」と題した、ANGRA時代に叶わなかったライヴ・アルバムのリリースを挟み、発表されたセカンド・アルバム。新生ANGRAの大成功は、自らの存在価値を否定されるような出来事であり、正直アンドレにとって決して面白いことではなかったに違いない。かたやこのSHAMANは、同名のバンドが既にバンド名を商標登録していたとかで「SHAAMAN」というなんだか間の抜けたバンド名への改名を余儀なくされるなど、順風満帆とは言い難い状況で、本作はそんな状況が反映されたのでは…と邪推したくなるダークな作品に仕上がっている。1曲目「Turn Away」から「えっ、これがアンドレの曲?」と驚いてしまうようなヘヴィなギターを中心としたアグレッシヴな(と言っても決してアメリカのヘヴィ・ロック的なものではない)楽曲が登場。その後は時にゴシック・メタル的な感触さえ覚えるメランコリックな楽曲が大半を占め、あまつさえゴシック・ロックの大御所、SISTERS OF MERCYの「More」のカバー#3まで収録している。個人的に本作で表現されている感情、世界観に関しては特に抵抗ないというか、むしろ共感を覚えるくらいであるし、楽曲のクオリティ自体も高いのだが、これがアンドレに求められている音楽か、と問われると、甚だ疑問であると言わざるを得ない。まあ、リスナーの期待に応えるばかりが正しいこととは限らないけど、ゴシックやメランコリーはラテン人に似合わない(って偏見?)。

SHAMAN
RITUAL
85
リチュアル (2002)

ANGRAを脱退したアンドレ・マトス(Vo, Key)が結成した新バンドのデビュー作。他のメンバーは、ANGRAのメンバーだったルイス・マリウッティ(B)とリカルド・コンフェソーリ(Dr)に、ルイスの実弟で、アンドレの兄弟とバンドをやっていた(!)というヒューゴ・マリウッティ(G)。音楽的にはクラシカルかつシンフォニックな要素と、ラテン音楽の要素を導入したパワー・メタル・サウンドで、ANGRAからの連続性が強い、ほぼ期待通りのサウンドに仕上がっている。強いて言えばケーナ(アンデスの民俗楽器)を導入した#4に代表されるように、ANGRA以上にワールド・ミュージック色が強く、その辺は「精霊使い」というバンド名のイメージどおりである。ANGRAが持っていた繊細さ、スピリチュアルと形容できるほどの「深み」は、現在のANGRA以上にこのバンドに継承されており、本作も本国ブラジルでは好評だったものの、日本では前年にリリースされたANGRAのアルバムほどの成功を収めることができなかった。その理由としては、本作の前に発表された、アンドレとサシャ・ピートのプロジェクトVIRGOの作品が微妙で、アンドレへの期待感が薄れたこと、さらに本作収録の疾走チューンの出来がかつての名曲や、新生ANGRAのそれに及ばなかった(とはいえ質は高い)こと、そして何より、新生ANGRAのアルバムが素晴らしく、ファンの多くが新しいANGRAを認めてしまったことに尽きるだろう。アンドレはANGRAの「実体」だったはずだが、内容とクオリティが伴えば「ブランド(ANGRA)」はやっぱり強い。そういう意味ではせめて、VIRGOを一時凍結してでも本作を先に発表すべきだったのではないだろうか。


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