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SCAR SYMMETRY
THE UNSEEN EMPIRE
81
アンシーン・エンパイア (2011)

2人のVoをフィーチュアした新体制SCAR SYMMETRYの第2弾となる通算5作目。ツアーを嫌がるクリスチャン・アルヴェスタム(Vo)がいなくなったおかげでバンドは長期のツアーに出ることができるようになり、前作発表後、欧州ツアーを2回、アメリカツアーを1回、そして彼らの母国であるスウェーデンの国内を回るツアーと、精力的にライヴを行なったようだ。そうしたライヴ経験が影響したのか、本作で聴かれるサウンドはこれまでの彼らの作品の中で最もバンドらしい音楽である。冒頭を飾る#1などはイントロだけ聴くとまるでポップ・ロックのようで、実際ヘヴィな要素も交えつつ、非常にキャッチーでコンパクトにまとまっているのが象徴的。その他の曲も比較的ブルータルなものから、プログレッシヴなテイストを持つものまで、引き締まったメタル・チューンが揃っている…と言うと聞こえはいいが、個人的には、クリスチャン在籍時の「ライヴでこの雰囲気を再現できるのか?」という壮大に作り込まれた作風を好んでいたので、この路線は必ずしも好ましいものではない。しかも曲数が全9曲と少なめで、コンセプト・アルバムであるという割にはエンディングの盛り上がりに欠けることもあって、全体的に淡白な印象が拭えないのも物足りない所。もっと劇的で濃密なサウンドをクリエイトできるバンドだと思っているのだが。

SCAR SYMMETRY
DARK MATTER DIMENSIONS
83
ダーク・マター・ディメンションズ (2009)

前作「HOLOGRAPHIC UNIVERSE 」がアメリカ・ビルボード誌のHeatseekers Chartで33位を記録する成功を収めたにもかかわらず、彼ら最大の武器であった、極悪なデス声と、メロディアス・ハードのバンドでも充分通用するノーマル歌唱の使い分けができる逸材Vo、クリスチャン・アルヴェスタムが脱退。後任探しは難航すると思われたが、極悪なデス・グロウラー、ロバート・カールソンと、前任のクリスチャンのノーマル・ヴォイスに近い声質を持つラーズ・パームクヴィストの2名を加入させることで問題を解決。人件費コストは上がってしまったかもしれないが(笑)、音楽的なダメージはほとんどなく、むしろ、これまでライヴで再現不可能であったデス声とノーマル声の「絡み」が使えるようになった分、作曲やアレンジの幅が広がったとさえ言えるかもしれない。そして本作の内容であるが、どこのメロスピ・バンドかと思うほどのクサいツイン・リードのハーモニーからアルバムは幕を開け、メタルコアのように「サビだけ」ではなく、楽曲全体に渡ってノーマル・ヴォーカルがデス声と自在に交錯するSCAR SYMMETRY流のメロディック・デス・メタル・サウンドが展開されている。今回も楽曲のクオリティは文句なしだが、アレンジのせいか前作までと比べるとサイバーなフィーリングが後退し、よりオーソドックスなサウンドになった印象があり、ある意味キャッチーさはさらに増したが、個人的にはあのSFっぽい雰囲気が好みだったのでちょっと寂しいかも。

SCAR SYMMETRY
HOLOGRAPHIC UNIVERSE
85
ホログラフィック・ユニヴァース (2008)

スウェーデンのサイバー・プログレッシヴ・メロディック・デス・メタル・バンドの3作目。前作で獲得した激烈なアグレッションはそのままに、前作でやや弱めだったメロディとツイン・ギターのテクニカルな絡みを1stアルバム並みに復活させることで、元から高かった完成度をより高い次元に引き上げることに成功、もはやサウンドだけに関して言えば間違いなくAクラスである。デス・ヴォイスとクリーン・ヴォイスのコンビネーションというのは近年メロディック・デスやメタルコアのバンド群における常套手段であるが、このバンドほどクリーン・ヴォイスがフィーチュアされているバンドは稀だろう。本作のサウンドにおいてはももはやデス声は完全に「添え物」である。ライナーによると、バンドの創設者であるヨナス・キェルグレン(G)はもともとメロディックな音楽をプレイする目的でこのバンドをスタートし、デス・メタル的な要素については作曲の過程で後から入ってきたものらしいので、そういう意味では本作のサウンドこそがオリジナルのイメージに近いのではないか。愁いを帯びたメロディの充実、テクニカルかつプログレッシヴな要素、ときにブラスト・ビートまで飛び出す攻撃性、そしてタイトルやアートワークに象徴されるフューチャリスティックな世界観の完成度、どれをとっても非の打ち所のない傑作だ。この世界観の統一性を崩すことなくもっと各楽曲の個性が際立つようになれば、恐ろしいほどの傑作が生まれることだろう。

SCAR SYMMETRY
PITCH│BLACK│PROGRESS
82
ピッチ・ブラック・プログレス (2006)

「Black Lounge」スタジオのオーナーであるヨナス・キェルグレン(G:元CARNAL FORGE, CENTINEX, DELLAMORTE他)が、スタジオでレコーディングしていたALTERED AEONのヘンリク・オールソン(Dr:THEORY IN PRACTICE他)に新バンドの結成をもちかけたことからスタートしたメロディック・デス・メタル・バンドの「Nuclear Blast」移籍第一弾。音楽的には前作を踏襲したSOILWORKタイプのメロディック・デス・メタルで、前作よりもヘヴィさが増した分、クリスチャン・アルヴェスタムの愁いを帯びたメロディック歌唱パートとのコントラストがより強調されている。相変わらず非常に完成度の高いサウンドだが、今回リフがヘヴィになりすぎて、後半やや聴き疲れしてしまうきらいがある…というのが正直な感想。また、前作においてはテクニカルなツイン・ギターの絡みとメロディック歌唱の2本柱で私の琴線に触れてきていたが、今回ツイン・ギターのスリリングさという点においては前作に及ばない感も。Keyも前作に負けず劣らずフィーチュアされているが、ギター・パートのアグレッションが前作ほどの浮遊感を生み出すことを阻害しており、前作にあったいい意味での「軽さ」が感じられないことも個性を薄めてしまったような。逆に前作を悪い意味で「軽い」と感じたような人にとっては「ブルータルでカッコよくなった」のかもしれないが…。アルバム・タイトルがキマってる。

SCAR SYMMETRY
SYMMETRIC IN DESIGN
86
シンメトリック・イン・デザイン (2005)

スウェーデンのメロディック・デス・メタル・バンドのデビュー作。方向性としては近年のSOILWORKに近い、エクストリームな中にメロウなパートを挟みこんだ最近のトレンドといえるスタイルだが、このバンドはCARNAL FORGE、ALTERED AEON、UNMOORED、THEORY IN PRACTICEといったバンドの現/旧メンバーによるキャリア豊かなミュージシャンの集まりだけあって、その完成度は非常に高い。ノリがよくメリハリの利いた楽曲を、浮遊感のあるスペイシーなKeyアレンジが包み、テクニカルなツイン・ギターが絶妙なフックを生み出している。そして何よりも特筆すべきはクリスチャン・アルヴェスタム(UNMOORED他)によるVoで、その極悪デス・グロウルから、AORさえ歌えそうな雰囲気のあるメロディック歌唱のコントラストはシーン随一と言っても過言ではない。展開の多さも複雑さではなくむしろ快感につながっており、ソングライティングの完成度についてはこのシーンでもトップ・クラスだろう。アルバム冒頭からデス系とは思えぬサウンドが飛び出してくるが、#5、#8といったハイライト・チューンのコーラスは思わず「爽やか」といった形容詞さえ浮かんでくるほど。#7のような「ハード・ロック」的な楽曲までものにする多様性もこの手のバンドには珍しい。完成度が高すぎてスリリングさに欠けるという向きもいるかもしれないが、個人的にはかなり気に入った。

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