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SAXON
INTO THE LABYRINTH
82
イントゥ・ザ・ラビリンス (2009)

LOUD PARK 07における異常な盛り上がり、そしてそれを受けて17年ぶりに実現した08年4月の来日公演の後、初となるスタジオ・アルバム。前作、前々作に引き続きプロデュースはチャーリー・バウアファイント。基本的には前作の流れを汲む、幅のあるSAXON流メタルで、「王道」を感じさせる風格が作品全体に漲っている。ドラマティックなムードが素晴らしいミドル・テンポのエピック#1「Battalions Of Steel」の威風堂々とした佇まいや、突進力に満ちた爆走パワー・メタル#3、メランコリックなアコースティックの小曲#4に導かれる、シュレッド・リフとスケール感あるコーラスのコンビネーションが印象的な#5といったナンバーがメタル魂を鼓舞するが、それ以外の曲はブルースやブギー、ロックンロールといったより彼らのルーツに近い音楽からの影響が強く出た、ある意味ハード・ロック的な楽曲で、「UNLEASH THE BEAST」に始まり「LIONHEART」で頂点を極めたパワー・メタル路線とは異なる多様性を感じさせる。個人的には前作でもチラッと感じたのだが、この方向性の拡散にはかつて彼らが80年代に陥ったコマーシャリズムの陥穽への接近を感じさせ、ちょっと疑念もなくはない。とはいえ依然音の芯は太く、楽曲のクオリティ自体はかなり高い水準にあるので大丈夫だろうとは思うが、個人的には「KILLING GROUND」収録曲をブルージーにアレンジした#13のような遊び心がこのバンドに求められているとは思わない。

SAXON
THE INNER SANCTUM
84
ジ・インナー・サンクタム (2007)

彼らの楽曲としては極めて異色なゴシック&キャッチーな#1「State Of Grace」にまずビックリ。ジャケットの雰囲気もあり、まさか本作のテーマはゴシックなのか?と思ったのも束の間、ハイ・テンション&ハード・ドライヴィンな#2、猪突猛進するパワー・メタル・ナンバー#3の連続攻撃に、相変わらずの「漢のSAXON」であると思い知らされる。メランコリックなメロディを聴かせるスローな演歌ナンバー#4、彼らのルーツであるハード・ブギーのノリを持つ#5、シングルとなったややモダンなアレンジの#6、ちょっと80年代ノリのキャッチーな#7、ドラマティックなムードの中、これまたちょっと80年代っぽさが滲む#8など、中盤以降はベテランらしい、単なる押しのパワー・メタルにとどまらないソングライティングを聴かせ、イントロ的な#9を加えると9分近くに及ぶ大作エピック・パワー・メタル・ナンバー#10「Atila The Hun」がアルバムを締めくくる。前作に比べると楽曲のバラエティに富んでいることを「楽曲が充実している」と解釈するか、「漢らしさが減った」と解釈するかで評価が分かれるかもしれない。個人的には冒頭で触れた#1がツボったし、その曲を除いても楽曲の平均点は彼らの作品中トップクラスだと思うが、#1のような曲が好き、ってことはSAXONらしくない曲が好き、ということで、そんな人間の評価が当てになるかどうかはちょっと微妙?(苦笑)。日本盤ボーナス・トラックとして収録された過去の名曲のライヴ音源は若い人にSAXONクラシックを叩き込むためのサンプルか、あるいはオールド・ファンを本作に呼び寄せるための餌か、さてどちらでしょう。

SAXON
LIONHEART
83
ライオンハート (2004)

前作発表後脱退したフリッツ・ランドウ(Dr)の穴を、ヨルグ・マイケル(STRATOVARIUS)がゲストとして埋める形で発表されたアルバム。プロデュースは以前「METALHEAD」でバンドと共同プロデュースを務めた、今や欧州メタルを代表するプロデューサーと言っても過言ではないチャーリー・バウアファイント。SAXON流パワー・メタルの真髄というべき#1「Witchfinder General」で幕を開け、序曲めいた曲やアコースティックの小曲を挟むなどベテランらしい小技も利かせつつ、彼ららしい剛直なメタル・チューンから、中世イギリスを代表する王といえる獅子心王リチャード1世をテーマにしたタイトル曲#4(名曲!)のようなドラマティックな楽曲まで、円熟の技が冴える。彼らが90年代の後半以降追求してきた「パワー・メタリックなSAXON」路線の集大成とでもいうべき力作である。いかにも大英帝国(?)なジャケットもいい。

SAXON
HEAVY METAL THUNDER
85
ヘヴィ・メタル・サンダー (2002)

一般に彼らの黄金時代とされる初期の名曲を再レコーディングした、いわゆるリメイク・ベスト盤。前作「KILLING GROUND」のデジパック盤および日本盤のボーナス・ディスクだった「Classic Re-Recorded」と内容が大きく重複しているが、それが「好評だったため内容を追加して独立商品にした」ためか、「元々それが本作の予告編的なものだった」のかは不明(多分前者だと思うが)。本作のバンドにとっての意義は、過去の版元に対するライセンス料の問題をクリアする、というビジネス的なものが大きいと思われるが、近年彼らのファンになった若者にとっては、彼らのライヴの中核を占めるこれらの名曲群を、古臭くない音で「勉強」できる、という別の意義がある。実際選曲もよく、いわゆる代表曲が一通り網羅されているし、現在の彼らは非常に充実しているので、演奏もよい。変に新しいアレンジが加えられておらず、シンプルなリフを中心にした「ヘヴィ・メタルの原型」としての彼らの音楽を単純に現代の録音技術で楽しめるので、オールド・ファンも安心して聴ける仕上がりだろう。オリジナルの音がDNAレベルでしみ込んでいるような生粋のマニアはともかく、私のようなにわかには、オリジナル音源のベストよりもとっつきやすい一枚だ。ジャケットも「これぞメタル!」って感じだし、ライヴ音源などを収録したボーナス・ディスクも付いているし、安易な商品になってしまいがちなこの手の企画盤としてはかなり良心的なアルバムだと思う。

SAXON
KILLING GROUND
80
キリング・グラウンド (2001)

日本人には埴輪のように見えるジャケットが妙なインパクトを放つ、通算15作目のオリジナル・アルバム。前作からメンバーチェンジはなく、外部プロデューサーを起用せずにセルフ・プロデュースで制作されている。そのことが影響したのかどうかわからないが、時にモダンな感触さえ抱かせるほど彼らにしてはヘヴィさが強調されていた前作に比べ、彼ら独特の憂いのあるメロディが強調され、オーセンティックなHR/HMらしさが打ち出された作風となっている。そうなるとやはりベテランならではの味と安定感が堪能できる一方で、これを「期待通り」と好意的にとらえるか、「予想通り」の意外性のなさととらえるかでいささか評価が変わってくることだろう。日本ではボーナス・ディスクとして付属した、彼らの初期の名曲の再録である「Classic Re-Recorded」に注目が集まり、こうした過去の名曲に惹かれて本作を手にした人にとっては「今も変わらぬSAXON」を印象付ける作風と言えるかもしれない。とはいえリフ・ワークなどはかつてよりヘヴィな感触になっているが、それも「時代に合わせた自然なアップデート」と感じられる幅に収まっている。3曲目(1曲目がイントロなので実質2曲目)にKING CRIMSONのカヴァーである「Caught Of The Crimson King」を収録した意図は謎だが、本作が近年のSAXONの作品の中では最も「クラシック・ロック」的な趣を放っていることは間違いない。


SAXON
METALHEAD
81
メタルヘッド (1999)

欧州でのリリース元をSPV/Steamhammerに、日本盤のリリース元をクラウンに移籍して発表された通算14枚目のアルバム。ここ数作プロデュースやエンジニアリングで制作に関わってきたカレ・トラップと別れ、この頃様々な欧州パワー・メタル・バンドを手掛けて頭角を現していたチャーリー・バウアファイントと組んで制作された最初の作品である(この後、チャーリーはSAXONのアルバム制作にコンスタントに関わることになる)。前作のツアーで首と肩を痛めたナイジェル・グロックラー(Dr)が脱退し、後任として元VICTORY〜SINNERのフリッツ・ランドウが迎えられている。本作の特徴は、彼らのカタログ中でも1、2を争うほどにヘヴィであることで、時にモダンな印象すら与えるグル―ヴィなパートすら存在することはオールド・ファンにとっては驚きかもしれない。とはいえ、「らしい」曲や怒涛のパワー・メタル・チューン、憂いを帯びたメロディをフォーカスした楽曲なども収録しており、何よりも古豪ならではのソリッドな威厳がトレンディなヘヴィ・ロック・サウンドに日和ったかのような印象は与えない。特にドイツで高く評価され、以降頻繁に出演することになるWACKEN OPEN AIRに初出演するきっかけになった作品でもある。

SAXON
UNLEASH THE BEAST
84
アンリーシュ・ザ・ビースト (1997)

前作「DOGS OF WAR」発表後、オリジナル・メンバーの一人だったグラハム・オリヴァー(G)が様々な意見の食い違いにより解雇され、DESPERATE DANなるブルーズ・バンド(!)でプレイしていたダグ・スカーラットが加入して制作された通算13作目となるフル・アルバム。タイトルやアートワークの雰囲気からすると、これまで以上にアグレッシヴな、SAXONらしからぬ悪魔的で禍々しい印象があり、タイトル通りややゴシックなムードのダークなイントロ#1から攻撃的なタイトル曲であるパワー・メタル・チューン#2への流れこそそうした印象を裏付けるが、その後は往年のSAXONが90年代仕様にアップデートされた、と形容していいだろうオーセンティックなヘヴィ・メタルを聴かせてくれる。アグレッシヴな曲からミドルの曲、ややキャッチーな80年代テイストを残す楽曲からバラードまで、このバンドに望みうる範囲でバラエティに富んだ楽曲が揃っており、ヘヴィ・メタルらしさとキャッチーなメロディのバランスについては彼らの作品中屈指の充実ぶり。彼らのルーツであるブギーやブルーズの要素があまり顕在化していないのも個人的な嗜好に合っている。この作風は、メジャーの「Virgin」ではなく、当時メジャー落ちした「80年代のバンド」を積極的に拾っていた「CMC International」に移籍したからこそ実現したのかもしれない。ちなみに発売当時の日本盤リリース元は当時小室系のバカ売れでイケイケだったエイベックスが設立したHR/HMレーベル「BAREKNUCKLE」でした。

SAXON
DOGS OF WAR
76
ドッグス・オブ・ウォー (1995)

前作のエンジニアだったライナー・ハンセルとビフ・バイフォード(Vo)の共同プロデュースによる12作目のアルバム。シンプルなリフで押す#1からパワフルなメタル・ナンバーの#2の流れに、パワー重視のアルバムかと思いきや、その後はブルージーな#3、ブギー調の#4、80年代のSCORPIONSを思わせるキャッチーな#5と、曲調に幅が出てくる(と言ってもあくまで80年代のSAXONが提示した音楽的ボキャブラリーの枠を超えるものではないが)。当時すでにグランジ/オルタナティヴが席巻していたロック・シーンにおいて、一切トレンドにすり寄ることなく我が道を行っているという意味では硬派なアルバムであるが、本作ではメタリックだった前作よりも「キャッチーさ」が意識されているように思われる。本作を最後にドイツの「Virgin / CBH」との契約を失い、インディーズのクラシック・ロック・レーベル「CMC」に移籍することになるわけだが、本作から感じられる前作よりもキャッチーな趣は、ひょっとすると彼らなりにレーベルとの契約が切れることを念頭に、商業的な「聴きやすさ」を意識したものなのかもしれない。ただ、ここで表現される「キャッチーさ」はいささか80年代的に過ぎ、もしこれが「売れ線」を意識した結果だとすれば彼らの不器用さ、時代に対する鈍感さは筋金入りだ(笑)。#8「Walking Through Tokyo」は、外人が抱きがちなエキゾチック・ジャパンなイメージの楽曲で、彼らとしては日本のファンを意識した楽曲かもしれないが、日本人にとってはいささか苦笑モノ。

SAXON
FOREVER FREE
78
フォーエバー・フリー (1992)

ビフ・バイフォード(Vo)とヘルヴィッヒ・アーシンなる人物のプロデュースによって、オーストリア、アメリカ(ボストン)、そして本国イギリスと、3ヶ国でレコーディングされた通算11作目のアルバム。前作で「脱ハード・ポップ路線」の姿勢を示した彼らが、よりアグレッシブな作風に取り組んだ跡が窺える。冒頭を飾るタイトル曲から、アップテンポなメタル・チューンで、#2や#6、#8など、JUDAS PRIESTあたりを思わせるソリッドな曲、#4や#7のようなAC/DCを彷彿させるタテノリの楽曲など、ノリのいい楽曲が揃っていてなかなか楽しめる。一方で古いブルース・ミュージシャンであるウィリー・ディクソンのカヴァー#3や、アメリカ人受けしそうなカントリー風というかカウボーイ・ソングっぽさのあるバラードの#5など、未だにアメリカ市場への色気を感じるのがちょっと散漫な印象を与える部分もあるのが気になるが、いずれも曲自体は悪くない。むしろ本作の問題は、ややサウンド全体が細いというか、中途半端に洗練されていて迫力を欠くという点。ノリの良いアップテンポな楽曲が多く、ギター・リフについても往年のエッジが戻ってきたという手応えがあるだけに、バンドの持つパワーが表現されていない、いささかもったいない作品。

SAXON
SOLID BALL OF ROCK
77
ソリッド・ボール・オブ・ロック (1991)

ハード・ポップ路線に転向してのアメリカ攻略に失敗、本国イギリスにおける人気も低迷し、メジャーとのレコード契約も失ってしまった彼らだが、欧州における支持は未だ根強いものがあった。そのため、ドイツの「Virgin」と契約し、レコーディングもドイツで行なうなど、実質的に活動拠点をドイツに移して制作した10作目のアルバム。バンドと共同プロデュースに当たったのは、初期のBLIND GUARDIANを手掛けたことで知られるカレ・トラップである。ここ数作の流れを汲むメジャー志向のアリーナ・ロックだが、Keyやキャッチーなコーラスは控えめになり、タイトル通りソリッドさは増している。とはいえ全体的にアメリカンなフィーリングがあるので、初期の彼らのファンがこれを聴いて「SAXON復活!」とは思わないだろう。ポジティブに見れば、あからさまなハード・ポップ志向は後退したし、#2や#6のようなパワフルな楽曲に象徴されるように、全体的にダイナミックな力強さが戻ってきたという見方もできるが、やや中途半端で、これなら曲がりなりにもメロディアスだったハード・ポップ路線の方が曲自体は良かった、という声が出てしまいそう。デビューから10年以上のキャリアを重ねているだけに安定感はあるが、この時期最もありがちで刺激のない音だったかもしれない。

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