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SAVATAGE
POETS AND MADMEN
80
ポエッツ・アンド・マッドメン (2001)

アル・ピトレリ(G)がMEGADETHに加入するために、ザッカリー・スティーヴンス(Vo)が家族との時間をもっと取りたいという理由でそれぞれ脱退。新メンバーを補充することなく、ザッカリー加入前のようにジョン・オリヴァ(Key)がVoを兼ねる形の4人編成のまま録音されている(いずれメンバーを補充する意向はあるようだ)。欧州で好評だったここ2作の流れを受け、本作もまたストーリー・アルバムとなっており、今回はピューリッツァー賞を受賞したこともある実在の報道カメラマン、ケヴィン・カーター(南アフリカで撮影した、飢餓状態の少女を狙うハゲタカの写真で有名)の栄誉と死、そして彼が伝えた世界の不条理を描いている。ドラマティックなパワー・メタルという基本線は変わらないものの、ザッカリーに比べ、メロディを歌い上げることが不得手なジョン・オリヴァがVoであるため、特にヴォーカル・ラインはラフなものになっており、それに合わせるかの如くリフ・ワークもゴリゴリした感触の無骨なものになっている。ピアノをはじめとするKeyサウンドの絡め方、アコースティック・ギターや多重コーラスを使って楽曲に起伏をつけ、劇的に盛り上げていく手腕はさすがで、ドイツでは過去最高の7位を記録する成功を収めたが、日本ではやはりもう少し歌メロがキャッチーでないと厳しい気がする。本作発表後は、96年に始めたサイド・プロジェクトのTRANS-SIBERIAN ORCHESTRAがアメリカでブレイクし、過去のメンバーも動員しての大規模なツアーに追われることになったため、SAVATAGEとしての表だった活動は行われなくなった。

SAVATAGE
THE WAKE OF MAGELLAN
85
ウェイク・オブ・マゼラン (1997)

前作の好評に気を良くしたのか、今作もまたマゼランの子孫である年老いた孤独な船乗りを主人公とした、ドラマティックなストーリーを持ったコンセプト・アルバム。#1「The Ocean」〜#2「Welcome」の劇的極まりないオープニングでアルバムへの期待は否が応にも盛り上がる。その後の楽曲も時にメロウに、時に激しくドラマを描き出し、まるで面白い冒険小説を読んでいるかのような興奮を聴き手にもたらしてくれる。エンディングを飾る#13「The Hourglass」はどう聴いてもSIMON & GURFUNKELの有名曲、「Sound Of Silence」のパクリだが、お得意のカウンター・コーラスによる盛り上げはあざといまでに効果的。コンセプト・アルバムであることも知らずとも、聴き手にストーリーを感じさせる流れが音楽自体によって完璧に表現されている。前作に欠けていたアグレッシヴなヘヴィネスと、ザッカリー・スティーヴンス加入後磨かれてきたメロディアスなドラマ性のバランスも良く、本作をもって「SAVATAGEサウンド」は完成された感がある。そのことに満足したわけでもないだろうが、本作を最後にザッカリー・スティーヴンスは脱退している。ドイツを中心に、ヨーロッパでは大ヒットを記録。

SAVATAGE
DEAD WINTER DEAD
82
デッド・ウインター・デッド (1995)

それまでもヨーロッパでの人気と評価が高かったSAVATAGEであるが、彼らが名実共に欧州におけるトップ・メタルバンドとしての地位を確立するきっかけになった作品。当時最大の国際問題のひとつだったユーゴスラヴィアの内戦における最大の激戦地、サラエボを舞台に繰り広げられるドラマティックなストーリー・アルバムは、やはり欧州人の関心を惹きつけたのだろう。テーマやストーリーがそうさせたのだろうが、全体的にウエットでメランコリックなムードに包まれたアルバムで、彼らの持ち味である無骨な荒々しさは数曲を除いてかなり影を潜めている。アップテンポの曲が皆無に近いこともあり、メタル・アルバムとしてはエキサイトメントに欠ける感は否めない。驚くべきはアレックス・スコルニックに代わって加入したアル・ピトレリのギターで、亡きクリス・オリヴァを思わせる泣きの効いたプレイを見事に再現している。巧いのは承知していたが、これほどエモーショナルに弾けるとはやや意外。ベートーベンの「合唱」を大胆に引用したタイトル曲や、お得意の合唱パートを織り込んだ#9、#11など、印象的な曲もあるが、「この曲!」という決定打に欠けるので、以前制作したコンセプト・アルバム「STREETS」に比べるとやや弱いかも。しかし、近年のメタル・バンドとしては珍しい、社会的な重いテーマに真摯に向き合った力作である。日本盤のボーナス・トラックはその「STREETS」の主人公をテーマにした「D.T.JESUS」。なお本作より、ここしばらくサイド・プロジェクト(?)のDR.BUTCHERに力を注いでいたジョン・オリヴァが正式に「キーボード&バックヴォーカル」としてメンバーに復帰している。

SAVATAGE
HANDFUL OF RAIN
81
ハンドフル・オブ・レイン (1994)

事故死したクリス・オリヴァに代わって、元TESTAMENTのアレックス・スコルニックをギタリストに迎えて制作されたニュー・アルバム。BURRN! のレビューでも指摘されていたが、ツカミの悪いアルバムだ。オープニング・ナンバーの「Taunting Cobra」はアグレッシヴだがまったく面白みのない曲で、2曲目はタイトル曲なのに恐ろしく地味な曲。ただ、3曲目の、バンド史上でも屈指の大名曲、第2次世界大戦時、ナチスの虐殺から逃れようとしたユダヤ人にビザを交付することで数千人の命を救った、当時の駐リトアニア日本大使杉原千畝をテーマにした「Chance」で一気に持ち直し、その後はまずまず。特にラスト・ナンバーである、事故死したクリス・オリヴァに捧げられた#10「Alone You Breathe」は、前々作に収められていた名曲「Believe」の歌詞を引用したパートが感動を呼ぶ名曲で、前述の「Chance」と共にアルバムの印象を押し上げることに貢献している。ただ、それ以外の曲はやはり彼らとしては小粒な感が否めず、アルバム全体を手放しで賞賛することはちょっと厳しい。アレックス・スコルニックも、TESTAMENT時代のようなクラシカルかつスリリングなプレイは聴かせてくれず、やや肩透かし。

SAVATAGE
EDGE OF THONES
84
エッジ・オブ・ソーンズ (1993)

バンドの顔だったジョン・オリヴァ(Vo, Piano)が脱退し、新たなフロントマンとしてザッカリー・スティーヴンスを迎えて発表された通算8枚目のフル・アルバム。ジョン・オリヴァは脱退したといっても、作曲やプロデュースなどスタジオ・アルバムの制作では今後もバンドと関わっていくとのこと。新たに迎えられたザッカリー・スティーヴンスは、基本的にはジョン・オリヴァに似た声質の持ち主だが、より堂に入ったシャウトを聞かせることが出来る人材で、大胆なイメージチェンジというよりは、「イメージを変えることなく、レベルアップを」というコンセプトに基づいて彼を選んだと思われる。強化された歌唱力を得て制作された本作は、たしかにこれまでのアルバムに比べてヴォーカル・オリエンテッドな印象の作風で、タイトル曲はアメリカのAORチャートでも健闘したとか(個人的には全くAORには聴こえないが…)。もちろん彼らならではのドラマティックさは健在で、お得意のピアノを絡めて盛り上げる#6「Follow Me」などはなかなかの秀曲。ただ前2作にはあった「キメ曲」と言えるほどの曲が存在しないため、聴き終えた後の印象は若干地味。とはいえメロディの充実度・平均点は過去最高級なので、SAVATAGE初心者には入りやすい一枚かも。本作発表後、クリス・オリヴァは交通事故で還らぬ人となり、結果的に本作が彼の遺作となった。

SAVATAGE
STREETS:A ROCK OPERA
86
ストリーツ:ア・ロック・オペラ (1991)

HR/HM史上において、QUEENSRYCHEの「OPERATION:MINDCRIME」と並ぶコンセプト・アルバムの名盤として語られる1枚。ニューヨークを舞台に、D.T.ジーザスなるドラッグ・ディーラーの、ロック・スターとしての成功と挫折そしてそこから見つけた真実を語るストーリーだが、それは奇しくも同時期に発表されたW.A.S.P.のコンセプト・アルバム「THE CRIMSON IDOL」と似たモチーフとなっており、当時のロック・シーンが抱えていた問題を描き出したものと言えるのかもしれない。とにかくこのバンドは「クライマックス」の演出が非常に上手く、そのことがポール・オニールをしてこのバンドに惚れ込ませたのだろうが、本作のようなストーリー・アルバムではまさにその資質が完璧に発揮されている。本来のSAVATAGEサウンドというのはかなり無骨なヘヴィ・メタル・サウンドで、このアルバムでも基本的にはそういったイメージの音像が中心となっているのだが、それだけに時折差し挟まれるドラマティックな展開・演出が映える。個人的にはこういう無骨なメタル・サウンドというのは趣味じゃないし、ジョン・オリヴァのVoも苦手なタイプなのだが、とにかくアルバムのエンディングを飾る「Somewhere In Time/Believe」の与えてくれる感動は圧倒的で、このエンディングにたどり着く度に全ての気に入らない部分を忘れ「名盤だ…」と呟いてしまう。ロック「オペラ」というよりはブロードウェイ・ミュージカル的な趣のドラマティシズムであるが、HMにドラマ性を求める全ての人に聴いてもらいたい一枚。

SAVATAGE
GUTTER BALLET
86
ガター・バレエ (1989)

5作目にしてようやくの日本デビュー・アルバムとなった90年発表の名盤。前作よりプロデュースを手掛けるようになったポール・オニールとのコラボレーションがより高い次元で結実し、作品全体にドラマティックな雰囲気が漂っており、中でも表題曲の#2は「ドラマティック・ヘヴィ・メタルにおける究極の完成型」と呼びたくなるほどの名曲中の名曲。1曲目の「Of Rage And War」こそ、かつてスラッシュがかった荒々しいパワー・メタル・バンドであった頃の名残を色濃く感じさせるヘヴィな曲だが、これまた絶品のドラマティック・チューン#4「When The Crowds Are Gone」や、IRON MAIDENを思わせる曲調の#8「The Unholy」、物悲しくも力強いバラードの#10「Summer's Rain」など名曲揃い。#3や#5など、叙情的なインストの小品も味わい深く、アルバム全体のドラマ性を高めるのに貢献している。ジョン・オリヴァ(Vo, Key)の弾くピアノと、クリス・オリヴァの弾く泣きのチョーキングとフラッシーなタッピングを巧みに組み合わせたギター・ワークが織りなすドラマに酔いしれたい一枚。アメリカ・ビルボードでは124位にとどまるも、ドイツでは47位まで上昇し、後に主戦場となる欧州での基盤を築いた作品でもある。

SAVATAGE
HALL OF THE MOUNTAIN KING
76
ホール・オブ・ザ・マウンテン・キング (1987)

通算4作目(EP「A DUNGEON'S CALLING」を除く)、メジャー「ATLANTIC」からのリリースとしては3枚目となるアルバム。本作より、後のSAVATAGEの特徴となるドラマ性の「黒幕」として知られるようになるポール・オニールがプロデューサーの座に就いている。メジャー・デビュー作となった前々作では荒削りなパワー・メタルを、前作では売れ線を狙ってコマーシャルなハード・ロックに接近して中途半端なサウンドを披露し、いささか迷走の気配を漂わせていたが、本作以降、彼らの音楽には「ドラマティックなパワー・メタル」という筋がビシッと通ったことを考えると、ポールの貢献は大きい。グリーグの「山の魔王の宮殿にて」をベースに、ホルストの「惑星」のフレーズも取り入れたクラシカルなインストの#5「Prelude To Madness」から、力強いタイトル曲#6への流れは、今後の彼らの躍進を予感させる。ただ、次作で花開くドラマ性は未だ不完全燃焼で、中途半端なプログレッシヴ性と、表現力に欠けるVo(粗野なパワー・メタル路線だった頃はこれでハマっていたのだが)が足を引っ張っており、全体としてはやや地味な作品。特にアルバム前半に取っつきにくい曲が多いのが印象を悪くしている。クリス・オリヴァのフラッシーでいて泣きの効いたギター・プレイはギラリと光っているし、彼らのキャリアにおいては「礎」というべき重要作だが、一般にお薦めできるような質には達していない。

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