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QUEENSRYCHE
AMERICAN SOLDIER
76
アメリカン・ソルジャー (2009)

軍人の父を持つジェフ・テイト(Vo)が、自ら多数の退役軍人と面会し、兵士の視点から「戦争」を語る一種のコンセプト・アルバム。そのテーマは戦争に対して日本人より強いリアリティを抱く欧米ではそれなりに話題になっているようだが、どうも最近の彼らは純粋に音楽的な魅力とは異なる要素でアルバムを売ろうとしているように思えて個人的にはいけすかない。なので、コンセプトやメッセージは一切無視して音にだけ耳を澄ますと、DISTURBEDのようなバンドを思わせる#1に一瞬面食らうものの、全体的には「Q2K」以降の、「ポスト・グランジ」と呼ばれるようなバンド群の音にも通じる、モダンなアメリカン・ロック・サウンドの流れにある作風。前作で多少復活していたメタリックな装飾は再び姿を消しており、やはりあれは「続編」ということである程度意図的にやっていたということなのか、あるいは脱退したマイク・ストーン(G)の代わりというわけではないが、今回「Q2K」の時期にメンバーだったケリー・グレイがプロデュースで関わっているからなのか。テーマゆえか翳りのある曲調が多く、所々ドラマティックと言ってもいいようなアレンジも出てくるため、思ったよりは楽しめたが、やはり騒ぐほどの出来ではない。ジェフ・テイトが10歳の娘とデュエットしたバラード#11には、「Silent Lucidity」の成功再び、という色気を感じるのは邪推だろうか。

QUEENSRYCHE
OPERATION:MINDCRIME II
78
オペレーション・マインドクライム II (2006)

彼らの最高傑作であり、HR/HM史上に残る名作とされる「OPERATION:MINDCRIME」の続編として制作されたアルバム。ストーリーは前作で殺人罪によって逮捕された主人公のニッキーが出所し、メアリー殺害の真犯人を突き止め、ドクターXへの復讐を果たす、という前作のストーリーに引き込まれた人間であればかなり興味深いものになっている。音楽的にも大仰なオーケストレーションを駆使したイントロや、メタリックなツイン・リードの絡みなど、ここ数作で最もメタルらしい装飾が施され、ドラマティックな雰囲気を作り出す演出の跡は感じられる。しかし、楽曲の印象を決定するリフと歌メロはここ数作の流れを汲むオルタナティヴ・ロック色の強いもので、正直この単調なリフと平板な歌メロでは全くドラマに酔うことができない。最初にWeb上でサンプルとして公開された#6「The Hands」は比較的前作(O:M)の雰囲気を感じさせる叙情的なムードの強い曲だし、#10にドクターX役としてロニー・ジェイムズ・ディオを迎えていることといい、ファンの望むものは実はわかっているんじゃないかと思うのだが、何故こうなってしまうのかなあ? まあ、それなりに練り込まれた作品という印象は受けるけど、メロディの、ひいては楽曲自体の魅力不足は致命的。この程度の作品にこのタイトルとアートワークは詐欺だな。

QUEENSRYCHE
Q2K
70
Q2K (1999)

音楽的中心人物と目されていたクリス・デガーモ(G)が脱退、後任にかつてMYTHというバンドでジェフ・テイト(Vo)と一緒にプレイしていたケリー・グレイ(G)が加入。前作のグランジ/オルタナティヴ風味はクリスの持ち込んだものだったそうで、そのクリスが脱退したなら元の音楽性に戻るのか、と思いきやさにあらず。前作はラフでヘヴィなグランジ風味の中にも所々にQUEENSRYCHEらしい抑制のきいた知的なムードが残っていたが、本作では完全にイマドキのアメリカン・ロック・バンドになっており、黙って聴かされれば誰もQUEENSRYCHEであるとは気付くまい。#1のLED ZEPPELIN風のリフに象徴されるような70年代ロック風味は、本来「ROCKIN' ON」あたりで評価されて然るべき音だが、「女王の王国」などという名前のバンドがそうした雑誌およびその読者に支持されるはずもない。そしてこのクサメタリックなバンド名、そしてスケール感のあるアートワークに相応しい音を求めてこのCDを聴いてしまった人間はきっと違和感と失望を味わうに違いない。そういやケリー・グレイってDOKKENの超駄作「SHADOWLIFE」をプロデュースした人だったよな…。

QUEENSRYCHE
HEAR IN THE NOW FRONTIER
75
ヒア・イン・ザ・ナウ・フロンティア (1997)

かつてQUEENSRYCHEを愛したメタル・ファンを絶望のどん底に突き落としたアルバム。前作の地味さにはまだ深読みの余地があったが、本作において展開されているのはかなり露骨なグランジ/オルタナティヴ・ロック的サウンドで、少なくとも音楽からファンがイメージする「彼ららしさ」はほとんど失われてしまった。ひょっとすると彼らは真剣にこうした音楽に「表現上の可能性」を見出し、実践したのかもしれないが、対外的な見え方は「トレンドへの迎合」以外の何物でもなかった。QUEENSRYCHEもNIRVANAやPEARL JAM同様シアトル出身だ、とか言われてもねぇ…。彼ら贔屓であるBURRN!の編集長などは#7「You」と#14「spooL」は「OPERATION:MINDCRIME」に入っていてもおかしくない曲だ、と弁護していたが、それにしたって相当アレンジを変えなきゃおかしいし、実際に入れていたらあのアルバムの中では「普通の曲」だろう。#7は個人的にもかなり好きだが、たかが2曲のために普通のファンにCDの購入を勧めるのはちょっと厳しいね。まあ僕はグランジやオルタナも決して嫌いじゃないし、本作も決して音楽的なクオリティは低くないからこのくらいの点数はつけるけど。ちなみに今回も日本盤ボーナス曲である「Chasing Blue Sky」がメランコリックでなかなか魅力的な曲。

QUEENSRYCHE
PROMISED LAND
77
約束の地 (1994)

前作のキャッチーな作風から一転、難解な作風に転じたアルバム。これまで客観者であることを追求してきたジェフ・テイトが「この世に完全な客観などというものは存在しない」という事実に行き着き、主観に転じたことによって生まれた作品とのことで、発表前のインタビューやら解説では量子力学やら不確定性定理やらおよそ音楽とは関係のない話が溢れ返った。そのことが必要以上に作品に対する深読みを促すことになったが、単純に音楽的な面に限って言えば、メタル度を大幅に後退させたムーディーな作品、ということになる。バンドの辿って来た道程ゆえにこの暗さ/難解さは「プログレッシヴ」という言葉によって解釈されることも多いが、#2「I Am I」などに顕著な単調なリフやオーガニックな音像、内省的なムードといったものは当時のグランジ/オルタナティヴ・ロック勢に通じるもので、次作で顕著になるそうしたサウンドへの橋渡し的役割を果たした作品とも言える。全体的に地味で、メタル的なカタルシスは皆無だが、特に後半なかなか味のある曲が多く、作品に対する個人的な印象は決して悪くない。ただ、メタル・サイト的にはこれ以上の点数を献上するのは無理。日本盤ボーナスであり、映画「ラスト・アクション・ヒーロー」のサウンドトラック収録曲であった「Real World」は前作の雰囲気を感じさせる佳曲。

QUEENSRYCHE
EMPIRE
88
エンパイア (1990)

QUEENSRYCHEというバンドに対してどのような評価を下すかは人それぞれだろうが、個人的に彼らはピュアなヘヴィ・メタルからスタートし、ヘヴィ・メタルという音楽をいかに知的に洗練させることができるか、というテーマを追求してきたバンドだったと思っている。本作はその「洗練されたヘヴィ・メタル」の究極型というべきサウンドを完成させ、全米で300万枚を超える大ヒットを記録した。ここまでキャッチーに洗練されなくてはヘヴィ・メタルは大衆レベルで成功できないのか、と思うと複雑な気分にもなるが、「メタル」としての風格を完全に失うことなくここまでキャッチーなサウンドを創造した彼らの才能には敬意を表さざるをえない。大仰なイントロが印象的な#1「Best I Can」、サビが印象的な#3「Jet City Woman」、#9「Hand On Heart」、叙情的なギターのフレーズが素晴らしい#5「Another Rainy Night(Without You)」、メタリックなアレンジを上手く利用したタイトル曲#6、そしてなんと全米シングルチャートでTOP10入りを果たしたアコースティックなバラード#8「Silent Lucidity(邦題:静寂)」など、佳曲の多さが嬉しい。このバンドを初めて聴くには一番入りやすいアルバムなのでは?

QUEENSRYCHE
OPERATION:MINDCRIME
89
オペレーション・マインドクライム (1988)

彼らの評価を決定付けた記念碑的名盤。犯罪組織の黒幕ドクターXに翻弄されるヘロイン中毒の若者ニッキーを主人公に、現代社会における人間関係の歪みを映画的に描き出したコンセプト・アルバム。ストーリーやコンセプトの完成度もさることながら、小曲やSEを駆使して見事に演出されたアルバム構成、そして個々の楽曲の出来、サウンドや演奏のクオリティなど、音楽的な面も含めてのトータルな完成度の高さは驚異的で、ここにTHE WHOやPINK FLOYDといった偉大なロックの先達が送り出してきたコンセプト・アルバムの名盤に引けを取らない作品が初めてHR/HMというジャンルの中に出現したと言っていい。欧州のメロディック・パワー・メタルになじんでいるような向きには歌メロが地味に響くかもしれないし、疾走感やアグレッションが不足しているように感じるかもしれない。私も当初は「HR/HM史上に残る名作、という割にはインパクトに欠ける」と感じたクチだ。しかし、人間誰しも一度はこのタイトルのような気持ちになるであろう哀愁の名曲#12「I Don't Believe In Love」にある日突然ハマり、その後は#5「Speak」や#9「The Needle Lies」のような比較的ストレートなメタル・チューンから、緊張感に満ちた#11「Breaking The Silence」、叙情的な#15「Eyes Of A Stranger」と、次々にお気に入りの曲が増えていった。前作においてはやや過剰にさえ思えたプログレッシヴ風味とメタリックなサウンドのバランスも絶妙。

QUEENSRYCHE
RAGE FOR ORDER
84
炎の伝説 (1986)

リリース当時、かなりの物議を醸した問題作。前作にも増してプログレッシヴな曲調とアレンジ、時にデジタルな印象さえ与えるサウンドがその主な原因だが、メンバーがレコーディング中にハマっていた「Vampire Chronicles」のイメージを具現化したゴシック風のメイクと衣装をまとったメンバーのヴィジュアルが頭の固いメタル・ファンの違和感に追い討ちをかけた。本作ではジェフ・テイト(Vo)の弾くキーボードをかなり大胆に導入し、どの曲にもこの時期のメタル・バンドとしては先鋭的なアレンジと展開が施され、比較的ストレートなメタルのエッジを残した#6「Surgical Strike」のような曲でさえ一筋縄ではいかない仕上がりを見せている。特に#4「Gonna Get Close To You」(リサ・ダルベロのカヴァー)や#10「Screaming In Digital」などは完全にHR/HMの枠を超えた当時あまりにも冒険的な楽曲。たしかにヘヴィ・メタルとしてのストレートな魅力には欠け、本作で離れていったファンも多いのだが、それでも#3「The Whisper」や#5「The Killing Words」のイントロなど、煽情的なパートは多くの曲に見受けられるし、個人的にはこの暗くひんやりとした、近未来的な雰囲気はなかなかツボである。QUEENSRYCHEのプログレッシヴなイメージを確立した作品であり、最も音楽的冒険心に満ちた隠れた名盤。

QUEENSRYCHE
THE WARNING
81
ザ・ウォーニング (1984)

本作より正式メンバーとして制作に関わったジェフ・テイト(Vo)からのインプットか、プログレッシヴなアレンジが目立つようになったファースト・フルレンス・アルバム。もともとジェフ・テイトが在籍していたBABYLON、MYTHといったバンドは地元シアトルではこのバンドよりも「格上」のバンドと見られていたこともあり、そのメンバーだったジェフがバンドのイニシアティブを一気に握ったということなのだろう。前作に比してVoが目立つようになった結果、ややギター・サウンドが引っ込んだこともあり、一部の頑固なメタル・マニアには不評もあったが、基本的には「正統派ヘヴィ・メタル」として許容される範囲の音像だ。プログレッシヴなコーラスが印象的な#1のタイトル曲、この時代ならではのGソロが聴き所の#5「N M 156」、叙情性豊かにドラマを紡ぐ#6「Take Hold Of The Dream」、10分近くに及ぶ大作、#9「Road To Madness」のドラマティックな展開など、当時の他のHMバンドに比べて圧倒的に繊細かつ大胆なソングライティングによって支持を固め、来日公演も実現させた。また、本作をもってジェフ・テイトはロブ・ハルフォードと並ぶ、HR/HM界を代表するハイトーン・シンガーとしての声価を確立したと言えるだろう。

QUEENSRYCHE
QUEENSRYCHE
75
クイーンズライチ (1983)

シアトル出身。マイケル・ウィルトン(G)とスコット・ロッケンフィールド(Dr)が結成したCROSS FIREというバンドに、かつてマイケルとハイスクール時代にJOKERというバンドを組んでいたクリス・デガーモ(G)、そしてスコットの旧友であったエディ・ジャクソン(B)が加入してTHE MOBとなり、QUEENSRYCHEと改名して発表したのがこの4曲入りEP。本作でVoをとり、後にこのバンドの顔として認知されるジェフ・テイトは当時MYTHというプログレッシヴ・メタル・バンドのメンバーで、本作にはゲストとして参加している。ところが、本作に収められたおよそアメリカのバンドとは思えない構築美に満ちた正統派ヘヴィ・メタル・サウンドは、JUDAS PRIESTやIRON MAIDENが次々とアメリカに上陸して成功を収め、「ヘヴィ・メタル」という音楽が盛り上がりつつあったこの時期大きな評判を呼んだ。その評判と、インディーズとしては異例の商業的成功によって正式メンバーとして加入することを決意したジェフ・テイトの強力なハイ・トーンVoによって、「JUDAS PRIESTに対するアメリカからの回答」という解釈もされた。その後急速に音楽性を進化させていった彼らの出発点が、純粋すぎるほど純粋なヘヴィ・メタルであったことを示す4曲が収められている。

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