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PRETTY MAIDS
CARPE DIEM
82
カーペ・ディエム (2000)

前作同様、ケン・ハマー(G)とロニー・アトキンス(Vo)のセルフ・プロデュースによる8作目。基本的には前作の延長線上にある作風(といっても、彼らの音楽性は大筋で変わったことはないが)で、個人的には前作の姉妹作的なイメージを抱いている。ただし本作では、彼らの魅力の一面であるハード・ポップ的というかメロディアス・ハード寄りの楽曲が増え、前作よりもメロディを重視している姿勢が伝わってくる。こう書くと、前作より魅力的なアルバムに聞こえるかもしれず、実際そう受け止める人も少なくないだろう。ただ、個人的には本作の音作りやアレンジ、リフ・ワークには悪い意味での生っぽさやモダンなフィーリングが感じられて、ややスッキリしないものがある。ポップ・サイドの楽曲にもモダンなアメリカのバンドに通じる空気感があり、いずれもキャッチーな「いい曲」ではあるものの、彼らに期待する哀愁や叙情性はちょっと弱め。そしてそういう楽曲の多さによってアルバム全体の印象がややユルいものになってしまっているのも気がかり。もちろん個々の楽曲の完成度については今なおそんじょそこらのポッと出のメロスピ・バンドなどでは太刀打ちできないレベルをキープしているが、前作で感じたマンネリ感がさらに進行しているように思えるのは根深い問題かも。

PRETTY MAIDS
ANYTHING WORTH DOING IS WORTH OVERDOING
83
エニシング・ワース・ドゥーイング・イズ・ワース・オーバードゥーイング (1999)

前作が日本市場では好評をもって迎えられた彼らの7作目。セルフ・プロデュースによって制作された本作は、メロディックでファストな曲、ポップでキャッチーな曲、ヘヴィでちょっとブルージーな曲、という彼らの基本的なレパートリーの型がわかりやすく打ち出された一作で、楽曲数が絞り込まれており、サウンドが前作よりダイレクトであることもあって、力強い印象の一作。メロディックでファストな楽曲が2曲続き、そして珠玉のハード・ポップ・チューン#3と続くあたりまではさすがの職人芸、と感心したが、聴き終えてみると前作ほどの満足感がない。楽曲の質が高い水準で安定しているものの、突出した出来とまでは言い難いのと、タイトル曲#8から#9、#10と、メロディよりはヘヴィな感触を押し出した趣味ではない楽曲が続き、終盤の印象が今ひとつであるために本作の印象は前作に及ばない(ラストの#11は素敵なポップ・チューンですが)。特にケチをつける要素は見当たらない、ベテランらしい安心感のある仕上がりだが、今回に関してはそれがちょっとマンネリに感じられる面が無きにしも非ず。まあ、この出来で文句を言ったらバチが当たるってもんだけどね…。ちなみに本作は92年以降彼らのマネージメントを担当し、98年に病死したジョン・ロージングに捧げられている。


PRETTY MAIDS
SPOOKED
86
スプークト (1997)

前作発表後2度目の来日公演が実現、その模様はライヴ・アルバム「SCREAMIN' LIVE」としてリリースされるなど、この時期(他の多くのメロディ派HR/HMバンド同様)完全に日本が「主戦場」になっていた彼らの6作目となるアルバム。そのためか本作の制作に当たっては日本のレコード会社のディレクターが欧州に飛んで本作の方向性についてミーティングし、よりメロディックな路線を追求することを勧めたらしい。プロデューサーにHELLOWEENを手掛けたトミー・ハンセンが起用されたこともひょっとするとそのミーティングの結果かもしれない。そして実際本作は多くのPRETTY MAIDSファンが望むメロディックな正統派HMが見事に描かれており、「復活」の印象を与える好盤となっている。#1のイントロから胸が高鳴るが、その後もスピード・チューンからキャッチーなタイプの楽曲まで、メロディ派メタル・ファンの期待を裏切らない楽曲が目白押し。久々にKeyがフィーチュアされており、音作りを含めてドラマティックな印象を与えるアレンジが目立つのが本作の特徴。#4におけるHELLOWEEN風のギター・ソロはご愛嬌? 「SCREAM」のセッションの際に既にデモが制作されていたKISSの「Hard Luck Woman」のカヴァーは「Please Don't Leave Me」の夢よもう一度、ってことでしょうか。

PRETTY MAIDS
SCREAM
81
スクリーム (1994)

前作を最後に欧州ではメジャーからドロップ、メタル・インディー大手の「Massacre」に移籍したものの、日本では引き続き「Sony」からのリリースとなった5作目のフル・アルバム。実質的な前作「SIN-DECADE」に引き続き、METALLICAを手掛けたフレミング・ラスムッセンをプロデューサーに迎えた本作は、基本線においては「メロディックなへヴィ・メタル」というこれまで通りの延長線上にある音楽性だが、よりギター・オリエンテッドでライヴ感のあるコンパクトな楽曲が多い。当時、時代はオルタナティヴ・ロック全盛で、旧態依然とした正統的なHR/HMは冬の時代だっただけに、彼らもその流れを意識したのではないかと思われる。パワフルなリフとインパクトのあるサビが印象的なオープニング・ナンバー#1や、アップテンポな#3のような比較的「メタル寄り」な曲も従来に比べるとシンプルだし、彼らお得意のポップ・センスが生きる#4、#5、#10といった楽曲も、HR/HMというよりは、もっとモダンなポップ・ロック・バンドがプレイしてもおかしくない曲だ。当時多くのHR/HMバンドがオルタナティヴ・ロックに接近して顰蹙を買っていたが、本作については確かなメロディ・センスによる安定感のある楽曲クオリティと、ヘヴィさとエッジをキープしたギター・サウンドのおかげでそれほど大きな違和感を生むことはなかった。しかしやはり本作は「傑作」とは呼ばれなかったし、彼らのカタログの中ではメタル的な満足度は高くない。

PRETTY MAIDS
STRIPPED
77
ストリップト (1993)

「OFFSIDE」収録の「Please Don't Leave Me」のアコースティック・バージョンが本国で好評だったことを受け、レコード会社の要請によって制作されたアコースティック・フル・アルバム。タイトルである「裸の」とは「アンプラグド」の言い換えだろう。アコースティック・アルバムといっても別にバラード集というわけではなく、必ずしもメロディに頼らない元気のいい曲調の楽曲も多いし、所々でエレクトリック・ギターを使っているので、完全なアコースティック・アルバムというわけでもない。そして本作に収められた楽曲は、元々本作のために作られたわけではなく、これまでのキャリアの中で作られていたものの、「ノーマルな」PRETTY MAIDSのアルバムに収録するにはいささか異色の楽曲だったということでお蔵入りになっていたものだという。個人的には曲が良ければスタイルとしてのメタルというか、サウンドがヘヴィか否か、ということにこだわりはないので、彼らの作曲能力を考えると普通に楽しめるんじゃないかと思っていたのだが、期待していた哀愁路線の曲が少なくてちょっと期待外れ。結局一番良かったのは「JUMP THE GUN」収録の名バラード、「Savage Heart」のニュー・バージョンでした…(これはオリジナルに匹敵、あるいは凌駕するのではないかというほど秀逸)。

PRETTY MAIDS
OFFSIDE
74
オフサイド (1992)

当時エリック・クラプトンの大ヒットによって一世を風靡していた「MTVアンプラグド」(元々は1989年にジョン・ボン・ジョヴィとリッチー・サンボラの発案によって企画された番組だが、有名にしたのはクラプトンである)を意識したかのようなアコースティック・ミニ・アルバム。目玉曲は「SIN-DECADE」に収録され、彼ら最大のヒット曲となったジョン・サイクスとフィル・ライノットのデュエット曲「Please Don't Leave Me」のカヴァー#2で、本国デンマークではこのバージョンも好評を博したようだ。個人的にはこのアコースティック・バージョンはあっさりしすぎで、「SIN-DECADE」に収められたエレクトリックなバージョンの方が好みだが…。#4はQUEENの、#5は元THIN LIZZYのブライアン・ロバートソン(G)がジミー・ベイン(B:元RAINBOW)と結成したWILD HORSESのカヴァーで、作曲にフィル・ライノットが関わっている隠れた名曲。比較的渋めの選曲で、彼らのオリジナル曲である#1、#3もやや地味な曲なので、聴き終えた印象は正直毒にも薬にもならない感じ。まあ、日頃メタルばかり聴いているような向きには一種の気分転換というか「箸休め」になって、これはこれでいいのかもしれない(苦笑)。

PRETTY MAIDS
SIN-DECADE
86
シン・ディケイド (1992)

アメリカ進出を賭けたアルバムだった前作が思惑通りの成功を収められなかったことで見切りをつけられたのか、リッキー・マークス(G)、アラン・ディロン(B)、フィル・モア(Dr)が一度に脱退。ケン・ハマー(G)とロニー・アトキンス(Vo)というコア・メンバーに、新加入のケン・ジャクソン(B)とマイケル・ファスト(Dr)を迎えて制作された作品。「罪の10年」というアルバム・タイトルは、時に自分たちらしからぬことをしてでも成功を目指してひた走って来たバンドの道程を指すものか。本作では前作、前々作に表れていたメインストリーム志向を捨て、DEEP PURPLEやTHIN LIZZYのような70年代のHRに影響を受けたへヴィ・メタル、という自らの原点に回帰する作品となっている。これまでの作品に比べると、特にキャッチーさという意味においてはやや地味だが、骨太な正統的なHMナンバーが並ぶ中、10年選手ならではの巧みなフック作りによって、アルバム最後まで飽きさせない、緊張感のある仕上がり。本作のラストに収録されたジョン・サイクスのカヴァー、「Please Don't Leave Me」がBURRN!誌の年間ベスト・チューンに選ばれるなど、やたらとクローズアップされたが、本人たちとしてはオマケ的に収録したものだったようだ(しかし、やはり私もこのテイクが大好きで、本作に対する好印象に影響を与えていることは間違いない)。

PRETTY MAIDS
IN SANTA'S CLAWS
72
イン・サンタズ・クロウズ (1990)

彼らが北欧出身であることから企画されたと思しき、いわゆるクリスマス企画盤。クリスマスをテーマにした新曲2曲(と言ってもうち1曲はカヴァー)と、90年の夏に彼らの本国デンマークの「Rosklide Festival」というイベントでのライヴ音源3曲を追加したEP。表題曲はクリスマスっぽいゴスペル風のコーラスから始まる、Keyをフィーチュアした、彼らのポップ・サイドの中でもかなりコマーシャルな部類に属する明るい楽曲で、佳曲だが、なまじクリスマス・ソングと銘打たれてしまうと年中聴く気にならないかな(苦笑)。2曲目はTHIN LIZZYのメンバーとSEX PISTOLSのメンバーがコラボしたTHE GREEDIESの「A Merry Jingle」という、クリスマス・ソングのパロディのようなお遊びっぽい曲のカヴァー。当時同じマネージメントに所属していたDEEP PUEPLEのイアン・ギランがゲスト参加している。日本盤限定のブックレットでは来日公演時のメンバーたちの若気の至り的な浮ついた写真を見ることができる。1991年の特製カレンダー付き。彼らのような正統的なメタル・バンドがこういう「商品」をリリースできたあたり、いい時代だったんだな、と思わずにいられません。


PRETTY MAIDS
JUMP THE GUN
87
ジャンプ・ザ・ガン (1990)

前作発表後、元MAD MAX〜SINNERのエンジェル・シュライファー(G)を迎えてツアーを行なうも、ツアー終了後すぐに脱退し、リッキー・マークス(G)が加入。DEEP PURPLEのロジャー・グローヴァーをプロデュースに迎え、本格的なアメリカ進出を狙ったサード・アルバム。本作完成後、アラン・オーウェン(Key)が家庭の事情で脱退している。ジャケットのアートワークは前作の延長線上にある未来的なもので、前作にも若干漂っていたSF的というかKeyによるスペーシーな雰囲気が強調されたサウンドが当時オーバープロデュースと批判された(個人的には好きなサウンド)。さらに前作、前々作と異なり、アルバムのオープニング・ナンバーである#1「Lethal Heroes」がスピード・チューンでなかったことも、ファンにとっては肩透かしだったらしく(個人的にはスケール感があって素晴らしい曲だと思うが)、リリース時にはあまり評判の良くなかった作品。しかし、楽曲自体はパワフルなメタル・チューンから、メロディアスでキャッチーな曲、哀愁のバラードまで非常にクオリティが高く、純粋な楽曲のクオリティから言えば本作が最高傑作なのではないかと思えるほど。ただ、メタル・バブルが飽和状態を迎えていたこの時期、レコード会社からの充分なサポートを得ることができず商業的には失敗、同じマネージメントということで予定されていたDEEP PURPLEとのツアーも実現しなかった。なお、本作はアメリカでは「LETHAL HEROES」というアルバム・タイトルで発売されている。

PRETTY MAIDS
FUTURE WORLD
87
フューチャー・ワールド (1987)

前作発表後、リック・ハンソン(G)が解雇され、ピート・コリンズが復帰して(ただしピートは本作の発表前に再脱退)制作されたセカンド・フル・アルバム。前作が好評だったことで予算が増えたのか、本作は有名プロデューサーのエディ・クレイマー迎え、ニューヨークのスタジオで録音されている。元々彼らの個性は「KeyをフィーチュアしたHM」という点にあったが、本作のオープニングを飾るタイトル曲のスリリングなリフは、その彼らの持ち味が端的に生かされている例と言えるだろう。明らかに「売れ線狙い」なメジャー感のあるハード・ポップ・チューン#3「Love Games」、静から動への対比が見事なドラマティック・チューン#4「Yellow Rain」など、楽曲の幅はさらに広がり、さらなる音楽的成長を感じることができる。前半(当時のA面)に名曲が集中しているために後半(B面)のインパクトがやや弱く感じられるが、楽曲は粒揃い。個人的にはPRETTY MAIDSというバンドの音楽的な意味での「基本」とオリジナリティが確立されたのは本作だと思う。

PRETTY MAIDS
RED, HOT AND HEAVY
86
レッド・ホット・アンド・ヘヴィ (1984)

メジャーの『CBS』と契約を得て発表されたデビュー・フル・アルバム。前作デビューEPを発表したときのラインナップからピート・コリンズが脱退、ジョン・ダロウが解雇され、リック・ハンソン(G)、アラン・ディロング(B)が加入している。冒頭、オルフのカンタータ、「カルミナ・ブラーナ」の冒頭部である#1「Fortuna」からパワフルなスピード・ナンバー、#2「Back To Back」への流れは、当時多くのへヴィ・メタル・ファンをノックアウトした。現在でこそクラシカルな序曲からスピード・ナンバーになだれ込むという構成は珍しくないが、当時においてはまだ例も少なく、衝撃的だった。その「Back To Back」を筆頭に、#5、#7のようなメタリックな楽曲はもちろん、ASIAのようなイントロで始まる「Queen Of The Night」や、ドラマティックかつポップな要素もある「Waiting For The Time」のようなKeyの存在を生かしたキャッチーな要素もある楽曲も収録し、広がった楽曲の幅に音楽的な成長を感じる。タイトル曲は彼らのライヴにおける定番曲。北欧ならではの哀愁を帯びたメロディと、ドイツのメタル・バンドを思わせるパワフルなサウンドの融合はまさに北欧とドイツの中間地点であるデンマークならではのものであると言える。EUROPEやYNGWIE MALMSTEENなどと共に、当時の日本における「北欧メタル」ブームの一角を担う存在としての地位をこれ一枚で確立した。

PRETTY MAIDS
PRETTY MAIDS
76
プリティ・メイズ (1983)

1981年、ケン・ハマーことケネス・ハンセン(G)とロニー・アトキンスことポール・クリステンセン(Vo)を中心に、デンマークの地方都市ホーセンスでカヴァー・バンドとして誕生。その後オーディション等を経て集まったピート・コリンズ(G)、ジョン・ダロウ(B)、アラン・オーウェン(Key)、フィル・ムーアヘッド(Dr)という、ツイン・ギターにキーボードを加えた6人組体制となり、「Bullet Records」というインディーズ・レーベルと契約を得て発表した6曲入りEP。本作の発表に当たり、レーベルからの指示でメンバーは英語風の名前を名乗るようになる。前年1982年には同じデンマークのMERCYFUL FATEがセルフ・タイトルの自主制作盤でデビューしているが、この時期はNWOBHMの影響を受け、世界各国でヘヴィ・メタル第一世代と呼ぶべきバンドが続々と登場しており、彼らもその一翼を担う存在だったと言えるだろう。本作に収められた楽曲は、その後の彼らが発表した諸作品に比べれば荒削りだし、バラエティにも乏しいが、この時点でパワフルかつメロディアスなPRETTY MAIDSらしいサウンドを作り上げており、そこらのNWOBHMチルドレンたちとは「モノが違う」ことを感じさせる。サウンド・プロダクションこそ良好とは言い難いが、この時期英米以外のエリアから登場したバンドの初作品としてはかなりレベルの高い作品。オリジナル盤の酷いアートワークは、再発の際にここに掲載している新しいものに差し替えられている。

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