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THE POODLES
TOUR DE FORCE
82
ツアー・デ・フォース (2013)

前作「PERFORMOCRACY」が母国スウェーデンのチャートでNo.1に輝く大成功を収めた彼らの、「Frontiers Records」移籍第2弾となる5作目のフル・アルバム。プロデューサーは2nd「SWEET TRADE」以来の付き合いとなるマッツ・ヴァレンティン。アルバムによって多少色合いは変えつつも、基本的な音楽性はデビュー以来ほぼ変わっていないバンドだが、強いて言うなら本作では前作よりもヘヴィな感触とグルーヴィーなドライヴ感がフィーチュアされている印象。Voであるヤコブ・サミュエルのクセのある歌声のせいもあってか、これまでも単なる北欧メロディアス・ハードとは異なるダーティなフィーリングがあったが、本作では一層骨太な「ロックっぽさ」が強まっている。とはいえ随所に漂う哀愁、そして絶妙な盛り上がりを演出するサビ、いずれもファンが彼らに求める要素はしっかり提供されており、相変わらず安定感のある高品質な作品ではある。ややマンネリ感が出てきたのは否めないが、このバンドはシングル曲としてキッチリ大衆性のあるわかりやすい曲を提供できるのが強い。ボーナス・トラックである「En For Alla For En」は今年(2013年)5月にストックホルムで行われたアイスホッケー世界選手権のメインテーマで、そういう曲を担当しているという事実こそがそのポピュラリティの高い作曲センスと、今や彼らがスウェーデンを代表するバンドのひとつとして認識されているというステイタスを端的に表しているといえよう。


THE POODLES
PERFORMOCRACY
85
パフォーモクラシー (2011)

ライブ・アルバム「NO QUARTER」およびライブDVD「IN THE FRESH」のリリースを挟んで発表された4作目のアルバム。本作より所属レーベルを「Frontiers Records」に移籍している。アルバム・タイトルは「パフォーマンス」と「デモクラシー」を掛け合わせた彼らの造語。基本的な音楽性に変化はないが、本作ではより洗練されたモダンなアレンジとプロダクションで、彼らのキャッチーなメロディ・メーカーとしての資質が強く浮かび上がった作風となっている。これまでに比べるとダイレクトなヘヴィさや、生きのいいパワフルさはやや控えめだが、これくらい「良い曲」が揃えられていれば難癖をつけるのはよほどのひねくれ者だけだろう。ファースト・シングルとなった#5「Cuts Like A Knife」は、不思議とヒットしなかったようだが、名曲の多い彼らのレパートリーでも屈指の名曲だと思う。この曲などもまさにそうだが、やはりこのバンドはサビの盛り上げが絶品で、この良い意味での「わかりやすさ」がこのバンド最大の魅力である。これほど平均点の高い作品を発表し続けているにもかかわらず、日本での認知・人気が一向に上昇しないのが不思議なほど。母国スウェーデンでは遂にアルバム・チャートの1位に輝いたそうだが、その偉業もさもありなん、と納得させる、メジャー感漂うアルバムである。

THE POODLES
CRASH OF THE ELEMENTS
84
クラッシュ・オブ・エレメンツ (2009)

ポンタス・ノルグレン(G)がHAMMERFALLに加入するために脱退、後任にFORTUNEのヘンリック・ベリクヴィストが加入して発表された通算3作目のアルバム。基本的には前作の路線を引き継ぐ哀愁漂うメロディックなHR/HMアルバムであり、シングル・カットされた#5や、#2はキラー・チューンと呼べる強力なメロディアス・ハードの秀曲。また、哀愁のバラード#4、#10も、さすが北欧のバンドと唸らされる完成度の高さで、前者は本国スウェーデンでTOP10シングルとなった。一方でオープニングを飾る#1はミュージカル風の要素があり、QUEENを思わせるし、#7のモダン・ゴシック風のテイストや、ブルージーな感触のあるR&Rチューン#8、ヘヴィな感触の#9など、これまでのメロディアス・ハード路線の類型に収まらない楽曲を増やした意欲作でもある。HR/HMバンドにとって「異色な曲」というのは往々にして「余計な曲」になってしまいがちだが、このバンドの場合、ベースとなる楽曲のクオリティが高いのでバラエティの増加と、メロディアス・ハードとしてのクオリティの維持を両立できている。#11などに顕著だが、どんな曲だろうとサビで必ず満足させてくれる所がこのバンドの強みである。ロック・バンドとしての幅が広がり、スケール感を増したそのサウンドに、もはやイロモノの臭いはない。


THE POODLES
SWEET TRADE
84
スウィート・トレード (2007)

元々はユーロヴィジョン・ソング・コンテスト向けの「企画モノ」として誕生したものの、企画は失敗した(本選に出られなかった)にもかかわらず、スウェーデン国内ではかなり大きな商業的成功を収めたこともあってか、活動継続となったTHE POODLESのセカンド・アルバム。前作ではジャケットなどにもポップでコミカルな雰囲気が漂っていたが、本作では「脱イロモノ」を期したのか、かなりストイックなアートワークであり、哀愁を強めたその音楽はまごうことなき北欧HR/HMの伝統に則したものである。元々ヤコブ・サミュエル(Vo: 元JEKYLL & HYDE, MIDNIGHT SUN)、ポンタス・ノルグレン(G: 元GREAT KING RAT, TALISMAN)、ポンタス・エグバーグ(B: 元LION'S SHARE)といった、日本ではゼロ・コーポレーションからリリースされていたようなうだつの上がらないオーセンティックなHR/HMをプレイしていた人たちだけに、やはり音楽そのものに向き合ってほしいという思いがあるのだろう。本作も作曲やアレンジに多彩なゲストを迎え、充実した楽曲を揃えたメロディアス・ハードの秀作となっており、『プリズン・ブレイク』などに出演している人気俳優、ピーター・ストーメアが作曲に関わったシングル「Seven Seas」がTOP10ヒットを記録、本作も第8位まで上昇している。なお、翌08年にダンス・グループのE-TYPEと共演した「Line Of Fire」(3位)、同年に行なわれた北京五輪のスウェーデンの公式応援歌となった「Raise The Banner」(1位)という大ヒット・シングルを追加したバージョンも欧米ではリリースされており、これから買うならそちらがオススメ。本レビューの点数は国内盤のものですが、そちらの再発盤ならプラス2点。

THE POODLES
METAL WILL STAND TALL
85
メタル・ウィル・スタンド・トール (2006)

2005年にWIG WAMがユーロヴィジョン・ソング・コンテストで9位に入賞したのを受け、同コンテストのスウェーデン予選のCDおよびDVDの発売元であるレーベルから、ユーロヴィジョンの国内予選に参加することを前提に送り出されたバンドのデビュー・アルバム。WIG WAM同様、かつてはガチのHR/HMバンドでキャリアを培ったメンバーで構成されており、その実力はお墨付き。作曲にはスウェーデンの音楽シーンで活躍している人物から、AEROSMITHやティナ・ターナーなど、世界的メジャー・アーティストに曲を提供しているような人物まで、プロフェッショナルな顔ぶれが関わっており、演奏のみならず楽曲の面でも隙はなく、フック満載のハイ・クオリティなメロディアス・ハード作に仕上がっている。母国の人気ダンス・グループの女性シンガーから、オペラ歌手までゲストも多彩で、メタル畑では#11にマルセル・ヤコブ(B)が参加している。結果的には国内予選のファイナルには残ったものの、ユーロヴィジョン本選に進むことはできなかったが、母国の注目を集めることには成功し、コンテストで演奏したファースト・シングル#3はスウェーデンのチャートで2位、本アルバムは4位に輝き、タイトル曲も2位を獲得している。なお、本作のタイトル曲は、Voのヤコブ・サミュエルが歌っていたMIDNIGHT SUNの「METAL MACHINE」収録曲のリメイクである。かつてはシリアスなHR/HMをプレイしていた人たちが、こういうコミカルなイメージで売り出される(プレイにも心なしかおどけた雰囲気がある)ことについては、いささか複雑な思いもあるが、結果としてこういう音楽が大衆に認知され、売れるのであれば悪いことばかりではない。

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