Home | Information | Review | Archives | Column | Links | BLOG

ホームレビュー>PINK CREAM 69

PINK CREAM 69
IN10SITY
81
インテンシティ (2007)

バンド結成20周年を飾る、タイトルから想像がつく通り10作目のアルバム。前作からのインターバルが長めなのは、相変わらずデニス・ワード(B)が様々なバンドのプロデューサーとして引っ張りだこだったことや、ANDERSEN/LANE/READMAN や、PLACE VANDOMEといったメンバーが関わるサイド・プロジェクトでの活動が活発だったことが理由だろう。前作が個人的にはパッとしない仕上がりだったので、当初はスルーする予定だったのだが、ジャケットのアートワークがデビュー・アルバムを思わせる雰囲気だったため、ひょっとしたら原点回帰的な要素もあるのかと期待して買ってみた。03年のツアーからこれまでサポート・メンバー扱いだったウヴェ・リーテナウアー(G)を正式メンバーに迎え、ツインギター体制となった本作は、その影響か心なしかギター・サウンドに厚みが増し、前作に比べストレートな作風となっている。地力のあるベテランだけに、ソングライティング、演奏、サウンド・プロダクション、あらゆる面でソツのない仕上がりである。「なんとかハード・ロック」とか「なんとかメタル」みたいな細分化された小賢しい形容が一切ハマらない、本作を高く評価したBURRN!誌が形容する所の「アリーナ型」のハード・ロック・サウンドなのだが、それにしてはやや華に欠ける印象があるのが残念というか、不思議。


PINK CREAM 69
THUNDERDOME
79
サンダードーム (2004)

レーベルを「SPV / Steamhammer」に移籍してリリースする9作目のフル・アルバム(日本でのリリース元は引き続きAVALON)。前々作、前作同様、#1にイントロダクションとなる小曲を配しているが、続く#2がこれまでとは異なる重心の低いミドルテンポの楽曲で、これまでに比べて聴き手のボルテージを上げる煽情力が弱い。基本的な作風としては別段個性的ではないが、類型的というわけでもない、前2作を踏襲した彼らならではのオーセンティックなハード・ロックを展開している。ただ、今回はやや楽曲の幅を広げにかかった観があり、そのこと自体は悪くないのだが、そのバリエーションの拡散の方向性が今ひとつ私のようなヨーロピアンHR/HMファンの琴線に触れないのが残念。前作に比べれば多少変化していると思うが、世の中的には前作に続き「マンネリ作」扱いされることも多いので、そういう意味では良くも悪しくもファンの想定内の音、ではあるのかもしれない。近年ANGRAやADAGIOなどの作品を手掛けてプロデューサーとしての評価をとみに上げつつあるデニス・ワードならではの職人的な技を感じる完成度の高い音で、いい曲もあるが、個人的にはベテランの余裕と落着きが悪い方向に発露してしまったアルバムという印象が強い。#9「My Sharona」はTHE KNACKの79年の全米No.1ヒットのカヴァーで、ほぼ完コピ。

PINK CREAM 69
ENDANGERED
80
エンデンジャード (2001)

EP「MIXERY」(2000)のリリースを挟んで発表された、通算8作目のフル・アルバム。日本でのリリース元がビクターからAVALONに変わっている。文字通りアルバムのイントロダクション的な#1「Intro」から、ダイナミックなアップ・テンポのハード・ロック・チューン#2「Shout」への流れは前作の冒頭を彷彿とさせ、アルバム全体としても、基本的には前作「SONIC DYNAMITE」の流れを汲む作風である。デヴィッド・リードマンの歌唱スタイルもあって、サウンドの雰囲気には後期、アメリカで成功していた頃のWHITESNAKEからブルージーな要素を薄めたようなムードがあり、その王道感はとても欧州インディー所属のバンドとは思えない。適度にウエットでメロディアスな空気は漂っているものの、ドイツのバンドにありがちな「クサさ」もほぼ皆無で、世が世ならアメリカで売れてもおかしくなかったサウンドだ。前作同様シャープで手堅いハード・ロック・アルバムではあるが、かつてのPC69に比べて楽曲の「キャラ立ち」が今ひとつだからか、「無難な雰囲気」が全編に漂い、インパクトは決して強くない。まあ、それはクオリティの高さの裏返しでもあるのだが…。本編ラストを飾る#11「Pinball Wizard」はTHE WHOのカヴァー。


PINK CREAM 69
SONIC DYNAMITE
82
ソニック・ダイナマイト (2000)

前作で見事な「復活」を遂げたPC69の7作目のアルバム。期待感を煽るイントロ#1から、切れ味鋭いリフで迫る「これぞハード・ロックの王道!」と言いたくなるナンバー#2への流れで、今回も安心のクオリティが保証されている。メロウなサビが絶品な#5を筆頭にどの楽曲もキッチリとフックが効いており、捨て曲は見当たらない。ただ、後半やや落ち着いたムードの楽曲が増えていく印象があり(バラードが多いわけではない)、いささかテンションが落ちる感も否めない。前作に比べると曲調の幅も狭く、そのことを「アルバムの焦点が絞れている」と考えるか、「バラエティに乏しい」と感じるかによって評価が分かれる作品かもしれない。好意的に考えればハード・ロックの王道のド真ん中を歩んでいるという見方も可能で、それを強引なものと言わせないだけのクオリティは担保されているが、個人的にはバラエティに富んでいた前作の方が楽しめた。ボーナス・トラックの#14「Truth Hits Everybody」はPOLICEのカヴァー。

PINK CREAM 69
ELECTRIFIED
86
エレクトリファイド (1998)

いかなる心境の変化か、単にHR/HMレーベルである「Massacre」に移籍した影響か、ここ数作のオルタナティヴ/モダン・ロック路線をかなぐり捨て、一気に王道のHR/HMサウンドに返り咲き、未だ彼らに期待していたファンを喜ばせたアルバム。冒頭を飾る#1「Shame」からダイナミックさと哀愁がせめぎ合う絶品のフックを備えた名曲で、ミドルテンポの楽曲でなかなかここまでハマれるHRサウンドは個人的に久々だった。中庸な曲もあるが、どの曲にも充分なフックがあるし、#3「Break The Silence」や#8「Burn Your Soul」あたりもなかなかのキラーだ。前数作で模索していたモダン・ロック路線の名残を残す#4のタイトル曲から、ピアノをバックに歌い上げる心温まるバラードの#11「Gone Again」、一方でラルフ・シーパース(Vo:PRIMAL FEAR)がゲスト参加したパワー・メタル然としたバンド史上最も攻撃的な#5「Over The Fire」もありメリハリが効いているのが良い。サウンド全体としてもバスドラの音が協調され、へヴィな感触が強いのも洗練されたハード・ロック・サウンドをBGMにしてしまわない絶妙な押しの強さと言える。低迷期を脱する会心の一撃。


PINK CREAM 69
CHANGE
73
チェンジ (1994)

フロントマンであり、メイン・ソングライターであったアンディ・デリス(Vo)が脱退。後任として、音楽誌に出したメンバー募集の広告に応募してきた無名のイギリス人シンガー、デヴィッド・リードマンを迎えた新生PC69のアルバムは、タイトル通り変化のアルバムとなった。ひと言で言ってしまえば、グランジ/オルタナティヴへの転向である。前作の時点でその兆候は明らかであったが、アンディ・デリスの個性が完全なオルタナ化を阻んでいた。そして、オルタナ化をさらに推進しようとした他メンバーとの関係が悪化した結果、アンディは脱退に追い込まれたようだ。結果としてアンディのセンスはHELLOWEENの音楽に新たなケミストリーを生み出し、日本では大ヒットした。一方、もはや言われなければPC69だとはわからないほど完全にグランジ/オルタナティヴ化したこのアルバムは日本では完全に黙殺された。ドイツ本国でのリアクションは不明だが、次作がインディーズからのリリースになっていることを考えると、売れなかったことは想像に難くない。新加入のVoはちゃんと歌えるシンガーだし、演奏もグランジ・バンドとしてはありえないほどカッチリしているので、私のようなHR/HM畑の人間には「聴きやすいグランジ」なのだが、きっとそれではグランジ好きの琴線には触れないのでしょう。ていうか、そもそもHR/HMを出自とするバンドが急に音だけグランジ化しても、アティテュード重視のこのシーンでは相手にされないでしょ。まあ、このバンドに限らないけどね…。


PINK CREAM 69
GAMES PEOPLE PLAY
82
ゲームズ・ピープル・プレイ (1993)

ピンキーズ(彼らの愛称)にとってまさにこれから、というタイミングで、それまでの音楽シーンの流れを一気に変え、90年代以降の音楽シーンを決定したグランジ/オルタナティヴ革命が勃発。それまでバブル的といえるほどの人気を博していたHR/HMに急速に逆風が吹き始めてしまった。PC69も時代の流れからは無縁でいられず、なまじメジャー・レーベルに所属していたこともあって、より時代に対して敏感であらねばならなかった。そして出来上がったこのアルバムはグッとヘヴィさを増したシリアスな作風で従来の、特に英米の音楽シーンに疎い日本のHR/HMファンを戸惑わせた。この作風はアメリカのオルタナティヴ勢を意識したものであろうが、本作で聴ける音楽自体は音作りから言っても、アンディの歌唱スタイルから言ってもHR/HMの文脈で語ることができるもの(疾走パートだってあるし、そして何よりギター・ソロがちゃんとある)で、元々彼らが持っていた哀愁センスも随所に生きているので、個人的には許容範囲。ただ、これまであったコマーシャルなバラードや、ハード・ロック然としたイキの良さ、みたいなものは失われており、「ONE SIZE FITS ALL Part2」を求めていたであろう当時のファンの失望は容易に想像できる。過去の作品と切り離して考えれば、決して悪くない作品だが…。

PINK CREAM 69
ONE SIZE FITS ALL
87
ワン・サイズ・フィッツ・オール (1991)

ドイツを拠点としながら、アメリカ人ベーシスト、デニス・ワードと、ギリシャ人ドラマー、コスタ・ツァファリオを擁する多国籍バンド、PINK CREAM 69の日本デビュー作となるセカンド・アルバム。当時日本は空前の「ジャーマン・メタル」ブームであったが、このバンドはいわゆるHELLOWEEN系のバンドとは一線を画した洗練された音楽性によって、ジャーマン・メタルの垢抜けないサウンドとイメージに辟易していたHR/HMファンに高く評価された。このバンドは、ジャケットに象徴される華やかなイメージもさることながら、とにかく楽曲がよかった。#1「Livin’ My Life For You」から鳥肌モノのカッコよさで、サビの後追いコーラスを聴くたびにゾクッとしてしまう。続くヘヴィながらフックのあるコーラスが印象に残る#2「Talk To The Moon」、パワー・メタルばりの突進力を持つ(それでいて「ジャーマン・メタル」とは全く異なる)#3「Hell’s Gone Crazy」と言う流れで「これは凄いアルバムかも…」と予感させ、名バラードの誉れ高い#5、そして当時の彼らの代表曲となった名曲#6「Sign Of The Danger」によって名盤としての評価を揺るぎもないものに。その他の楽曲もフックのきいた佳曲が揃っている。アンディ・デリス(Vo)のセンスが遺憾なく発揮されたこの名盤は日本のHR/HMファンの喝采を受け、アメリカでもインディーズ・チャートの1位を記録するなど、高い評価を得た。もう少しデビューが早ければ、世界を獲れたかもしれないのだが…。

PINK CREAM 69
PINK CREAM 69
84
ピンク・クリーム 69 (1989)

「METAL HAMMER」誌のコンテストをきっかけにデビューを勝ち取ったPINK CREAM 69のファースト・アルバム。日本ではセカンド「ONE SIZE FITS ALL」のヒットを受けて発売されたので、リアルタイムのファンの多くはこちらを後に聴いたのではないだろうか。ドイツでは本作発表に伴うツアーで既に評判を呼んでおり、地元のHR/HMミュージシャンは口々に彼らを褒め称え、一種の「ミュージシャンズ・ミュージシャン」的な注目を集めていたという。1、2曲目を聴いた時点では「ちょっとありがちなハード・ロックかな…」と思ったが、スリリングなリフで押してくる#3でオッと身を乗り出し、哀愁を帯びたキャッチーなサビが印象的な#4、そして珠玉の哀愁バラード#5で「こりゃイイね」とたちまち意見を翻しました。#7のような速い曲も全く「ジャーマン・メタル」とは趣を異にしており、そういう意味で「ドイツ臭さ」は皆無。むしろアメリカ的と感じられるノリのサウンドだが、随所に光る哀愁のメロディはやはりアメリカ人からはなかなか出てこないものだろう。日本において人気の高いバラード#10などは歌謡曲的でさえある。メジャー・プロダクト(ドイツの「Epic」)だけあって(当時のドイツのHR/HMとしては)音質は良好だし、演奏も新人離れした安定感(特にベースに存在感があるのが良い)。アンディ・デリスの歌唱も、この音楽に対しては個性・実力ともに充分で、デビュー・アルバムとしてはかなりの完成度を示している。

<Review Indexへ
▲このページのトップへ
Homeへ


Copyright (C) 2004- METALGATE JAPAN All Rights Reserved.