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NIGHTWISH
IMAGINAERUM
86
イマジナリアム (2011)

バンドの個性の大きな一端を担っていた看板Vo、ターヤ・トゥルネンの解雇、アネット・オルゾン加入に伴うサウンドの変化(ほぼ歌唱パートだけだが)は多くの毀誉褒貶を生んだ。しかし、その孤高の音楽のクオリティは微塵も揺るがず、良くも悪しくも話題になったこともむしろプラスに働いたのか、前作「DARK PASSION PLAY」は全世界で約200万枚を売り上げる過去最大のヒット作となった。そしてアネット加入後第2弾となる本作は、映画との連動作になるという触れ込みで発表された。想像力を刺激するイントロの#1からシアトリカルな印象が強く、#4のようなジャズっぽい曲や、#7のようなアラビア風のエキゾチックな小曲を導入することで、これまでのNIGHTWISHサウンドとは異なる、より広い世界観を描き出している。ケルト風の旋律がフィーチュアされた#5や、フォーキーな手触りの#8のような曲も、これまでこういう楽曲がなかったわけではないが、より徹底したアプローチによって、HR/HMの枠を軽々と飛び越えている。アネットの表現力も向上しており、#6に見られるような下世話な感触の歌唱はターヤでは無理だっただろう。楽曲のバラエティが増したことがメタル的な意味でのカタルシスを減少させており、前作の「Bye Bye Beautiful」や「Amaranth」ほどのキラー・チューンは存在していないため、メタル・ファンにとってはやや物足りない部分もあるが、映画云々の話を知らずともそこにストーリーとドラマがあることを感じさせるであろう芳醇な音楽のクオリティはやはり孤高。

NIGHTWISH
DARK PASSION PLAY
88
ダーク・パッション・プレイ (2007)

前作が全世界で100万枚以上のセールスを記録する大成功を収めながら、他のメンバーとの不和に端を発するターヤ(Vo)解雇という衝撃的な事件を経て発表された注目のニュー・アルバム。2000人以上の候補の中から迎えられたのは元ALYSON AVENUEのスウェーデン人、アネット・オルゾンで、ターヤとは異なるオーソドックスなスタイルのシンガーである。正直、若くて美人であるならともかく(フロントマンにルックスは重要です)、35歳(子持ち)で特別美しいとも思えない彼女が選ばれたことは全くもって疑問。アルバムのオープニングを飾る#1はなんと14分に及ぶクラシカルな堂々たる大作でバンドの意気込みを感じさせるが、アネットの歌唱力をお披露目するというよりはむしろ、「ターヤだったらもっと見事に歌いこなせたはずなのに…」と思わせてしまうことは皮肉。とはいえ、曲によっては彼女の透明感ある歌声がなかなか魅力的に響いており、オペラティックな、ある意味特殊といえる歌唱に抵抗を覚えるような向きにとっては逆に「聴きやすくなった」のかもしれない。日本盤ボーナス・トラックを含めると80分に及ぶ長尺の作品ながら、#5のようなアグレッシヴな曲から#11のようなケルト風のインストまでバラエティに富んだ楽曲を揃え、メランコリックな美しいメロディの充実によって最後まで飽きさせない。歌詞は中島みゆきもビックリの暗い恨み節で、ターヤとの決別がいかにメンバー(というかツォーマス?)にとって重いものだったのかを感じさせるが、そのことがこの哀メロの充実につながったのだとすれば、不幸は創造の糧、というのはまんざら嘘でもないのかもしれない。ターヤの脱退によって個性とアクが薄れたことを無視すれば、文句なしに優れたアルバムである。

NIGHTWISH
ONCE
92
ワンス (2004)

ヨーロッパにおける絶大な人気を受け、ついに大メジャーの「UNIVERSAL」が、彼らの所属レーベルである「SPAINFARM」を丸ごと傘下に収める形で彼らのワールドワイド・リリース権を取得。日本でも従来のトイズ・ファクトリーからではなく、ユニバーサルからリリースされた通算5作目。正直個人的には前作の作風はいささか洗練されすぎで、当時はやや物足りなさを感じていたので、本作を購入する気はあまりなかったのだが、たまたまディスクユニオン新宿HR/HM館の店内演奏で本作を耳にし、そのあまりのカッコよさに即購入決定。METALLICAかPANTERAかというような超ヘヴィなリフと従来のオペラティックな歌唱のミスマッチが面白い#1「Dark Chest Of Wonders」、そしてダンサブルとさえいえるようなアレンジが斬新な#2「Wish I Had An Angel」(マルコの歌うパートがたまらなくカッコいい!)の流れは最高。全体的にヘヴィさを増し、これまでシンセによって表現していたシンフォニック・アレンジに本物のオーケストラを起用することで一層スケール感を高めている。従来のNIGHTWISHらしさと新機軸を見事に融合させた傑作で、まさにグローバル・スタンダードを満たしたヨーロッパのトップ・バンドたる風格を見せつけた一枚。ギター・ソロが殆どないのはちょっと残念だけど。ところでコンテンポラリーなヘヴィさを増したのはEVANESSENCEの成功を意識した結果ですかね?

NIGHTWISH
CENTURY CHILD
87
センチュリー・チャイルド (2002)

前作が本国フィンランドで初登場No.1に輝き、「国民的バンド」としての地位を確立したNIGHTWISHの通算4枚目のフル・アルバム。ベーシストがサミ・ヴェンスケから元TAROTで、SINERGYのアルバムにも参加していたマルコ・ヒエタラにチェンジしている。TAROTではシンガーも務めていたマルコはここでもただベーシストとして参加するにとどまらず、アルバム中いくつかのパートでその雄々しい歌声を響かせ、ともすれば個性的であるがゆえに画一的に響きがちなNIGHTWISHのヴォーカル・アレンジに新味を加えている。バンドの地位を反映するかのように、音楽性は洗練を加えており、パワー・メタル的な要素は前作からさらに減退している。もちろんオペラティックでシンフォニック、という基本線は変わらず、ある意味NIGHTWISH流シンフォニック・メタル・サウンドの完成型とさえ呼びたくなる完成度。アンドリュー・ロイド・ウェバー作のミュージカル「オペラ座の怪人」からの楽曲「Phantom Of The Opera」をカヴァーするなど、意欲的な姿勢も見える。…ただ、正直メタルとしてのエキサイトメントには欠け、美しい映画音楽を聴いているような気分になってしまうというのもまた事実。まあ、ヨーロッパの大衆を狙っていくにはこれでいいのかな。

NIGHTWISH
OVER THE HILLS AND FAR AWAY
79
オーヴァー・ザ・ヒルズ・アンド・ファー・アウェイ (2002)

シングルとして欧州各地でビッグ・ヒットとなった、ゲイリー・ムーアのカヴァーであるタイトル曲を中心に制作された企画盤。シングルのカップリングである3曲(うち1曲は彼らのファースト・アルバム収録曲のセルフ・カヴァー)に、ライヴ音源11曲で構成。90年代を通してHR/HMから距離を置いていたために、若いHR/HMファンに忘れられていたゲイリー・ムーアの曲を取り上げたセンスは拍手喝采もので、よりシンフォニックになったアレンジも素晴らしい(ギター・ソロはやはりオリジナルに比べ物足りないが:笑)。新曲も手堅いNIGHTWISH節で、ファンを失望させない出来。ライヴはあくまでオマケながら、正規のライヴ・アルバムがリリースされておらず、なかなか彼らのライヴを実際に体験することができない日本のファンにとっては嬉しいオマケ。さすが現地の人気バンドだけあってプレイもオーディエンスもテンションが高い。何よりターヤがライヴでもアルバム同様オペラティックに歌えることが確認できるだけでも一聴の価値はあろう。企画盤なので点数はこんなもんだけど、ファンは必携。

NIGHTWISH
WISHMASTER
85
ウィッシュマスター (2000)

前作で成功の階段を上り始めたバンドを、文字通り欧州のトップ・バンドの地位に押し上げたサード・アルバム。基本線は前作と変わらず、正統派のメロディック・ヘヴィ・メタルにシンフォニックなアレンジとオペラティックなヴォーカルが乗ったもの。サウンドはより洗練され、前作に微妙に漂っていたB級臭さはもはや微塵もない。洗練されたのはサウンドだけではなく、楽曲もコンパクトに整理され、いわゆる大作曲を除いては殆どが3〜4分台にまとめられ、非常に聴きやすい仕上がりとなっていることが商業的成功の要因か。ただ、個人的には前作にくらべクサいシンフォ・アレンジが控えめになり、過剰にドラマティックな展開が目立たなくなった本作はやや薄味の感があり、物足りない。アルバムの本編ラストを飾る8分を超える大作「FantasMic」のような濃いめの曲をもっと聴きたいというのが本音。ついでに言うなら前作に比べてミディアム・テンポの落ち着いた曲が増えたことも、せっかく前作で集めた日本のメロスピ・ファンの注目度を下げる原因になってしまったような感も。#8「Crownless」のような悶絶スピード・チューンがもう1、2曲欲しかったな。実力のあるバンドだと思うし、実際本作のクオリティも高いのだけど、それだけに「もっと」を望んでしまうのは贅沢かしら。

NIGHTWISH
OCEANBORN
89
オーシャンボーン (1999)

日本デビュー作となるセカンド・アルバム。前作「ANGELS FALL FIRST」にはほんのりと感じられたゴシック・メタルへの色気は姿を消し、疾走感を大幅に増した結果、誤解を恐れずに言うならメロディック・スピード・メタル的な印象の音像となっている。とはいえ、メイン・ソングライターであるツォーマス・ホロパイネン(Key)が影響を受けたという、映画音楽の影響が直接的に表れたシンフォニック・アレンジを纏った美旋律を、本格的な声楽の訓練を受けたターヤがオペラティックに歌い上げるその音楽は圧倒的な個性とクオリティを示しており、類型的な凡百のバンドとは一線を画している。疾走感溢れるスピード・チューンからキャッチーなミドル・チューン、ロシア民謡を思わせるインスト、美しいバラードからヘヴィでミステリアスな楽曲まで捨て曲は1曲とてなく、本編ラストを締めくくる映画「The Snowman」のテーマ曲#10「Walking In The Air」のカヴァー(かつてRAINBOWもカヴァーしていた)まで一気に聴かせる。シンフォニックかつドラマティックである割に小難しくならず、メロディックでクラシカルであるにもかかわらず充分にヘヴィなエッジを備えたそのサウンドはまさに唯一無比と言っていいだろう。本国フィンランドでシングル#4「Sacrament Of Wilderness」がチャートのナンバー1に輝き、大成功を収めたのも納得の名盤である。

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