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NOVUM INITIUM
84
ノウム・イニティウム (2013)

前作で復帰した看板シンガー、ヨルン・ランデ(Vo)が「自然消滅」のような形で脱退し、THUNDERSTONEやAT VANCEで知られるリック・アルツィが加入。さらにBにフィンランド人であるヤリ・カイヌライネン(元STRATOVARIUS)、Drにチェコ人であるマーティン・スカロウプカ(CRADLE OF FILTH)を迎えるなど、大幅なメンバー・チェンジを経て発表された5作目のアルバム。メンバーは変われども基本的な音楽性は変わらず、かつてローランド・グラポウ(G)が在籍していたHELLOWEEN的なパワー・メタルというよりは、もう少し「歌モノ」としての色が強い骨太なメロディック・メタル・サウンドを展開している。ローランドと共に音楽的主導権を握っているのがキーボーディストであるアクセル・マッケンロットであるためか、Keyが効果的に使用されており、ヘヴィな曲から10分を超える大作まで、音楽のスケール感とキャッチーさの向上に大きく貢献している。新Voであるリックは前任のヨルン・ランデを少し小粒にしたようなシンガーではあるが、比較さえしなければ軽く平均点を上回る優れたヴォーカリストであることは間違いない。ソロイスト志向な(その割に技術的には心もとない)ギタリストを中心にしたメロディック・メタル・バンドという点では同郷のAXEL RUDI PELLに通じる安定感(こちらの方がややモダンなスタイルではあるが)を感じさせる存在になってきた。

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TIME TO BE KING
82
タイム・トゥ・ビー・キング (2010)

ヨルン・ランデ(Vo)が復帰して発表された4作目のアルバム。前作発表後、ローランド・グラポウ(G)はこのバンドに対する情熱が薄れてしまい、無名バンドのプロデュースなどに精を出しており、そんな彼のやる気のなさに見切りをつけたマイク・ディメオが脱退した。その結果ヨルン復帰が浮上したようだが、本作の音を聴いて、きっとヨルン復帰の条件は「典型的なメロディック・スピード・メタルをやらないこと」だったのではないか、と思った。元々ヨルンはそういう曲は好きじゃなかったようだし。本作の音楽性はパワー・メタル的な音圧を持ちつつも、よりオーソドックスなHR/HMに接近したもので、タイトル通り王道感のある落ち着いた作風である(こういう音が彼らに求められているのかどうかは微妙だが…)。NARNIAのカール・ヨハン・グリマーク、IRON SAVIORのピーゼルなど外部ライターの協力も得て揃えられた楽曲はおしなべてクオリティ高く、特に#3、#6、#9あたりはなかなかの良曲。ただ、ヨルンのパワフルなVoに対抗するかのようにGとKeyの音もかなり大きくミックスされており(あるいは逆にやかましいバッキングに対抗するためにヨルンが必要以上にパワフルにガナったのかもしれないが)、クドめの楽曲が続く#7、#8あたりで聴き疲れするのと、ヘッドホンやイヤホンで聴いていると耳が疲れるのが難点。

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MK II
83
MK II (2007)

看板Vo、ヨルン・ランデと、バンドの中心人物の一人と目されていたウリ・カッシュ(Dr)が脱退。後任に元RIOTのマイク・ディメオ(Vo)と元RAGEのマイク・テラーナ(Dr)が加入して制作された3枚目のアルバム。本作より国内盤リリース元が従来のAVALONから欧州の所属レーベルAFMの日本法人に変わっている。METALBLADEといい、最近欧米のメタル・インディーズが日本に現地法人を設立する例が見られるようになり、経済のグローバル化を感じます(笑)。そんな一般リスナーにはどうでもいいことはさておき肝心の音楽であるが、基本的な方向性に変化はなく、楽曲のクオリティも下がっていないので、これまでの彼らの音楽を気に入っていた向きであれば大きく裏切られることはないだろう。ソングライターの一人だったウリの脱退をものともせず、ローランド(G)がなかなかクオリティの高い楽曲を揃えており、ヨーロピアン・メタルのファンであれば楽しめる好盤に仕上がっている。ただ、やはり希代の名シンガーだったヨルン・ランデの後任という重責を担うにはマイク・ディメオは力不足で、彼独特の柔らかでブルージーな歌唱が、音楽から迫力とテンションを削いでしまっている。適度な疾走感や哀愁といったツボは押さえつつも、飛びぬけたキラー・チューンが不在なこともあり、僕の中で彼らは「いい中堅メタル・バンドのひとつ」以上の存在ではなくなってしまったかな。アルバム・タイトルはメンバー・チェンジでバンドが「マークII」になったということか、それとも「マイクが2人加入した」という意味か(笑)。

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AERONAUTICS
86
エアロノーティクス (2005)

前作が好評を博し、正式にバンドとして活動する基盤を築いた彼らのセカンド・アルバム。基本的には前作の延長線上にあるメロディックなHR/HMをプレイしており、単純に疾走するメロディック・パワー・メタル・チューンが姿を消し(#3「Wounds」にはそれっぽい雰囲気が強く残っているが)、前作にも増してヨルン・ランデの力強い歌声を中心に据えたヴォーカル・オリエンテッドな王道HR/HMの色彩が強まっている。#1、#3、#5、#8、#10といったパワフルな曲も魅力的であるが、恐らくこのバンドが他のバンドとの差別化を図っていく上で重要になるのはシングルとなった#2「Back For My Life」に代表されるメロウな味わいを持ったアダルトな楽曲だったりするのかもしれない。約10分におよぶ大作の#11「Black In The Burn」も感動的な展開を聴かせてくれる。とにかくどの曲にも印象的なフックが盛り込まれており、やや後半テンションが落ちた前作に比べ、作品全体のクオリティは上がっている。ローランド(G)のプレイも、いい意味で「弾き過ぎ」を抑えて落ち着いており、正直今まで芸のないズクズクのバッキングと弾き切れていない速弾きにいささかウンザリしていた身としては、好感度アップ。手数が多くテクニカルな割に疾走感にもグルーヴ感にも欠けるウリ・カッシュのドラミングは相変わらずですが(苦笑)。

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86
マスタープラン (2003)

HELLOWEENを脱退した(解雇された)ローランド・グラポウ(G)とウリ・カッシュ(Dr)がSYMPHONY Xのラッセル・アレン(Vo)、CHILDREN OF BODOMのヤンネ・ウィルマン(Key)と新しいプロジェクトを立ち上げる、と聞いたとき、「おっ、こりゃ期待できそうだ」と思いました。しかし、アルバム制作を前にしてラッセル・アレンは離脱、代役として数多くのプロジェクトにおける卓越した歌唱によって、マニアの間では既に評価の高かったノルウェー人シンガー、ヨルン・ランデが参加。こうしてむしろ高まった期待の下、リリースされたデビュー・アルバムが本作(バンド名はメキシコのファンの提案によるもの)。そして、私は#1「Spirit Never Die」のイントロにおけるメロディックなリード・ギターのハーモニーでいきなりハートを撃ち抜かれました。こういうハモりに弱いんだよね〜。かつてローランドとHELLOWEENで同じ釜の飯を食ったマイケル・キスク(Vo)が参加した#4や#10など、メンバーの経歴に期待されるメロディック・パワー・メタル的な音楽をキッチリ提供しつつも、全体的にはヨルン・ランデのソウルフルなVoを活かした骨太のHR/HMを展開しており、いわゆる「メロスピ」のファンにとどまらない、幅広いファン層を開拓できる音楽である。哀愁のメロディアス・ハード的な#6なども良い。本作でKeyをプレイしているヤンネ・ウィルマンは本作リリース前に脱退し、メンバーとしてはアクセル・マッケンロットなる人物がクレジットされている。ちなみに歴戦のメンバーの陰に隠れて目立たないベーシストはIRON SAVIORのヤン・エッカート。しかし欧州でシングルとなった「Enlighten Me」はなぜ日本盤には収録されなかったのでしょう? たしかに日本人好みの曲ではないものの、よく出来た曲なのに。とりあえず、欧州では評価・セールスとも好評だった話題作。

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