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KAMELOT
SILVERTHORN
85
シルヴァーソーン (2012)

前作発表後、KAMELOTの世界観の体現者というべき孤高のシンガー、ロイ・カーンがメンタル面の問題で脱退するという大事件が勃発。ツアーはRHAPSODY OF FIREのファビオ・リオーネを迎えて行なわれ、そのツアー中にゲスト参加したシンガーの一人であるSEVENTH WONDERのトミー・カレヴィックが後任Voとして加入することになった。何しろカーンの個性は強烈だったのでどうなることかと思われたが、蓋を開けてみるとトミーの明らかにカーンを意識した歌唱はなかなか様になっており、むしろ拍子抜けするほどダメージは小さい。従来のカーンとトーマス・ヤングブラッド(G)によるソングライティングが、トーマスとオリヴァー・パロタイ(Key)によるものに切り替わったが、楽曲の面でも「らしさ」をキープした、ゴシック風味のシンフォニック・パワー・メタルを提示できている。さすがにカーン在籍時ほどの「妖気」は薄れているが、近年はむしろそのディープなムードが過剰にさえ思えていたので、むしろ敷居が低くなったかもしれない。実際本作では最近弱めだったメロディを意識したとのことで、そういう意味では「脱カーン・ワールド」な作品なのだが、一方でトミーの歌唱を筆頭にカーン時代のイメージを守ろうという思惑も垣間見え、そういう意味では中途半端な作風とも言える。とはいえ、決め手にこそ欠けるもののさすがにクオリティは高く、控えめに言っても無難な仕上がりであることは確か。むしろ状況を考えれば力作と呼んでも褒め過ぎではないだろう。コーラスでAMARANTHEのエリゼ・リード、グロウルでTHE AGONISTのアリッサがゲスト参加。

KAMELOT
POETRY FOR THE POISONED
85
ポエトリー・フォー・ザ・ポイズンド (2010)

前作発表後、デビュー以来のメンバーだったグレン・バリー(B)が脱退、デビュー以前、最初期のKAMELOTに在籍していた「オリジナル・メンバー」のショーン・ティベッツ(B)が「復帰」している。前作において、もはやメタル・バンド離れしている、と思わせるほどにアーティスティックに成熟した世界観は本作においても一片の揺るぎもない。とはいえ、あまりにハイブロウな印象のあった前作に比べると若干ではあるがヘヴィ・メタルとしてのカタルシスが復活しているような感もあり、それを「芸術点」的には減点、と見る向きもあるかもしれないが、若干取っつきはよくなった。ヘヴィな#1にSOILWORKのビヨーン"スピード"ストリッド(Vo)が参加、#4に同郷フロリダの大先輩、SAVATAGEのジョン・オリヴァ(Vo)が参加、#5はこのバンドには珍しくギターが頑張っている、と思ったらガス・G(G:FIREWIND, OZZY OSBOURNE)が参加、バラード#6や、アルバムのクライマックスを飾るバンド史上最もプログレッシヴな四部構成の組曲でシモーネ・シモンズ(EPICA)がロイ・カーン(Vo)とデュエットを聴かせるなど、数多くのゲストが参加しているのも本作の特徴。全体としてはやっぱりちょっと普通のメタル・ファンにはちょっぴり「雰囲気モノ」めいた印象もあるが、アルバム本編のラストを飾る#14がわかりやすくアップテンポな曲なので、聴き終えた後の印象は前作ほど重くないのが救い。


KAMELOT
GHOST OPERA
83
ゴースト・オペラ (2007)

ライヴ作品「ONE COLD WINTER'S NIGHT」を経てリリースされた、KAMELOTの通算8作目となるスタジオ・フル・アルバム。本作より正式なKey奏者として前作のツアー・メンバーだったオリヴァー・パロタイが加入している。コンセプト・アルバムが2作続いたが、本作は以前からのアナウンス通りコンセプト作ではない。とはいえ音楽性自体は変わることなくドラマティックで、カーン(Vo)の雰囲気のあるVoを生かした、良く言えば高尚で格調高い、悪く言えばとっつきにくい孤高のエピック・メタルを展開している。ただ、今回も前作同様一般的なメタル・ファンを虜にするようなキラー・チューン(例えば「The Fourth Legacy」や「Forever」や「Center Of The Universe」のような)を欠き、さらに前作にあったヘヴィネスやダークネスといったインパクトも薄い本作は、その「とっつきにくさ」が「ギリギリアウト」のレベルに達し、「雰囲気モノ」と化してしまっているようにも思える。時にプログレッシヴ、時にゴシックでさえあるそのサウンドは、東洋的な音階と女声Voを取り入れた幽玄な#6を筆頭に、部屋を真っ暗にしてキャンドルなどを灯し、目を閉じて聴き込めばきっと浸れるに違いない深遠な音楽ではある。ただ、子供でさえ多忙な昨今、そのような贅沢な鑑賞法が許される人間は残念ながらそう多くないのではないだろうか。個人的にはコンセプトの縛りから解放されて、もっとコンパクトでキャッチーな作風になることを期待していたのだが…。

KAMELOT
THE BLACK HALO
87
ザ・ブラック・ヘイロー (2005)

ポニーキャニオンがHR/HMから撤退してしまったため、キングに移籍してリリースされた新作は、前作「EPICA」のコンセプトを受け継ぎ、完結させるアルバムとなっている。これまでイントロに続く頭の1曲にキャッチーかつアップテンポな楽曲を配置し、アルバムの世界に引きずり込んできた彼らだが、今回アルバムの冒頭を飾るのは、KAMELOT史上最もヘヴィで邪悪なムードをたたえる「March Of Mephisto」。欧米で大人気を誇るブラック・メタル・バンド、DIMMU BORGIRのシャグラット(Vo)のデス声をフィーチュアしたこの曲はキャッチーとは言いがたいが、その妖しくも邪悪なムードに、否が応にもアルバムの世界へと引き込まれずにはいられない。とにかく本作では前作にもまして雰囲気作りが素晴らしく、オーディオの再生ボタンを押したとたん、部屋の空気が変わる。一部で批判されているように、メタルとしてのわかりやすさ、即効性に欠ける面もあるのだが、(だから点数は控えめ)音楽全体から発散される神秘的なムードは凡百のメタル・バンドには決して醸し出せないもので、いかに彼らの音楽にマジックがあるかを痛感させられる。ホント、とてもファーストの頃と同じバンドとは思えないね、この音楽の深みは。これほどまでにコンセプト・アルバムを作るのに相応しい資質とアレンジ力を備えていながら、本作が「バンドにとって最後のコンセプト・アルバム」だというのだから、彼らの次の一手からは目が離せない。

KAMELOT
EPICA
90
エピカ (2003)

「充分なプロモーションをしてくれない」という理由で、日本でのレコード会社をビクターからポニー・キャニオンに移籍して発表された6作目。タイトル通り、ゲーテの名作「ファウスト」をモチーフにした壮大な音楽叙事詩(Epic)である。前々作、前作と続き、相変わらず彼らはオープニングでリスナーを虜にする。イントロのSEに続く「Center Of The Universe」はメロディックでドラマティックなヘヴィ・メタルが好きな人なら一発で気に入ること請け合いのスケール感に満ちた名曲。前作のレビューで指摘したギター・パートの面白みのなさは相変わらずなのだが、本作ではキーボードやクワイア、女声ヴォーカルなどを駆使して、より豊潤なシンフォニック・アレンジを加えることによって、その欠点を殆ど意識させずにリスナーを音楽世界へ引き込むことに成功している。ヘヴィ・メタリックなわかりやすさや、キャッチーな要素は前作の方が上回っているのかもしれないが、妖艶さを増したロイ・カーンのヴォーカルによって歌い上げられるメロディの深みは、他の同系バンドの追随を許さぬ高次元へと上りつめている。気軽に聴ける作品ではないが、聴き込む価値は充分にある、孤高の傑作。この作品を以って彼らは「エピック・メタル」というジャンルの頂点へと到達したといえるだろう。

KAMELOT
KARMA
89
カーマ (2001)

BURRN! 誌のレビューでの絶賛を受け、日本のメタル・ファンの間でもかなりの話題となったアルバム。ドイツやスペインでもかなり好調なセールスを記録した模様。そして、その実績に違わぬ高品質なアルバムに仕上がっている。グリーグの「ペール・ギュント」の1パート、「ソルヴァイの歌」のテーマ・メロディを取り入れた「Forever」は前作のタイトル曲に匹敵するインパクト。そしてタイトル曲「Karma」は、まるで一本の大作映画を観たかのような感動をもたらすスケール感溢れる名曲。それ以外の曲が充分なクオリティを持ちつつも、やや地味に聴こえてしまうのも、この2曲があまりにも突出していればこそ。3部構成の組曲、己の若さを保つために処女の生血の風呂に入っていたというエリザベート・バソリーをテーマにした(かつてCRADLE OF FILTHや日本のXもこの話をテーマにアルバムや曲を作っていましたね)「Elizabeth」なんて普通のバンドのアルバムに入っていたら名曲! と絶賛されたはず。ただ、前作、本作と聴いていて感じた問題点を敢えて指摘するなら、ギターのアレンジがやや単調。さらにいうならギター・ソロは全く面白みに欠ける。正直、トーマス・ヤングブラッド(G)はソングライティングの中心として、バンドに不可欠な存在であることは間違いないが、ギタリストとしての技量が作り出す音楽に釣り合っていないように思える。技術的に優れたプレイヤーをもう一人加え、ツイン・ギターにしてみるとさらに良くなるのでは…。これだけの傑作を作れるバンドだからこそ、敢えて苦言を呈してみました。

KAMELOT
THE FOURTH LEGATHY
88
フォース・レガシー (2000)

いや〜、化けましたね。このバンドのことは一応デビュー当時から知っていたんですが、正直、アメリカのバンドらしからぬヨーロピアン・テイストのバンドだね、くらいにしか思っていませんでした。そんな彼らに元CONCEPTIONのロイ・カーンが加入したと聞いても、このバンドには勿体ない、と思っていたくらいです。前任のシンガーも決して悪くはなかっただけになおさら。だからこのアルバムも発売してすぐに買ったりはしなかったのですが、ネット上でタイトル曲のサンプルを聴き、すぐに買いに走りました。それくらい、タイトル曲#2「The Fourth Legacy」のインパクト、完成度は圧倒的。幻想的なまでに美しい歌メロと、RHAPSODYを思わせるシンフォニック・メタル風の壮麗なアレンジを携えて疾走する様には鳥肌が立ちっぱなし。その他の曲も、タイトル曲ほどのインパクトはないものの、充分にクオリティの高い正統派メタル・チューンが揃っており、アルバムとしての完成度は非常に高い。中でも中近東風のメロディを取り入れた#5「Night Of Arabia」は2000年版「Gate Of Babylon」と言うべき仕上がり。日本盤ボーナス・トラックであるライヴ・テイクの「Can You Remember」には「ユミコに捧ぐ」というクレジットがあり、「オオサカ」や「サヨナラ」といった日本語が登場。どうやらCONCEPTION時代の来日時にアバンチュールした日本の女の子との思い出を歌っている模様。果たしてユミコさんはこの曲を聴いたのでしょうか…。

KAMELOT
SIEGE PERILOUS
78
シージ・ペリロス (1998)

前作発表後、メンバーチェンジが発生。ドラムがリチャード・ワーナーからキャセイ・グリロに、ヴォーカルがマーク・ヴェンダービルトから元CONCEPTIONのロイ・S・カーンにチェンジしている。どちらのパートの前任者もそれなりの実力者だったが、新たに加入した二人は明らかに前任者を上回るAクラスの人材で、バンドの演奏力は明らかに強化された。新Voのロイ・S・カーンはノルウェー人なのに何でアメリカのKAMELOTに? と思ったが、トーマス・ヤングブラッドが直接ロイに国際電話をかけて参加を打診したのだという。まあ、CONCEPTIONとKAMELOTは同じ「NOISE」所属のレーベル・メイトでもあるしルートはあったということなのでしょう。正直、好き嫌いはあれ、間違いなく個性的で高度な音楽をプレイしていたCONCEPTIONに比べるとKAMELOTのサウンドというのは目新しさのない「普通のHM」で、このバンドにロイのような孤高の個性を備えたシンガーはもったいないと思ったが、流石に実力者、見事に歌いこなしてサウンドのグレードを高めている。ロイが加入した時点で歌詞を含め楽曲はほぼ出来上がっており、一部の歌メロを除きロイからのインプットはないようで、当然音楽の基本線も変わっていない。しかし、このロイ独特のウエットな歌唱が乗るだけで「神秘性」が前作比160%増といった感じで、やはりVoの個性って重要だなぁとつくづく感じさせられる一枚。

KAMELOT
DOMINION
76
ドミニオン (1996)

とても90年代アメリカのバンドとは思えないほど正統的でヨーロピアン・テイストなサウンドを披露し、一部で高い評価を得たKAMELOTのセカンド・アルバム。現在のHR/HMシーンの状況ではツアーをやることもままならないため、前作のリリース後ほどなくして本作の制作に入ったそうで、当然音楽の基本線は変わっていない。ただ、前作のレコーディングを通じて学んだことや反省もあったのか、ちゃんと成長を感じられる作品になっている。前作と違って独立した序曲になった荘厳なイントロも、よりシンフォニックかつ荘厳になっているし、アレンジの幅が広がって、静かなパートに雰囲気が出てきている。所々ちりばめられたプログレッシヴなアレンジもスパイス程度だが悪くない。前作同様、一番近い音は同郷フロリダの先輩格CRIMSON GLORYだが、本作では同じく同郷の先輩バンドであるICED EARTHを思わせるダークなヘヴィさも顔を出し、前作ではジェフ・テイト(QUEENSRYCHE)のモノマネ芸人みたいだったマーク・ヴェンダービルトの歌唱がややストレートになり、時にラッセル・アレン(SYMPHONY X)を思わせるラフな歌い回しを聴かせることもあって、前作よりも骨太な印象の作品に仕上がっている。中心人物であるトーマス・ヤングブラッドのギターがリフ、ソロの両面で物足りないのと、サウンドがやや軽いため全体としてB級な感は否めないが、中世ヨーロッパをモチーフにするというこの時期最も流行らないアプローチを米国にあって全くブレることなく貫いている点には好感を抱かざるをえない。

KAMELOT
ETERNITY
75
エターニティ (1995)

フロリダ州タンパ出身の正統派ヘヴィ・メタル・バンドのデビュー作。結成は91年で、バンド名は言うまでもなく円卓の騎士物語として有名なイギリスのアーサー王伝説に登場する王都の名前から取られている。フロリダというとデス・メタル発祥の地として知られ、本作のレコーディングが行なわれたモリサウンド・スタジオといえばデス・メタルの聖地として有名だが、実はSAVATAGEやICED EARTH、CRIMSON GLORYといったアメリカのアンダーグラウンドを代表する正統派バンドを数多く輩出したスタジオでもあり、このバンドもその系譜に連なるサウンドだ。本作がリリースされた95年というと、アメリカではメタル・シーンが死滅していた時期で、本作のリリース元はHELLOWEENやGAMMA RAY、RAGEを輩出したドイツの名門インディーズ「NOISE」である。オープニングを飾るタイトル曲のイントロからしてドラマティックかつクラシカルで期待に胸が高鳴るが、肝心の楽曲は純度100%の正統派メタルではあるものの、いささかキャッチーさに欠け、地味である。全体的な印象としては前掲のCRIMSON GLORYに最も近い。Voが声域・歌唱力ともになかなかなのでクオリティ感はまずまずながら、いささかジェフ・テイトを意識しすぎて歌い回しに妙なクセがあるのが気になる人は気になるかも。まあでも、この時期にアメリカでこの音楽を追求していたというだけで拍手モノかな。

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