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IRON MASK
FIFTH SON OF WINTERDOOM
81
フィフス・サン・オヴ・ウィンタードゥーム 〜英傑の鉄仮面 (2013)

マーク・ボールズ加入後第二弾となる通算5作目のフル・アルバム。アルバム・タイトルも5作目であることを意識したものになっている。前作のラインナップから、マッツ・オラウソン(Key)が離脱し、新たにMURDER OF MY SWEETなどで活動するアンドレアス・リンダールが参加している。前作も単なるネオ・クラシカル様式美にとどまらない、楽曲の幅を広げたアルバムだったが、本作もその拡散指向を受け継ぎ、このバンドとしてはかつてないほどライトでキャッチーな曲から、10分を超える、バンド史上最長の大作まで、さらにソングライティングの幅を広げている。前述の大作#5ではスコットランド民謡を導入したり、#4「Seven Samurai」では、前作収録の「Genghis Khan」同様、オリエンタルなアレンジが施され、#10「Reconquista 1492」では歌詞テーマに合わせてスパニッシュ・ギター風のイントロを導入するなど、アレンジに対しても気を使っていることが感じられる。ただ、個人的には前述したライトでキャッチーな曲がこのバンドには不似合いな感があり、そういう楽曲の存在がアルバムの緊張感を損なっていると感じられてしまうのが残念。#6だけであればまだ良かったのだが、アルバムのオープニングを飾る#1にそういうバンドの本質から遠い「明るい」曲を持ってきてしまったのはアルバムの印象作りという点で失敗だったのではないか。

IRON MASK
BLACK AS DEATH
84
ブラック・アズ・デス 〜暗黒の鉄仮面 (2011)

ダッシャン・ペトロッシ(G)のソロ・プロジェクトだったIRON MASKだが、「AFM」移籍第一弾となった本作よりバンド名から「DASHAN PETOROSSI'S」という冠が外れ、単なる「IRON MASK」名義になっている。創立以来のメンバーであり、ダッシャンのもうひとつのバンド、MAGIC KINGDOMのメンバーでもあるヴァッシリ・モルトチャノフ(B)以外メンバーは全員が変わっており、Voにマーク・ボールズ、Keyにマッツ・オラウソンという、「元イングヴェイ・マルムスティーン・バンド」という肩書を持つメンバーを2人も迎えている(さらに、ゲストとしてヨラン・エドマンも参加)。これが「リスペクト」によるものなのか、単なる話題作りなのか、自分の音楽にとって最適な人選と考えた結果なのか、その意図は不明だが、この強力メンバーが揃ったことでより「バンドらしさ」を強調するために冒頭のような「改名」を行なったのだろうか。よりクリーンな歌唱を聴かせるマーク・ボールズと、弾くべき所では弾きつつも、よりアンサンブル志向のKey奏者であるマッツ・オラウソンの加入効果はてきめんで、音楽的にはこれまでに比べ洗練された印象になっており、これまでのような剛直なネオ・クラシカル様式美メタルのみならず、キャッチーな感触のある曲や、バラード、ヘヴィかつドラマティックな印象の曲まで、よりバラエティに富んだ楽曲をソツなくこなしている。

DASHAN PETOROSSI'S IRON MASK
SHADOW OF THE RED BARON
82
シャドウ・オヴ・ザ・レッド・バロン 〜暁の撃墜王 (2009)

このバンドと知名度にそれほど差があると思えないため、MAGIC KINGDOMの…という形容にどれだけ意味があるのかわからないが、MAGIC KINGDOMのネオ・クラシカル・ギタリスト、ダッシャン・ペトロッシのソロ・プロジェクトのサード・アルバム。前作からDrがエリック・ストウト(元VENGENCE, JOE STAMP)に、Keyがアンドレア・リンダール(WUTHERING HEIGHTS)に交代している。前作に引き続きゲストとしてオリヴァー・ハートマンが#2およびバックVoに、所属レーベル『Lion Music』のオーナーでもあるラーズ・エリック・マットソン(G)が#5にゲスト参加している。基本的な音楽性は前作同様、ネオ・クラシカル路線のメタル・サウンドではあるが、ギターに負けじと弾きまくっていたリチャードがいなくなった分、良く言えばよりまとまりと安定感のあるギター・オリエンテッドなサウンドになったと言える。前作よりも叙情性やドラマ性に重きを置いた印象で、前作ほどのパワー感や勢いに欠けるため、ややありがちというか凡庸に響くこともあるが、今日びなかなかこれくらいのクオリティを備えたネオ・クラシカル・アルバムを聴かせてくれるバンドはそう多くはない。

DASHAN PETOROSSI'S IRON MASK
HORDES OF THE BRAVE
85
ホード・オヴ・ザ・ブレイヴ 〜光速の鉄仮面 (2005)

2004年に「METALLIC TRAGEDY」で日本デビューを果たしたベルギーのメロディック・パワー・メタル・バンド、MAGIC KINGDOMのギタリストであるダッシャン・ペトロッシのソロ・プロジェクトのセカンド・アルバムにして日本デビュー作。前作のウィークポイントだったVoをゲッツ・モーレなる力強く歌えるシンガーに替え、音質も改善されて日本デビューに相応しいクオリティを達成している。また、KeyにMAJESTICやTIME REQUIEM、SPECE ODYSSEYで知られる「鍵盤魔人」ことリチャード・アンダーソンを迎えていることも、この手の音楽のファンにとっては興味を引かれるポイントだろう。また、ゲストとしてAT VANCEのオリヴァー・ハートマンが#4、#8、#9およびバッキング・ヴォーカルで参加している。基本的にはイングヴェイ由来のネオ・クラシカル・スタイルがベースになっているものの、よりメタリックなパワー感を増したサウンドは、なかなかにインパクトがあり、ゲッツの熱唱ともあいまって、ダッシャン自身のギターのテクがやや粗いことを気にさせないだけの勢いがある。ネオクラ系のファンであれば押さえておくべきアルバムだろう。

DASHAN PETOROSSI'S IRON MASK
REVENGE IS MY NAME
77
リヴェンジ・イズ・マイ・ネーム (2002)

1999年にベルギーのインディー・レーベルからアルバム「THE ARRIVAL」でデビューしたMAGIC KINGDOMのギタリストであるダッシャン・ペトロッシが、レーベルとの契約問題でセカンド・アルバムが出せず、身動きがとれなくなっていた所に『Lion Music』からソロ・アルバム制作のオファーが舞い込み、これを受けることで始まったダッシャンのソロ・プロジェクト。本作の裏ジャケットの写真におけるダッシャンの容姿が往時のイングヴェイ・マルムスティーンにそっくりだったことで、一部のギター・マニアの間で話題となった作品でもある。CRYMEのフィル・レタウィ(Vo)、ユーリ・デグルーテ(Key)、そしてMAGIC KINGDOMのメンバーでもある元SHAHのヴァッシリ・モルトチャノフ(B)とアントン・アルヒボフ(Dr)(ドラマーは複数名を起用)といったメンバーと共に作り上げた音楽は、MAGIC KINGDOMからパワー・メタル色を薄めて、少々プログレッシヴなアレンジを取り入れたネオ・クラシカル様式美と呼んでいいもので、ダッシャンのルックスともあいまって、「イングヴェイ・フォロワー」感がバリバリ。歌唱やサウンド・プロダクションの弱さがB級感を強く放っているものの、この手のサウンドが好きなマニアであればチェックしてもいいかもしれない。ちなみにダッシャンのギター・プレイは、本家にはテクニック、フィーリングの両面で遠く及びませんが…(苦笑)。


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