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IMPELLITTERI
WICKED MAIDEN
82
ウィキッド・メイデン (2009)

約5年という、かなり長めのインターバルを挟んでリリースされた本作で、多くのファンにとって「IMPELLITTERIの声」であったロブ・ロック(Vo)が久々に復帰。過去を懐かしむファンに歓迎された。とはいえ往年のサウンドがそのまま再現されているわけではなく、メタルコアの隆盛などに触発されたと思しき、ヘヴィなリフの組み立てはかつての人気作「ANSWER TO THE MASTER」や「SCREAMING SYMPHONY」時代の音楽性とは異質のものである。しかし、それが前作におけるモダン路線の楽曲のように変に浮き上がらず、「らしく」響くのは、やはりロブ・ロックの声があるからなのだろう。そのことはよく言えばバンドのアイデンティティになっている、ということだし、悪く解釈すれば歌メロのバリエーションが乏しいゆえに、サウンドの進化をリスナーに伝わりにくくしているともいえる。しかし、なんだかんだ言って#1、#3、#4といった曲は新しいヘヴィ・リフがIMPELLITTERIらしいメロディと上手くかみ合ってカッコいいし、#6のキャッチーさも気に入った。本作では決して派手ではないものの随所で印象的に使われているKeyが、ただヘヴィなだけのバンドとの差別化ポイントになっており、本作の保守性と革新性のバランスはなかなか巧妙である。唐突にパーティ・ロック調の時代錯誤な#7は「?」だし、ラストの2曲がややつまらないのが聴き終えた後の印象を悪くしているが、全体的に見れば「復活作」と言ってもいいアルバムに仕上がっているのではないだろうか。

IMPELLITTERI
PEDAL TO THE METAL
77
ペダル・トゥ・ザ・メタル (2004)

初のベスト・アルバムのリリースを経て発表された本作は、恐らくIMPELLITTERI史上随一の問題作といえるだろう。前作で歌っていたグラハム・ボネットはツアーに出ることさえなく離脱、本作でVoを務めているのは、SPEAK NO EVILというアメリカでメジャー契約を持つモダンなヘヴィ・ロック・バンドのシンガーであるカーティス・スケルトンなる男。発表前のインタビューでは「モダンでヘヴィ」な作風であることが強調され、クリス(G)の最近のお気に入りがIN FLAMESやSOILWORK、SLIPKNOTやDISTURBEDといったバンドであり、それらのバンドの音楽からの影響が反映されていることが臭わされていた。そして、たしかに#2、#7、#8などはこれまでのIMPELLITTERIにはなかったタイプの「モダンでヘヴィ」な楽曲である。ただ、それらの元ネタの消化不良加減や、#8におけるエミネムやJAY-Zなどをあげつらったラップの寒さは、正直ベテランにあるまじき乱心・迷走と映る。とはいえ、それ以外の楽曲については「CRUNCH」以降顕著なヘヴィ志向の流れにある「想定の範囲内」なIMPELLITTERIサウンドであり、ファンであれば楽しめるクオリティもある。ただ、新Voの歌唱がロブ・ロックやグラハム・ボネットに比べるといささか凡庸な分、過去作と比べて高い評価を与えることは難しい。日本盤ボーナスである#11は露骨なIN FLAMESの「Pinball Map」のパクリで、サブタイトルの「American Metal vs. Swedish Metal」という一節を見るに確信犯なのだろう。

IMPELLITTERI
SYSTEM X
83
システム X (2002)

なんとシンガーに、88年の「STAND IN LINE」以来のグラハム・ボネット(元RAINBOW〜M.S.G.〜ALCATRAZZ)を復帰させて制作されたアルバム。「STAND IN LINE」アルバムは当時日本ではかなり成功したアルバムだったので、ここ数作セールスが下降していた彼らとしては「話題づくりによるテコ入れ」の意味を持つ復帰だったと思われる。とはいえ、内容は必ずしも「STAND IN LINE」の再現ではなく、前作で顕著になったヘヴィ志向の流れを汲んだ作風である。ただ、グラハム加入の影響か、歌メロについてはロブ・ロック時代とは明らかに異なる独特なポップ・センスが発現しており、単純に歌メロだけ見れば前作より平均点は高い。力強い#2やソリッドなリフとキャッチーなコーラスのコンビネーション、そしてグラハムの「That's Right!」の合いの手がイカす#4、ネオクラ全開の疾走曲#5(この曲はロブ・ロックが歌った方が映えそう)、アグレッシヴな#7、#8などはなかなか良い。露骨に「All Night Long」を思わせるリフを持つ#10はちょっとあざといけどね。グラハムの復帰自体はそこそこ話題にもなったにもかかわらず、売上はそれほど改善しなかったようなので、日本におけるHR/HM人気の低下は深刻かも。あるいは単にIMPELLITTERIの音楽が本格的に飽きられてしまったのか。いや、今日びグラハム・ボネットの名前に惹かれるような人間はみんな元からIMPELLITTERIを聴いており、新規層の開拓にはならなかったということかもね(笑)。

IMPELLITTERI
CRUNCH
82
クランチ (2000)

クランチといえばチョコレートではなくスラッシュ・メタルというのがメタラーの感覚(?)。スラッシュ・メタルといえばへヴィ、ということで(?)、本作のテーマはヘヴィ。そういう前評判でちょっと身構えて聴いてみると、チューニングこそ下がっているが、基本的な方向性は変わっておらず、いつも通りのIMPELLITTERI節が楽しめる。特に冒頭3曲はこれまで以上にアグレッシヴに弾けており、ファンならこの3曲だけで元が取れるのではないか(#2はHELLOWEENの「Kings Will Be Kings」のパクリっぽいが…)。ただ、ちょっとその後の楽曲が、ヘヴィさにフォーカスしたせいか、メロディのフックが今ひとつ。個人的には「Something Wrong The World Today」や「Master Of Disguise」といった、これまでに発表されてきた彼らのヘヴィな曲は結構好きだったりするので、そういう路線で固めてもよかったのではないか、という気もするのだが、そこまで割り切れなかったのだろう(#10「Fear No Evil」はNU METALっぽい、IMPELLITTERIとしては異色のヘヴィ・チューンだが)。しかし、マイケル・ロメオといいクリス・インペリテリといい、ネオクラ系ギタリストはヘヴィなリフをクールだと考える傾向があるようですね。日本のファンがあなた方に求めているのはメロディなのに…。

IMPELLITTERI
EYE OF THE HURRICANE
85
アイ・オブ・ザ・ハリケーン (1997)

主戦場が日本である彼らゆえ、日本での評判には敏感なのだろう。フル・アルバムとしては5作目となる本作は、前作に対しての「マンネリ」「バラエティに乏しい」という批判に対するフォロー作となっている(?)。アコースティック・ギターによるスパニッシュ風味が印象的なシンプルなバラードの「On And On」(良い曲です)、URIAH HEEPあたりを思わせる叙情味あふれるドラマティックな「Paradise」、METALLICAばりのへヴィなリフを持つ「Master Of Disguise」といった類型から外れた楽曲があるため、前作のような一本調子な感はない。とはいえ基本線にあるIMPELLITTERIらしさはきっちりキープされているあたり、「考えて作られたアルバムだな」という印象を受ける。ただ、いわゆる典型的なIMPELLITTERI節というべきアップテンポの様式HR/HMチューンのテンションは前作ほどではなく、そういう意味ではアルバム全体を手放しで絶賛することは憚られる。つか、いくらなんでもリフのパターンが少なすぎるだろ。ギターソロも毎回同じスケール練習状態だし(苦笑)。

IMPELLITTERI
SCREAMING SYMPHONY
86
スクリーミング・シンフォニー (1996)

前作は紛れもないIMPELLITTERI印のアルバムでありつつも、それなりに起伏とバラエティのある作風だったが、本作はそれ以上に、まさに徹頭徹尾IMPELLITTERI節一色のアルバムに仕上がっている。何しろ、ほぼ全曲アップテンポ。前作にはなかったインストが1曲入っているものの、曲調、テンポは他の楽曲と変わらないので、アルバムの表情が変わることはない。おまけに個々の楽曲を見ても、#9「You Are The Fire」が前作タイトル曲にそっくりであることをはじめ、前作に入っていてもおかしくないような楽曲ばかりだったこともあって、「マンネリ」「またですか…」「どれも同じ」といった批判めいた声も少なくなかった。しかし、#7「Rat Race」を筆頭に楽曲のクオリティは前作に勝るとも劣らず、前作を聴いたことのない人間にとって本作は、「ひたすら熱い様式HR/HMアルバム」として楽しむことができる。コンパクトな速い曲ばかりがそろい、しかもトータルで35分程度にまとまった本作は、まるでメロコアのアルバムを思わせる爽快感を感じさせる一枚である。ま、メロコアよりはるかに暑苦しい音楽だけどね(笑)。

IMPELLITTERI
ANSWER TO THE MASTER
86
アンサー・トゥ・ザ・マスター (1994)

この作品が発表された94年は、アメリカの音楽市場を席巻したグランジ/オルタナティヴのムーヴメントが最高潮に達した、HR/HMバンドにとって最も苦しい時期だった。このアルバムも当時日本でしか発売されなかった。あまつさえ、ジャケットのデザインさえ日本製作である。しかし、キャッチーかつソリッドな様式HR/HMでまとめられた本作は、この手の音楽に対する需要が高かった日本では見事に7万枚以上の売上を記録する大成功を収めた。それは他にこのような音楽をプレイするバンドの絶対数が少なかったせいだけではなく、実際本作はクオリティが高く、充分聴きごたえのあるアルバムに仕上がっていたからといっても間違いではない。#1、#3、#5、#7、#8、#9といった典型的なIMPELLITTERI流様式HR/HMを中心に(中でも#3、#7は出来がいい)、#2のような印象的なフックを備えた曲、#6のようなへヴィな曲も収録し、泣けるバラードの#4もあって、バラエティに富んだアルバムとして飽きずに聴くことができる。秀作である。

IMPELLITTERI
VICTIM OF THE SYSTEM
82
ヴィクティム・オブ・ザ・システム (1993)

前作「GRIN AND BEAR IT」で呈示した、アメリカンなHR/HM路線は、「らしくない」と、彼らのコア・ファンであるネオクラ小僧たちのブーイングを浴びてしまった。そしてクリス・インペリテリは己の生きる道を再確認し(?)、原点回帰したこのEPによって、たちどころに支持を回復することに成功。ネオ・クラシカル系様式HR/HMを愛する者ならガッツ・ポーズ必至の名曲#1「Victim Of The System」を筆頭に、へヴィな#2「Visual Prison」、テクニカルなギター・インスト#3「Glory」、よくできたバラードの#4「Cross To Bear」、そしてキャッチーなコーラスが印象的な#5「The Young And The Ruthless」と、収められた5曲はバラエティ、クオリティ共に申し分なく、非常に優れた作品にまとまっている。IMPELLITTERI入門者に最適の好盤。

IMPELLITTERI
GRIN AND BEAR IT
76
グリン・アンド・ベアー・イット (1992)

前作における「客寄せパンダ」だったグラハム・ボネットはあっさり脱退、デビューEPで歌っていたロブ・ロックが復帰している。この人もトニー・マカパインのM.A.R.S.に始まって、ヨシュア・ペラヒアのJOSHUAの3rd、アクセル・ルディ・ペルのアルバムにも参加していたし、すっかり速弾きギタリスト御用達ヴォーカリストになりつつある。Drもパット・トーピーがMR.BIGに加入してしまったため、ケン・メアリーに交代。Voがグラハムだったこともあって、RAINBOW的な世界観を描いていた前作と異なり、本作はかなりアメリカンな作風となっている(まあ、彼らはアメリカのバンドなんだけど)。当時騒がれていたEXTREMEを思わせるファンキーな曲から、既に時代錯誤になりつつあったLAメタル調の楽曲まで、およそ彼に期待されるネオ・クラシカル路線とは程遠い楽曲が並び、ファンを大いに落胆させた。その方向性でも楽曲のクオリティが飛び切り優れていればまだしも、どうにも中庸な出来の楽曲ばかりで全く印象に残らない。かろうじてのWHITE LION風のイントロを持つ#2「Ball And Chain」は哀愁があって佳曲と言えるか。バラードのようなタイトルの#4「Power Of Love」は本来のIMPELLITTERIスタイルの楽曲で(とはいえ、若干おとなしめ)やっぱりこういう曲が一番いいな。

IMPELLITTERI
STAND IN LINE
83
スタンド・イン・ライン (1988)

ジョー・サトリアーニを送り出した「RELATIVITY」からリリースされ、日本デビュー作にもなった初のフル・アルバム。本人の意向か、それともレコード会社の企画か、Voには元RAINBOW〜ALCATRAZZのグラハム・ボネットが迎えられており、否応なくリッチー・ブラックモアやイングヴェイ・マルムスティーンの系譜に連なる存在であるというメッセージを感じさせられる。ちなみにベースは元QUIET RIOT〜GIUFFLIAのチャック・ライト、ドラムはこの後MR.BIGに加入するパット・トーピーがプレイしており、ちょっとした「スーパー・グループ」の体をなしている。恐らくグラハムを迎えたことが影響しているのだろうが、本作の音楽性は押し一辺倒だったデビュー・ミニに比べると洗練されており、RAINBOW時代のヒット曲#2「Since You've Been Gone」をカヴァーも含め、「成功」への意欲が感じられる。さすがにRAINBOWがショウのオープニングSEに使用していた#4「Somewhere Over The Rainbow」のカヴァーはちょっと鼻につくが…。とはいえ楽曲の粒は揃っているし(特にタイトル曲#1は名曲だ)、サウンドが今一つなため凄味は完全に伝わってこないが、ギター・ソロもギネス認定に相応しい速さ。グラハムの起用は、日本では思惑通り「ネオ・レインボー」的な捉えられ方をして好評を博したが、英米ではむしろ裏目に出て、イングヴェイ・クローンの代名詞として批判と揶揄の対象になってしまった。

IMPELLITTERI
IMPELLITTERI
78
インペリテリ (1987)

イングヴェイ・マルムスティーンの登場に刺激されて巻き起こった「速弾きブーム」は、トニー・マカパイン、ポール・ギルバート、ヴィニー・ムーアなど数多くのテクニカル・ギタリストを世に送り出したが、こと「速さ」という点においては真打というべき男がここにデビューした。クリス・インペリテリである。日本デビュー作となったデビュー・フル・アルバム「STAND IN LINE」で知名度を獲得したが、その前年に発表された本EPこそが真のデビュー作であり、Voがその後長く彼と行動を共にするロブ・ロックであることも含め、彼の原点というべき作品である。収められた4曲はどれも3分前後のコンパクトな楽曲だが、ソリッドなリフ、キャッチーな歌メロ、そして光速ギター・ソロをフィーチュアした、その後も含めたIMPELLITTERIのファンであれば楽しめること請け合いの作品である。「弾き過ぎ」感があるのは「若気の至り」ということで。


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