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ICED EARTH
DYSTOPIA
85
ディストピア (2011)

前作で復帰したマシュー・バーロウ(Vo)が、家族や警察官としての仕事を優先したいという理由で再度脱退。後任にINTO ETERNITYのステュウ・ブロックが加入。近年壮大なコンセプト・アルバムが続いていたが、あえてルーツに回帰したダイレクトなメタル・サウンドを意識したという本作は、バンド史上でも屈指のタイトなアルバムに仕上がっている。アルバム冒頭を飾るタイトル曲#1は、ドラマティックなイントロで始まり、勇壮なサビのコーラスが印象的な力強い名曲。これまで個人的にこのバンドはギターのリフやバッキング・パターンのバリエーションが乏しいために煮え切らなさを感じがちで、時折聴かれるメランコリックなメロディが魅力の中心だったが、本作にはアグレッシヴな曲からメロディックなミドルの曲まで、いずれもメタルらしい高揚感が増強されている。このサウンド強化には新加入のステュウの貢献が大で、デス声手前のアグレッシヴな歌唱から、前任のマシューを思わせる雰囲気のある中音域、そしてロブ・ハルフォードばりのハイトーンによって、ギターのアレンジの単調さに関する問題を忘れさせるほどサウンドをダイナミックに演出している。新たなフロントマンを迎え、心機一転を図るに相応しい好盤だ。

ICED EARTH
THE GLORIOUS BURDEN
87
ザ・グロリアス・バーデン (2004)

看板Voであったマシュー・バーロウに替わって加入したのは、ロブ・ハルフォード復帰に伴ってJUDAS PRIESTを実質解雇されたティム・オーウェンズだった。彼の在籍時はセールス的に振るわなかったとはいえ、「元JUDAS PRIESTのシンガー」の加入は長年このバンドに冷たかったここ日本でもかなりのニュースとなり、かつてない注目の中リリースされた通算7枚目のフル・アルバム(ライヴ・アルバムや企画盤を除く)。独特の雰囲気ある歌唱を聞かせていた前任者から、メタル・シンガー然としたティムへの交替は、音楽の印象を逞しく芯のあるものしており、今回かつてないほどサウンド全体がゴージャスなこともあって、本作からの入門者は素直にこのバンドがAクラスのバンドであると感じることだろう。今回もキャッチーなシングル向きの曲こそないが、楽曲は粒揃いで、メロディも過去最高に充実しており、そういう意味でも入門者には聴きやすいはず。アルバムのクライマックスとなる3曲合計で30分に及ぶ組曲「Gettysburg (1863)」は、ジョン・シェイファー(G)が最も関心を持っているテーマである、アメリカ史におけるハイライトのひとつ、南北戦争の「ゲティスバーグの戦い」をモチーフに、オーケストラも起用し作曲家としての技巧の限りを尽くした、まさに一大スペクタクルと呼ぶに相応しい圧巻の超大作。前任Voマシューの歌声が結構気に入っていた身としてはなんとなくくやしいが、こいつは最高傑作かも。

ICED EARTH
HORROR SHOW
81
ホラー・ショー (2001)

欧州を中心に大ヒットした前作リリース後、アテネ公演を収録したライヴ・アルバムを発表。すると3枚組というボリュームにもかかわらずギリシャでは総合チャートのNo.1に輝くなど、もはや欧州では押しも押されもせぬビッグ・ネームとしての地位を確立したICED EARTHの新作は、曲名に狼男、オーメン・ダミアン、切り裂きジャック、ファラオの呪い、ジキル博士とハイド氏、フランケンシュタインにドラキュラと、19世紀以来のホラー・オールスターが勢揃い、安直なタイトル通りの一枚だ。バックを固めるのは元DEATHのスティーブ・ディジョルジオ(B)にリチャード・クリスティ(Dr)という強力メンバーで、そのせいか2バス連打はこれまでで最も強力(ただし、それは疾走感を演出するものではない)。ただ、本作では前作の「Melancholy」や「Watching Over Me」のようなキャッチーなタイプの楽曲が姿を消しており、そういった曲が気に入っていた私としてはやや物足りない。前作の成功で制作予算がアップしたのか、コーラスやアレンジが豪華になってテーマに相応しいドラマティックさの演出につながっている一方、今まであえて指摘してこなかったが、これまでずっと音楽性の割に迫力不足だと感じていたギターのサウンドがいっそうショボく聴こえてしまう印象が無きにしも非ず。とはいえ、これまでのICED EARTHの世界を気に入ってきた向きには安心して聴けるクオリティのアルバムではある。

ICED EARTH

SOMETHING WICKED THIS WAY COMES

85
サムシング・ウィキッド・ディス・ウェイ・カムズ (1998)

これまでも欧州を中心にファン・ベースを築いてきた彼らだが、本作ではなんとドイツの総合チャートで19位を記録、名実ともにメタル・シーンを代表するバンドのひとつとしての地位を確立した名盤。個人的にこれまで彼らの音楽については、独特の荘厳かつダークな雰囲気は非常に個性的かつ魅力的ながら、ややムードに流れがちというか、個々の楽曲やアルバムの構成にメリハリが不足していると感じていた。しかし本作は、マシュー・バーロウの愁いを帯びた歌声を活かしたメランコリックな#2、#4といったキャッチーな曲と、#3、#5、#7といった攻撃的なリフをメインに据えたアグレッシヴな曲のコンビネーションが効果的で、最後まで飽きさせない。インストの#9が佳曲であることに象徴されるように、リード・ギターのフレーズも時にIRON MAIDENを彷彿させるほどに練り込まれているし、歌メロの充実度も過去最高。#6、#10といった劇的な盛り上がりを聴かせる曲もこれまで以上に冴え渡っているが、中でもアルバムを締めくくる3部構成の大作#11〜#13「Something Wicked Trilogy」のドラマティックな構成は見事で、そのエンディングにおいて演出される恐怖には戦慄を禁じえない。いわゆる疾走曲がないので日本のメタル・ファンには地味に響くかもしれないが、傑作だ。

ICED EARTH
THE DARK SAGA
79
ダーク・サーガ (1996)

日本でのリリース元がビクターに変更。海外の所属は引き続き「CENTURY MEDIA」なのでそのことが影響しているとは思わないが、前作まで籠もり気味だった音質が改善され、だいぶメジャー感が増した。オビにはまだ日本デビュー当時に標榜されていた「ドラマティック・スラッシュ」というコピーが躍っているが、もはや「スラッシュ」というワードから想起されるようなイメージのサウンドはここにはなく、メランコリックなリード・ギターのフレーズが聴き所となるドラマティックな楽曲がアルバムの中心を占めている。本作は中心人物であるジョン・シェイファー(G)がファンであるというアメリカン・コミック「SPAWN」をテーマとしたコンセプト・アルバムとなっており、ジャケットはその作者によるものとなっている。コミックとはいえ相当にダークなストーリーである「SPAWN」がモチーフだけあって、前作に引き続きかなり辛気臭いダークな曲調がアルバムを支配しており、この暗く冷ややかな世界になじめない人にはしんどいかも。ジョンとしては「SPAWN」とのコラボレーションが、アメリカ国内ではバンドの話題作りに、ICED EARTHの人気が高い欧州ではまだ認知が薄かったコミックの人気拡大に一役買って、お互いにメリットを享受できることを期待していたようである。しかし、「SPAWN」側にとってはあまりメリットを感じてもらえなかったのか、翌年「SPAWN」が映画化された際、そのサントラには数多くのバンドが起用されたが、彼らには声がかからなかった…。

ICED EARTH
BURNT OFFERINGS
78
バーント・オファリングス (1995)

前作がここ日本で話題になったにもかかわらず、メンバー・チェンジ等の問題で3年のインターバルを挟まざるを得なかったサード・アルバム。結論から言うと、3年のブランクは痛かった。聴き込んだ結果、前作が実は大したアルバムでないことに皆気付いてしまったのか、本作リリース時点で前作は中古盤屋の常連と化し、彼らの存在感もすっかり風化してしまっていた。新たに加入したVoのマシュー・バーロウは前任者に比べて表現力のある歌唱を聴かせるなかなかの逸材で、ICED EARTH独特のダークで冷ややかなドラマ世界をムーディに描き出すことに貢献している。しかし、今回も前作同様、楽曲全体にフックというかキャッチーな要素は薄く、しかも荒削りなりにインパクトはあった前作の1曲目のような「ツカミ」にも欠けているのが痛い。籠もり気味でダイナミックさに欠けるプロダクションのせいもあり、全体の印象が平坦なものになってしまっているのが残念。この徹底してメランコリックでダークな雰囲気に酔える人はハマるだろうし、個人的にもダンテの「神曲」をモチーフとした16分を超える大作、「Dante's Inferno」の劇的さには心惹かれるものがあるが、少なくとも日本人にとって間口が広いサウンドとは言い難い。

ICED EARTH
NIGHT OF THE STORMRIDER
76
ナイト・オブ・ザ・ストームライダー (1991)

アメリカはフロリダ出身のスラッシュ/パワー・メタル・バンドの日本デビュー作。かつてPRETTY MAIDSもアルバムのオープニングに使用し、かのOZZY OSBOURNEもショウのオープニングに使用したことで、メタル・ファンには知名度の高いクラシックの名曲「カルミナ・ブラーナ」。同曲をイントロに配した#1「Angels Holocaust」から#2「Stormrider」のドラマティックな流れによって、ここ日本のメタル・マニアの間でかなりの話題となったアルバムである。ICED EARTH(凍てついた大地)というバンド名の響きもカッコいいし、アルバムタイトルもなかなかメタラー魂をくすぐるものがあり、ジャケットも非常に「らしい」もの。そんな彼らに与えられた形容は「ドラマティック・スラッシュ」。まあ確かにそんな感じの音なのだが、正直サウンドが籠もり気味で、スラッシュというにはやや迫力不足だし、アメリカのバンドらしからぬダークでドラマティックな雰囲気も、インパクトがあるのは冒頭だけという感も無きにしも非ず。今となってはこの程度のアルバムが多少狭いフィールドとはいえ評判になってしまったという辺りに、当時のメタル・シーンの低調さが感じられ、当時のメタル人気の凋落もむべなるかな、という思いを強く感じてしまいました。

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