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HIM
SCREAMWORKS: LOVE IN THEORY AND PRACTICE
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スクリームワークス:ラヴ・イン・セオリー・アンド・プラクティス (2010)

「愛の理論と実践」という論文のような(?)サブタイトルが特徴的な通算7作目のフル・アルバム。裏ジャケットに記載されている楽曲リストに、よくあるランニングタイムの他、それぞれの楽曲のキーとテンポが記載されているのが面白い。ランニングタイムがいずれも3分〜4分程度とコンパクトで、半数以上の楽曲がBPM140以上のアップテンポな楽曲で占められていることから推察されるように、ヘヴィで実験的な印象の強かった前作の対極を行くコンパクトでキャッチーな作風である。プロデューサーを全米デビュー後の前2作を手がけたティム・パーマーから、エモ系のバンドを多く手掛けているマット・スクワイアに変更したことが影響したのか、これまでの作品に比べサウンドの「湿度」が低く、個人的に感じていたヴィジュアル系っぽさが薄れた印象。エレクトロニックなアレンジなどもちりばめつつ、基本はかなりストレートでキャッチーなロック・サウンドで、個人的にはノリよく楽しめたが、従来の彼らにあった心のヒダにそっと舌を這わせてくるようななまめかしさは不足しており、彼らにずっとついてきた女性ファンには「こんな曲じゃ濡れねえんだよ!」と言われてしまうのではなかろうか。

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VENUS DOOM
82
ヴィーナス・ドゥーム (2007)

アメリカデビュー作となった前作が全米チャート最高19位を記録、50万枚以上を売り上げてゴールド・ディスクに輝くというフィンランドのアーティストとして最高の成績を残したHIMの、真価を問われるワーナー移籍後の2作目。アートワークが今までの彼らの作品と趣を異にする印象派の絵画のようなもの(ヴィレがニューオリンズの画廊で購入したものだとか)で、本作における「変化」を暗示している。そして再生ボタンを押すなり轟くHIMらしからぬぶっといギター・リフによって、リスナーは本作が前作のような哀愁メロドラマ的お耽美ゴス・ロックではないことを思い知らされるだろう。インタビューで本作に関して、これまでよりドゥームっぽい、BLACK SABBATHやCATHEDRAL的なサウンドと発言していたが、たしかにそんな感じだ(そこまでヘヴィではないが…)。これまでの作品に比べてヘヴィなリフや70年代ロックを思わせる手法が目立ち、#5のように10分を超える大作を収録するなど、彼らが確立した北欧ゴス・ロックの典型的なイメージをあえて自ら破壊し、より広義の「ロック」のフィールドで勝負しようとしているかのような印象のアルバム。随所にお得意のメランコリックなメロディも聴けるのだが、そこ(だけ)に彼らの魅力を見出している僕のようなファンにはあまり好ましくない変化かな。#3は映画「トランスフォーマー」に使用された。

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DARK LIGHT
87
ダーク・ライト (2005)

欧州における絶大な人気を受け、いよいよアメリカ、日本でも正式にアルバムがリリースされることになった。本作発表に先駆けてなんとSUMMERSONIC05への出演も果たし、飛躍的に向上した注目度の中リリースされた本作はHR/HMのフィールド外でも注目を集める「話題作」である。そしてその内容だが、これがもう、ポップポップ、超ポップ。「勝負」のタイミングであえて非大衆的な「問題作」を叩きつけてくる、メジャー・レーベルからCDを出すことの意味を理解できていないお馬鹿さんなバンドも多い中、こうした模範解答的な作品を呈示してくれるバンドはスマートだと思う。もうホント、全編HIMのポップ・サイドの楽曲ばかりで塗り固められたかのような作品で、メランコリックかつキャッチーなメロディが時にドライヴし、時にしっとりと歌い上げられる様は聴いてて気恥ずかしささえ覚えるほど。こう書くとイヤミのようだが、正直ここまでキャッチーな楽曲を量産できるバンドだと思っていなかったので、彼らのソングライティング力を見直しました。あんまりハードなサウンドに耐性のない興味本位の新規リスナーは本作から入ってまず問題ないでしょう。BMG時代のベストも選曲いいのでオススメですが。

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LOVE METAL
85
ラヴ・メタル (2003)

彼らが自らの音楽を表現する際に用いてきた言葉である「LOVE METAL」をタイトルに冠し、彼らのシンボル・マークとして知られる“Heartagram”マークを大きくジャケットにあしらった4作目のアルバム。ややハードさを抑えた大衆的な作品だった前作に比べるとハードな要素が復活しており、それはオープニングを飾る「Buried Alive By Love」や#5「Soul On Fire」のようなスピード感に溢れる楽曲が象徴している。個人的にはヒット・シングルとなったメランコリー全開の哀愁チューン、#2「The Funeral Of Hearts」がお気に入り。#6「The Sacrament」も人気曲。ケース裏を見るとアナログレコードよろしくA面とB面に区別されているが、特に前半と後半に作風の変化は感じられない…のは僕だけ? 全体的にはグラム・ロック、サイケデリック、ニューウェーブ、ハード・ロックといった幅広いロックからの影響を消化した(ヴィレはニューウェーブからの影響を否定しているが)タイトなロック・アルバムで、多様なバックグラウンドを持つ彼らの集大成的な作品といえる。本作は大陸ヨーロッパのロックに対して温かいとはいえないイギリスのチャートでも15位まで上昇するスマッシュ・ヒットを記録。そしていよいよ彼らはアメリカ攻略に乗り出すことになった。


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DEEP SHADOWS AND BRILLIANT HIGHLIGHTS
83
ディープ・シャドウズ・アンド・ブリリアント・ハイライツ (2001)

前作リリース後に脱退したゾルタン・プルート(Key)に代わってエマーソン・バートンを迎え、11ヶ月に及ぶ制作期間を経てリリースされたサード・アルバム。ミックスにはBON JOVIやMETALLICA、ティナ・ターナーやキース・リチャーズなどの作品を手掛けたアメリカのプロダクションを迎え、本作からのファースト・シングルとなった#5「Pretending」を含む2曲では、AEROSMITHやIRON MAIDENなどを手掛けたケヴィン・シャーリーがプロデュースしていることからも、彼らに対する期待が現れている。その成果か、音楽の大衆性がグッと増しており、Voがヴィレのクセのある歌声でなかったら普通のポップ・ロックとして聴けそうな楽曲が並んでいる。前述の「Pretending」も良いが、#2「Heartache Every Moment」が憂いに満ちていて素晴らしい。#4「In Joy And Sorrow」も佳曲。全体的にソフト過ぎるきらいが無くもないが、ハードさが魅力のバンドではないので、こういうムーディな作風もアリかな。本作発表後、「自己を見つめ直すため」という理由で1年間の休養期間に入った。

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RAZORBLADE ROMANCE
86
レイザーブレイド・ロマンス (2000)

先行シングルとなった本作収録の#3「Join Me」がドイツを中心とした欧州全土で大ヒット、HIMのブレイク作となったセカンド・アルバム。 欧州各国でプラチナムやゴールドを獲得した実績によって、当時日本盤こそリリースされなかったものの、欧州ローカルのCDとしては珍しく、僕がアルバイトしていたCDショップにも輸入盤の入荷案内が送られて来た。そしてそこに躍っていたコピーは「北欧のラルク・アン・シエル!」。北欧もラルクも好きだった僕は自分が買うために3枚入荷して購入。聴いてみて思ったのは「どこがラルクやねん!」。たしかに妖艶でゴシックっぽいイメージはラルクに通じなくもないが、音楽的にはずっとストレートなロック(そしてHR/HM的な要素も強くない)である彼らの音楽は「裏切られた」感もあって好きになれなかった(そして残った2枚もさっぱり売れなかった…すみません店長)が、次作「DEEP SHADOWS AND 〜」のリリースあたりから日本のゴシック・メタル・ファンの間でも話題になり始めたので、あらためて聴き直してみると、これがなかなか楽曲粒揃いで気に入った(笑)。ただ、一番好きな曲がライヴ映えしそうなドライヴ感に満ちた#4「Right Here In My Arms」であるという僕のようなリスナーは、彼らの本質を愛しているとは言えないかもしれないね。

HIM
GREATEST LOVE SONG VOL.666
79
グレイテスト・ラヴ・ソングス Vol.666 (1997)

ヴァンパイア伝説を生んだハンガリー系の血を引き、父親の経営するポルノ・ショップで働いていた、というミステリアスな経歴を持つカリスマ、ヴィレ・ヘルマンニ・ヴァロー(Vo)率いるHIM(HIS INFERNAL MAJESTY)のデビュー・アルバム。母国フィンランドでリリースした4曲入りのインディー盤に収録され、本作にも収められている#2「Wicked Game」(デヴィッド・リンチ作品などに出演する俳優としても知られるカリフォルニア出身のシンガー・ソングライター、クリス・アイザックが89年に発表した「HEART SHAPED WORLD」に収録され、91年にヒットした曲のカヴァー)で注目され、メジャーのBMGから本作がリリースされるとすぐに母国の人気バンドに。サウンドはそれなりにハード&ヘヴィではあるものの、HR/HMサウンドの質感とはやや趣を異にするもので、Voのスタイルもメタル系のシャウト型ではなく、クセのあるナルシスティックなスタイルだ(声域によってはU2のボノに似ているかも)。強いて言うなら同郷のSENTENCEDに通じるムードがあるが、ぶっちゃけバンドのイメージ自体HR/HMというより日本のヴィジュアル系に近い。ただ、前述の「Wicked Game」の他にも、BLUE OYSTER CULTの名曲「(Don't Fear) The Reaper」をカヴァーするなど、ロック・クラシックへの憧憬を隠さないあたりに日本のバンドとの違いを感じる。次作以降、欧州全土でセンセーションを巻き起こした「LOVE METAL」サウンドはこの時点でほぼ完成されているが、キャッチーな洗練度においてはまだ発展途上かな?

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