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GRAVE DIGGER
EXCULIBER
79
エクスカリバー (1999)

GRAVE DIGGERのコンセプト・アルバム第三弾。今回はアーサー王伝説。しかし毎度ベタベタのテーマ設定である。Voのクリス・ボルテンダールの歴史好きがこうしたコンセプト作を生んでいるそうだが、この人日本人だったらきっと司馬遼太郎とか吉川英治の作品をテーマにコンセプト作を作っていたかもしれない(笑)。前々作、前作とあわせて「中世三部作」と呼ばれる作品の最終章にあたる。内容は当然と言うべきか、前作「KNIGHTS OF THE CROSS」の延長線上にある、キーボードやクワイアによる演出を加えた無骨ながらもドラマティックなヘヴィ・メタル。変わったところは、これまでより予算が増えたのか、薄めだったサウンドに重厚さが加わり、ややヘヴィな印象が強まったこと(若干音がこもり気味ですが)。疾走感も前作より増しており、パワフルになった印象。その結果、さらにBLIND GUARDIANフォロワー的なイメージが強まったような…(キャリア的には先輩なのに)。Voが実はちゃんと歌えば歌える人であることにようやく気付いたため、どうせならヒステリックなシャウトや無駄なリキみは抑えて普通に歌い上げてくれればいいのに、と思ってしまいました。「えくすかりぶー!」と聴こえるサビに思わず笑ってしまう勇壮なタイトル曲を筆頭に、今回も曲の出来は結構いいのですが、前作で感じたのと同様の不満は今回も残っているので、点数はこの程度。

GRAVE DIGGER
KNIGHTS OF THE CROSS
77
ナイツ・オブ・ザ・クロス (1998)

新ベーシストに元RUNNING WILD〜X-WILDのヤンス・ベッカーと、Key奏者にハンス・ピーター・カッツェンバーグを迎えたGRAVE DIGGERの、中世ヨーロッパをテーマにしたコンセプト・アルバム第二弾。今回のテーマは十字軍、聖堂騎士団。前作のドラマティックな正統派ヘヴィ・メタルを順当に受け継ぎ、さらにキーボードやクワイアを増量し、よりメロディックなサウンドに仕上げている。結果、BLIND GUARDIANに代表される(日本のメタル・ファンがイメージする所の)「ジャーマン・メタル」っぽい音楽性となっている。ただ、前作を聴いても思ったのだが、ウド・ダークシュナイダー(ACCEPT〜U.D.O.)を彷彿させる、ヒステリックなシャウトを多用するクリス・ボルテンダールのヴォーカルはこうしたドラマティックな旋律の歌い上げには向いていないし、それ以上にギタリストのサウンドメイクのラフさ、リフのシンプルさ、そしてプレイの芸の無さが、構築美が問われるこの手の音楽のクオリティを下げている。曲自体は決して悪くない、いや、むしろ結構いいのだが、個人的にはこのVoとGでは描かれるドラマに浸りきれないし、「THE REAPER」を気に入ってファンになったような向きには荒々しさや疾走感が足りないと言われるかも。

GRAVE DIGGER
TUNES OF WAR
78
チューンズ・オブ・ウォー (1996)

ドラムがステファン・アーノルドに代わって発表された通算7作目(DIGGER名義のアルバムを含む)。これまでは脳ミソが筋肉なのではないかと勘繰りたくなるほどに愚直なヘヴィ・メタルを追求していた彼らだが、今回はなんとスコットランドの歴史をテーマにしたコンセプト・アルバムという、インテリジェントな(?)アプローチに取り組んでいる。アルバムのイントロからスコティッシュ・パグパイプの音色が登場し、雰囲気を盛り上げる。とはいえ、基本的な音楽性は変わるはずもなく、絵に描いたような正統派ヘヴィ・メタルであるのだが、ケルト風のメロディや、よりドラマティックな展開の多用によって、ある種の洗練を感じさせる。なんとなく同じドイツのRUNNING WILDやBLIND GUARDIANがやっている方法論に接近したようで、ドイツでは高い人気を誇る両バンドにあやかろうとしたのだろうか、と勘繰ってしまうような路線ではある。とりあえず、前作「HEART OF DARKNESS」に欠けていたフックが強化され、楽曲もコンパクトに絞り込まれており、印象は悪くない。

GRAVE DIGGER
HEART OF DARKNESS
75
ハート・オブ・ダークネス (1995)

EP「SYMPHONY OF DEATH」発表後、RUNNING WILDに加入するために脱退したヨルグ・マイケルの代わりにフランク・ウルリッヒを補充し、そのRUNNING WILDとのツアーを成功させた彼らの、フル・アルバムとしては復活後第2弾となるアルバム。前作までと同様、NWOBHM直系のピュアなヘヴィ・メタル・サウンドであることは間違いないのだが、疾走曲が減少し、ミドル・テンポの曲が増えた今作は正直ちょっと退屈…。前作「THE REAPER」を傑作たらしめていたのはヨルグ・マイケルのドラムだったのか…などと考えてしまったほど。基本的にドが付くほどシンプルで無骨なへヴィ・メタルにもかかわらず、11分を超えるタイトル曲をはじめ、全体的に楽曲がダークで長めなこともあって、冗長な印象が強いのもマイナス。曲を長くするならもう少しフックをつけてくれないと…。少なくとも日本ではこのアルバムで楽曲の平均BPM同様、注目度も失速した観がある。ここで前作並みのアルバムを発表していたら、もしかしたらRAGEくらいの人気を得ることもできたかもしれないのだが。次作以降で繰り広げられるドラマティックなコンセプト・アルバム路線は日本人好みの部分もあって悪くなかったのだし。


GRAVE DIGGER
THE REAPER
84
ザ・リーパー (1993)

80年代、HELLOWEENやRUNNING WILDらと同時期にデビューし、ACCEPTのブレイク以降盛り上がっていたドイツのヘヴィ・メタル・シーンの一翼を担っていたGRAVE DIGGERの復活アルバム。一時期ポップな音楽性に傾き、DIGGERと名前を変えていた時期の痕跡は全く残さぬ、徹頭徹尾ヘヴィ・メタリックな作品に仕上がっている。それも、スラッシュ・メタルや、当時流行していたPANTERA風のモダンなヘヴィさなども一切無視し、NWOBHMの時代にタイム・スリップしてみせたかのようなサウンドで貫かれている。アルバムタイトル「死神」に象徴されるような悪魔的で邪悪なイメージ、荒々しくもダークなストーリー性を感じさせるコード進行で、リリース当時こうした音楽が絶滅の危機に瀕していたことを嘆くNWOBHM原体験者たちの心をガッチリつかむことに成功、BURRN!誌のレビューでも高得点を獲得し、B級メタル(失礼)としてはかなりのセールスを記録した。実際疾走曲からドラマティックな展開を持つ曲まで、どの曲もおしなべてよく出来ており、また、アルバムの大半を名手ヨルグ・マイケルのパワフルかつタイトなドラミングに支えられた荒々しい疾走曲でまとめたことで、刺激に慣れた現代のヘヴィ・メタル・ファンにも充分アピールしえるアグレッシヴさを提示できたことが成功の鍵といえよう。

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