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GARY MOORE
STILL GOT THE BLUES
80
スティル・ゴット・ザ・ブルース (1990)

ゲイリー・ムーアのブルース路線第一弾。ゲイリーのオリジナルは半分で、残り半分はブルース・クラシックのカヴァーである。本作がリリースされた90年時点においてはまだHR/HMバブルの余韻は残っていたが、翌年から翌々年にかけて始まったグランジ/オルタナティヴ革命によってその後HR/HMがメジャー・シーンから一掃されてしまったことを思えば、80年代の終わりと同時に「脱HR/HM」したゲイリーの判断は「機を見るに敏」だったと言えなくもない。当時ゲイリーに限らず、ロック・シーン全体で「ブルース回帰」がトレンドとなっており、ついこないだまでケバケバしいメイクをしてパーティ・ロックをプレイしていたような連中まで「ブルージーなサウンド」にトライしていたが、やはりゲイリーは年季が違う。当時シーンに氾濫していた「なんちゃってブルーズ・ハード・ロック」とは一線を画した仕上がりである。とはいえ専業ブルースマンのやる音楽に比べるとロック的な躍動感が強いし、ギター・ソロもかなり弾きまくっているので、私のようなHR/HMファンでもそれなりに楽しむことができる。むしろベスト盤で先行して聴いていたタイトル曲(名曲ですねえ)のようなメロウな渋い曲ばかりなのかと思ったら意外なほどロックしていて拍子抜けしたほど。このブルース路線は本来1枚限りの企画だったらしいが、結果的に本作がこれまで全く成功できなかったアメリカでダブル・プラチナムを獲得する大ヒットを記録したことで、この後のゲイリーの人生は決まってしまった。ま、年齢的にもトレンド的にも(ルックス的にも?:笑)HR/HM路線は厳しくなっていたので、本人とっては「渡りに船」だったのかもしれない。

GARY MOORE
AFTER THE WAR
86

アフター・ザ・ウォー (1989)


結果的にゲイリーにとって最後のHR/HM作品となった作品。そして本作の内容はまるで「最後のHR/HMアルバム」となることを念頭において制作したかのような「集大成感」のある多彩なアルバムだ。メンバーもDrにコージー・パウエル、Bにボブ・デイズリー、Keyにドン・エイリーと「鉄壁」である(楽曲により一部録音メンバーが異なるが、それもサイモン・フィリップスをはじめ名手揃い)。冒頭を飾るタイトル曲も彼のHR/HM路線における代表曲「Out In The Fields」の焼き直し的な曲。個人的に#4、#8、#9といった明るめの曲はあまり琴線に触れないものの、前作におけるアイルランド色を強く継承した#10がまた良い。ロイ・ブキャナンのカヴァーである#6「メシアが再び」における泣きも素晴らしいが、この曲がゲイリーをブルース路線に走らせたと聞くと複雑な思いも。全体的にはスピード感のあるハード・ロックからアメリカンでキャッチーな曲まで、バラエティに富んだいかにも80年代的なHR/HMアルバムで、よくプロデュースされたその質の高さはベテランならでは。なお、オジー・オズボーンがゲスト参加している#5「LED CLONE」は、当時LED ZEPPELINを露骨に想起させるサウンドで話題になっていたKINGDOM COMEを皮肉った曲と言われているが、ちょっと大人げないですね。まあ、その感情的なプレイといい、意外とミーハーなサウンドアプローチの変遷といい、そして各種のインタビューを読んでも、そもそもゲイリーが大人げのある性格だとは思えないわけですが(笑)。

GARY MOORE
WILD FRONTIER
91
ワイルド・フロンティア (1987)

86年に急逝した盟友フィル・ライノット(THIN LIZZY)に捧げられたアルバムで、ゲイリーのルーツであるアイルランド音楽の要素が強く押し出された、彼のキャリアの中では異色のアルバム。異色作とはいえ、その出来は素晴らしく、個人的には本作こそゲイリー・ムーアの最高傑作であると感じている。オープニングを飾る#1「Over The Hills And Far Away」から、なぜか郷愁を誘うケルティックなメロディが素晴らしくキャッチーに活かされている。タイトル曲#2や#7もアイリッシュな要素を巧みにハード・ロック的なカタルシスと融合した名曲。泣きのギター・インスト#4も素晴らしいが、この曲に関してはなぜかコージー・パウエルのソロ・アルバムに収録されたバージョンの方が出来がいいかも。アイリッシュな哀愁バラードの#8も沁みますねえ。本作のギター以外の演奏がフェアライトによる打ち込みであることについては批判的な声も多いが、個人的には伝統音楽にモダンなテクノロジーを融合させることで斬新な音楽を生み出そうとしたゲイリーによる意欲的な試みであると評価したい。たしかに生演奏のバージョンも聴いてみたいけど(笑)。#11「Crying In The Shadows」は86年に日本の本田美奈子に提供した「the Cross -愛の十字架」の「本人バージョン」であり、#1と#2の12インチ・シングル・バージョンの後に収められていることもあり、当事者的にはボーナス・トラック的な扱いだったと思われます。

GARY MOORE
RUN FOR COVER
86
ラン・フォー・カヴァー (1985)

盟友フィル・ライノットと共演したシングル#6「Out In The Fields」が全英5位というゲイリーにとって最大のヒットを記録し、注目を集めたアルバム(フィルは#3にも参加)。また、かつてG-FORCEというプロジェクトで実現しかけたグレン・ヒューズ(元TRAPEZE〜DEEP PURPLE)とのコラボレーション(5曲でBをプレイし、そのうち4曲ではVoも)も話題になったが、リリース当時、日本での評価はあまり良くなかった。アンディ・ジョーンズ、ボー・ヒル、ピーター・コリンズ、マイク・ストーンといった大物プロデューサーを複数起用し、上記のフィルやグレンの他にも、元FRANKIE GOES TO HOLLYWOODのアンディ・リチャーズ(Key)、元ROXY MUSICのポール・トンプソン(Dr)、そしてオリビア・ニュートン・ジョンのバックにいたゲイリー・ファーガソン(Dr)など、数多くの「畑違い」なセッション・ミュージシャンが参加していたことが「散漫」という印象を与えたようだ。しかし、それ以上にいかにも80年代的なキラキラしたシンセのサウンドや電子ドラムなどを用いたモダンなサウンド、「アメリカで売れたい」という思いが露骨に透けて見えるキャッチーな歌メロなどがオールド・ファンの反発を招いたと思われる。ギター・ソロがこれまでに比べ控え目なこともファンには物足りなかっただろう。しかし、個々の楽曲のクオリティは高く、産業ロックやメロディアス・ハードと呼ばれるような音楽のファンにとってはむしろ本作こそ最高傑作かもしれない。前作収録の名バラード「Empty Rooms」のリメイク#4もUKでスマッシュ・ヒットしたが、これはオリジナルの方が良かったかも…。


GARY MOORE
VICTIMS OF THE FUTURE
86
炎の舞 (1984)

「Virgin」傘下の「10 Records」から発売された本人が歌う第2弾アルバム。プロデュースは前作に引き続きジェフ・グリックスマン。前作は特に日本で好評を博し、来日公演は即日完売、テレビ朝日の「ベストヒットUSA」への出演なども果たしたが、本国イギリスにおいては本作が全英最高12位まで上昇する本格的な商業的成功アルバムなった。Drは前作に引き続きイアン・ペイスで、Bはニール・マーレイ、ボブ・デイズリー、モ・フォスターの3名が参加している。そしてこの後しばらくHR路線におけるゲイリーの片腕的存在となるニール・カーター(Key:元UFO)もここから参加。内容的には前作の路線を引き継ぎつつ、よりハードなエッジが強まった感があり、#2では一種アメリカンなキャッチーさを出してみるなど、多少時流を意識したアプローチも感じられる。#4「Empty Rooms」はゲイリーお得意の哀愁バラードの名曲。一方、大韓航空機事件をテーマにした#5「Murder In The Sky」は彼のキャリアの中でも屈指の、メタリックな緊張感の強い佳曲で、本作のハード・エッジな作風を象徴する一曲。個人的には哀愁メロハー路線の#7もお気に入り。本来オジー・オズボーンがゲストとして歌うはずだったが、喉の調子が悪くNGとなった#8におけるゲイリーのヴォーカルがどことなくオジーの物真似っぽいのはご愛嬌。いずれにせよ、これまた優れたHR/HMアルバムである。

GARY MOORE
CORRIDORS OF POWER
87
大いなる野望 (1982)

「Virgin」との契約第一弾。主なレコーディング・メンバーはイアン・ペイス(Dr:DEEP PURPLE〜WHITESNAKE)、ニール・マーレイ(B)、トミー・エイレ(Key)で、プロデュースはジェフ・グリックスマン。ゲイリーはそのキャリアからもわかる通り、ブルース、ジャズ/フュージョン、アイリッシュ・ミュージックと豊かな音楽的バックグラウンドを持った人物であるが、その本質はやはり情熱的なハード・ロッカーだと個人的には思っている。そういう意味で、彼の本質を作品の基本に据えつつ幅広い音楽的素養も感じられる本作は、収録されている個々の楽曲のクオリティの高さも含めて彼の代表作と呼ぶに相応しいアルバムだと思う。メイン・ヴォーカルを自分が務める、というこの後の彼のアプローチを決定づけたという意味でもゲイリーのキャリアにおける「基本」がここで完成したと言っていい。オープニングの#1からパワフルな中に漂う哀愁にグッと来る。名曲の誉れ高い#2はキャッチーな哀愁のメロディが絶品。その#2と並び称される名バラード#5のような洗練されたムードの楽曲を生み出せるHR/HM系ミュージシャンは少ない。その他、ギター・ソロの緊張感が半端じゃない#6、ゲイリーのハード・ロック魂が炸裂した#7など名曲・佳曲が満載。FREEのカヴァーである#3もオリジナルに負けない魅力がある。歌は一流とは言い難いが、本作がブリティッシュ・ハード・ロックを代表する名盤のひとつであることは間違いない。

GARY MOORE
DIRTY FINGERS
83
ダーティ・フィンガーズ (1981)

当サイトにおいては基本的にリリース年順でアルバムを並べておりますが、本作というか、このアーティストに関してだけ例外を設けます。本作が発売されたのは日本では1983年、それ以外の欧米では84年ですが、元々はG-FORCEの解体直後の81年に制作されていたもので、レコード会社(「JET RECORDS」)との契約問題でお蔵入りになっていたアルバム。本作におけるメンバーはVoがチャーリー・ハーン、Keyがドン・エイリー、Bがボブ・デイズリー、Drがトミー・アルドリッチ。当時同じ「JET」に所属していたOZZY OSBOURNEのバンド・メンバーと多く重複するこれまでのゲイリーのキャリアにおいて最もHR/HM色の強いメンバーで、実際この後も含めたゲイリーのカタログ史上、最もヘヴィ・メタリックなアルバムである。おそらくは当時NWOBHMの隆盛によってHR/HM的な音が盛り上がっていたことを意識してのアプローチと思われるが、アルバム全編に渡って「勢い」を感じるアルバムである。勿論スラッシュ・メタル以降のエクストリームなメタル・サウンドに慣れてしまった耳にはあまり「メタリック」には聴こえないかもしれないが、それでもこのシンプルで攻撃的なリフと、火を噴くようなギター・ソロのコンビネーションが生み出すテンションの高さは感じとれるはず。ゲイリーの代名詞である「泣き」の要素は薄めだが、これはこれでカッコいいアルバムだ。

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