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DARK MOOR
ARS MUSICA
82
アルス・ムジカ (2013)

約3年ぶりという、やや長めのインターバルを置いてリリースされた、ベルギーのブリュッセルで行なわれる現代音楽のイベント名をタイトルに冠した通算9作目のアルバム。メンバー・チェンジはなく、相変わらず「New Sin」スタジオで、ルイジ・ステファニーニのプロデュースのもと収録されているが、昔に比べるとだいぶマシなプロダクションになっているのは、経験によるスキルの向上か、単に機材が良くなったのかは不明。基本的な音楽性としては、アルフレッド・ロメロ(Vo)加入後に追求してきたシンフォニックなアレンジを特徴とするメロディックな「ロマンス・メタル」路線にブレはなく、相変わらずの優れたメロディ・センスを感じさせる内容である。ただ、本作においては、アグレッシヴなパワー・メタル路線の楽曲もあるにはあるが、これまで以上にメロディアス・ハード的とも言えるキャッチーな楽曲が目立ち、メロディの質もより甘さを増している。前作がややアーティスティックでハイブロウな作品だったこともあり、彼らにしてはコンパクトな作風という印象が強い。意図的に売れ線を狙ってみたのか、はたまたパワー・メタルに疲れてきたのか(笑)は不明ながら、個人的にはこのバンドにはもう少しドラマティックなサウンドを期待しているだけに、ちょっと物足りない印象も否めない。

DARK MOOR
ANCESTRAL ROMANCE
84
アンセストラル・ロマンス (2010)

前作のレコーディング終了後に脱退したダニエル・フェルナンデス(B)に替わってツアーに参加したマリオ・ガルシア(B:元SILVER FIST他)が正式加入して制作された本作は、は自らのルーツと向き合った意欲作。多くの楽曲の歌詞モチーフにスペインの伝承や英雄、同国出身の芸術家が生んだ作品を取り上げると共に、スペイン語で歌われる#7の歌詞はスペインの詩人ホセ・デ・エスプロンセダの作品だし、スペインの近代音楽作曲家であるマニュエル・デ・ファリャの楽曲#8を取り上げるなど、まさにスペイン尽くし。日本盤ボーナスとして収録されたプッチーニのアリア「星は光りぬ」で実は堂々たるオペラ歌唱ができることを示したアルフレッド・ロメロのVoと、TEARS OF MARTYRの女性Voであり、オペラ歌手として国際的に活躍するベレニス・ムーサのソプラノ・ヴォイスによるエレガントなデュエットが随所で聴けるのも本作の特徴。また、新ベーシストはかなりの技巧派で、かなり派手に弾きまくっている。相変わらずのロマンティックなメロディ・センスが生きる#2や#6は魅力的だし、彼らとしてはアグレッシヴなリフがリードする#9はかなり気に入った。シアトリカルな#5も印象的。ただ、こうしてスペインのバンドとしてのアイデンティティを示すことで音楽の「芸術点」が上がり、風格めいたものさえ感じさせるようになった一方、一般的なメタル・ファンにとってはややハイブロウになってしまったような感も。

DARK MOOR
AUTUMNAL
85
オータムナル (2008)

のっけから「白鳥の湖」の翻案的な大作メタル・チューンで始まる7枚目のアルバム。クラシックをモチーフに持ってくるのはいいが、前作の「運命」といい、前々作の「四季」といい、あまりにも大ネタ過ぎてちと萎える。恐らく実際は違うのだろうが、「『のだめカンタービレ』読んでクラシックに目覚めました!」レベルの人たちに思えてしまうというか(苦笑)。ま、出来は悪くないからいいんですけどね。基本的にはアルフレッド・ロメロ加入後の路線を引き継ぐ疾走度控えめの作風だが、前作でかなり復調したクサメロの充実は本作にも引き継がれており、曲調がやや画一的なのが玉に瑕だが、どの曲にも琴線に触れるメロディがちりばめられている。ここまであからさまにクラシカルな作風というのはちょっと前時代的な感じもするけど、「わかりやすいシンフォニック・メタル」が減少している昨今、このバンドの存在は貴重。ここまで我が道を行けるのはスペインという(メタル市場的な意味で)辺境で活動しているからこそなのかも。アルフレッド・ロメロ(Vo)の声の細さについても巧くクワイアでフォローされており、むしろそのナイーヴな感触のある細い声が哀愁の旋律を引き立てているような感もあって、ようやく慣れたというか、むしろ気に入ってきた。しかし毎回思うが、サウンドプロダクションの質と演奏力が高ければどのアルバムもプラス2点は堅いんだけどなぁ…。

DARK MOOR
TAROT
86
タロット (2007)

所属レーベルを「Arise」から「Scarlet」に移籍、日本盤リリース元もビクターからアヴァロンに変わって発表された6作目。本作のテーマはタイトルの通りタロット・カードで、各曲にタロットのカード名にちなんだタイトルが付けられている。そうして各曲に明確な主題を持たせたことが功を奏したのか、それぞれの曲が明確な個性を持ち、金太郎飴状態になってしまいがちなこの手のメロディック・パワー・メタル/シンフォニック・メタル・サウンドにメリハリを与えることに成功している。#7「Death」にはヘヴィで凶々しい曲調が与えられ、#8「Lovers」にはメロウで甘い曲調、とタイトルと曲調の対応は割とベタであるが、それはやむをえないところでしょう。アルフレッド・ロメロ(Vo)のナイーヴな歌唱が映える北欧メタル的なメロウ・チューンである#8はお気に入りです。ドラマティックな#6「Devil In The Tower」もいいね。10分を超える大作である#10「The Moon」はモチーフ(ベートーベンの「運命」)がメジャー過ぎてちょっと気恥ずかしいけど。2nd,3rdの頃に比べると疾走感は控えめだが、彼らの最大の持ち味であるクサメロは相変わらず随所で冴え渡り、なかなか楽しめる好盤となっている。日本盤ボーナスはモーツァルトの「トルコ行進曲」のインスト・カヴァーだが、演奏技術の高くないバンドがこういうことをやるのは無謀。

DARK MOOR
BEYOND THE SEA
80
ビヨンド・ザ・シー (2005)

なんか、以前よりもB級な印象が強まった感のある5thアルバム。もともとこのバンドはあまりサウンド・プロダクションが良くない。資料には何やら誇らしげに「LABYRINTH等も使用するイタリアのNew Sin Studioでレコーディング…」云々と書かれているが、「New Sin」で録られたそのLABYRINTHの音にしてからがスカスカなのに、なんでまた好んでそんな所で(苦笑)。この軽い音質に加え、Voも…。前作より加入したVoのアルフレッド・ロメロが、声が細いのに妙に力んだ唱法を多用し、所々デス声めいたシャウトさえかましてくれるのだが、これがまたショボさ全開。かえって声の細さが強調され、元々演奏がそれほど上手いバンドではないだけに、B級感をさらに高めてしまっている。とはいえ、本来の彼らの持ち味・特長であるメロディに関しては、随所で煽情的なメロディ/フレーズを聴かせてくれるので、とりあえずクサメロ好きであれば、それなりに楽しむことができる作品ではある。ただ、今回は「これぞ!」というキメ曲に欠けるため、インパクトはそれほど強くない。#1は前作収録の名曲「From Hell」にそっくりで、なかなかいいんだけど「From Hell」には及ばないしね…。メロディ・センスには非凡なものがあるバンドだけに、今でも期待はしているんですけどね。

DARK MOOR
DARK MOOR
85
ダーク・ムーア (2003)

バンドの顔であったヴォーカルのエリサ・C・マルティンをはじめ、3人のメンバーが一挙に脱退し、大幅なメンバー・チェンジを経て発表された4枚目のフル・アルバム(企画盤「BETWEEN LIGHT AND DARKNESS」は除く)。バンド名のみのアルバム・タイトルといい、さらにバンド名を冠した8分を超える大作曲を収録するなど、並々ならぬ気迫が感じられる一枚である。新しく迎えられたシンガー、アルフレッド・ロメロは男性だが、中性的な歌声の持ち主(ところどころマイケル・ジャクソンっぽいと思ってしまった…)で、今までと比べてさほど違和感を覚えさせることはない。むしろ、どうせならエリサより圧倒的に上手いヴォーカルを入れればよかったのに…などと思ったり。先行シングルとして発表された「From Hell」が素晴らしい出来だったため、メンバー・チェンジの影響は心配していなかったが…アルバムを通して聴いた結果としてはやや物足りない。基本的な音楽性に変化はないし、ラテン圏ヨーロッパの歴史や物語をモチーフとした歌詞世界も従来通り。にもかかわらず満足しきれないのは、彼ら最大の魅力である「クサさ」が控えめだからに他ならない。それはひょっとすると洗練されたということなのかもしれないし、ある種の成長を示すものなのかもしれない。ただ、子供っぽさが魅力の人間が大人びたり、甘さが魅力のお菓子が「甘さ控えめ」になったりすることが進歩か、と問われると、微妙なんですよねぇ…。

DARK MOOR
BETWEEN LIGHT AND DARKNESS
77
ビトウィーン・ライト・アンド・ダークネス (2002)

アコースティック・サウンドをメインとした新曲4曲に、シングルB面や各国のボーナス・トラックとして収録していた楽曲4曲を収録した企画盤。リーダーのエンリク・ガルシアは、アコースティックでクラシカルな音楽を作るのが夢のひとつだったそうで、とはいえ彼らくらいのポジションで全編アコースティックのアルバムを作るのは商業的にリスキーであるため、このようなリリース形態になった模様。で、その夢だったという4曲のアコースティック・チューンに関しては、メロディックかつメランコリック、ヨーロッパの伝統音楽からの影響も垣間見えるなかなかの秀曲ぞろいで、中でもクラシックの小品を思わせるインストの「Echoes Of The Seas」はとてもメタル・バンドが作ったとは思えないほど堂に入った仕上がり。ただ、前2作のアルバムで我々を悶絶させたような強烈なクサさは希薄で、やや物足りなさも残るのが事実。残りの4曲のうち2曲は前2作の日本盤ボーナス・トラックであり、前作収録の大作「Dies Irae」のオーケストラル・ヴァージョンもそれほど大胆に印象が変わっているわけでもないので、日本のファンにとっては既知のマテリアルばかりで、さほどありがたみはない。長い曲が多いのでトータル収録時間は50分を超えているものの、これで2520円(税込)はちょっと高いんじゃないの? RHAPSODYの「Rain Of A Thousand Flames」同様2100円(税込)、というのが妥当な価格設定だと思うのですが、どうでしょう?>ビクターご担当者様

DARK MOOR
THE GATES OF OBLIVION
89
ゲイツ・オブ・オブリヴィオン (2002)

前作の圧倒的な素晴らしさによって一躍メロディック・パワー・メタル愛好家たちのトップ・プライオリティ・アーティストに昇りつめた彼らの、待望のサード・アルバム。再生ボタンを押してすぐに流れ出す「In The Heart Of Stone」のイントロでガッツポーズ。続く「A New World」もイントロで秒殺。もうこの時点で勝ったも同然。その後もこちらの期待を裏切らないシンフォニックでドラマティックな楽曲が次々と飛び出し、快感のツボを突きまくる。BURRN!誌のレビューをはじめ、一部に「哀愁が薄れた」だの「クサさが減退した」などという評判もあるが、それは要するに洗練されたということで、それでも未だ他に類を見ないほどクサいメロディに満ち溢れているし、むしろキャッチーさが増して入門者には入りやすかったりするのではないか。とにかく2002年一番聴いていて気持ちよかった一枚。

DARK MOOR
THE HALL OF THE OLDEN DREAMS
89
ホール・オブ・ザ・オールデン・ドリームス (2001)

「異臭騒ぎが起こりかねないほどのクサいメロディ」という前評判につられて購入した「クサメタラー」たちを一撃で悶絶させた、セカンド・フルアルバム。オープニングに続く1曲目は疾走曲に違いない…という予想を覆すミドルの#2「Somewhere In Dreams」のイントロのリードからしてクサい。基本的な音楽性は、「BLIND GUARDIANにネオ・クラシカル系のギターを入れ、キーボードによるシンフォニックなアレンジで装飾した」とでも表現できるもので、日本盤のオビにある「豪華絢爛」という謳い文句がよく似合う壮麗なサウンド。その煌びやかさは全体としてRHAPSODYあたりに近い印象。一聴した時点では、#3「Maid Of Orleans」と#5「Silver Lake」、#9「Quest For The Eternal Flame」が個人的には気に入ったが、#4「Bells of Notre dame」も人気曲であり、その他の曲もかなりの出来。決してBGMにはなりえない、クドいほどに「濃い」メロディがとめどなく溢れ出してくる様は圧巻。しかし、このアルバム裏のアートワークの雰囲気は、(フォントが同じということが大きいのかもしれないが)BLIND GUARDIANの「NIGHTFALL IN MIDDLE-EARTH」に似すぎじゃないかい? 同じアンドレアス・マーシャルの手によるものとはいえ…。

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