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BLOOD STAIN CHILD
EPSILON
87
イプシロン (2011)

前作発表後、SADEW(Vo)とVIOLATOR(Dr)の2名が脱退。代わってギリシャ人女性のSOPHIAがクリーン専任Voとして、そして元YOUTHQUAKEのGAMIがドラマーとして加入、デス・ヴォイスのパートは再びRYO(B, Vo)が担当する形でバンドが大きく再編成されている。また、新たにイタリアの『COLONER RECORDS』と契約を結び、本作は同レーベルに所属するDISARMONIA MUNDIのエットレ・リゴッティとの共同プロデュースにて制作されている。そんな数々の変化を経て制作された本作は、女声Voの歌うキャッチーな歌メロが大幅に増量されたという意味で、パッと聴きの印象も大きく変わった一作と言えるだろう。しかし、基本的には2nd以降推し進められてきたトランス志向がさらに顕著になっただけで、実は本質的な部分は変わっておらず、これまでのBSCサウンドを愛して来たファンであればすんなりハマれるはず。従来の面影を強く残すアグレッシヴな曲から、そのままクラブでかかってもイケそうな#3やバンド史上初のスロー・バラードの#12まで、バンドの可能性がさらに広がったことを感じさせる楽曲充実の強力なアルバムだ。アニメのタイトルを思わせる楽曲が多いことや、ゲームのサントラのようなアートワークは、30代にして急に「男の娘」になってしまったRYU(G)のルックス同様、ご愛嬌というか、このバンドの独自性ととらえるべきか。

BLOOD STAIN CHILD
MOZAIQ
85
モザイク (2007)

前作が欧州および北米でも発売され、ワールドワイドへと活動の場を広げているBSCの4作目のアルバム。本作より専任VoとしてSADEWが、そして前作一作で脱退したSHIROMASA(G)に代わりG.S.R.(人名、というか芸名です)が加入している。新Voはそのアンダース・フリーデン(Vo:IN FLAMES)のコスプレさんのようなルックス通りの、アンダースっぽいVoスタイルで、より一層ヘヴィさを増したサウンドと共にバンド・サウンドの充実に貢献している。音楽性は基本的に前作の延長線上にあり、どの曲もデスラッシュ調であったり、ゴシック風であったり、トランスの要素が強かったり、タイプとしては前作に収録されていた楽曲のどれかの流れにあるものだ。ただ、前々作から顔を出し、前作で一気に表出したテクノ/トランス系のサイバーなKeyアレンジがより強化され、リーダー・トラックである#3「Freedom」を筆頭に、もはや「ダンサブル」とさえ形容できるほど。こうしたアレンジを採用しているバンドが世界に皆無なわけではないが、ここまで露骨にダンス寄りのアレンジを施したサウンドは他になく、このサウンドはかなりユニークなものと言えるだろう。そういった新しい境地へと進みつつ、「基本」というべきアグレッションもより研ぎ澄まされ、少なくともCDで聴く分には完全に「世界」レベルへと到達した感がある。前作で僕を魅了した哀愁のメロディも随所で冴え渡っているが、個々の楽曲のキャッチーさは前作の方がちょっと上かな? 日本盤のみの収録となるtrfのカヴァー「EZ DO DANCE」は、実際好きなのかもしれないけど、まあ半分ネタでしょう。

BLOOD STAIN CHILD
IDOLATOR
88
アイドレイター (2005)

ギタリストのDAIKIが脱退、新たにSHIROMASAが加入して発表された3作目のアルバム。今作ではこれまでHAUNTEDやMNEMICなどを手掛けたデンマークのテュー・マドセンが共同プロデュースとエンジニアリングを手掛けている。メンバーのルックスが、ストリート風だった前作から、一見すると変種のヴィジュアル系かと思ってしまうようなエキセントリックなものに変わっていることに象徴されるかのように、サウンドも大胆に変化している。前作でもその兆候は確実に存在していたが、サイバーなアレンジがサウンド全体を覆い、もはやCHILDREN OF BODOMのフォロワーとは呼べない個性的なメロディック・デス・メタル・サウンドを構築している。タイトル通りトランス調のインスト・ナンバーである#8「Nuclear Trance」はこの路線を象徴する一曲。個人的にはエピック・トランスを思わせるKeyがなんとも切ない#3「Embrace Me」が特にお気に入りだが、それ以外の曲もフックに富んだ楽曲揃いで、これほど個々の楽曲が印象に残ったメロディック・デス系の作品は本当に久しぶり。サウンドがやや細めなのは個性あるいは日本人としての限界ということになるのだろうが、個人的にはこのくらいのヘヴィさの方が聴きやすい。#12はなんとLUNA SEAのヒット曲「True Blue」のカヴァー。

BLOOD STAIN CHILD
MYSTIC YOUR HEART
82
ミスティック・ユア・ハート (2003)

前作がメロディック・デス・メタル・ファンの間で注目を集めたBSCのセカンド・アルバム。共同プロデュースおよびエンジニアリングを、欧州メタル・マニアの間では知られた存在であるフィンランドのアンシ・キッポが手掛けている。メロディック・デス・メタルとしての基本的な音楽性に変化はないものの、Keyのシンフォニック度が下がり、ギターがより前に出たことで、よりアグレッシヴなサウンドになっている。前作で、さながら中世ヨーロッパを思わせるようなクラシカルな音色(個人的には「悪魔城ドラキュラ」を思い出した)を聴かせていたKeyの音色がややサイバーなものに変わったこともあって、近年のIN FLAMESやSOILWORKなどを思わせる雰囲気も感じさせる。特に、キャッチーなタイトル曲におけるトランス的とも呼べるKeyアレンジは個性的。一部では前作より大仰さが後退したことに対する不満もあったようだが、音楽としてのトータルな完成度は間違いなく上がっている。キラー・チューンと呼べるほどの突出した楽曲はないが、どの曲も一定の高い水準に達している。Voにおける日本人のハンデが目立ちにくい音楽性でもあるので、プロモーション次第では本場ヨーロッパでもそこそこの成功が望めるのではないだろうか。

BLOOD STAIN CHILD
SILENCE OF NORTHERN HELL
79
サイレンス・オブ・ノーザン・ヘル (2002)

メロディック・メタルをプッシュする音楽評論家として知られるキャプテン和田こと、和田誠氏がプロデュースするHR/HMレーベル「CAPTAIN-ROCK」(発売元はM&Iカンパニー、ディストリビューションはポニー・キャニオン)の第一弾アーティストとしてデビューした大阪出身のバンドのファースト・(ミニ?)アルバム。本作の発表以前から、人気プロレスラー佐々木健介選手の入場テーマ曲や、新日本プロレス設立30周年記念試合のオープニング・テーマに彼らの楽曲が使用され、プロレス・マニアには知られる存在だったようだ。クサいシンフォニックなKeyサウンドと、わめき立てるようなVoによって、再生ボタンを押して15秒でCHILDREN OF BODOMのフォロワーであることがわかるが、そのクオリティ(特にメロディの煽情力)はNORTHERなど、同系の海外のバンドと比較して遜色ないほどのクオリティ。元はVISION QUESTなる、ハイトーンVoをフィーチュアしたメロディック・パワー・メタル・バンドだったという経歴もさもありなん、といった感じである。惜しむらくは軽いサウンド・プロダクションと、線の細い演奏で、楽曲センスには非凡なものを感じさせるだけに、今後の精進を望みたい。ちなみにタイトル曲はJFN系カドカワサウンドシネマ「トリニティ・ブラッド Rage Against The Moon」(ラジオ・ドラマ)のエンディング・テーマという微妙なタイアップが付いていた。

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