BLACK SABBATH | ||
FORBIDDEN |
77
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フォービドゥン (1995) |
90年代、正統的なHR/HMバンドに代わって台頭してきたオルタナティヴ勢やモダンなヘヴィ・ロックをプレイするミュージシャンが、こぞってBLACK SABBATHへのリスペクトを表明し、サバス再評価の気運が生まれていた。とはいえ、それはあくまでオジー・オズボーン(Vo)在籍時の音楽性に対してであって、80年代以降トニー・アイオミ(G)が追求してきた「様式美サバス」路線のサウンドに対するものではなかった。マネージメントはそのあたりを意識したのであろう、再びヘヴィさを強調することで、モダンなヘヴィ・ロックとして新譜を売り込もうとした。その結果、プロデューサーにはなんとBODY COUNT(ハードコア色の強いヒップホップ・ユニット)のアーニー・Eが起用され、さらに#1にはラディカルなラッパーとしてアメリカで高い人気を得ていたアイスTが迎えられるなど、オールド・ファンを不安にさせる体制で制作されている。しかし、出来上がった作品を聴いてみると、アイス・Tのラップを取り入れた#1こそやや「モダン」な感触ではあるが、その他の曲は前作の延長線上にある音楽性で、逆に拍子抜け。まあアーニー・Eもアイス・TもBLACK SABBATHのファンだったそうなので、トニー・アイオミのソングライティングに対してあまり口出しはできなかったのでしょう。とはいえ、キラー・チューンと言えるほどの曲は存在せず、冒頭3曲がやや退屈なこともあって、アルバムとしての印象は決して芳しいものではない。これが名門BLACK SABBATHの最終作になってしまうとしたら、いささか淋しい仕上がりではある。ま、ラスト・アルバムなんてそんなもんかもしれないけど。 |
BLACK SABBATH | ||
CROSS PURPOSES |
82
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クロス・パーパシス (1994) |
トニー・マーティン(Vo)が復帰。さらに元RAINBOWのボビー・ロンディネリ(Dr)を迎えて制作したアルバム。前作で見られた不自然に硬質なヘヴィさがなくなり、「HEADLESS CROSS」〜「TYR」の頃の様式的な雰囲気が復活している。ヘヴィにドライヴする#1「I Witness」は文句なしにカッコいいし、続く#2「Cross Of Thorns」は様式美の精髄を現代に伝える名品。泣きの効いたバラードの#6「Dying For Love」も素晴らしい。その他の曲も、#5「Immaculate Deception」や#8「The Hand That Rocks The Cradle」、#9「Cardinal Sin」など、概ね出来は良いが、ヘヴィなリフとメジャー・コードの組み合わせに違和感を覚える#3「Psychophobia」や、ALICE IN CHAINSのような当時流行の澱んだヘヴィネスを感じさせる#4「Virtual Death」のような曲は「様式美サバス」の世界観に合っておらず、アルバムの印象を散漫にしている感も。ぶっちゃけ、全体的にやや地味でもある。しかし、少なくとも前作よりはるかに荘厳で、個人的に彼らに求める音楽性に近いものを聴かせてくれる納得の一枚である。 |
BLACK SABBATH | ||
DEHUMANIZER |
78
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ディヒューマナイザー (1992) |
約10年ぶりにロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)がヴィニー・アピス(Dr)を伴って復帰、「様式美サバス」スタイルを築いた名盤「HEAVEN AND HELL」の再現なるかと期待されたアルバム。しかし、蓋を開けてみると、ここ数作の荘厳かつ神秘的な様式美サウンドは影を潜め、ヘヴィなリフが生々しく轟くファンの予想(期待)を裏切るサウンドを展開し、問題作として物議を醸すこととなった。ロニーとしては10年前も今回も、世情に合わせてサウンドのアップデートを行なったつもりだったのだろうが…。僕も当初、期待していたドラマティックなメロディを歌い上げてくれないロニーに失望し、アルバムの印象は決して良いものではなかった。しかし、このレビューを書くために聴き直してみると、意外とそれほど悪くない。よく耳を澄ませば80年代ゆかりのキャッチーなメロディもあるし、少なくともこの後に世に送り出されたDIOの作品のどれよりもフックがある。#3「TV Crimes」や#6「Time Machine」のようなアップ・テンポの曲は勢いで聴けるし、#8「Too Late」のようなドラマティックと言える曲もある。ロニーはこれ一枚で脱退したが(もともとアルバム1枚という契約だったそうな)、次作が元の「様式美サバス」路線であったことを考えると、このアルバムは「LOCK UP THE WOLVES」と「STRANGE HIGHWAYS」をつなぐ「DIOのアルバム」だったということなのだろう。結果論だけど。 |
BLACK SABBATH | ||
TYR |
87
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ティール (1990) |
ベースにニール・マーレイ(WHITESNAKE、GARY MOOREなど)を迎え、コージー・パウエルと共にブリティッシュHR最強のリズム・セクションを迎えて制作されたアルバム。タイトルの「ティール」とは北欧神話に登場する戦の神の名前。アルバムのコンセプト・テーマが北欧神話だから、という訳でもあるまいが、誤解を恐れずに言えば、BLACK SABBATHの作品中で、最も北欧メタル的なアルバムである。すなわち、叙情性が強く、あまりヘヴィではない。そのため、CATHEDRALのリー・ドリアン(Vo)のようなダイ・ハードなサバス・マニアには評価の低い作品だが、僕のようなメロディ重視の軟弱なリスナーには非常に好ましい音楽性である。たしかにサウンドはいささかオーバー・プロデュース気味で、過剰に洗練された線の細い音になってしまっているが、それゆえに聴きやすくもある。そして何より曲がいい。あまりにもコージー・パウエルなドラミングが聴ける#2「The Law Maker」は文句なしにカッコいい疾走曲だし、#3「Jerusalem」は劇的なコーラスが印象的な名曲。重厚な#4「Sabbath Stones」やシングル・カットされたコマーシャルと言ってもいいほどメロディアスなバラードの#8「Feels Good To Me」、アルバムをビシッと締める#9「Heaven In Black」、どれも秀曲だが、やはりハイライトは#5「The Battle Of Tyr」〜#6「Odin's Court」〜#7「Valhalla」というドラマティックな組曲か。様式美ファン必聴の一枚。 |
BLACK SABBATH | ||
HEADLESS CROSS |
88
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ヘッドレス・クロス (1989) |
基本的に僕は速い曲が好きで、HR/HMアルバムは勢いのある曲で始まってほしいと考えているタイプである。しかし、このアルバムの冒頭(SE的なイントロを除く)を飾るタイトル曲は、まさに「重々しい」という表現がピッタリな、ヘヴィでスローな曲。しかし、それがまた最高なのだ。この重厚な荘厳さは、まさに僕が「様式美」という言葉に求めるムードそのもの。シビれるね。続く#3は、「様式美とは何か」を1曲で語り尽くす名曲と言えよう。後半の展開がカッコいい#4、歌メロを聴いてキャッチーな曲かと思いきや、ミステリアスなコーラスのコントラストが面白い#5、これまたキャッチーなリフとエキゾチックなコーラスの対比が印象的な#6、このバンドが常に持つブルース・フィーリングが比較的強く出た#7、そして厳粛にアルバムを締めくくる#8と、アルバムの完成度に隙はない。BLACK SABBATHの最高傑作、と呼ぶには抵抗があるが、BLACK SABBATHで一番好きなアルバム、と言うことにためらいはない。トニー・マーティン(Vo)は当時よくロニー・ジェイムズ・ディオのスタイルを真似ていると言われていたようだが、個人的にはそれほど似ているとは思わない。マネージメントおよびレコード会社を移籍し、そしてDrにかのコージー・パウエルを迎えたことも、サウンドに好影響を与えている。これぞ80年代最後にして最高の様式美アルバム。 |
BLACK SABBATH | ||
THE ETERNAL IDOL |
85
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エターナル・アイドル (1987) |
ロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)脱退後、イアン・ギラン(Vo:DEEP PURPLE〜GILLAN)を迎えてみたり、トニー・アイオミ(G)のソロが、レコード会社の意向によってSABBATH名義で出てしまったりと、ここ数年のBLACK SABBATHは迷走気味で、かつてのカリスマも地に落ちてしまった。実質的にバンドが解体していたため、本作ではメンバーを一新、Voにほぼ無名の新人トニー・マーティン、Bに元RAINBOWのボブ・デイズリー、Drに元ELOのベヴ・ベヴァンを迎えている。本作はもともと前作のツアーでシンガーを務めていたレイ・ギランと制作を進めていたもので、ヴォーカル・ラインは基本的にレイが歌ったデモをトニーがそのままなぞって歌っており、その後あまり耳にしない節回しや音域でのトニーの歌唱を聴くことができる。#5や#8のような、R&Rフィーリングを含んでドライヴする楽曲(これがまたカッコいい。トニー・アイオミは本当に器用で優れたコンポーザーだ)などは明らかにレイ・ギランを想定して作った曲だろうね。荘厳かつ重厚なリフとドラマティックなコーラスが印象的な名曲「The Shining」で幕を開ける本作は、基本的にロニー・ジェイムズ・ディオ在籍時の「様式美サバス」路線を継承する仕上がりとなっている。サウンドにバンド名から想起されるようなおどろおどろしいヘヴィさは感じられないが、高品質のブリティッシュ・ハード・ロック作品として楽しめる。 |
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