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AXEL RUDI PELL
SHADOW ZONE
76
シャドウ・ゾーン (2002)

実にコンスタントに作品を発表する働き者、アクセル・ルディ・ペル。どっかのアクセルとはえらい違いだ。なんと本作はドイツのナショナル・チャートで22位まで上昇する過去最高のヒット・アルバムとなっており、その成功の規模はGAMMA RAYあたりと同等、といえばいかに日本と温度差があるかおわかりいただけるだろうか(実は本作以前のアルバムもGAMMA RAYとほぼ同等の、近年のメタル人気の復活に伴う右肩上がりのチャート成績を記録している)。ただ本作はこれまでにもまして長尺/ドラマティック志向が強まっており、疾走曲や、シンプルなハード・ロック・チューンに前2作のようなキレが感じられないために、正直ちょっと退屈。彼の長尺曲は巧みな構成力で変幻自在の展開を聴かせる、というタイプのものではなく、イントロやらソロやら、オーソドックスなパーツが長く引き伸ばされ、何度も繰り返されるだけなので、各パーツがよほど魅力的でないとかなりつらい(基本的に僕は彼の曲で好きなのは長尺曲以外の曲ばかりである)。まして、スリリングなソロで見せ場を作れるタイプでもないわけだし…(いや、アクセル本人的には自身のソロを楽曲中でのハイライトに位置づけていると思うが)。本作を最後に日本盤がリリースされなくなってしまったのも、次作でこれまで右肩上がりだったドイツでのチャート・アクションが若干下降したのも、本作の出来と無関係ではないと思う。

AXEL RUDI PELL
THE MASQUERADE BALL
82
ザ・マスカレード・ボール (2000)

バラード・コレクションの第2弾を挟んでリリースされた、前作に引き続きジョニー・ジョエリをVoに据えて発表されたスタジオ・アルバム。名手ヨルグ・マイケル(Dr)が脱退してしまったが、代わりに加入したマイク・テラーナも達人なので無問題…なのだが、このドラムの音はなんだ? 以前からドラムの音についてはちょっと変な立ち方をしていると思っていたが、ここまで安っぽくはなかったような…。全体的にも過剰に生っぽくて、なんかデモテープみたいな音質…。と、いきなり印象が悪いが、ジョニー・ジョエリの熱い歌声でカッコいい様式疾走チューン#2のコーラスをキメられちゃうと、やっぱ聴き入ってしまう(苦笑)。疾走曲の後にキャッチーな曲が続くアルバム構成など、ジャケもそうだが前作とは双子の兄弟のようなアルバム。8分の#4、10分の#5と長尺の曲が続いてダレてきた所で、シンプルでカッコいいアップ・テンポの#6が斬り込んでハッとさせ、また8分近い#7で気を抜くと、バイクのスロットル音から始まるノリのいい#8で引き付けられる心憎い曲順(笑)。要はシンプルなHRとドラマティックな大作曲がほぼ交互に並んでいるのだが、ぶっちゃけシンプルなHRの方が聴いていて楽しいな。長尺の曲の方が演っていて楽しいのかもしれないが(笑)。Voの歌唱力に助けられている感は否めないが、メロディの「クサさ」という点においては彼のキャリアでも1、2を争う充実ぶり。#10はURIAH HEEPの「July Morning」のカヴァー。

AXEL RUDI PELL
OCEANS OF TIME
83
オーシャンズ・オブ・タイム (1998)

前作発表後、なんとバンドの顔として定着していたジェフ・スコット・ソートが脱退。実力のある人だっただけに、後任探しは難しいと思われたが、元HARDLINEのジョニー・ジョエリを加入させたと聞いて、「そう来たか!」と膝を叩いてしまった。HARDLINEは元JOURNEY〜BAD ENGLISHのニール・ショーン(G)の新プロジェクトとして期待を集めたもののアルバム一枚で解体してしまったが、ジョニーのエモーショナルなVoの評価は高く、あのまま埋もれてしまうのは惜しいと思っていたHR/HMファンは結構多かったはず。正直やや意外な線ではあったが、基本的にメロディアスな歌メロを持っているバンドなので相性は悪くなく、素晴らしい歌唱を披露してジェフの穴を見事に埋めている。ちなみにKeyもROUGH SILKのファージー・ダンバーグに交替。ジャケットが前作、前々作と同じテイストであることから推察できるように、音楽性は「いつも通り」で、イントロに続く疾走ナンバーの#2なんて、まるで前作の「Nightmare」の焼き直しみたいな曲。ただ、#3「Carrousel」のような、ちょっとアメリカンな、メロディアス・ハード然とした楽曲は、ジョニーの個性を意識して書かれた楽曲かもしれない。その曲や、#5「Ride The Rainbow」、バラードのタイトル曲#7を筆頭に、今作は前2作と比べ歌メロが充実していて好印象。長めの曲も、なんとか聴かせるフックがあるし、なかなか楽しめる一枚だ。

AXEL RUDI PELL
MAGIC
81
マジック (1997)

Keyが94年以来のメンバー、ジュリー・グローからRAGEのオーケストレーションを担当したことで知られるクリスチャン・ウルフに交替。とはいえ元々さほどKeyが目立つバンドではないので、特に影響はない。本作はDrのヨルグ・マイケルがSTRATOVARIUSに参加し、日本で成功を収めた後のアルバムということもあり、その成功を意識したかのような、クラシカルな疾走感重視の作品になっている。#2、#3、#7、#8と疾走曲が(彼のアルバムにしては)多く、しかもギター・ソロはこれまで以上にネオ・クラシカル・スタイルを意識した速弾きがフィーチュアされている。日本盤ボーナスはローランド・グラポウ(G:HELLOWEEN)と共演したクラシカルなインスト・ナンバーだ。ただ、あまりしつこく言うのもアレだが、彼の速弾きというのは右手と左手がかみ合っておらず、必要以上にサウンドを歪ませていることもあってまるでノイズの塊のようで聞き苦しいことおびただしい。正直速い曲が魅力、というタイプのアーティストではないので、この作風はあまり好ましいものではなく、彼の思惑とは反対に日本では「弾けないなら弾くな」とか「マンネリ」といった批判的な声が多かったように思う。DIOのドラマティックな曲を思わせる曲調の#4はまずまずだが、12分におよぶ過去最長の大作#6が静かなパートばかりの辛気臭い曲であることも含め、もう少し楽曲を練ったほうがよかったのでは…という感が否めない。

AXEL RUDI PELL
BLACK MOON PYRAMID
78
ブラック・ムーン・ピラミッド (1996)

「MADE IN GERMANY」という、なんともDEEP PURPLEちっくなタイトルのライヴ・アルバムを挟んでリリースされた5枚目のフル・アルバム。ジェフ・スコット・ソートが歌い始めて3作目となり、すっかりバンドの顔として定着した感がある。アルバムのアートワークも、本作以降しばらくこういった紫を基調としたデザインに定着しており、そういった意味でAXEL RUDI PELLの「ブランド・イメージ」を確立した作品であるとも言える。ただ、個人的には本作の印象はあまりよろしくなくて、彼のカタログ中では下から数えた方が早い出来だと思う。収録曲数がいつもより多い分、個々の楽曲の練り込みが甘くなったのか、全体的にリフがつまらなくなっていて、イントロ#1の後の「お約束」の疾走チューン#2なんて「やっつけ仕事」に聴こえてしまう。タイトルでRAINBOW風の楽曲かと思わせてジミヘン調の#5「Touch The Rainbow」のかったるさも悪印象。コマーシャルなバラード#8〜「Stargazer」風の大作#9〜インストの#10というつなぎは、個々の楽曲は悪くないものの、アルバムの勢いを削いでダレを誘う。アルバム構成といい、個々の楽曲といい、もう少し考えればだいぶ良くなっただろうと思えるだけに、ちょっと残念なアルバム。

AXEL RUDI PELL
BETWEEN THE WALLS
82
ビトウィーン・ザ・ウォールズ (1994)

バラード・コレクションを挟んでリリースされた4作目のアルバム。AXEL RUDI PELLに対して「ソロ・ギタリストのバンド」というイメージからリッチー・ブラックモア、イングヴェイ・マルムスティーン的な音楽をプレイしているという誤解(いや、あながち間違ってはいないのだが)をされている方がいるようだが、AXEL RUDI PELLの音楽は彼らに比べるとだいぶヘヴィ・メタリックなもので、時にJUDAS PRIESTや、同郷のACCEPTをすら彷彿させる攻撃性を備えている(元々アクセルが在籍していたSTEELERはパワー・メタル・バンドだった)。そのため本作に収録されているFREEのカヴァー#7などは逆に浮いてしまうのだが、その辺は「ギタリストとしてのこだわり」なのだろう。本作は彼の作風の基本線である「キャッチーなリフと、歌メロの良さに裏付けられた、パワー・メタル的なソリッドさを備えた様式美サウンド」が完成された作品で、アルバム単位で見た場合、楽曲クオリティの平均点でもトップ・クラスと思われる。特に#3「Warrior」や#6「Outlaw」などはDEEP PURPLEやRAINBOWに対するこだわりから抜け出せない日本の典型的「様式美ファン」ならなかなか満足できる佳曲だと思う。最高傑作かどうかはともかく、AXEL RUDI PELLを聴いてみたい、という入門者には本作が「典型的な一枚」としてお薦めかな。まあ、この人の場合どれを聴いても大差はないけど(笑)。

AXEL RUDI PELL
ETERNAL PRISONER
81
エターナル・プリズナー (1992)

前作まではアクセルのソロ・アルバムという位置づけで、メンバーも「単発契約」だったが、本作からは「バンド・AXEL RUDI PELL」として活動していくことになった。そこでパーマネントなVoとして迎えられたのが、なんと元YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCEのジェフ・スコット・ソート。なんかこう、正直分不相応というか、常に彼自身の演奏力に対して随分達者な人ばかりが周りを固めるような格好で、この人はひょっとしたら凄い金持ちのボンボンで、採算度外視で好きなミュージシャン集めて趣味でレコード作って楽しんでいるのではないかと疑ってしまう。チャーリー・ハーンやロブ・ロックに比べて器用で幅の広いシンガーであるジェフを得て色気が出たのか、全体的にこれまで(と、この後)に比べて「キャッチーなハード・ロック」としてのニュアンスが強く出たアルバムに仕上がっている。中でも、EXTREME風の#6や、LAメタルにも通じる#9などは彼のキャリアの中でも異色のアメリカンなテイストを感じさせる楽曲で、違和感が否めない。全体的な出来は決して悪くないが、彼のキャリアを通して見たとき、一番ブレの感じられるアルバムじゃないかな。

AXEL RUDI PELL
NASTY REPUTATION
82
ナスティ・レピュテイション (1991)

2作目となるソロ・アルバムで、今回はヴォーカルにJOSHUAやMARS、IMPELLITERRIでの活動経験があったものの、当時はまだ無名に近かったロブ・ロックを迎えている。当時ロブ・ロックはBURRN!のインタビューで、この仕事で「2年は生活できるギャラをもらった」と発言しており、成人男性一人が2年生活できるギャラというと円で600万以下ってことはないと思うが、彼にそれだけ払っても黒字になるほどの売上が見込めたのだろうか? なんてどうでもいいことを考えてしまう(笑)。作品内容は前作の延長線上にあるRAINBOWやJUDAS PRIEST、SCORPIONSなどのエッセンスを感じさせる正統的なHR/HMサウンドで、ロブ・ロックのやや金属的なVoがよりメタリックな印象を与えている。基本的な音楽性は変わっていないものの、Voの資質ゆえか、コマーシャルな要素が後退し、後に顕著になる大作志向が初めて明らかになった10分超の#6など、より正統的な様式世界が追求されている。3回挿入されるドアが開くSEに合わせてガラッとプレイのテイストが変わるインストの#9において、これも後に「お約束」となるジミヘン風のギター・プレイが顔を出していることも含め、AXEL RUDI PELLの基本的な音楽ボキャブラリーはこの時点で既に出揃っていると言っていいだろう。#5はDEEP PURPLEのカヴァー。

AXEL RUDI PELL
WILD OBSESSION
83
ワイルド・オブセッション (1989)

ドイツの中堅パワー・メタル・バンドだったSTEELER(イングヴェイ・マルムスティーンが在籍したLAのバンドとは同名異バンド)のギタリストだったアクセル・ルディ・ペルのファースト・ソロ・アルバム。ヴォーカルには元VICTORYで、ゲイリー・ムーアのアルバムで歌ったこともある実力派、チャーリー・ハーンを迎えている。音楽性はSTEELERの流れを汲む正統的なHR/HMで、チャーリーのちょっとナスティなVoと、ヨルグ・マイケル(Dr)による硬質なビートが、時にパワー・メタリックといってもいいくらいの荒々しい攻撃性を生み出している。楽曲の面では後年ほどドラマティックな様式美世界への耽溺を見せておらず、チャーリーに大半を委ねた歌詞が非常に紋切り型な80年代メインストリームHR/HMっぽいものであることに引っ張られたのか、全体的にキャッチーで聴きやすい。サウンドがあまり良くない(とはいえ当時のドイツのインディーズとしてはマシな方だと思う)せいか、よく指摘されるアクセル本人のギター・テクニックのアラも後年の作品に比べれば目立たず、むしろ文字通りの意味でスリリングにさえ聴こえることも(この頃の方がちゃんと練習してたのかも)。この頃続々と登場していたHELLOWEENフォロワーのイモバンドたちとは一線を画す、確かなクオリティを備えた初期の佳作だ。

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