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AS I LAY DYING
AWAKENED
85
アウェイクンド (2012)

新曲のほか、カヴァー曲や過去曲のリミックスなどを収録した10周年記念企画アルバム「DECAS」(2011)を挟んでリリースされた通算6作目のオリジナル・アルバム。前作、前々作を全米TOP10に送り込み、「メタルコアの皇帝」の異名をとるほどの成功を収めた彼らだが、その成功に安住することなく本作ではプロデューサーにこれまでとは異なるパンク畑のビル・スティーブンソン(DESCENDENTS)を起用するなど、これまでとは異なるやり方で制作している。そのことが影響したのか、本作ではこれまで以上にメロディックなギター・ワークがフィーチュアされ、初めて全曲にクリーン・ヴォイスによるコーラス・パートが配されるなど、過去最高にメロディックで音楽的な仕上がりになっている。そうはいっても必ずしも軟弱になったわけではなく、今なお充分に硬質なエッジを備え、ここ数作では影が薄くなっていたブレイクダウン・パートも復活するなど、コア志向のリスナーにも支持されうる作風だろう。これまでアルバム中にアグレッシヴな曲とメロディックな曲が混在していたが、それらがひとつの楽曲の中で統合された感じか。結果として似たような曲ばかりと感じる向きもあるかもしれないが、これだけのクオリティと緊張感を保っているのは尋常ではない。


AS I LAY DYING
THE POWERLESS RISE
86
ザ・パワーレス・ライズ (2010)

ティム・ランベシス(Vo)のサイド・プロジェクトAUSTRIAN DEATH MACHINEの活動を挟んでリリースされた通算5作目のフル・アルバム(企画盤は除く)。前作同様KILLSWITCH ENGAGEのアダムと、前作ではアシスタントとして関わっていたダニエル・キャッスルマンを共同プロデュースに、ミックスにコリン・リチャードソンを迎え、大成功を収めた前作の「勝利チーム」で制作されている。そのため、基本線としては前作を踏襲する作風なのだが、デスラッシュを思わせる攻撃的な曲はより激しさを増し、メランコリックなメロディーをフィーチュアした楽曲はよりエモーショナルになっている。ギターのフレーズもより叙情性かつ技巧的になり、デビュー時からは見違えるほど安定感と突進力を増したドラムといい、もはや「メタルコア」などという十把一からげなワードではなく、「AILD流メタル」と形容すべきスタイルを確立した観がある。個人的に#6「Anger And Apathy」に込められた悲痛なまでの哀感には心が震えたし、アルバム後半におけるメロディアスな楽曲の畳み掛けにもグッと来た。キャリアを重ね、成功を収めてなお深化していく怒りと悲哀のコンビネーションが素晴らしく、キャッチーなメロディを取り入れようとも決して丸くなることのないバンドの真摯なアティテュードが伝わってくる好盤だ。

AS I LAY DYING
AN OCEAN BETWEEN US
84
アン・オーシャン・ビトウィーン・アス (2007)

前作が全米最高35位まで上昇し、メタルコアを代表するバンドの一角としてのポジションを揺るぎないものにした彼ら。KILLSWITCH ENGAGEのアダム・デュトキエヴィッチをプロデュースに、コリン・リチャードソンをミックス・マスタリングに迎えて制作されたこの新作についてティム・ランベシス(Vo)は「メタルコアの要素が少しあろうとも、クラシックなメタル・レコードを作ったと思っている」と語っており、実際前作以上にストレートなメタル色が強く出た作品となっている。劇的なインストゥルメンタルによるイントロ#1から始まるアルバム構成からしてメタルだが、PANTERAばりの鋭さとヘヴィさを備えたリフが聴ける#2なども、もはやハードコア的なモッシュやサークル・ピットよりヘッド・バンギングが似合うメタル曲だ。デスラッシュ的な攻撃的な曲と、新加入のジョシュ・ギルバート(B, Vo)の、前任のクリントよりムーディーな歌声を生かしたメランコリックなサビメロをフィーチュアした楽曲がほぼ交互に繰り出される構成は前作以上に硬質でストイックなカッコよさに満ちており、本作は全米8位の大ヒットを記録、グラミー賞の「ベスト・メタル・パフォーマンス」部門にもノミネートされた。

AS I LAY DYING
SHADOWS ARE SECURITY
85
シャドウズ・アー・セキュリティー (2005)

前作がアメリカで6万枚以上を売り上げ、EXTREME THE DOJO Vol.12で来日も果たした彼らのサード・アルバム。前作からメンバーが3人入れ替わっており、ギターとベースという弦楽器隊が全員入れ替わっている。ノーマル・ヴォイスで歌えるベーシストのクリント・ノリスの加入によって、曲によってはサビでクリーン・ヴォーカルを聴かせることができるようになったことがまず大きい。新しいギタリスト2人はいずれも前任者より正統的HM寄りのプレイヤーのようで、サウンドのメタリックな質感・整合感が増していることも、私のようなオールド・ウェイヴなHR/HMを愛する身には好ましい変化に思える。このメンバー・チェンジの成果が最も顕著に現れているのが#4「The Darkest Nights」でキャッチーなギターのフレーズがリードし、サビではメランコリックなクリーン・ヴォイスのメロディーが歌い上げられるこの曲で私はこのバンドにハマったと言っても過言ではない。歴史映画のようなドラマ仕立てのPVもこの手のバンドがこういうPVを作るとは思っていなかったので、インパクトがあった。使用しているスタジオは前作と同じながら、ミックスとマスタリングにアンディ・スニープを起用したことが功を奏したのか、サウンドも前作よりはるかに良くなっている。全体的にキャッチーさを増したリフ、楽曲の充実も含め、メタルコアというジャンルを代表する一枚といえる傑作である

AS I LAY DYING
FRAIL WORDS COLLAPSE
76
フレイル・ワーズ・コラプス (2003)

カリフォルニア州サンディエゴ出身のメタルコア・バンド。バンド名の由来はウィリアム・フォークナーの小説「死の床に横たわりて(As I Lay Dying)」。メタルコアは「MAメタル(マサチューセッツ・メタル)」などと呼ばれる通り東海岸で興った音楽で、西海岸のバンドは珍しい。テキサスのインディー・レーベルである「Pluto」から発表されたデビュー・アルバム、およびAMERICAN TRAGEDYとのスプリット・アルバムの好評を受け、大手「METAL BLADE」との契約を得て発表されたセカンド・アルバムにして日本デビュー作が本作。音楽的にはメタルコアのイノヴェイター的存在であるKILLSWITCH ENGAGEやSHADOWS FALLなどに比べると不協和音の多用などにNU METALからの影響が強く、メタルコアに色濃い北欧メロディック・デス・メタルの影響と同等以上にハードコア的なアグレッションを強く感じさせる。サウンド・プロダクションのラフさもハードコア的な雰囲気を強めているが、リード・ギターのメロディーはなかなか叙情的で心惹かれるものがある。正直演奏力などはイマイチで、まだまだ「地元のいいバンド」レベルだが、こんな私でさえサークル・ピットに飛び込みたくなるようなパートを持つ#3「Forever」など、キメ曲と言っていい曲をちゃんと生み出しているのは心強い。

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