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ARCH ENEMY
WAR ETERNAL
87
ウォー・エターナル (2014)

本来であれば、「前作完成後、再び脱退したクリストファー・アモット(G)の後任に、元ARSISのアメリカ人ギタリスト、ニック・コードルを迎えて発表する通算9作目のスタジオ・アルバム」という書き出しになるはずが、本作発表直前にアンジェラ・ゴソウ(Vo)がマネージメント業務に専念するために脱退、後任にTHE AGONISTのアリッサ・ホワイト=グルーズが加入するという衝撃的なメンバー・チェンジが発表され、すっかり「新生ARCH ENEMYの第一弾」という印象のアルバムになってしまった。そして、本作はそれに相応しい強力な一枚である。アリッサはTHE AGONIST時代のようにクリーン・ボイスは使用していないが、アンジェラよりもややエモーショナルなデス・ボイスは充分に強力であり、Voパートに不安も不足もない。一方マイケル・アモット(G)とニックの相性も良く、ギター・パートも非常に充実している。楽曲もファストでアグレッシヴな曲からヘヴィな曲、そして有名編曲家ウルフ・ヤンソンによるオーケストレーションをフィーチュアした楽曲まで、いずれもフックに富んでおり、ここ2作の流れを汲むメロディ重視の姿勢を貫きつつも、アルバムを通して緊張感が持続する仕上がりである。ただ、一方で「手堅くファンの望むものを提示した」ような観もあり、この編成だからこそなしえる新機軸と、このバンドの持つ真のダイナミズムの封印はまだ解放されきっていないのではないかと思わせる、期待感とも言い換えられるもどかしさがある。

ARCH ENEMY
KHAOS LEGIONS
84
ケイオス・リージョンズ (2011)

前作から約4年ぶりと、このバンドにしては長いインターバルを置いて発表された通算8作目のフル・アルバム。とはいえ、この間に初期3作のリ・レコーディング・アルバム「THE ROOTS OF ALL EVIL」(2009)のリリースを挟んでいるので、そちらも考慮に入れれば順当なリリース・ペースと言える。基本的にはどの曲にも泣きのメロディックなフレーズがフィーチュアされ、「復調」を感じた前作「RISE OF THE TYRANT」の方向性を受け継ぐ、70年代〜80年代のHR/HMのエッセンスを巧みに消化した方向性だが、サウンド的には「ROOTS OF ALL EVIL」で起用したアンディ・スニープの手腕によるものか、より各楽器の音がよく聴こえる、整合感に満ちた音に仕上がっている(ギターの音が馬鹿デカかった「RISE OF〜」のファンにとってはやや迫力不足に響くかもしれない)。今回は特にメロディックなパートの練り込みがこれまで以上に入念で、ブルータルなパートとの落差が強調されており、よく言えば完成度が高く、悪く言えばやや勢い不足な印象。そして日本盤ボーナスを含めて16曲(うち4曲はインストの小曲だが)と、このバンドにしては曲数が多く、序曲の#1に続くオープニングの#2がミドルテンポであるために、一聴時のインパクトはやや弱い。ただ、キャリアの長さを考えればこういうこの手のジャンルには珍しい「スルメ」な路線を推し進めて行くというのもアリか。

ARCH ENEMY
RISE OF THE TYRANT
86
ライズ・オブ・ザ・タイラント (2007)

前作完成後「ツアーに疲れた」「自分の人生を見つめ直したい」「学校に行ってみたい」などといったモラトリアム青年のような理由で脱退したクリストファー・アモットがあっさり復帰。不在期間メンバーとして来日公演も2度こなしたにもかかわらず結局アルバムには1度も参加できなかったフレドリック・オーケソン(G:元TALISMAN他)の立場って…。本作は久々にフレドリック・ノルドストロームのプロデュースで、しかも制作時のインタビューなどで「非常にメロディアス」などと形容されており、日本のファンの間では原点回帰かと期待されていたアルバムである。そして実際、本作ではアグレッションを失うことなくウエットなHR/HMならではの旨味を大幅に増量したサウンド/楽曲が体現されており、特にマイケル・アモット(G)の奏でる叙情フレーズの登場頻度は過去最高で、私のようなメロディ重視のファンにとっては「これを待っていた」という感じだろう。バンド史上屈指のブルータリティを誇るタイトル曲#6から、映画「火垂るの墓」にインスパイアされたという泣き泣きのメランコリック・チューン#7まで楽曲に幅を持たせつつ、基本的にはヘヴィ・メタルらしいフックと展開を備えた楽曲が揃っており、楽曲の完成度の平均点は過去最高かも。初期の彼らにあった禍々しくも魅惑的な緊張感が薄れてしまったのはそれなりの成功を収め、バンド内恋愛まで成立しちゃっている今となってはやむを得ないのかもしれないが、そうしたマイナスポイントをねじ伏せるだけの楽曲のクオリティがある。ただ、ここまで楽曲が音楽的になってくると、アンジェラの深みに欠ける咆哮に物足りなさを感じてしまうのもまた事実。


ARCH ENEMY
DOOMSDAY MACHINE
83
ドゥームズデイ・マシーン (2005)

クリストファー・アモット(G)のソロ・プロジェクトARMAGEDDONの「EMBRACE THE MYSTERY」でVoを務めていたリカルド・ベンソンをプロデューサーに立てた6枚目のアルバム。シンプルでモダンなヘヴィ・サウンドを打ち出した前作の方向性に飽きたのか、かつてのような起伏ある曲展開と、叙情的なフレーズを大幅に回復させた作品で、その「原点回帰」的なムードは大仰なイントロの#1を聴けばすぐに感じ取れることだろう。中でも#3「Nemesis」は、デス・メタル史上最もベタな(?)歌詞のフレーズを持つ非常に「わかりやすい」名曲で、そのサビの裏でむせび泣くクッサ〜いギターのフレーズには興醒めしつつも悶絶してしまうという感性のジレンマ(?)が抑えられない(笑)。全体的な方向性としては明らかに前作よりも日本人好みの方向性に近づいており、楽曲の出来も決して悪くないのだが、サウンドからかつてのようなオーラというか緊張感のようなものが希薄になっており、イマイチ音楽に説得力がない。そのため、随所で聴けるメロディックなフレーズも取ってつけたようで、攻撃性も叙情性も中途半端な印象が拭えない。そして本作完成後、クリストファー・アモットが脱退するという「事件」が発生するわけだが、そうしたバンドの中の微妙な空気が作品に悪い形で反映されてしまったのだろうか。


ARCH ENEMY
ANTHEMS OF REBELLION
81
アンセムズ・オブ・リベリオン (2003)

これまでややビッグ・イン・ジャパン気味だった彼らだが、アンジェラ・ゴソウ(Vo)加入をきっかけにアメリカを含む全世界のヘヴィ・ミュージック・シーンで注目を集める存在となった。ただ、それは必ずしもアンジェラの貢献だけではなく、アメリカのヘヴィ・ミュージック・シーンにおけるIN FLAMESの成功や、AT THE GATESが95年に発表した名盤「SLAUGHTER OF SOUL」がアメリカで「発見」されたことでこの手のジャンルに対する認知が高まったことが大きい。このチャンスにARCH ENEMYは持ち前のヨーロピアンな叙情味、野暮ったさと紙一重の「泣き」を抑え、時にSLIPKNOTのようなNU METALをさえ思わせるモダンなヘヴィ・サウンドを押し出してみせた。これはアメリカをツアーするうちに、アメリカのバンドがシンプルなグルーヴによって観衆を魅了していることに影響を受け、「ライヴ映えする曲を作りたい」という欲求が生まれたことが原因になっているようだ。しかし、それは泣きにこそ彼らの魅力があると感じていた私のような人間にとっては少々つらい方向性だ。ましてやライヴ会場ではなく自宅や通勤電車の中でこの音楽に相対する身としてはなおさらである。とはいえ#3に代表されるこの新しい路線にもそれなりのインパクトはあるし、#4のようなキラー・チューンもちゃんと収めているあたりは流石というべきか。

ARCH ENEMY
WAGES OF SIN
88
ウェイジズ・オブ・シン (2001)

脱退したヨハン・リーヴァ(Vo)の後任が女性であると聞き、誰もが正気を疑った。そしてその歌声を聴き、「ホントに女性か?」と耳を疑った。そしてそのルックスを見て、その美しさに目を疑った。そういう意味で今回のVo交代劇は、ここ数年で最もインパクトのあるメンバー・チェンジだったと言ってよいだろう。美貌のドイツ人女性フロントマン、アンジェラ・ゴソウを得て制作された本作は、アンディ・スニープによる硬質な研ぎ澄まされた音作りもあり、前作まで漂っていた、デス・メタルを出自とするバンドならではのアングラ臭が一掃され、洗練された「ブルータル・メタル」アルバムに仕上がっている。再生ボタンを押して流れてくる儚げなピアノの音から強靭なリズムが叩きつけられ、マシーナリーなリフが疾走する名曲#1で体中の血液が沸騰、MEGADETHの「Hunger18」を思わせる#2のリフを聴く頃には既に神盤認定する人も多いだろう。この冒頭2曲と、ダイナミックな展開に耳を奪われる#4のインパクトが強すぎるゆえ、後半ややテンションが落ちるようにも感じられるが、総じて楽曲の質は高い。洗練されたプロダクションゆえ、前作にあった耳を鷲づかみにされるような、強引なまでのフックとエッジが少し丸くなってしまったようにも感じるが、持ち前の叙情味ゆえのイモ臭さを感じさせず、より幅広いメタル・ファンにアピールできる完成度を誇っている名盤。

ARCH ENEMY
BURNING BRIDGES
91
バーニング・ブリッジズ (1999)

本作と同じ年に発表されたIN FLAMESの「Colony」、およびCHILDREN OF BODOMの「HATEBREEDER」と共に、「メロディック・デス・メタル」という音楽が北欧ローカルにおける一過性のブームではなく、今後のメタル・シーンを切り開く中核的な存在になることを暗示した名盤。個人的にはサウンドから「ロックのダイナミズム」を感じた初めてのデス・メタル作品で、バンド史上最高傑作と確信している。シャーリー・ダンジェロ(B)を得て最強の布陣となったリズム隊と、マイケル&クリスの兄弟によるツイン・ギターによる演奏の緊張感は絶品で、最初の一音から作品に引き込まれる。本作はボーナス・トラック(EUROPEの原型をとどめないカヴァー#9「Scream Of Anger」、ファースト収録曲のリメイクである#10)を除いて全8曲とボリューム不足なのが玉に瑕(と言っても、冗長であるよりはるかにマシ)だが、どの曲にも絶妙のフックが設けられ、初心者には楽曲の区別がつけにくいこのジャンルにおいてありえないほど個々の楽曲が独自の魅力を主張している。デス・メタルという異形の音楽であるにもかかわらず、「優れた楽曲を高い演奏力で聴かせる」という「良い音楽」の基本をキッチリと体現した素晴らしいアルバムだ。

ARCH ENEMY
STIGMATA
85
スティグマータ (1998)

元々マイケル・アモットはこのバンドをパーマネントなメイン・バンドとするつもりはなく、自身はSPIRITUAL BEGGARSを、弟のクリスはARMAGEDONの活動をメインにしていく予定であったらしい。しかし、前作発表後、CATHEDRALのサポートとして来日公演を行なった際のリアクションが素晴らしかったことから、このバンドを続行していくことを決意したそうだ。本作より専任Bとしてマーティン・ベンソンが加入。Drはマーティンと共に来日公演でプレイしていたピーター・ウィルドアーに交代しているが、本作完成前に脱退、前作でプレイしていたダニエル・アーランドソンが復帰している(彼がプレイしているのは#1「Beast Of Man」と#9「Diva Satanica」の2曲のみだが、この2曲は本作を代表するキラー・チューンだ)。前作ではやや荒削りな所もあったサウンドが整理され整合感が増した一方、全体の勢いがやや落ちたため、一部のファンからはやや不評で、カタログ中でも地味なタイトルとして語られることも多い。しかし個人的には、サビがキャッチーな#3「Sinister Mephisto」や、ダイナミックな展開に耳を奪われる#5「Let The Killing Begin」など、前作よりもフックが増しており、アルバムに上手くメリハリを付ける小インスト#2、#7、#11の存在など、トータル的な完成度は上がっているように感じる。特にピアノとギターによる叙情的な#11に導かれる#12「Bridge Of Destiny」のエンディングの盛り上げは感動的。しかし前作の「タイトル曲」#6が本作に収められているのはナゼ?(笑)。

ARCH ENEMY
BLACK EARTH
85
ブラック・アース (1996)

「メロディック・デス・メタル」という言葉が日本に広まるきっかけとなったCARCASSの名盤「HEARTWORK」において、そのメロディの「源泉」と言われていたマイケル・アモット(G)が、CARCASS加入以前に参加していたCARNAGEのヨハン・アクセルソン・リーヴァ(Vo,B)、弟のクリストファー・アモット(G)、そして元EUCHARISTのダニエル・アーランドソン(Dr)と結成した(この時点では)プロジェクトのデビュー・アルバム。デス・メタルならではの禍々しさ・荒々しさを充分に残しつつ、美麗な泣きのリード・ギターが乱舞するそのスタイルはまさに「HEARTWORK」の発展型と呼ぶに相応しいもので、IN FLAMESのように、Voがデス声なだけでバックの演奏は単なる正統派メタル、というスタイルではなく、コアなファンにも好ましく受け止められるものであろう。特に#1「Bury Me An Angel」はこのスタイルを象徴する名曲で、印象的なリード・ギターのフレーズが耳に焼きつく名曲である。唐突に挿入されるアコースティック・ギターのパートが初期のIN FLAMESを思わせる#5「Cosmic Retribution」も印象的だし、アルバムの本編ラストを飾る#9「Fields Of Desolation」も素晴らしい。ヨハン・リーヴァのVoはデス声というよりはハードコア的なガナリ声に聴こえるが、あまり非人間的な声を出されるより個人的には聴きやすい。日本盤ボーナス2曲を含めても38分程度と、ややボリューム不足ではあるが、この手の音楽はあまり長いと聴き疲れするので、これくらいでちょうどいいのかも。

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