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ANNIHILATOR
FEAST
82
フィースト (2013)

元々ジェフ・ウォーターズ(G, B)のソロ・プロジェクトであったANNIHILATORだが、既にデイヴ・パッデン(Vo, G)が加入して10年が経ち、近年では「ANNNHILATORは俺とデイヴのバンド」とジェフも公言するようになっている。一応ドラムには2012年のツアーに参加したマイク・ハーショウなる人物が表記されているが、日本盤のライナーノーツを書いたBURRN!の前田氏は、クレジット上にメタル・ドラムの打ち込みに使用されるソフトの名前が記載されていることを理由に、実際はプレイしていないのではないかと推測している。いずれにせよ、基本的に前作の流れを汲む作風で、ジェフ&デイヴのパートナーシップの堅固さを感じさせる安定感のある仕上がりである。スラッシーな楽曲を軸に、ファンキーな要素やロックン・ロールっぽいフィーリングを上手く取り入れた楽曲や、泣きの要素を絡めて起伏をつけた伝統的なメタル・ファンにもアピールする楽曲、そして久々のピュアなバラードまで収録し、全体的にはアグレッシヴな面が強調されていた前作に比べると幅のある楽曲が揃っている。そういう意味で、単なるゴリ押しではないバラエティに富んだフックこそがこのバンドの魅力であると感じている私のようなファンにとっては納得感のある作品といえる。ただ、本作の限定版に付属している過去の名曲のリメイク・ベスト「RE-KILL」を聴いてしまうと、かつてのようなトリッキーな切れ味は薄れてしまったことを感じさせられてしまうのもまた事実だったり。

ANNIHILATOR
ANNIHILATOR
81
アナイアレイター (2010)

ティム・バートン監督映画『アリス・イン・ワンダーランド』が大ヒットしている絶妙のタイミング(?)に久々にアリスなジャケットでリリースされた通算13作目。前作が彼らがメタル・シーンに与えてきた影響を再確認するような「過去の総括」的な一種の企画盤で、さらに近年所属していた「SPV」が倒産したため、「Earache」への移籍第一弾ということもあり、心機一転の意を込めた気迫のセルフ・タイトルかと思いきや「単にいいタイトルが思い付かなかっただけ」とのこと(ズコー)。実際「最高傑作」と呼ぶにはちょっと無理のある、良くも悪しくも「いつもの彼ら」なサウンド。とはいえ冒頭3曲の畳み掛けは強力で、切り離してもいいんじゃないかと思える長めのイントロを持つ彼らならではのファストでアグレッシヴながらテクニカルな#1、激烈にスラッシーな#2、#3の流れで、スラッシャー諸兄はノック・アウトだろう。ただ、その後なんとなく「Stonewall」を彷彿させる#4の後はグルーヴィな曲やヘヴィな曲、シャッフル調の曲など曲調が拡散し、若干テンションが落ちる。後半にもう1曲爆走チューンがあればさらに筋が通った印象になったと思うのだが…。バンド史上最長の4作目の参加となるデイヴ・パッデンのVoもかなりなじんできたし、ファンなら安心して聴ける作品だが、入門者への「最初の一枚」ではないかな。#10「Romeo Delight」はデイヴ・リー・ロス在籍時のVAN HALENのカヴァー。

ANNIHILATOR
METAL
83
メタル (2007)

ジェフ・ウォーターズ(G, B)にデイヴ・パッデン(Vo)、そしておなじみのマイク・マンジーニ(Dr)という面子を軸に、全曲に異なるゲスト・プレイヤーを迎えた企画盤のような作品。有名どころは#1のジェフ・ルーミス(G:NEVERMORE)、#2のアンジェラ・ゴソウ(Vo:ARCH ENEMY)、#3のリップス(G:ANVIL)、#4のアレキシ・ライホ(G)、#6のマイケル・アモット(G:ARCH ENEMY)、#7のイエスパー・ストロムブラード(G:IN FLAMES)といったあたり。ダンコ・ジョーンズ(Vo:DANKO JONES)のノーマル歌唱をメインにしたキャッチーな楽曲にアンジェラのデス声が絡む#2「Couple Suicide」、彼らの魅力のひとつであるメランコリックなキャッチーさが映える#5「Smothered」、イエスパーらしいシンプルながら印象的な憂いに満ちた後半のギター・ソロが聴き所の#7「Haunted」、そして本作で最もスラッシーながら、間奏部ではこのバンドらしいテクニカルかつ不穏なフレーズが蠢き、その後にはどうしようもなく切ないメロウなパートが挿入されるという贅沢な展開を持つ#10「Chasing High」がお気に入り。#11は前作に引き続き元EXCITERのダン・ビーラー(Vo)を迎え、EXCITERの代表曲「Heavy Metal Maniac」のカヴァーを収録しているのは自身がリマスターを手掛けたEXCITERの旧譜のプロモーション?(笑) ここ数作の中ではキャッチーな曲が多いので個人的には割と好きなアルバムだが、リフの切れ味や攻撃性はイマイチかな?

ANNIHILATOR
SCHIZO DELUXE
78
スキゾ・デラックス (2005)

デイヴ・パッデン(Vo, G)加入後の2作目となるアルバム。Drはジェフの古い友人だというトニー・チャペルなる人物がプレイしている。前作は彼らとしてはかなりバラエティに富んだアルバムだったが、それに比べると本作では、狭い意味で彼ららしい楽曲が揃った、硬質な印象のアルバムになっている。もちろんそうした楽曲は「お家芸」であり、安心して聴けるクオリティが担保されている。ただ、あえて難癖をつけるなら、デイヴ・パッデンのウエットな艶のある歌声は、メロディックなパートでは生きているが、彼ららしいへヴィでスラッシーな楽曲においては、本来表現されるべきソリッドな攻撃性の角を丸くしてしまっているような感も。まあ、これだけ歌えて、かつANNIHILATORのサイド・ギターが務まるくらいギターが弾ける人材なんてそうそういないだろうから、彼を換えるというよりは、彼に合わせたメロディックな曲を書く、という方がバンドにとって良い選択だと思うけど。正直ちょっとリフは過去の使い回しが目立つようになってきたことだし。なお、本作には同じカナダ出身の元祖パワー・メタル・バンド、EXCITERのダン・ビーラー(Vo, Dr)がコーラスで参加している。元々EXCITERのファンだったジェフ・ウォーターズが彼らの旧譜の再発に尽力し、実現させたことが縁になったそう。

ANNIHILATOR
ALL FOR YOU
82
オール・フォー・ユー (2004)

ライヴ・アルバム「DOUBLE LIVE ANNIHILATION」を挟んでリリースされた通算10作目となるスタジオ・フル・アルバム。そしてまたまたメンバーは総入れ替え。ジェフ・ウォータース(G)の他にメンバーとしてクレジットされているのは無名の新人デイヴ・パッデン(Vo, G)と、かつて「SET THE WORLD ON FIRE」でプレイしていたマイク・マンジーニ(Dr)。ベースはジェフが自分で弾いている。新加入のデイヴ・パッデンはバンド史上最も多彩な歌唱を可能にするシンガーで、ジェイムズ・ヘットフィールド風の歌い回しから、エモのようなスクリーム、ゴシック風のディープな歌唱まで、多彩な表現を聴かせてくれる。このVoの多様性を意識したのか、本作はかつてマイク・マンジーニがプレイしていた「SET THE WORLD ON FIRE」以来のバラエティに富んだ楽曲を取り揃えており、冒頭のラップをフィーチュアした異色のヘヴィ・チューンから、初期の彼らを思わせる変態チューン、ひたすらスラッシーな曲、そして久々のメロウなバラードまで、手を変え品を変え楽しませてくれる。個々の楽曲については必ずしも最高とは言えないかもしれないが、アルバムのメリハリという意味ではバンドのカタログでも屈指で、単調な作風だと飽きてしまう私の個人的な印象はなかなか良い。

ANNIHILATOR
WAKING THE FURY
80
ウェイキング・ザ・フューリー (2002)

バンド史上初めて前作と同じシンガー(ジェフ・ウォーターズ本人が歌っていた時期を覗く)がVoを務めた9作目。ようやく作風も安定するかと思いきや、本作の再生ボタンを押してまず耳につくのは、前作とは全く違うギターのサウンド。独特のジリジリした感触を持つそのサウンドは、インダストリアル的な音作りを意識しているようにも思われる。とはいえ、「REMAINS」のように音楽全体がインダストリアルに傾倒しているわけではなく、楽曲はむしろ前作よりも正統的でメロディアス。随所にフィーチュアされたツイン・リードのギターのフレーズなどかなり美味しい。一方で#1のようなブルータルな曲でも実に巧みにフックがつけられていて、飽きさせない。個性の薄い類型的なスラッシュ・シャウターと思っていたジョー・コミューもなかなかどうして安定感のある歌唱を聴かせ、意外と器用なシンガーであることを示しているのもポイント高い。こんなザラついたサウンドでも、#8のようなAC/DC調の楽曲も違和感なくこなしている。正直このイヤホンで聴いていると耳が痒くなってくるようなギターのサウンドにはどうしても馴染めないのだが、曲作りにおけるフックの設け方の巧みさには感服せざるを得ない。

ANNIHILATOR
CARNIVAL DIABLOS
83
カーニヴァル・ディアブロス (2001)

前作で復帰したランディ・ランペイジは、かつてと変わらぬアル中ぶりを遺憾なく発揮、ツアー・バス中での狼藉によってリトアニアでバスから放り出され、即刻クビになった。後任にその欧州ツアーを一緒に回っていたOVERKILLのギタリスト(!)であったジョー・コミューを迎えて制作された通算8枚目のフル・アルバムが本作。デス・メタルめいたタイトル、アートワーク通りのかなりブルータルな作風となっている。ゴリゴリながらちゃんとメリハリのきいたリフはさすがジェフ・ウォーターズといった感じだが、新加入のジョー・コミューも、元ギタリストとは思えないほどマトモな歌唱を披露しており、コワモテのルックスどおりのドスの効いた歌声から、意外な声域の広さを感じさせるハイトーンまで、歴代の専任シンガーたちと比べて何ら遜色ない歌声で楽曲をよく支えている。個人的には、ANNIHILATORにここまでゴリゴリしたリフは求めていないのだが、所々メロディアスな要素もあるし、これぞメタルだぜ! と言いたくなる力作。中でもメランコリックなインストの#9から、IRON MAIDEN風のリード・ギターがパワフルに疾走する#10「Epic Of War」への流れはGood。日本盤ボーナスの2曲は、「REFLESH THE DEMON」のアメリカ盤ボーナス・トラックをそのまま流用しており、若干手抜きの感が否めない。

ANNIHILATOR
CRITERIA FOR A BLACK WIDOW
79
クライテリア・フォー・ア・ブラック・ウィドウ (1999)

デビュー・アルバムで歌っていたランディ・ランペイジが復帰、古巣「Roadrunner」からリリースされた本作は、初期のアルバムを思わせるアートワークから予想される「原点回帰」のアルバムとなっている。恐らく意図的に過去の名曲を思わせるパートがあちこちにちりばめられていて正直あざといが(#2「Back To The Palace」のイントロが2nd収録の「Fun Palace」にそっくりなのはその顕著な例で、間違いなく確信犯だろう)、確かにファンがANNIHILATORというブランド名に期待するのはこの音だ。ただ、聴き進むと何やら物足りなさを感じるのもまた事実。やはり個々のリフの作り込みや切れ味が黄金期には及んでおらず、ランディ・ランペイジの存在から期待されるシアトリカルなエキセントリックさもほどほどで、やや肩透かし。もちろんキャリアに裏付けられた質は安定していて、決して悪くはないんだけど、ちょっとリフに彼らならではのヒネリが足りないような。まあ、前作の迷走ぶりを考えれば「復活作」であることは間違いないと思うけど、ジェフ・ウォーターズの才能やANNIHILATORというバンド名に期待されるクオリティはこの程度じゃないはずだ。

ANNIHILATOR
REMAINS
61
リメインズ (1997)

とうとうジェフ・ウォーターズ一人になってしまった6作目。ドラマーがいなくなったので、ドラムは打ち込みなのだが、実際サウンドの雰囲気自体も打ち込みであることを基本としたインダストリアル・メタル的なサウンドになっている。ドラマーがいなくなったからこういう音楽に方向性にしたのか、あるいはこういう音楽をやりたかったからドラマーをクビにしたのか、その辺の事情はわからないが、これはちょっと厳しい仕上がりだ。もともとインダストリアル・メタルはどちらかというと苦手科目で、NINE INCH NAILSとかどこがいいのかサッパリわからないクチなので、本作のインダストリアル・メタルとしての価値について私の評価は全くアテにならないが、この生気のないビートに、とりあえずヘヴィなだけのリフが乗るスタイルは、メロディックなメタルを好む向きには相当退屈だと思う。アルバム後半、従来の彼らを思わせる曲も何曲か出てくるが、そういう曲では打ち込みのドラムのショボさが際立ってしまい、かえっていただけない。#3は明らかにPANTERAの「Walk」のパクリ。申し訳ないが、これは時流に流された駄作、と切り捨ててしまっていいアルバムなのではないだろうか。

ANNIHILATOR
REFRESH THE DEMON
80
リフレッシュ・ザ・ディーモン (1996)

ジェフ・ウォーターズが自らVoをとるようになって2作目となる本作は、いかにもソロ・プロジェクト的な密室作業っぽさが感じられた前作に比べると、かなりストレートなメタル・アルバムという印象である。冒頭を飾るタイトル曲は、ライヴでこのサビを叫びたい、と思わせてくれるメタルという音楽のカッコよさが端的に凝縮された佳曲。アップテンポな楽曲から、モダンなヘヴィネスを打ち出した楽曲まで彼ららしくまとめているが、他の初期に比べるといささか複雑さやアクの強さが減少している感があり、こうしてオーソドックスなメタル・サウンドに接近してくるとやはりジェフの歌唱力では物足りなくもある。唐突にポップ・ロック調のキャッチーな歌メロを聴かせる#7「City Of Ice」を「アルバム中のいいアクセント」と捉えるか、「浮いている」と感じるかは聴き手によるかも。日本盤ボーナス・トラックである#11「Innocent Eyes」は、優しささえ感じるメロウなバラードで、ほのかに漂う切なさにキュンとしちゃう。前作に比べると格段にメジャー感の高いアルバムで、1曲目のツカミと、ラスト(ボーナスだが)の締めが良いため、アルバムとしての印象は結構いいのだが、名盤と呼ぶにはどこか物足りなさがあるかなぁ…。

ANNIHILATOR
KING OF THE KILL
81
キング・オヴ・ザ・キル (1994)

レーベル移籍と同時にメンバーを一新、というか中心人物であるジェフ・ウォーターズ以外のメンバーが全員脱退、本作ではランディ・ブラックによるDr以外のパートを全てジェフが担当している。なんでも、これまではレコード会社に口止めされていたものの、法的にはANNIHILATORというのはジェフ・ウォーターズのソロ・プロジェクトであり、ジェフ以外のメンバーというのは皆アルバムがどれだけ売れようとも一定額のギャラしかもらえない「雇われ」なのだそうだ。まあ私は「バンドらしさ」みたいなものにあまりこだわりはないのでどうでもいいけど。で、内容ですが、バラエティに富んだ作風だった前作が欧米と日本で評価が分かれたことを意識したのか、輸入盤と国内盤で曲順、収録曲が異なっている(リマスター盤は同じ)。バラードの#5「Only Be Lonely」は日本盤のみの収録で、メランコリックな#4「Bad Child」も輸入盤ではアルバム最後の目立たない位置に配されている。ソリッドかつテクニカルなリフは健在ながら全体的にこれまでと比べてスピードを抑えた作風は、メタルらしいダイナミックさが希薄な一方、バンドではないことをカミング・アウトしたからというわけでもあるまいが、宅録めいた密室感があり、練り込まれた楽曲とあいまって独特のアングラなムードを生んでいる。リリース当時ジェフの歌唱の弱さが指摘されていたが、こういう音楽性であればそれほど弱さが目立たないので、その辺も意識したのかも。


ANNIHILATOR
BAG OF TRICKS
79
バッグ・オヴ・トリックス (1994)

所属レーベル「Roadrunner」との契約消化のために発表されたレア・トラック集。レコード会社的な目玉音源はきっと代表曲「Alison Hell」のリマスター・バージョン#1だろう。しかし、それ以外にも#3、#4、#11、#14といった未発表曲はもちろんのこと、ランディ・ランペイジが歌う#2「Phantasmagoria」のように、アルバム収録バージョンとは異なるVoが歌うデモ音源や、彼らのライヴ・アクトとしての実力を伝えるライヴ・トラック(#9はAC/DCのカヴァー)など、マニアにとっては興味深い音源が数多く収録されている。バンド最初期のデモ音源#14〜16では、ジェフ・ウォーターズ(G)自身によるデス・メタルめいたVoが聴けるのも興味深い。未発表曲の中では、かの名曲「Sound Good To Me」に通じる哀愁をたたえた#11「Fantastic Things」が日本人好みでオススメ。ファンは必聴だし、初心者が聴いてもバンドの魅力は充分に伝わると思われる、この手の編集盤の中ではかなり充実したアイテムじゃないかな。

ANNIHILATOR
SET THE WORLD ON FIRE
87
セット・ザ・ワールド・オン・ファイア (1993)

またもやメンバー・チェンジがあり、Voがアーロン・ランドールに、Drが後にEXTERMEに加入するテクニシャン、マイク・マンジーニに交代。何気にGの片割れも交代しているが、このバンドに関してはジェフ・ウォーターズ(G)の存在感があまりに大きすぎるので、サイド・ギターが誰であろうと恐らく誰も気にしないのではないか。当時流行していたPANTERA風のモダン・ヘヴィなリフを備えた#1にヒヤッとしたが、全体的にはこれまでで最もメロディアスな作風。リフの複雑さを抑え、より正統的なHMに接近した楽曲群もさることながら、泣きのバラード#5「Phoenix Rising」、そして哀愁に満ちたキャッチーな#7「Sound Good To Me」の素晴らしさは正直予想外で、この2曲によって本作は日本で一番の人気作となった(逆に欧米では「軟弱になった」と非難されたようだが…)。前述の楽曲以外にも、変態的なまでにプログレッシヴな間奏部を含む#10「Brain Dance」など、これまでの彼らにはなかったタイプの楽曲を収録し、音楽性の幅が広がった一方、今までのANNIHILATOR節というべきテクニカル・スラッシュ路線のキラー・チューンが存在していないことが残念ではあるが、より幅広いメタル・ファンにオススメできる好盤である。

ANNIHILATOR
NEVER, NEVERLAND
87
ネヴァー・ネヴァーランド (1990)

カナダのテクニカル・スラッシュ・メタル・バンド、ANNIHILATORのセカンド・アルバム。Voが元OMENのコバーン・ファーにチェンジしている。前任だったランディ・ランペイジ(Vo)のエキセントリックな歌唱に比べ、オーソドックスなスラッシュVoであるコバーン加入の成果か、前作に比べ整合感を感じさせる仕上がりで、曲調自体も前作の「モロに初期MEGADETH」というスタイルからより正統的なHMへ接近したような印象。とはいえ、そのサウンドは未だ充分に複雑怪奇で、走りつつもめまぐるしく変わるリズムに合わせて鋭角的に展開するギター・リフのキメの激しさがえも言われぬ快感につながっている。日本でもシングル・リリースされた名曲「Stonewall」を筆頭に、どの曲もリフがよく練られており(正直、こんなリフこのテンポじゃ絶対弾けねぇ)、楽曲面においても非常に充実したアルバムに仕上がっている。ソロの難易度で凄いと言わせるギタリストは数多けれど、リフの難易度で凄いと言わせるギタリストとしてはジェフが最高峰なのではないか。これだけ複雑な楽曲をメロディアスな印象さえ与えるほどスムースに聴かせることができるのは卓越したリズム感のなせる技だろう。鋭利なまでの緊張感が気持ちいい名盤。

ANNIHILATOR
ALICE IN HELL
83
アリス・イン・ヘル (1989)

"アナイアレイター"。なんてカッコいいバンド名なんでしょう(ウットリ)。あえて訳すなら殲滅者? 訳もまたカッコいい。そんなイカしたバンド名を背負った彼らはジェフ・ウォーターズ(G)を中心としたカナダ出身の5人組。音楽性はハッキリ言ってしまえば「インテレクチュアル・スラッシュ」を標榜していた頃の、初期のMEGADETHフォロワーであるが、あの難易度の高いサウンドをあえて模倣しようというだけあって非常に高い演奏力を備えている。なかでも中心人物のジェフは、スラッシュ・シーンの中ではアレックス・スコルニック(TESTAMENT)と並ぶ最高級のテクニシャンと言っても過言ではないだろう。その高度な技術に裏打ちされた複雑怪奇で鋭角的なギター・リフに、ランディ・ランペイジ(Vo)の上手くはないがエキセントリックな歌唱が絡むことで、単なるMEGADETHフォロワーにとどまらないインパクトを放っている。代表曲となった#2「Alison Hell」や、「W.T.Y.D(サビを聴けば意味がわかる)」、激速チューン#9「Human Insecticide」などを収録し、日本でもマニアックなスラッシャーを中心に好評を博したが、特に欧州ではカルト的な支持を得た作品である。当時キャプテン和田が自身のラジオで「アンニヒレイター」とローマ字読みで紹介してしまったことは内緒。

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