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ANCIENT BARDS
A NEW DAWN ENDING
87
ア・ニュー・ドーン・エンディング (2014)

日本のSERENITY OF MURDERとのスプリット・シングルを挟んでリリースされた3作目のアルバム。彼らがデビュー・アルバムから描いてきた"THE BLACK CRYSTAL SWORD SAGA"第一部の完結編となる本作は、クライマックスに相応しい濃密かつボリューム感のある一作である。アグレッションや疾走感を押し出した曲から、優美なバラードまで、このジャンルに求められる幅の中で最大限の起伏を設けつつ、10分を超える大曲が2曲に及び、本作が「山場」であることを否応なしにリスナーに印象付ける。これまでやや平坦さが気になったサラ・スクワラドーニの歌唱もエモーショナルさを増し、AYREONのゲスト・シンガーに抜擢されるのも納得のレベルに。個人的には本作にゲスト参加しているファビオ・リオーネ(RHAPSODY OF FIRE)のような朗々たる男性Voの方がこの手の音楽には合っていると思うが、女性シンガーならではの個性によって往年のNIGHTWISHやWITHIN TEMPTATIONに通じる場面があるのは美味しい。とはいえ、おそらく本作をファビオ・リオーネが歌ったら完全にRHAPSODY OF FIREなのだが。雰囲気モノに陥りがちな凡百のシンフォニック・メタルとは一線を画す、起伏に満ちた一大エピック作品である。そして、ここしばらくのRHAPSODY OF FIREが失ってしまった「スペクタクル」がここにある、と言ってしまおう。今回も日本盤ボーナスはFF関連の曲だが、このバンドのメロディにはFF由来の(?)哀愁と叙情があるのがツボなのかもしれない。

ANCIENT BARDS
SOULLESS CHILD
86
ソウルレス・チャイルド (2011)

Drがフェデリコ・ガッディに交代して発表されたセカンド・アルバム。前作同様バンドのセルフ・プロデュースで、エンジニアにDGMのシモーネ・ムラローニを迎えて制作されている。前作から続く"THE BLACK CRYSTAL SWORD SAGA"の続編である本作は、前作同様のシンフォニック・エピック・メタルを展開している。前作も7分以上の曲が3曲もある大作志向の作品だったが、本作は7分台が2曲、9分台が2曲、そしてクライマックスとなる#10は14分台と、前作にも増して長尺の楽曲がアルバムの中核を占めている。その分、前作に比べて勇壮なキャッチーさは若干減退した観もあるが、より壮麗に構築美を増した楽曲の完成度は見事の一言に尽きる。長尺の楽曲が多いとはいえ、高度な演奏力に裏打ちされたその展開の妙、緩急の付け方は実に巧妙で、疾走パートの心地よさもあって聴き手を飽きさせることがない。この手のジャンルにおける楽曲の完成度において、パイオニアであるRHAPSODYの全盛期に迫るクオリティを演出したのは彼らが初めてかも。全曲の作詞作曲を手掛ける中心人物、ダニエレ・マッツア(Key)の才能には目を見張るものがある。その分、Voであるサラ・スクワドラーニの歌唱がやや平坦なことが惜しまれ、これがファビオ・リオネのような卓越したVoであれば…という思いが募ってしまうのが本音。日本盤ボーナスの#11「The Skies Above」は「FINAL FANTASY X」のOP曲「ザナルカンドにて」のカヴァー。

ANCIENT BARDS
THE ALLIANCE OF THE KINGS
86
ジ・アライアンス・オブ・ザ・キングス (2010)

イタリアのシンフォニック・メタル・バンドのデビュー・アルバム。と言えば想像がつく通りRHAPSODYのフォロワーである。しかもRHAPSODYを輩出した名門レーベル「LMP」からのデビューで、アートワークもRHAPSODYのアルバムを手掛けたことがあるチームによるものとくれば筋金入りである。さらにエルフやら魔術師やらドラゴンやらが跋扈するオリジナルのファンタジー・ストーリー、"THE BLACK CRYSTAL SWORD SAGA"と基づくアルバムと来ると、もはや「エメラルドが黒水晶に変わっただけやんけ!」とツッコミのひとつも入れたくなるが、Voが女性であること、そしてDrが裏打ちで疾走感が強いこともあり、むしろ初期のDARK MOORに近い印象も受ける。新人バンドのセルフ・プロデュース作としては音質もいいし、演奏力もかなり高く、随所にテクニカルな「見せ場」もある。イタリア国内での評価も高く、日本でも既にマニアの間では評判となっていたようだが、ひと昔前なら確実にビクターからデビューできたクオリティである。日本盤ボーナスは「FINAL FANTASY VIII」のテーマ曲だったフェイ・ウォンの「Eyes On Me」のカヴァーで、実際彼らはFFシリーズのファンらしい。女性Voは現時点でも充分歌えているが、もう少し表現力が増せば鬼に金棒だろう。このメロディとドラマによる煽情力、マジでRHAPSODY以来の「RPGメタル」の逸材かもしれない。

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