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ALLEN・LANDE
THE GREAT DIVIDE
81
ザ・グレイト・ディヴァイド (2014)

元々「Frontiers Records」がマグナス・カールソンに楽曲を発注したことで始まったこのプロジェクトだが、今回はマグナスが一切関与していない。アルバム・タイトル(大いなる分裂)はマグナスとこのプロジェクトの関係を意味しているのだろうか。これまでマグナスが担っていた作曲・プロデュース、そしてギター、ベース、キーボードの演奏を、今回ティモ・トルキ(元STRATOVARIUS)がそのまま引き継いで代役を務めている。ある意味音楽的なコンセプトをひっくり返すような所業であるが、それでもプロジェクトが継続されるのはひとえにこのシンガー2人のコラボレーションが支持されているということの証だろう。しかし、音楽的ブレーンが変わっているだけに当然サウンドは変化しており、これまでの作品であくまで「メロディアス・ハード」を基本線にしていたが、本作では時に往年のSTRATOVARIUSを彷彿させるメタリックな要素が増している。いかにもティモ・トルキらしいメロディ展開やリズム・パターンが随所に登場していることにファンであれば気付くだろう。一方でこれまでのティモ・トルキのレパートリーにはなかったようなタイプの楽曲も存在するのは、作曲にヨルン・ランデも関わっているためだろうか。マグナスの作る曲に比べると、ティモの作る曲はメロディ、アレンジ共にシンプルなため、メタリックになったにもかかわらずむしろ「薄く」なってしまったような印象もあるが、2人の強力な歌唱もあり、一定の質は保たれている。

ALLEN・LANDE
THE SHOWDOWN
83
ザ・ショウダウン (2010)

マグナス・カールソン(G, B, Key)が曲を書き、ヨルン・ランデ(JORN, MASTERPLAN)とラッセル・アレン(SYMPHONY X)が歌う「Frontiers Records」企画のメロハー・プロジェクトの3作目。プロデュースが前作を手掛けたデニス・ワードからマグナス自身に変わった影響か、全体的に前作よりアレンジが劇的でエピカルになっており、やや「潤い」が不足していると感じた前作より印象は良い。特にどの楽曲もスケール感のある魅惑的なイントロを持っていて、ワクワクさせてくれる。ただ、このままブリッジやサビ、ギター・ソロなどで疾走パートを設けるなどして思いっきり盛り上げてくれれば凄い楽曲になりそうなのだが、(メロディ自体は充分に劇的ながら)あくまで上品にお行儀よく終わってしまうあたりに不完全燃焼感を覚えてしまうのが率直な所。ヨルンとラッセルの歌唱は流石だが、彼らの個性が強く発揮されているとは思えず(時に二人の区別がつかないほど…)、ただの上手いシンガーとしてしか機能していない。まあそれは「Frontiers」企画のプロジェクトに共通しているので、一種の「企業理念」に基づいて制作された結果なのだろう。一種ユニクロ的な音楽ではあるが、楽曲・サウンドの質の高さと、キャスティングの妙は評価されるべきで、実際このプロジェクトが3作続いているのはそれが評価されているからだろう。ちなみに今回結構ギター・ソロが充実していたのが個人的には嬉しいポイント。

ALLEN・LANDE
THE REVENGE
81
ザ・リヴェンジ (2007)

単発のプロジェクトかと思われたALLEN-LANDEだが、前作が欧州のメロディアス・ハード・ファンの間で大好評だったためこうして2作目のリリースが実現した。前作に引き続き作詞作曲アレンジ、Drを除く全ての演奏はマグナス・カールソン。前作から本作のリリースまでには2年弱のインターバルがあるとはいえ、その間にトニー・オホーラのアルバム(こちらも全曲マグナスによるもの)と、PLANET ALLIANCEへの参加を経ているので、かなり精力的な制作状況といえる。ただ、そのためか本作に収められた楽曲のクオリティは正直前作に及んでいない。むろんそんじょそこらのアルバムに比べたらはるかに高品質ではあるが、前作の名曲ラッシュぶりを考えると、物足りなさは否めない。もっともそれは、今回は制作当初からラッセル・アレン(SYMPHONY X)とヨルン・ランデ(元MASTERPLAN他)という歌い手が想定されていたために、かえって作曲に制約が設けられてしまったせいかもしれない。まあ多少の不満を感じつつも、この適度に憂いがあって適度に勇壮なサウンドはやはり心地よいし、メロディアスではあっても洗練されていてクサくないので、TENとかMAGNUMとか、あの辺のブリティッシュ系メロディアス・ハードが好きな人にもぜひ聴いてほしいな。BURRN!誌では2人のヴォーカリストにしか触れていなかったので、あえてマグナス中心に書いてみました。しかし前作のモチーフを未来化した(?)ジャケットがゾイドに見えて仕方ない(笑)。

ALLEN・LANDE
THE BATTLE
86
ザ・バトル (2005)

SYMPHONY XのVo、ラッセル・アレンと、様々なプロジェクトでその強力な歌声を披露し、現在は「MASTERPLANのヴォーカリスト」と形容するのが最も通りがいいであろうヨルン・ランデによる共演アルバム。2人ともその筋では名の通った実力派シンガーゆえ、彼らの名前で手を出すファンも多いことだろうが、本作の陰の主役は全曲の作詞作曲・アレンジを手掛け、G、B、Keyと、Dr以外全ての楽器をプレイしている才人、マグナス・カールソン(LAST TRIBE)。もともと本作は欧州No.1メロディアス・ハード専門レーベルである「Frontiers」のオーナーがマグナスにAOR寄りの楽曲を発注し、その音楽を歌うに相応しく、かつ話題性のある歌い手を探した結果、ラッセルとヨルンに決定した、という制作過程を経て生まれた作品である。そのため、楽曲は必ずしも彼らを想定して書かれたものではなく(とはいえ、彼らの歌唱は充分に強力である)、そういう意味でも「マグナスの作品」であるといえる。サウンドはマグナスのバンドであるLAST TRIBEをメロディアス・ハード寄りにしたような音楽性で、意外性はないものの楽曲のクオリティは非常に高く、文字通り「捨て曲なし」という形容が相応しい、フック満載の楽曲が揃っている。日本で屈指のLAST TRIBEファンを自認する身としては、こんなプロジェクトではなくLAST TRIBEの新作を作ってほしいというのが本音だが、リカルド・ベンソン(LAST TRIBE)の歌唱では#4のようなメロウな楽曲にここまでのスケール感とメジャー性は生まれなかったであろうことを考えれば、この企画が実現した意味はちゃんとある。#2や#5、#7、#9、#11といった比較的攻撃性の強い楽曲はLAST TRIBEのファンにもアピールすることだろう。欧州では多くのメロディアス・ハード系の専門誌やウェブサイトの年間ベスト・アルバムに輝くなど、評価も高い作品である。ちなみにジャケットはロドニー・マシューズ。

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