スラッシュ・メタル （Thrash Metal）

【HR/HM】 1983年前後、ヘヴィ・メタルという音楽がようやくアメリカにも根付いたころに登場したスラッシュ・メタルは、ヘヴィ・メタルの持つ攻撃的な要素を極端な形で増幅し、表現した音楽である。ザクザクと容赦なく切り刻まれるリフ、吐き捨てるようなシャウト・ヴォーカル、そしてスタスタと2ビートで叩きこまれる高速ドラム。NWOBHMのサウンドを過激化する形で、時にはハードコア・パンクからの影響も受けて誕生したそのサウンドは、当時「音楽ではない」「ただのノイズ」とまで酷評されたが、まずはヨーロッパで、次にイギリスで、そしてアメリカのアンダーグラウンドでも次第に支持を広げていき、当時スラッシュ・メタル・シーンの代表的なバンドだったメタリカは1986年にまさかのメジャー・デビューを果たし、なんと全米チャートTOP30に食い込むヒットを飛ばしてしまった。その後は正統派ヘヴィ・メタルを駆逐せんばかりの勢いで次々とスラッシュ・バンドがデビューし、当時主流だったポップでキャッチーなHR/HMに対するアンチテーゼとして血の気の多い若者の支持を集めた。

基本的にワンパターンであるがゆえに90年代に入ってその人気は衰え、PANTERAに代表されるモダン・ヘヴィネス系のバンドにその地位を奪われるが、帝王スレイヤーを中心に、今なおコアなスラッシャーたちに根強く支持されている。