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現代音楽 (Contemporary Music)

【その他音楽全般】 第一次世界大戦以降盛んになった、西洋クラシック音楽の系譜にありながら、それまでのクラシック音楽が築き上げてきた伝統的な手法(平均律やソナタ形式など)を否定し、実験的な手法によって作曲した前衛的な音楽を一般に現代音楽と呼ぶ。

代表的なアプローチとしては、音列(セリー)を中心とした作曲を行なうミュージック・セリエル(総音列主義)に代表される高度な作曲技法から、ある音からもうひとつの音までの間の音を同時に発するトーン・クラスターのような音響的な手法、また、サイコロやクジなどを使用することによって音楽に偶然性(不確定性)を取り入れる手法、また図形や言語によって楽譜を表現する手法など、様々なものがある。

こうした過去の形式からの脱却を目指す動きは印象派の音楽に始まる近代音楽の流れを順当に受け継いだものといえるのだが、大衆からの広い支持を集めることは出来ず、むしろ音楽史的には「鬼子」的な位置付けをされることも少なくない。このことは人間の感性における限界と、際限のない作曲技法・演奏技法の高度化が必ずしも「良い音楽」に結びつかないことを図らずも露呈してしまった。

とはいえ、現代音楽における試みのひとつである、カールハインツ・シュトックハウゼンらによる電子的発振音によって音楽を構築しようという電子音楽の試みは、クラフトワークやタンジェリン・ドリームといったジャーマン・プログレのバンドを経て現在のテクノに直接的に影響を与えている(実際、クラフトワークのメンバーはシュトックハウゼンの教え子である)。

また、ピエール・シェフェールやピエール・アンリなどによるミュージック・コンクレート(自然界の音や街の喧騒と人の声といった具体音と、楽器の音を等列に扱い、機械によって電気的に加工・編集することによって成立させる手法)は、ヒップホップやハウスにおけるサンプリング・ミュージック的な側面の先駆けと言えるし、スティーブ・ライヒやフィリップ・グラスによるミニマル・ミュージック(音の動きを最小限に抑え、パターン化された反復によって構築する音楽)の手法などは「人力ミニマル・テクノ」に他ならない。

逆にアンビエント(環境音楽)という手法は、元ロキシー・ミュージックの肩書きを持つロック・ミュージシャンであったブライアン・イーノの提唱によるものであるが、現代音楽の一種と位置付けられているし、即興演奏のみによって音楽を構成する「即興音楽」の世界においては、その音楽の性格上、ジャズ(特にフリー・ジャズ)と相互に影響を与えあっている。

そういった意味で、手法・着想としての面白さ・新しさは間違いなく存在し、それはポップ・ミュージックの中にも取り入れられている。そのため、一般の音楽リスナーもそれと意識することなく現代音楽における実験の「成果」を耳にしているのだが、残念ながらその「コンセプト」自体をメインとした現代音楽そのものが親しまれることはあまりにも少ない。これは、技術やアイディアのみによって人の心に感動をもたらすことはできない、ということを再認識させ、音楽の魅力とは何か、という問いに対するひとつの示唆となりえる事実なのではないだろうか。


 

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