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ハード・ロックとヘヴィ・メタルの違い


■ はじめに

HR/HM。言うまでもなく、と言いたいが、実は言われないとわからない人も結構いる、HARD ROCK / HEAVY METALのイニシャル表記である。ハード・ロックとへヴィ・メタル、レコード・ショップなどの商品分類など、いわゆるジャンル区分においてはだいたいこの2つは同時に語られることが多い。ハード・ロックのひとつの発展型がヘヴィ・メタルであるという歴史的な事情、そして、音楽的な共通点、演奏する人間の人脈の重なりなどが、そのように扱われる原因である。

では、ハード・ロック=ヘヴィ・メタルなのか。もちろん違う。先述したとおり、ヘヴィ・メタルはハード・ロックの発展型の一形態であって、ハード・ロックとは似て非なるものである(「発展型の一形態」という微妙な表現を使用するのは、ヘヴィ・メタルというスタイルの誕生が、従来のハード・ロックの駆逐につながらなかったからである)。

しかし、ハード・ロックとヘヴィ・メタルの違いを明快に説明できる人間はそう多くはない。HR/HMを聴き始めたばかりのリスナーの多くが、「ハード・ロックとヘヴィ・メタルはどこがどう違うのか」という疑問を抱き、あまつさえ身近にいる「上級者」に直接質問してしまうことさえ稀ではないが、納得の得られる回答が得られることは極めて稀である。その正確性はともかくとしても、何らかの説明がなされればまだいい方で、「聴いているうちにわかる」などという乱暴な返事が返ってくることも多い。しかし、この答えは一見無責任なように思えるが、実はある意味最も正確な回答なのである(本人としては単に適切な説明が難しいためにこのように投げやりな回答をしたに過ぎないのかもしれないが)。

実際、もともと音楽を言葉で表現したり説明したりすることは不可能なのである。と、このような音楽を扱うテキストサイトの存在価値を自ら否定するようなことを書いてしまったが、それはれっきとした事実である。言語学的にそのことは明確に説明されるが、シニフィアンだパロールだと言い出すと話が難しくなるのでここでは割愛する。とにかく、本来感覚的なものに過ぎないハード・ロックとヘヴィ・メタルの差異を論理的に説明することは厳密には不可能ではあるが、可能な限り「一般的」なリスナーの共同認識に近い言葉や表現を選びつつ論を進めることで、この難事に挑戦してみたいと思う。

■ 第1章

そもそも世間一般においてハード・ロック、ヘヴィ・メタルとはそれぞれ辞書的にどのように定義されているのか。そこから検証してみよう。

まず、図書館に行き、実際に辞書を引いてみる(笑)。辞書の権威、岩波書店の『広辞苑』には…載っていない。やはり正式な国語とは認められないものなのか…と思いつつ、他の辞書をあたってみると、三省堂の『大辞林』には記載があった。

【ハード・ロック】 電気楽器・機器の進歩に伴って生まれた大音量のロック。1960年代後半に発生した音楽スタイルで、ブルースを基調とした演奏スタイルと歪んだギター-サウンドを特徴とする。

【ヘビー・メタル】 1970年代のハード-ロックの流れをくむ、80年代でのロックの一傾向。電気的に極度にゆがめた金属的なサウンドを特徴とする。また、それらのグループに特徴的なファッション。ヘビ-メタ。

ん〜…。記述されている事実自体は必ずしも間違ってはいないが、これではハード・ロックは1970年代のもの、ヘヴィ・メタルは1980年代のもの、という誤解を招きかねない。それでは、コンサイスのカタカナ語辞典をチェックしてみよう。

【ハード・ロック】 強烈で情熱的,かつ重厚な響きをもったロック‐ミュージック.純正な,正統派のロック.スコーピオンズ,テッド‐ニュージェントなどがその代表

【ヘビー・メタル】 ロック音楽の1つ.またその風俗.70年代中期に登場した電子装置による金属音と重いビートが特徴。

こちらはさらに誤解が大きい。「純正な、正統派のロック」…って、そんなの誰が決めたのでしょう? しかしスコーピオンズにテッド・ニュージェントとは、妙に渋い所を突いているのが笑える。70年代中期に登場した電子装置による金属音…って、ディストーション等のエフェクターのことを言っているのだろうか? 何も知らない人がこの説明を読んだら、ヘヴィ・メタルのことをEINSTURZENDE NEUBAUTENのごとく本物の金属片から出るノイズを使っているのか、というようなとんでもない誤ったイメージを抱いてしまうのではないだろうかと心配である。

次に、常に最新の情報を、その道の専門家が書いている(ことになっている)『現代用語の基礎知識』を引いてみる。

【ハード・ロック】 1960年代末以降のロックの主流となった硬質のサウンドで大音量による長時間演奏。電気ギターを中心にしたバンド・サウンドでR&Bの影響を受けた即興演奏を展開した60年代末のブルース・ロックのジミ・ヘンドリックス(ジミ・ヘン)や、クリームらの演奏によって触発されたミュージシャンによって形成されたのが、ハード・ロック。

【ヘヴィ・メタル/デスメタル】 1960年代末のレッド・ツェッペリンなどのハード・ロックから派生した重く歪んだ金属的なギター・サウンドによる攻撃的な大音量とシャウトするボーカル、タテ乗りリズムによるロックをさす。80年代のAC/DCやアイアン・メイデンから90年代にかけてのボン・ジョヴィやメタリカなどが人気を得た。80年代にナパーム・デスやカーカスなどの猟奇的な歌詞やおどろおどろしい歌唱に低音部を強調した攻撃的なビートによるデスメタルが登場した。

これは多少もっともらしいことが書かれているようにも見えるが、特にハード・ロックの記述は現在のハード・ロックに対する認識から著しく乖離している(おそらくハード・ロックの現在形について記述しようという意図がないのだろう)。ボン・ジョヴィがヘヴィ・メタルかどうかというのも甚だ疑問であるし、なぜデス・メタルがヘヴィ・メタルと並列で語られなくてはならないのかも不明である。まあ、書いているのがHR/HMの専門家ではなく何故か湯川れい子女史であるからマニアが納得する専門性を期待してはいけないのかもしれないが…。

もう少し専門的な見地からの意見を参照してみよう。以下は1993年に音楽之友社から刊行されたムック本、『はじめての音楽通』のコラムにおける米持孝秋氏の解説である。

サウンド面での両者の違いを具体的に挙げると、例えばギターでは、イコライザーのセッティングが違うだけなんですけど、余分な低音が出て中域が引っ込んでくると、いわゆるヘビー・メタリックな音になります。それからメタルにはツイン・バス・ドラムが多くて、全体に低音が豊かです。聴いていて一番わかりやすいポイントは、曲の間中ずっとギターのリフが鳴りっぱなしかどうか、という点ですね。鳴りっぱなしなのがヘビー・メタルで、単なるひとつの要素として使っているのがハード・ロックというわけです。

ギターのリフが鳴りっぱなし、という表現にはやや語弊があるが、サウンド面での特徴に関する説明は非常に明快である。こうした低音の利いたサウンドが俗にいう「メタリックなサウンド」であり、その違いはHRとHMを区別するひとつの明解な要素と言えるだろう。

意外なところでは、KKベストセラーズから出版された『今さらこんなこと他人には聞けない辞典』に書かれている記述がなかなかツボを心得ている。同書の「ヘビー・メタル/ハード・ロック」の項には、

「ブルース・ロック」を母体とする「ハード・ロック」と、それに演劇的なドラマ性と、メタリックな音色感を加えたものが「ヘビー・メタル」

と記載されている。この説明はシンプルながらなかなか的確である。ここで説明されている「メタリックな音色感」というものが、前述した米持氏の説明であることはいうまでもない。さらに、この項目の補足説明として、以下のような解説も併記されている。

R&Bをロック的な解釈によって小編成バンドのエレキ・ギターを中心とするアンサンブルと即興演奏を展開した「ブルース・ロック」が60年代半ばに登場し、これが70年代初めにエレキ・ギターの長時間のソロ演奏と大音量を特徴とする「ハード・ロック」に発展した。その後、そうした「ハード・ロック」が様式化していく中で、過激なコスチュームにも特徴される「ヘビー・メタル」が生まれた。

これも簡潔にすぎるとはいえ、流れとしてはほぼ正確な説明である。とりわけ、上記の説明の中で、へヴィ・メタルの「ドラマ性」に着目している点は高く評価できる。単なる転調にとどまらないドラマティックな展開というのは、JUDAS PRIESTやIRON MAIDEN、そして初期のMETALLICAなどにも顕著な特徴であり、パンク・ロック等他のジャンルのロックにはあまり見られない要素であるからだ。

とはいえ、どちらかというとハード・ロックに分類されるようなアーティストの中にも、ドラマティックという表現が相応しい曲展開を見せる楽曲を持つものは少なくないし、特にプログレッシヴ・ロック、またはそれに影響を受けたバンドの中にはそうした楽曲をプレイする傾向が顕著である。むろん、私のようなこだわりの強い人間にとっては、へヴィ・メタルの曲展開には独特のドラマ性があり、他のジャンルの音楽が持つドラマ性とは質が違う、と言いたくなるのだが、それは非常に感覚的な意見で、ここでそのことを声高に主張するのは話をややこしくするだけなので避けるべきかもしれない。

■ 第2章

以上、既存の文献からの引用を中心に話を進めてきた。個人的には「辞書」の限界を見てしまった感があるが、これは論に可能な限りの客観性を持たせようという筆者の悪あがきである。とはいえ、所詮このような個人サイトに掲載される文章が客観的な権威を求めたところで限界があることは否めない。ということで、この章ではあえて個人的な音楽体験に基き、筆者個人がどのように「あ、これはハード・ロックだ」「こりゃメタルだな」と感覚的に分類しているかを述べてみる。

先に、HRとHMの違いを問われた際には「聴いているうちにわかる」と回答するのが正しいと述べた。その言葉が意味することをもう少し難しく言うと、音楽的な分類というのは演繹的になされるものではなく、帰納的になされるものである、ということである。そこで、筆者がおそらく平均的な日本人よりは多いと思われる音楽体験から帰納的に導き出したHRとHMの差異のポイントを整理すると以下のようになる。

[1] リズムの持つニュアンスの違い

基本的にブルース/R&Rというロックのルーツから直接的な系譜上にあるハード・ロックのリズムは、黒人的なタメのきいた8ビート(極言すれば横ノリ)が基本だが、ヘヴィ・メタルの場合よりスクエアで硬質な、重量感を強調したリズム(極言すればタテノリ)が刻まれる。「ヘヴィ・メタルは白人的な音楽」と言われるゆえんである。

[2] ギターの「刻み」の量の違い

ハード・ロックにおいては、リズムに合わせてコードを鳴らしているような場面で、ヘヴィ・メタルの楽曲の多くは8分、もしくは16分でギターがリズムを刻んでいることが多い。(ヘヴィ・メタルにおいてベースが目立たないゆえんは、こうして本来ベースが果たすべき「リズムの刻み」をギターが代行してしまっているためである)。また、HR/HM両者とも曲がギターによるリフを中心に構成されているが、そのリフ自体、ハード・ロックに比べヘヴィ・メタルは細かい刻みがザクザクと入って隙間が少ない。こうしてギターがリズムを刻むことでサウンドに隙間がなくなり、サウンド全体の音圧が増す。この音圧こそが「ヘヴィ・メタルっぽさ」であると考える。

[3] 歌詞テーマの違い

ハード・ロック・バンドはいわゆるラヴ・ソング的な歌詞をはじめ、ひと昔前の言葉でいう「ストリート感覚」、つまり欧米における労働者階級の若者がイメージする所の「カッコよさ・楽しさ」や「ストリート哲学」(いわゆるセックス・ドラッグ・ロックンロール的な享楽主義を含む)に根ざした詞を持つ曲をプレイすることが多い。

一方ヘヴィ・メタルは歴史やファンタジーに歌詞のモチーフを求めたり、あるいは社会的な問題、それも比較的重いテーマを取り上げ、パンク・ロックのように単純な反抗の叫びを上げるのではなく、世の中に警鐘を鳴らすかのような大上段に構えたアティテュードを示したりことが多く、概してシリアスである。平たく言うなら、ハード・ロックの歌詞世界はよりストリート、ひいては一般人の生活感に比較的近い所にあるが、ヘヴィ・メタルのそれはより大仰で、生活感から遠いところにある、と言えるかもしれない。

この3点に、第1章にも出てきた[4]中域が引っ込み、低音が強調された「メタリックな音色」と、[5]起承転結のハッキリした「演劇的なドラマ性」を持つ展開・曲構成の有無という2点がを加えた合計5つのポイントが筆者の考える「ハード・ロックとヘヴィ・メタルの違い」である。

なお、蛇足になるが、実は上記5点の他にもいくつか個人的に「こうだとヘヴィ・メタルっぽい」と感じるようなポイントがある。それはあまりにも表面的で幼稚な話なのでいささか気恥ずかしいのだが、あえて書いてみたい。

補足1 2バス・ドラムの使用頻度の差

いわゆる疾走チューン、と呼ばれるアップテンポと言われる曲よりさらにテンポの速い曲は、通常ハード・ロックに分類されるバンドもプレイすることがある。古くはDEEP PURPLEの「Fireball」、そしてEUROPEの「Scream Of Anger」やSCORPIONSの「Dynamite」、などである。しかし、ツーバスのドラムを激しく連打することによって疾走感を表現するのは、ほとんどがヘヴィ・メタル・バンドである。ただし、これはスラッシュ・メタル出現以降に顕著になった手法なので、この要素はスラッシュ・メタル的なものと言えるかもしれない。

補足2 ギタリストの数の違い

ハード・ロックのバンドには1人、ヘヴィ・メタルのバンドには2人、というイメージが強い。むろん、AEROSMITHやFAIR WARNINGは一般的にハード・ロックに分類されるバンドであるがギタリストは2人いるし、一方STRATOVARIUSやMANOWARなどは明らかにヘヴィ・メタルと呼ぶべき音像を持っているがギタリストは1人である。

しかし、ギター・ソロのバッキングにも音の厚みを必要とするヘヴィ・メタルにとってツイン・ギターであることは基本であるといえる。それは、JUDAS PRIESTやIRON MAIDEN、METALLICAといったヘヴィ・メタルの象徴とも呼ぶべきバンドの多くがツイン・ギター体制を採っていることからも窺い知れよう。また、反対側の見地から、LED ZEPPELINやDEEP PURPLE、VAN HALENのようなハード・ロックを象徴するようなバンドにツイン・ギター編成が見られないことからもこのような印象が強くなっているのだが、ギタリストの人数ががHR/HMの音楽的な区分に関してなんら絶対的な要素となりえないことは言うまでもない。

その他、バンドのファッション的な話をすれば、いわゆる鋲付きレザーや変型ギターに代表される過激な「ヘビメタ・ファッション」に対し、ハード・ロック・バンドはもう少しカジュアルだったり華やかだったりする印象がある、というような話もできるのかもしれないが、ここではあえて音楽的な話に限定したいので割愛したい。

以上、思いつくままにハード・ロックとヘヴィ・メタルの違い(と筆者が感じているもの)について羅列してみた。異論、反論のある方も多いと思うが、私自身はこう感じ、区別している、ということについて述べておきたかったのでご容赦願いたい。

また、あらためて述べるまでもないことだが、ひとつのバンドが同時にHR的な曲とHM的な曲をプレイすることも珍しいことではないし、アルバムによってHRだったりHMだったりするバンドも存在するので、上記の「分類」が現実のバンド、実際にリリースされたアルバムに単純に適用できるかというと、そう簡単ではないということは念のため申し添えておく。

■ おわりに

その音楽がHRであるかHMであるか、実際にその音楽を耳にすれば、少なくとも自分の中ではすぐに結論が出る。 したがってこのコラムを書くのも容易であると思っていた。しかし、実際に書いてみると、これが思いのほか難しかった。冒頭にも書いたが、やはり音楽について言葉で説明するのは困難あるとあらためて痛感させられた。ましてや万人を納得させる説明など、不可能に等しいだろう。この論稿で筆者なりにハード・ロックとヘヴィ・メタルの違いについて、その差異を洗い出して整理したつもりであり、個人的にはそれなりに達成感めいたものもあるのだが、この文章が果たしてどれだけの他人を納得させることができるかは、まったく見当もつかない。

そうなると、究極的な結論はどうしても陳腐なものになってしまう。「音楽ジャンルの違いについてあれこれ考えるなんてバカらしい。自分が気に入るか気に入らないか、それだけだ」なんてね(赤面)。


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