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魅惑のバラードを貴方に


すみません、とのっけから謝るが、このコラムのタイトルはBURRN!誌94年6月号の特集記事のタイトルをそのまんまパクりました(笑)。その頃から同誌をお読みの方の中には憶えていらっしゃる方もいるかもしれません。ま、ジョークとしては悪くないタイトルなので、今回のコラムのタイトルとして使わせていただきたいと思います。

◆HR/HMファンにとってのバラード

HR/HMを愛する者にとって、バラードという楽曲の位置付けは非常に微妙で、人それぞれである。ピュアなデス・メタルやSLAYERを愛するブルータル野郎にとっては無用の長物でしかないだろうし、そこまでコアな人ではないにしても、疾走感やヘヴィなリフにこそHR/HMの魅力を感じている人の中には「バラードが聴きたいんだったらHR/HMじゃなくてポップスを聴くっての」と、バラードだけスキップして聴くような人もいるだろう。

一方、バラードがきっかけでHR/HMに興味を持ったというような人もいる。特に80年代から90年代初頭にかけてのHR/HMブームの頃にはこういう人が多数存在したといわれる。HR/HMが全米チャートでもてはやされ、HR/HMのバラード・ソングがチャートの上位に数多くランクインし、ラジオをつければそういった音が自然に耳に入ってきた時期ならではの現象である。こういったポップスの延長線上としてHR/HMのファンになった人、あるいはHR/HMというジャンルに対するこだわりなしに音楽を聴く人にとってバラードは不可欠なもの、あるいは期待されるもの、であることだろう。

かくいう筆者も学生時代、HR/HMを周囲の友人・クラスメートに広めるためによく使った手が、「とりあえずバラードから聴かせてみる」という方法だった。メロディが聞き取りやすく、ポップ・ミュージックとの親和性の高いバラードであれば、ハード&ヘヴィなサウンドに慣れていない耳でもその魅力が伝わりやすいと思っての作戦だったわけだが、それがうまくいき、見事HR/HMファンに仕立て上げることに成功したこともあれば、結局「HR/HMもバラードだけなら聴ける」という、当人の嗜好に変化をもたらさなかったという意味であまり意味のない結果に終わることもあった。

実際HR/HMバンドにとってバラードというものは諸刃の剣で、なまじバラードがヒットしてしまったがゆえに、レコード会社からバラードばかりを要求され、その結果HR/HMファンにそっぽを向かれてしまったNIGHT RANGERの悲劇は今なお語り継がれているし、「Please Don't Leave Me」のカヴァーが大ヒットし、その後しばらくアコースティックなバラードタッチの作品ばかり出し続けたPRETTY MAIDSもあまり良い目では見られなかった。


PRETTY MAIDS

STRIPPED

アコースティックEP「OFFSIDE」から「Please Don't Leave Me」のアコースティック・バージョンが本国でヒットしたのを受けて制作されたアコースティック・フル・アルバム。


HR/HMが商業的な成功を望めなくなった90年代半ば以降そういった例はあまり見られなくなったが、こういった現象は、基本的にHR/HMのファンはバンドに「バラードばかりをプレイすること」を期待していないという事実を示すものであるということは言えるだろう。もっとも、B!誌の藤木記者はこのコラムと同名の特集記事の中で「HR/HM的価値の高さ」よりも「メロディ至上主義に立った音楽的価値」を重視するという立場から、バラードは質の問題を問われることはあっても、量について問題にされるべきではない、ということを述べていたが、一般的なHR/HMファンであれば、アルバム中の過半数の曲がバラードだったら「詐欺だ」と言いたくなるのではないだろうか。

◆そもそもバラードとは

ここまでなんの疑念もなくバラードという言葉を使っているが、そもそもバラードとはどんな楽曲を指すのだろう。なんとなくゆったりとしたスローテンポの曲、くらいに考えている人が(私も含めて)大半であろうが、実際それは正しい認識なのだろうか。

実際スローテンポな曲=バラードということになると、ドゥーム・メタルの曲は全てバラードということになってしまう(笑)。それが誤りであることは一目瞭然であるから、ここはしっかりバラードの定義を確認しておかないことには話が曖昧になってしまう。

さすがにまた広辞苑を引きに図書館へ足を運ぶのは面倒くさいので、インターネットの辞書サイトをいくつか参照する。

まずは定番Yahoo!

1. 中世の欧州で盛んに作られた定型詩。三詩節と一反歌により構成され、それぞれ同一行の繰り返しで終わる。譚詩(たんし)。
2. 素朴な言葉でうたった短い物語詩。譚歌(たんか)。
3. 物語詩的な内容をもつ声楽曲や器楽曲。譚詩曲(たんしきよく)。譚歌。

…。まあ、実際歴史的にはそういうものなのかもしれないが、ここにある内容は現代のポピュラー・ミュージック的な感覚とは著しく乖離していて、少なくともこの論を展開していく上では何の役にも立たない。

次に大辞林をベースとしたInfoseekgooも同じ)の辞典をチェック。

1. 普通、三つのスタンザから成り、各スタンザの最後の行と結句とは同一のリフレーンで終わる抒情詩。中世のフランスやイギリスの詩型。バラッド。譚詩(たんし)。
2. 素朴な言葉で伝説・民話をうたう物語詩。バラッド。譚歌
3. 物語詩的な内容や雰囲気をもつ歌曲または器楽曲。譚詩曲。
4. 〔ballad〕ポピュラー音楽で、愛などをテーマとする感傷的な歌。

これもYahoo!の辞書と大差ないが、4がかろうじて我々の認識に近いか。とはいえこれも具体的なテンポや曲調を定義するものではないので、あまり参考にはならない。

それではもっと専門的に音楽辞典を引いてみるとどうだろう。YAMAHAの音楽用語辞典には下記のように記載されている。

1. 中世の歴史上または架空の物語を扱った18世紀ドイツの詩。また、それをテクストにした歌曲。
2. ショパンやブラームスらが作曲した、ピアノのためのキャラクター・ピース。

…こうなると、もはや自分自身の感性・感覚に基づいてバラードを定義し、話を進めていかざるを得ない。

私にとってのバラードの特徴を簡単に説明すると、テンポがゆったりしていて、他の曲に比べて静かで、いわゆるギター・リフを持たない、歌のメロディを聴き所の中心とした楽曲、である。こう説明すればドゥーム・メタルはヘヴィなので静かではないし、ギター・リフが中心となっており、歌メロを主要な聴き所とした音楽でもない(メロディがないと言っているわけではない)ので、バラードとその音楽的な性格が根本的に異なることを説明できる。同じように、RAINBOWの「Stargazer」や、BLACK SABBATHの「The Headless Cross」などもテンポはかなりスローであるが、ギター・リフを持った楽曲なので、バラードと区別化することができる。

また、HR/HMのバラードの特色として、中間部、あるいは後半での盛り上げがある。前半はピアノやアコギ、ストリングスなどをバックに静かに歌を聴かせつつ、後半エレクトリック・ギターを入れてギュワ〜ン、と劇的に盛り上げるお約束のパターンである。ギター・ソロで盛り上げるタイプの曲も含め、こういった楽曲はパワー・バラードなどとも呼ばれ、HR/HMアーティストのプレイするバラードのひとつの典型となっている(この方法論は今やポップ・ミュージック全般で模倣されているので、特にHR/HM的なものとしてとらえられることではないかもしれないが、それだけ魅力的な「型」であるといえるだろう)。

とはいえ、こうした盛り上げがある一定の度を超越し、その盛り上げパートが単なる間奏の域を超えてひとつの聴き所になってしまっているタイプの楽曲を僕はバラードとして認めていない。そういった楽曲の例を挙げてみると、LED ZEPPELINの「Stairway To Heaven」、DEEP PURPLEの「Child In Time」、JUDAS PRIESTの「Beyond The Realms Of Death」、GREAT WHITEの「Rock Me」、GAMMA RAYの「The Silence」、BON JOVIの「Dry County」などがある。こうした楽曲を僕はいわゆる「大作系の曲」としてとらえており、スローで静かなパートが多いとはいえ、バラードとしては認識していない。


GREAT WHITE
ONCE BITTEN
僕の中で本作収録の「Save Your Love」はバラードだが、「Rock Me」はバラードではない、というわけです。

以上、無駄に時間がかかったが(苦笑)、バラードの定義が完了したところで、主だったHR/HMバラードの紹介と、個人的なお薦めバラードの紹介をしていきたいと思う。

◆ HR/HMを代表するバラードの名曲群

90年代半ば以降、HR/HMバブルが弾けた後にHR/HMを聴き始めた人には信じられないことかもしれないが、かつてHR/HMバンドが全米チャートの上位を賑わした時代があった。そんな時代にファンの裾野を広げることに聴きやすいバラードは大いに貢献し、多くのヒット曲が生まれた。

まず、商業的成功を収めたHR/HMバンドの代表格はやはりBON JOVIだろう。彼らの場合ブレイクを導いたのはバラードではなく「You Give Love A Bad Name(邦題:禁じられた愛)」や「Livin' On A Prayer」といった極上のハード・ポップ・チューンだったが、当然彼らも全米ナンバーワンに輝いた「I'll Be There For You」を筆頭に、「Bed Of Roses」、「I Want You」など多くの名バラードを持っている。チャート成績はさほどでもないが、「Never Say Goodbye」は日本で非常に人気の高いバラードだし、90年代、落ち目と思われていた彼らにとって起死回生の一曲となった「Always」なども忘れがたい曲である。

そしてBON JOVIと並ぶヒットメイカー、DEF LEPPARDも、メガヒット作「HYSTERIA」からの全米ナンバーワンヒット「Love Bites」を筆頭に「Miss You In A Heartbeat」、「Two Steps Behind」などバラードのヒット曲は数多い。初期の名バラード「Bringin' On The Heartache」は、2003年にマライア・キャリーがカヴァーしたので、そちらのバージョンをご存知の方も多いのではないだろうか。

それから勿論AEROSMITHも忘れてはいけない。初期においても「Dream On」、そしてMOTLEY CRUEの「Home Sweet Home」に多大なインスピレーションを与えたと思われる「Home Tonight」など名バラードを持っている彼らであるが、80年代の「復活」以降は外部ソングライターを起用して非常にコマーシャルなバラードをプレイするようになった。極甘バラードの「Angel」がその代表例だが、やはり映画「アルマゲドン」の主題歌として世界的な大ヒットとなった「I Don't Want To Miss A Thing」がヒット規模としては究極か。

AEROSMITHと並ぶ70年代アメリカン・ハード・ロックの代表格、KISSであればピーター・クリス(Dr)の歌う「Beth」、ジーン・シモンズ(B/Vo)の歌う「Hard Luck Woman」など、なぜかメイン・ヴォーカルであるポール・スタンレー以外が歌うバラードが有名である。チャート的には素顔時代の「Forever」なども全米8位まで上っているが、ポップ畑のマイケル・ボルトン作だけあって優れたポップ・チューンである。まあ、KISSでなくても…っていう気はするけれど。そういった曲では「Tears Are Falling」や「Reason To Live」なども悪くはない。

VAN HALENなどもアーティストの「格」としては上記のバンドに勝るとも劣らない、というかHR/HMバンドとしての評価は上かもしれないが、バラードのイメージがさほど強くないのはデイヴ・リー・ロス時代にはほとんどバラードらしいバラードをプレイしなかったせいだろうか。とはいえ歌唱力抜群のサミー・ヘイガーを迎えて以降は「Love Walks In」や「When It's Love」など、印象的なバラードを数多く残している。

あとメジャーな大御所といえば…MOTLEY CRUEにWHITESNAKEといったあたりだろうか。MOTLEY CRUEに関して言えば「You're All I Need」「Without You」といった辺りがチャート的には上昇しているが、ファンの間では「Home Sweet Home」が最高傑作、というのが定説で、実際イントロからギター・ソロの盛り上げまで非の打ち所のない名曲だ。

WHITESNAKEは「Is This Love」というデヴィッド・カヴァデールのイメージを生かしたHR/HM系には珍しくアダルトなムードが漂う名曲を大ヒット(全米6位)させているが、他にも「Looking For Love」もいいし、「Only My Soul」や「Blindman」など、カヴァデールのソウルフルな歌唱を活かした味わい深いR&B風味のバラードがあるのを忘れてはいけない。

ここまでのビッグ・アクトでなくとも、大ヒット・バラードは80年代後半から90年代の初頭にかけて数多く生まれている。このコラムでもちょっと触れたNIGHT RANGERの「Sister Christian」の大ヒット(全米5位)は同バンドを「バラード・バンド」と呼ばれる悲劇をもたらしてしまったとはいえ、そうしたビッグ・ヒットのハシリといえる。メタル・バブルの徒花といえるPOISONの「Every Rose Has Its Thorn」は全米ナンバーワン、そしてWARRANTの「Heaven」も全米2位まで上昇している(実際、どちらもいい曲だ。「Every Rose Has It's Thorn」の歌詞にある「(失恋の)傷は癒えても、傷跡は消えない」なんていう一節には多くの人が共感するだろうし、「Heaven」の「僕は王様やスーパーマンになんかならなくていいんだ。君さえ僕の一番のファンでいてくれるなら」なんてフレーズは、恥ずかしくも言われて嬉しい女の子はたくさんいるのではないだろうか)。

それから、代表曲といえば「Final Countdown」(全米7位)、なEUROPEも実は最大のヒット曲はバラードの「Carrie」(全米3位)だし、同じく「Wait」(全米8位)のイメージが強いWHITE LIONも「When The Children Cry」の方がチャート最高位は上(全米3位)である。ブルージーな渋めのHRバンドだったTESLAを成功に導いたのもバラード「Love Song」の全米トップ10ヒットだし、タテノリのR&Rサウンドで人気を博していたKIXもヒット曲はバラードの「Don't Close Your Eyes」のトップ40ヒットのみである。そりゃ「バラード=コマーシャルな売れ線狙いの曲」と言われるのも無理はない。

あと、90年代初頭のアンプラグド・ブームに乗ってEXTREMEの「More Than Words」やMR.BIGの「To Be With You」の2曲が全米ナンバーワンヒットを記録したが、両バンドとも優れたHR/HMバンドだったにもかかわらず、普通のポップスファンの間ではその1曲のみの「一発屋」というイメージをつけてしまったという意味で功罪相半ばするヒットだったと思う。特にMR.BIGなんてこの大ヒットのおかげでバラードばかりレコード会社に要求されるという「第二のNIGHT RANGER」状態になってしまった。結果としてバラード・ベストみたいなCDまで編まれる始末で、実際彼らの書くバラードのクオリティは高く、個人的には「To Be With You」よりいい曲も多かったと思うのだが、結局ヒットには至りませんでしたねぇ…。


MR.BIG

DEEP CUTS
90年代日本で大人気だった彼らのバラード・ベスト。これを聴くと全米大ヒット曲「To Be With You」は彼らのバラードの中ではむしろ地味な曲だったことがわかる。

他にもCINDERELLAの「Don't Know What You Got」、WINGERの「Headed For A Heartbreak」、FIREHOUSEの「Love Of My Life」、「When I Look Into Your Eyes」、SKID ROWの「18 And Life」「I Remember You」などこの時期売れていたバンドはたいていバラード・ヒットを持っており、シングル・ヒットのイメージとは程遠いQUEENSRYCHEの「Silent Lucidity」まで全米トップ10入りしてしまうという、ある意味で「異常事態」だった。個人的にはWINGERなら「Headed For A Heartbreak」より「Without The Night」か「Spell I'm Under」だし、SKID ROWならより哀愁の強い「Quicksand Jesus」か「Wasted Time」の方が心にしみると思うが、まあアメリカ人とは感性が違うということか。

WARRENTやWHITE LIONなどの微妙なバンドを登場させておいてMOTLEY CRUE以外にLAメタルの有名バンドたちを取り上げないのもおかしな話だ。ただLAメタル・バンドのヴォーカリストは、個性は強いものの、いわゆる「歌が上手い」というタイプのシンガーは少なく、「カッコいい曲」は多くとも「いい歌」が少ないことは否定しがたい事実である。

とはいえ、DOKKENの「Alone Again」はこれぞ典型的なHR/HMバラード、というべき構成を持つ名曲であるし、あと、天才メロディ・メーカー、マイケル・スウィートを擁するSTRYPERの「First Love」、「My Love Always Show」、「Together As One」、そしてスマッシュ・ヒットとなった「Honestly」などもぜひ一度聴いてもらいたいバラード群だ。LAメタルが生んだヴォーカリストの中では群を抜いた歌唱力を誇るジャック・ラッセル率いるGREAT WHITEの「Save Your Love」も乾いた都会的なブルージーさが絶妙な物悲しさを演出する秀曲。LAメタル・ムーヴメントが生んだもう一人の名シンガー、ポール・ショーティノ(ROUGH CUTT〜QUIET RIOT)は楽曲に恵まれませんでした。残念!

あと、何と言っても忘れてはならないのがSCORPIONS。初期の彼らを愛するマニアたちの間では「Fly People Fly」、「We'll Burn The Sky」、「In Trance」、「Born To Touch Your Feeling」、そしてB!誌の前田記者が「聴くと自殺したくなる」という「Yellow Raven」など、陰鬱なまでの哀しみに彩られたバラードの評価が高いが、一般にはウルリッヒ・ロート脱退後の洗練されたバラードが知られている。HR/HMブームが本格化する前に大ヒットを記録した「Still Loving You」、そして東西冷戦終結後の新しい時代を象徴するアンセムとなった「Wind Of Change」の2曲は共に全米ナンバーワンを記録した有名曲だが、他にも「Believe In Love」、「Under The Same Sun」、「When You Came Into My Life」など、佳曲は多い。

ここまで、当サイトではあまり積極的に扱っていないタイプのバンドの楽曲紹介が続いたので、そろそろヘヴィ・メタル然としたバンドの楽曲を紹介していこう。いわゆる正統派HMのバラードとしては、まずはメタル・ゴッドJUDAS PRIESTの「Dreamer Deceiver」「Before The Dawn」が挙げられる。これらは彼ら独自のロマンティシズムが息づいた名曲といえるが、一般人にはただの「暗い曲」かもしれない。

JUDAS PRIESTと並ぶ、正統派HMの代表格IRON MAIDENは、スティーブ・ハリスがコマーシャリズムを忌避することもあって、ほとんどバラードをプレイしていない。唯一本格的なバラードといえるのは「Wasting Love」くらいのものか。まあ、よくできた曲だと思うが、決して一般的なヒットが望めるような曲ではないし、だからこそMAIDENらしく響くのだろう。あと正統派系ではMANOWARの「Heart Of Steel」を忘れてはいけない。これぞメタルのバラード!というべき曲で、後にドイツ語版もリリースされ、ドイツでは特に高い人気を誇る曲である。「LOUDER THAN HELL」収録の「Courage」もその流れを汲む力強い名バラード。

ただ、やはり基本的にメタルのヴォーカリストにはアクの強い歌声の持ち主が多く、いかにスローでメロディアスな曲を歌ったところで、先に紹介したような、ビルボードを上昇するヒット・ポテンシャルの高い「いい歌」にはならないことが多いのが現実である。

その筆頭がMEGADETHで、「A Tout Le Monde」あたりはこのバンドとしてはかなりバラードらしい曲であるが、一般人にバラードとして響くかどうかは微妙なところであるし、「In My Darkest Hour」や「Mary Jane」などは前半はバラードっぽいものの、後半パワフルにメタルしてしまうので、バラードとは呼びがたい。ACCEPTのウド・ダークシュナイダーも、唯一無二のメタル・ヴォイスの持ち主であるが、それがゆえにバラードを歌うことにはまったく適していない。「Can't Stand The Night」や「Winterdreams」などは普通の歌声の人間が歌えば名バラードになったかもしれないのだが…。実際初期においては、バラードはベースのピーター・バルテスが歌っていたしね。いずれにせよ、ヘヴィ・メタルのバラードというのは一般人にはやや厳しいことは否めない。

そういった意味では、オジー・オズボーンあたりがギリギリセーフといったところだろうか。もはやクラシックと言っていい「Goodbye To Romance」から、「Mama, I'm Coming Home」に始まる売れ線路線のバラードまで、どうにか一般人にも聴けるレベルに達していると思うが、果たしてポップ・ミュージックとして機能しうるかどうかはHR/HMにどっぷり首まで漬かってしまった私には確信が持てない(苦笑)。

バンドのイメージとは異なり、実は名バラードが多いのがMETALLICAである。スラッシュ・メタルバンド史上初のバラードとなった「Fade To Black」からして名曲だが、その後も「The Unforgiven」、「Nothing Else Matters」、「Mama Said」など、彼らの書くバラードに駄曲はない。ジェイムズ・ヘットフィールドは決して「歌の上手い人」ではないが、その歌唱には独特のエモーションと説得力があり、バラードにおいてもその資質が遺憾なく発揮されている。

名バラードが多いといえば、ゲイリー・ムーアである(なんて強引なつなぎ!)。ゲイリー・ムーアはアメリカではさほど認知度が高くないので、全米大ヒットこそないものの、イギリスでは人気が高く、そのバラードも全英チャートではかなりのヒットを記録している。代表曲としては「Allways Gonna Love You」、「Falling In Love With You」、「Empty Rooms」、「Crying In Shadows」など、彼の場合、曲も泣ければギターも泣けるという「一粒で二度おいしい」曲ばかりだ。インストものでも有名曲「Parisianne Walkway」(Vo入りのバージョンもあり、それも良い)をはじめ、「Sunset」、「The Loner」など名バラードぞろいだ。


GARY MOORE

BALLADS&BLUES
アイルランドが生んだ泣きの鬼、ゲイリー先生のバラード&ブルースコレクション。渋くも泣ける名曲がギッシリ。

インストもののバラードについて言及されたのでその辺を掘り下げていくと、トニー・マカパインの「Tears Of Sahara」、ヴィニー・ムーアの「April Sky」、ジェイソン・ベッカーの「Air」のような「Shrapnel」系ネオ・クラシカル系ギタリストの曲が多く思いつくが、むろん後で触れる元祖ネオ・クラシカルの巨匠イングヴェイの「Crying」や「Brothers」なども忘れてはいけない。

ギタリスト続きということで、ゲイリー・ムーアと並ぶ泣きのギターの巨匠、マイケル・シェンカー関連を考えてみると、UFO時代には「Love To Love」や「Try Me」、M.S.G.としては「Never Trust A Stranger」、「Never Ending Nightmare」あたりが思い起こされるが、正直バラードのライターとしては、マイケルは凡庸な印象がある。まあ、この人の場合バラードの肝であるヴォーカリストに恵まれなかったのでやむをえないのかもしれない。

ギタリスト関係の最後はイングヴェイ・マルムスティーン御大を。ジョー・リン・ターナーの歌う「Dreaming」、マッツ・レヴィンの歌う「Like An Angel」あたりがポピュラリティの高いバラードかもしれないが、個人的にはヨラン・エドマンの歌う「Save Our Love」、「I'm My Own Enemy」の2曲が透明感に溢れていてオススメ。マイク・ヴェセーラの歌う「Forever One」や「Prisoner Of Your Love」も悪くない。

イングヴェイの名前が挙がったところで様式美系のバラードをまとめて紹介しよう。DEEP PURPLEはアルバム「STORMBRINGER」収録の「Solder Of Fortune」と再結成後の「PERFECT STRANGERS」に入っている「Wasted Sunset」が素晴らしいし、RAINBOWの「Temple Of The King」、「Rainbow Eyes」も他のジャンルのバラードとは趣を異にするという意味で非常に「らしい」曲である。あとはBLACK SABBATHの「Nightwing」、そして「Sound Good To Me」などもそんな曲だ(後者はややコマーシャリズムを意識しているような雰囲気もあるが)。同じくBLACK SABBATHのバラードでも、グレン・ヒューズを迎え、本来トニー・アイオミのソロとして制作された「SEVENTH STAR」収録の「No Stranger To Love」などは完全にAORだが、いい曲だ。

様式美の流れで北欧系をまとめてピックアップすると、前章でもチラッと触れたEUROPEは、既出の「Carrie」も超センチメンタルな名曲だが、ファンの間では「Open Your Heart」や「Dreamer」といった初期のバラードの評価が高いし(個人的にも「Dreamer」は大好きだ)、売れ線に走って大コケした「OUT OF THIS WORLD」のラストに収められた「Tomorrow」も物悲しい佳曲。やっぱり「うた」を重視しているバンドはバラードの出来がいい。

北欧関係の紹介を続けよう。デンマークのPRETTY MAIDSは、何と言ってもジョン・サイクス&フィル・ライノットのカヴァーである「Please Don't Leave Me」が有名。このバージョンの方がオリジナルより有名になり、カヴァーであるにもかかわらずBURRN!誌の年間ベストチューンに選ばれてしまった。彼らのオリジナルなら「JUNP THE GUN」収録の「Savage Heart」がイチオシ。「STRIPPED」にアコースティック・バージョンも収録されており、そちらもとてもいい。

ノルウェーのTNTは「Northern Lights」、「End Of The Line」、「Lionheart」といったバラードを残し、どれも印象的な佳曲に仕上げている。それから北欧系ではちょっとマニアックではあるが、220VOLTの「Love Is All You Need」、そしてTREATの「Stay Away」といった曲はぜひ聴いてもらいたいバラード群だ。

忘れてはいけないのがFAIR WARNINGのバラード。「Long Gone」、「Take Me Up」、「What Did You Find」、「All On Your Own」など、トミー・ハートの熱唱と、スカイギターのどこまでも昇りつめていく高音が盛り上げる叙情メロディの殺傷力はハンパではない。哀愁派を自認する方であれば彼らのバラードを聴かずして生きていてはいけない。

FAIR WARNINGと並び、90年代日本でしか評価されなかったメロディアス系のバンドにも優れた曲は多い。ROYAL HUNTの「Clown In The Mirror」、(ROBBY)VALENTINEの「Over And Over Again」、「Don't Make Me Wait Forever」、TENの「The Loneliest Place In The World」、TERRA NOVAの「Love Of My Life」、「Not Here With Me」などはおそらくほぼ日本人にしか愛されていないであろうことがもったいない名バラード群である。

あとはスイスのGOTTHARDやイギリスのTHUNDERなども、バラード・コレクションが編集されるほどであるから当然バラードは質・量ともに豊富である。両バンドともにヴォーカリストの表現力が素晴らしいのがポイント。GOTTHARDであれば哀愁溢れる「I'm On My Way」、「Let It Rain」、そしてスイスの国民的英雄だったK-1選手アンディ・フグの死に捧げられた「Heaven」あたりが、そしてTHUNDERであれば全英ヒット曲の「Love Walked In」や、「男の哀愁」が胸を打つ「Til' The River Runs Dry」、完成度では随一の「Love Worth Dying For」などがお薦めだ。


GOTTHARD

ONE LIFE, ONE SOUL
スイスの国民的人気HRバンドのバラード・コレクション。程よい土臭さが心地よいメロディアスないい歌が揃っている。

THUNDER

BALLADS
ダニー・ボウズのソウルフルな歌唱が光る、ブリティッシュ・ロックの良心と呼ぶべき彼らのバラード・コレクション。

本サイトが最もプッシュしている音楽であるメロディック・パワー・メタル系のバンドも、ジャンル名に「メロディック」と付くだけあって、バラードの数自体は割と豊富である。ただ、このジャンルのファンはバラードより疾走感溢れるスピード・チューンを好む傾向が強く、あまりバラードの出来が取りざたされることは少ないため、よほど突出した出来でない限り、まず話題になることがない。話題にならなければ他ジャンルのファンを巻き込んで汎HR/HM界的な認知を得ることなど無理な話で、結果として広く知られる有名曲、というのは少ないのが実情である。 とはいえ、「有名曲が少ない=いい曲がない」、というわけではない、と信じ、このジャンルのバラードについて少し掘り下げてみる。

まずはメロディック・パワー・メタル・スタイルの創始者たるHELLOWEENから。マイケル・キスク時代の「A Tale That Wasn't Right」は「演歌か」と思うほどのクサさで、好き嫌いは分かれるかもしれない。キスク本人作の「Your Turn」はやや凡庸だが、迷作「CHAMELEON」収録の「Windmill」は郷愁をそそられる隠れた名曲である。ただ、バラードに関して言えば、アンディ・デリスの洗練されたソング・ライティングのセンスが光る「In The Middle Of A Heartbeat」、「Forever And One」、「If I could Fly」といった曲の方がポピュラリティが高く、非メタラーな方々にもその良さがわかってもらえるのではないだろうか。

我が心の師匠、カイ・ハンセン率いるGAMMA RAYに関しては、「God Voice」の持ち主たる本人が歌うようになってからはもちろん、希代のメタル・ヴォーカリストであるラルフ・シーパースでさえ「バラード向き」の歌声とは言いがたく、広くお薦めできる名バラードというのはファンである筆者にもちょっと思いつかない(強いて挙げるなら「18 Years」?)。

BLIND GUARDIANのハンズィ・キアシュは上手いシンガーとは言いがたく、このバンド自体いわゆるベタベタのバラードをプレイするようなバンドでもないのだが、「Lord Of The Rings」などはそれに近い感触のある、感動的な曲である。「A Past And Future Secret」のような欧州民謡的な楽曲も、アルバムの中でバラード的な役割を担っていると言っていいだろう。

欧州民謡的な曲がバラードの役割を担っている、という点で共通するのが「イタリアの奇跡」RHAPSODYだろう。「Forest Of Unicorns」、「Where Dragons Fly」などはまさにそんな曲だが、正直あまりにも牧歌的な曲なので、一般的なHR/HMリスナーにはお薦めしかねる。このバンドのバラードで出色なのは、「Lamento Eroico」だろう。彼らの母国語イタリア語のクドめの響きがよく似合う、情感溢れる一曲である。

ベタベタの「いかにも」なバラードをプレイしないという点で共通するのが、「ブラジルの至宝」ANGRA。とはいえ、「Stand Away」の持つ精神的な深み、そして「Bleeding Heart」に込められた情感は凡百のメタル・バンドが逆立ちしても表現できない、絶品の味わいである。

しかし、やはりメロディ勝負のバラードにおいては、メロディ・センスに長けた北欧のアーティストはポイントが高い。フロム北欧メロディック・パワー・メタルの先駆者というべきSTRATOVARIUSの「Forever」は、クサメロバラードの金字塔と呼ぶべき名曲であるし、「Coming Home」なども完成度の高い曲である。その他、個人的な印象を述べるなら「NightFall」、「Winter」、「Before The Winter」など、冬の情景が瞼に浮かんでくるような、寒々しさを感じさせる表現力にかけては彼らのバラードは天下一品だと思う。

STRATOVARIUSチルドレンと呼ぶべきSONATA ARCTICAも非常に歌メロに傑出したセンスを発揮するバンドなので、当然「Tallulah」、「Shy」、「The Misery」など、哀愁溢れるバラードにそのメロディ・センスを発揮している。

何気にバラード作りに非凡な才能を示しているのがHAMMERFALL。「I Believe」、「Glory To The Brave」、「The Fallen One」、「Dreams Come True」など、北欧のバンドらしい哀愁に満ちたバラードを多く生み出している。こうしたメロウな楽曲を得意としていることも彼らの商業的な成功に一役買っているのかもしれない。

HAMMERFALLと並ぶスウェーデンの「バラードの達人」はDREAM EVIL。「Losing You」、「Forever More」、「The End」、「Unbreakable Chain」など、ガス・Gによる泣きのギターをフィーチュアしたバラード群はどれも出色の出来栄え。あとスウェーデン出身のバンドではNOCTURNAL RITESの「Legend Lives On」なども印象深い。

それから、このジャンルに分類していいのかどうかは微妙であるが、KAMELOTもロイ・カーンという希代の名ヴォーカリストを擁しているだけあり、説得力のあるバラードをプレイできるバンドである。中でも「Don't You Cry」はカーンの濡れ濡れ歌唱が心に染みる彼らのバラードの白眉。カーンと言えばCONCEPTION時代の「Silent Crying」もメランコリックで印象的な曲だったな…。

いずれにせよ、このジャンルは個人的に最も思い入れの深いジャンルであり、片っ端から挙げていこうとすればキリがないので、とりあえず今回はこの辺にとどめておく。それに、このジャンルはまだまだ「これから」のジャンルだと信じており、ここに挙げたバラード群に並ぶ、あるいは超える名曲が今後も続々と誕生していくことを願っている。

◆ 個人的なバラード名曲10選

予想外に長いコラムになってしまった。まあ、それだけHR/HMの歴史は長く、その歴史においてバラードは確固たるポジションを占めている、ということの表れであろう。

実は、このコラムは2001年に書いたものを加筆・修正したものなので、今回新たに加筆したメロディック・パワー・メタル系のアーティスト以外の楽曲については、ほぼ20世紀までの曲に限定されているのはご了承願いたい。

最後に、個人的に私が愛しているHR/HMの名バラードを15曲ご紹介し、このコラムを締めくくりたい(ホントは10曲に絞りたかったが、無理でした…。ちなみに順位はその日の気分によって変動するので、順不同と思ってください。単なる思いついた順です)。

 

No.1 Say Anything / X
  反則? いやホントならこの10選の半分以上を彼らのバラードで埋め尽くしたいのですが、代表としてこの曲を選ばせてください。美しいメロディに感動が止まらない。

No.2 She's Gone / STEELHEART
  あまりにも恥ずかしい曲だが、この大仰な盛り上がりこそがHR/HMバラードの真骨頂。

No.3 Wind Of Change/ SCORPIONS
  初めてこの曲を聴いたとき、「世の中は良くなっていくのかもしれない」という希望が持てた。そんな幸福な時代の最後を飾った名曲。イントロの口笛からしてグッと来る。

No.4 Stand Away / ANGRA
  哲学的とも言えるほどの神秘的な深遠さに感動した。

No.5 Is This Love / WHITESNAKE
  こういうアダルトでアーバンな曲がたくさん出てくれば、HR/HMファンのきれいな女性が増えるかもしれませんね。ビブラート過多のギター・ソロも素敵。

No.6 Please Don't Leave Me / PRETTY MAIDS
  僕の世代にはオリジナルよりこちら。これもどこか都会的な哀愁がたまらないんだよね。

No.7 What Did You Find / FAIR WARING
  どこまでも昇りつめていくかのようなスカイ・ギターのソロにしびれた。

No.8 Windmill / HELLOWEEN
  このどこか懐かしい曲調に、郷愁をかきたてられます。優しくも切ない、隠れた名曲。

No.9 Quicksand Jesus / SKID ROW
  たとえ下手でも、一生懸命心の底から、お腹の底から歌えば、人の心を動かすことができる。そう思えるようなバズの絶唱が聴ける。

No.10 On And On / IMPELITTERRI
  シンプルに、ただ男の誇りと大切な想いを歌う様に心惹かれる一曲。

No.11 The Unforgiven / METALLICA
  シリアスかつエモーショナルな歌唱が胸に響いた。ジェイムス最高のヴォーカル・パフォーマンス。

No.12 Love Bites / DEF LEPPARD
  曲自体もいいが、マット・ランジならではのアレンジとサウンドが劇的な感動を増幅。

No.13 Carrie / EUROPE
  センチメンタルなロマンチストである(?)僕は、こういう砂糖菓子のような甘口バラードも大好物。

No.14 The Flame / CHEAP TRICK
  モトリーの「Home Sweet Home」にしようかとも思ったが、やはり究極のラヴ・ソングといえるこちらに一票。

No.15 Hear You Cry / SUBWAY
  ここで僕が取り上げなかったら誰がどこで取り上げる? 構成といいメロディといい、サックスを使ったスケール感に満ちたアレンジといい、Aクラスのバラードに引けをとらない名バラード。

 

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